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臨界の星穹  作者: Mr.佐藤焫焵
士官学校編
36/62

10. 実験体 2

この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。

【第一日:疼痛管理】


疼痛管理という四文字は、高級な心理セミナーみたいに聞こえる。


実際の内容は——


ハインリヒ博士があらゆる合法的かつ吐き気のする方法を使って、昨日の夕食を全部戻したくなるほど痛い状況でも、観察・報告・判断・口答えを維持する訓練をさせる、ということだ。


第一限が終わったとき、私は気絶した。


第二限が始まる前、博士は温かい水を一杯私の前に置いて、昨日など何もなかったような顔で言った。


「今日は鈍痛、刺痛、灼熱痛、神経放射痛の識別を学ぶ」


カップを両手で持って、彼を見る。


「博士、普通の先生は初回の授業で生徒を気絶させないんですよ」


「記憶に残るということだ」


「あなたみたいな人が地獄に落ちたら、悪魔に教務主任として採用されると思います」


眼鏡を押し上げる。


「待遇が合理的なら、検討する」


……くそ。


こういう、こちらのくだらない話を大真面目に受けてくる人間が、いちばん腹立つ。


三回目の刺激の頃には、表層の痛みと骨の隙間まで刺さってくる痛みを、なんとか識別できるようになっていた。


五回目には、逃げるのをやめて、機械を分解するみたいに、その痛みを「痛い」という一塊から「位置・方向・深さ・リズム」に強引に解体できるようになっていた。


気持ち悪い。


でも、使える。


痛みを分解すると、まだ痛いことには変わりないが、少なくとも人を丸ごと飲み込む黒い水じゃなくなる。


番号をつけられ、名前をつけられ、時間を計るのにすら使えるものになる。


博士はそれを見て満足していた。


私の感想は一言だけだ。


「連邦って、トラウマを教材に仕上げるのが本当に上手いですね」


---


【第二日:耐G適応】


耐G訓練なんて、遠心艙に入って少し回転して、吐いて、終わり。そのくらいに思っていた。


第一特別運用科がそんなに優しいはずがなかった。


普通の遠心艙じゃない。


人体に「お前は実はかなり脆い」と教えるために専用設計された、金属製の棺桶だ。


座席に固定され、頭を背もたれに預けた瞬間、艙内の照明が暗い赤に変わった。システムのカウントダウンが始まるとき、私はまだ「回転するだけじゃないか」と余裕をかましていた。


三十秒後、理解した。


重力は人を押さえつけるんじゃない。


座席の中に叩き込むんだ。


胸に貨物艦一隻分の重さが乗ったみたいで、呼吸が短く硬くなり、腕が鉛を流し込まれたように重くなり、瞼まで落ちてくる。視野の端から灰色が滲み、それが少しずつ黒くなっていく。スケッチブックの縁を炭鉛筆で塗り潰していくように。


通信から博士の冷静な声が聞こえた。


「抗圧姿勢」


歯を食いしばって、背を後ろへ押し、腹に力を入れ、教範どおりに体を作る。


「呼吸」


従う。


「話せ」


「何を……」


「何でもいい」


高Gの中で苦しく息をついて、絞り出した。


「この……ポンコツ機械……低予算の遊園地みたいな……回り方しやがって……」


通信が一瞬沈黙した。


それからレオンの声が割り込んできた。


「まだ無駄口が叩けるなら、加圧を続けろ」


艙内で噛みつきたかった。


出てきたとき、絞ったあとに戻されたみたいな状態だった。膝が抜けて、手が痺れて、視線が漂って、歩き方が生まれたての子鹿みたいで屈辱的だった。


でも三回目には、ブラックアウトが来る前に呼吸リズムを保てるようになっていた。


五回目には、八割以上の負荷の中で、戦術マップの移動目標三つの識別番号を正確に報告できた。


博士はそれを進歩と呼んだ。


私の感想はこうだ。重力に教育されて、少しだけ割れにくいガラスコップになった。


---


【第三日:薬物適応】


疼痛管理が「痛みと一緒に仕事を覚える」訓練なら、薬物適応は「脳内に乱入して大掃除しようとする連中と平和的に共存する」訓練だ。


時間を遅らせる薬がある。


心拍を安定させる薬がある。


恐怖をガラスの向こう側に置いてくれる薬がある——見えるが、触れない。


深夜三時にコーヒーを八杯飲んで戦術条例を暗記させられているみたいに、意識を研ぎ澄ます薬もある。


「今日は低用量戦術増感の検査だ」


博士が注射器をトレーに置き、淡々と言う。


私は椅子に座って、無表情に手を差し出した。


「先に言っておきますが、天井にうさぎの耳が生えてきたら、あなたの年末評価に記録します」


「幻覚傾向は現時点では低い」


「わあ、感動です。人生で初めて『変なものが見えにくい』ことを褒められました」


薬が入ると、世界が一段階拭き清められたような感覚になった。


速くなるんじゃない。


鮮明になる。


空気が流れる音。


金属面の反射。


博士が資料を捲るときの紙の擦れ音。


遠くにある機器が起動する直前の、一秒にも満たない低周波の振動まで、先に察知できる。


危ない感覚だった。


便利すぎるから。


便利すぎて、一瞬だけ依存したくなる。


博士は私が何を考えているかわかっているように、静かに言った。


「薬は増幅器だ。答えじゃない」


横目で見る。


「それ、珍しく人間らしい言葉ですね」


「私は人間だ」


「要検討です」


でも、彼は正しかった。


その後の訓練で、少しずつ境界線を覚えていった——


薬が自分を助けているとき。


薬が自分の代わりに決め始めるとき。


代わりに決めさせたら、そこで終わりだ。


体制と付き合うのに似ている。


利用することはできる。


信じてはいけない。


---


【第四日:戦術判読】


この日の折磨は、比較的上品だった。


注射なし。


電流なし。


回転なし。


ただ全天周戦術室に放り込まれて、百を超える情報、偽信号、友軍呼び出し、敵の囮、経路図、補給量、弾薬残量、時間的プレッシャーを同時に顔面に叩きつけられるだけだ。


光幕が展開した瞬間、部屋全体が光に満ちた。


艦艇軌道。


敵艦の熱源。


妨害信号。


民間船の救難信号。


友軍の損傷報告。


補給不足。


側面露出。


正面火力線の崩壊。


一つ一つが言っている。


早く選べ。


早く判断しろ。


早く責任を取れ。


レオンが制御卓の後ろに立って、問題を出す。


彼の出題スタイルは、本人と同じくらい腹立たしかった。


「左翼の火力窓口は残り三分だ」


「なら左から先に打ちます」


「不正解。囮だ」


「じゃあ民間船の救難信号は?」


「偽信号だ」


「だったら全部偽物だって最初から言ってくれればよかったじゃないですか!」


「戦場には偽物が多い。それが普通だ」


光の点が乱れ飛ぶ中、頭が燃えそうだった。


この訓練の嫌なところは、疼痛と違って直感的じゃないことだ。


悲鳴は出ない。


ただ、自分が思ったほど賢くないことを発見させられる。


一回目のシミュレーションで、二度判断を誤り、右側防衛線を帝国艦隊に丸ごと切断された。


二回目は、一回目の失敗を修正しようとしすぎて過度に保守的になり、補給線を食われた。


三回目で、ようやくわかり始めた。戦術とは最も美しい答えを選ぶことじゃない。最もマシで、かつ取り返しのつく失敗を選ぶことだ。


シミュレーション終了後、レオンは結果を見て一言だけ言った。


「わかってきた」


感応ヘルメットを外す。情報の海で溺れて引き上げられたみたいな状態だった。


「何がですか」


「全員は救えない」


その言葉が、腹立たしかった。


わかっているから。


わかっているから、よけいに腹立つ。

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