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臨界の星穹  作者: Mr.佐藤焫焵
臨界の星穹:ロスト
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114. 隠蔽 1

この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。

第一ブロックの氷試料を回収袋に固定した後、私はこの外勤の残りの流れが、「もう何ブロックか切り出して、もう何袋か詰めて、低重力の漂流事故現場からまた何人か引き戻して」、それから無事に艦へ帰還して、雪風の飲料水の状態を「絶望」から「辛うじて人を罵れるレベル」まで引き上げる、という程度のものになるだろうと思っていた。


残念ながら、宇宙はこの種の平凡な幸福を好まないらしい。


異常反応を最初に発見したのは、アイダだった。


当時、アイダは第二採集ポイントの前にしゃがみ込み、携帯分析器を氷層の表面に押しつけて、下の密度構造をスキャンしていた。私とジェスは第一袋の回収氷を揚陸艇の方へ引いていき、ロイは艇の脇で固定パイルの角度を調整し、蘭は少し高い氷の稜線に中継信号標を立てていた。


氷原全体は、誰かが音を引き抜いたように静かだった。ヘルメットの中の呼吸音、機器の細かな稼働音、ブーツが時々氷面を擦る音だけが残っている。


そして、アイダの通信チャンネルに、ごく短い一言が飛び込んできた。


「待って」


アイダは普段から口数が少ないので、この一言は他の誰かが三回怒鳴るより効いた。私はすぐに振り返った。


「どうした?」


「氷層の下に、熱源に反応している何かがある」アイダは顔を上げずに、平坦な口調で言った。ただし、その平坦さは少し意図的すぎた。「単純な熱伝導じゃない。普通の鉱脈でもない。まるで……切断機を起動したら、下の一区画がそれに合わせて目を覚ましたみたいだ」


「死んだ氷の球体で『目を覚ます』という言葉は使わないでほしい」ジェスが言った。


「私も嫌だ」アイダは言った。「でも、データがこう言っている」


私とジェスは顔を見合わせ、すぐに前後してアイダの方へ移動した。低重力では速足が間抜けなことになる。普段のように力強く走ることはできず、焦っていないふりをする間抜けなように、一歩一歩、氷面の上で推進を制御しながら、自分が宙に飛ばないよう注意するしかない。


アイダは分析器の画面を全員のヘルメット内側に共有した。私は氷層の断面の下に、水氷と二酸化炭素氷が交錯する構造の中に、細い輝線がいくつか埋まっているのを見た。


その輝きは温度ではなく、信号エコーが増幅された後に残るような、リン光の残像だった。アイダが切断機を近づけるたびに輝線がかすかに明滅する。眠っている神経を針で突いたような反応だ。


蘭が高い場所から少し滑り降りてきた。声は相変わらず、血も節約して流しているんじゃないかと疑いたくなるほど冷静だった。


「通信干渉じゃない。スペクトルが合わない。局所的なエネルギー蓄積に近い」


「この惑星は危険度低、生命反応なし、中短期地表作業に適していると書いてあったはずでは?」ロイが後ろから言った。


「連邦のデータベースには、後方支援の補給効率が年々改善されるとも書いてある」私は言った。


「了解、馬鹿な質問でした」


ジェスはアイダの横にしゃがみ込み、氷面の下をしばらく眺めてから、真剣な顔で結論を出した。


「なんか綺麗」


「綺麗なものは、危険の前奏であることが多い」私は言った。


「その台詞、恋愛にも使えるね」


低重力下でジェスを蹴って雪穴に落とすのはリスクが高すぎて代理指揮官の品位に合わないため、私は一瞥だけ送ってからしゃがみ込み、自分の手袋を氷面に当てた。


多層の防護越しでは実際の温度は感じられないはずなのに、それでも妙な錯覚があった――あの氷の下に何かがいて、動いているのではなく、待っているような感覚だ。


その待ち方には悪意もなく、善意もない。ただ純粋に存在している。この死んだ星が密かに保ち続けてきた、わずかな脈拍のように。


「星体データに『氷晶』という記載があった」蘭が言った。「希少物質。用途不明。これと関係があるかもしれない」


「名前がちゃっかりしてるね」ジェスが言った。「シモ、あんたのオリジナルグッズじゃん」


「もし私のグッズが切断機に反応して青く光るなら、いらない」


アイダはすでに細い探針を取り出し、氷層の隙間に沿ってゆっくりと差し込んでいた。データが一跳びずつ上昇し、最終的に微妙な区間で止まった。即座に撤退を命じるほど高くはないが、安心して記念写真を撮れるレベルでもない。


「微弱な放射性蓄積エネルギー」アイダは言った。「近くの氷晶低木のエネルギー貯蔵パターンに似ているが、純度がずっと高い。切断して高い温度差に晒されると、瞬時放出が起きる可能性がある」


「翻訳して」ジェスが言った。


「爆発するかもしれない」


「なんで今言えることを、さっきはあんなに長く説明したの?」


「教育を受けている実感を持ってほしいから」


私は思わず額を押さえた。


本来なら、この状況で最も安全な選択は、位置をマークして、データを撮影して、艦へ帰還し、より完全な準備ができてから再度降りてくることだ。だが「本来なら」という前提は、余裕があって、時間があって、補給が正常で、宇宙の縁で半壊した軍艦が氷を掘って命を繋ぐのを待っていないことが前提だ。


私たちには、そのどれもない。


だから私は二秒だけ考えて、決断した。


「採取する」私は言った。


ヘルメットのチャンネルが一瞬静まった。


ロイが先に声を上げた。「今ですか?」


「今だ」あの青白い細い輝線を見つめながら、自分の心の中より落ち着いた声で言った。「小さなサンプルだけ取る。主構造は壊さない。アイダが操作、蘭がデータを監視、ジェスは警戒位置まで下がれ、ロイは揚陸艇の推進器をリモートで待機させろ。数値が警戒ラインを超えたら、即座に全員後退だ」


「医官の事故報告書に書かれそうな決断だ」ジェスが言った。


「なら生きて帰って私を批判してくれ」


「了解、代理艦長」


アイダの脇に近づき、携帯シールドケースを開けるのを手伝った。アイダは切断機の出力を最低まで落とし、手術刀を扱うように氷面に沿って細い切れ目を入れた。低重力の中で、削れた氷の欠片は落下せず、ゆっくりと漂い散って、微光を反射した。誰かが砕いた星屑を私たちの周りに撒いたようだった。亀裂が深くなるにつれ、下の青白いものの端がついに露出してきた。


普通の鉱石ではなかった。


氷に閉じ込められた発光した樹枝状結晶の一群に近い。半透明で、稜線は繊細で、内部には極めて薄い光が流れていた。生き物ではないのに、多くの生き物よりも呼吸しているように見えた。外気に触れた瞬間、表面に極薄の白い霧が浮かび上がり、ヘルメット内の警告バーが軽く一度鳴った。


「エネルギー変動、上昇」蘭が言った。


「まだ安全ライン内」アイダが言った。


「その言葉、最近聞くたびに安心できなくなってきた」ロイが言った。


「黙れ、笑いそうになる」私は言った。


アイダは絶縁クリップで小さな枝晶を一節折り取り、シールドケースに収めた。蓋が閉まった瞬間、あの青い光が氷層の底を一瞬走り、まるで細い電光が深部へ泳いでいくようだった。氷面全体が、歯の神経に触るような、かすかなカチッという音を立てた。


全員が止まった。


「……今のは何?」ジェスが訊いた。


「嫌いな音だ」私は言った。


アイダは分析器を見つめ、初めて眉間に明確な皺を寄せた。


「局所構造が緩んだ。この一帯の下に空洞層があるかもしれない」


私は即断した。


「ここでの切断を中止。第二陣の回収は右前方の平坦帯へ移動、この晶区を避ける。蘭、異常ポイントをマークしろ。アイダ、サンプルを確保しろ。ロイ、第一袋を先に艇倉に固定しろ。ジェス――」


「ここにいる」


「その『特ダネを見つけた』みたいな顔をしまって、地面を見ろ」


「了解、長官。本当に副長みたいになってきたね」


「水みたいになりたい方が先だ」


第二採集ポイントへ移動した時、氷原の空気は十分前とはまったく変わっていた。


空の色が変わったわけでも、地形が突然牙を生やしたわけでもない。ただ、私たちは今、この白すぎる世界の足元に、迂闊に触れてはいけないものが潜んでいるかもしれないと知ってしまった。


一度知ってしまうと、小さな亀裂を全部予告として読み、氷層のかすかな軋みを全部カウントダウンとして聞いてしまう。


第二地点は表面上ずっと安全に見えた。氷層は厚く、エコーは均一で、下に氷晶の反応もなく、近くに明確な空洞信号もない。


アイダと蘭がデータを再確認してから頷いたので、私はようやく全員に第二ラウンドの作業を始めるよう指示した。


今回は分担がよりスムーズだった。


アイダが切断ラインを押さえ、私とジェスが端を固定し、蘭がデータと地盤構造を監視し、ロイは外側で回収索を引きながら搬送の準備をした。


低重力は大型の氷塊の移動を比較的楽にしてくれるが、「失敗しやすい」ことも一緒に拡大した。私たちは、薄すぎるガラスのテーブルの上で、滑りやすい棺桶を運んでいるようなものだった。省力ではあるが、いつでも何かが起きそうな雰囲気を常に帯びていた。


ロイは今回、明らかに学習していた。動作がずっと抑制されていて、むしろ抑制しすぎていて、星を踏み潰さないように気をつけているような慎重さだった。


「ロイ、今のあんた、食堂の最後のデザートを盗もうとしてる人みたいだ」思わず言った。


「今これに返事したら、次に落ちるのは俺ですよ」ロイは歯を食いしばって言った。


「よし、ようやく危機感が芽生えてきた」


「成長です」ジェスが言った。


「あんたたち二人に長期間いじめられた結果の、生存本能です」ロイが言った。


言い返そうとした瞬間、ヘルメット内側に黄色の警告が一列跳び出した。総警報ではなく、局所構造の応力変化だ。ほぼ同時に、蘭の声が圧し低まった。


「地表荷重が再分配されている。左前方――いや、真下で亀裂層が延伸中だ」


胸の中で何かが沈んだ。すぐに顔を上げた。


「全員止まれ――」


言い終わる前に、足元の氷面が代わりに文を完成させた。


カチッ。


爆発のような音ではない。大きくさえない。だがこれほど静かすぎる場所では、あの細かな破裂音は砲撃より背筋が寒くなる。第二陣の回収氷の端が持ち上げられた瞬間、支点が変わり、表面の応力が一気に崩れた。氷面にまず細い白い線が現れ、それから見えない筆で素早く引かれたように、ざっと両側へ裂けていった。


「下がれ!」私は怒鳴った。


低重力下でのすべての後退には、少し滑稽な浮遊感が伴うが、今回は誰も笑わなかった。ジェスはすばやく右へ蹴って跳んだ。アイダはほぼその場で切断機を投げ捨てながら、同時に後ろへ重心を開いた。私は横の固定パイルを掴み、自分とロープを一緒に釘付けにした。だが、ロイの位置が一番まずかった――ロイはまだ回収索を引いていて、足元のその氷面がまさに最初に崩れた一角だった。


次の瞬間、ロイは緩んだ氷板ごと亀裂の方へ滑っていった。


その一瞬、時間が本当に少し伸びたように感じた。


ロイが本能的に回収索を手放そうとするが、手袋がバックルに引っかかっているのが見えた。亀裂の底が単純な影ではなく、胃が冷えるほど深い黒であることも見えた。蘭が発射器を持ち上げているが、まだ半拍角度が合っていないことも見えた。ジェスが前へ飛び込もうとしているが、低重力のせいで高く浮きすぎていることも見えた。


全員がそれぞれ動けば、次の瞬間に書くことになるのは、非常に書きにくい事故報告書だ。


だから私は待たず、直接命令を叫んだ。


「ロイ、氷を捨てろ! 索を切れ!」


「引っかかってる――」


「アイダ、ロイの左側のバックルを切れ! 蘭、右後方に固定パイルを撃て、横引きの牽引を作れ! ジェス、飛び込むな、短噴口で背後へ回って右へ押せ! 全員、亀裂の縁に近づくな!」


命令を叫びながら、私はすでに安全索を腰に留め、もう一端を固定パイルに巻きつけて、ロイの方へ蹴り出していた。


低重力は本当に嫌なものだ。飛び出す瞬間は映画の千秋一髪の救出シーンみたいで格好いいと思うが、実際には、見苦しい姿勢で半拍遅れて空中を漂いながら、方向が外れないよう祈るしかない。英雄のオーラは〇・〇四Gで自動的に二割引きになり、残りの二割は運次第だ。


幸い、今回は運が味方してくれた。

「とても面白い」★四つか五つを押してね!


「普通かなぁ?」★三つを押してね!


「あまりかな?」★一つか二つを押してね!

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