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臨界の星穹  作者: Mr.佐藤焫焵
臨界の星穹:ロスト
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112. 給水問題 3

この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。

アイダと水処理区から艦橋へ戻る道すがら、雪風の艦内には、ある特別な空気が漂い始めていた。


パニックではない。


士気が低下しているわけでもない。


どちらかといえば——具体的にどれだけひどいかはまだ分かっていないが、本能的に、これから数日間は体裁よく生きることさえ事前申請が必要になると感じている、そういう空気だ。


この空気は、実に雪風らしかった。


この艦に乗っている人間の大半は、馬鹿ではない。本当の馬鹿はたいてい艦に乗り込む前に篩い落とされる。生き残った人間は、損管兵が走る方向、医療班が担架を何台運んだか、給湯の出水量が老人の良心のように急に減ったかどうかだけで、いい時代が終わったと察知できる。


艦橋のドアを押し開けると、ジェスが「三分だけ代演したつもりが、三十年分の宮廷ドラマを演じさせられた」という顔で副制御席に座っていた。私が戻ってきたのを見た瞬間、肉眼で分かるほど、全身から半分の力が抜けた。


「やっと戻ってきた」ジェスが小声で言った。「さっき補給区にこっぴどく怒鳴られるところだった」


「よかった」私は言った。「つまり、私の通告はまだ正式に出ていないということだ」


ジェスが一瞬固まった。


「……さっき俺に読ませたやつ、正式じゃなかったの?」


「あれは予防的死亡通知だ」艦長席に戻り、水処理の報告書をメインスクリーン前方へ引き出した。「正式なのはこれから」


ジェスが私を一瞥した。その目には、同情と他人の不幸を喜ぶ気持ちと、「自分じゃなくてよかった」という安堵が混ざっていた。これは正常だ。本当の友人というのは、あなたが不運な時に水を渡し、支えてくれる。そして心の中では、宇宙が今日選んだのが自分じゃなかったことに静かに感謝している。


全艦放送に繋いだ。


今度は、跳躍事故から這い出てきたばかりの時の「艦を安定させる」通告ではない。私への好感度を下げやすい、新しい方針の発布だ。


軽く咳払いをした。


「全艦に告ぐ。こちら代理指揮、星野 シモ中尉」


艦橋が静まり返った。


この静けさは奇妙だ。艦橋には私しかいないのに、全艦放送をかけるたびに、艦の全員が一斉に顔を上げる感覚がある。見えないと分かっていても、声のどこかの音節が先に折れないよう、無意識に背筋を伸ばしてしまう。


「本艦の水循環システムは、奇点跳躍後の損傷により、複数の浄化モジュールが現在オフラインとなっている。ただいまより、全艦は第一回用水配給に入る」


一拍置き、その言葉が通気管と隔壁を伝って、全員の耳に届く時間を作った。


「内容は以下の通り——飲料水は定量配布、医療と機関を優先とする。全艦、入浴および不要な清潔用水の使用を停止。洗面は乾式消毒に切り替える。厨房は即時、低水消費口糧モードへ移行。無許可での給湯接続、循環バルブの無断操作、およびアイダ少尉が見た瞬間に誰かを殺したくなるような行為は、一律違反とする」


アイダが顔を上げて私を見た。


「私はそんなに簡単に人を殺したくなるわけじゃない」


「失礼」放送ボタンを押したまま、表情を変えずに補足した。「訂正する。アイダ少尉がより強く人を殺したくなるような行為だ」


ジェスが噴き出しかけ、急いで口を塞いだ。


構わず続けた。


「これは長期措置ではない。ただし、水処理が回復するまでは全員が我慢しなければならない。補給班は後ほど各区画に配給表を配布する。入浴できないことについて重大な意見のある者は、列に並んで報告書を書いてくれ。活路を見つけた後、私が直接受け取る」


放送ボタンを離した。


そして雪風は、群居生物としての人間の素晴らしい一面を、即座に披露し始めた。


まず、二秒間の死の沈黙。


続いて、艦内チャンネルが棒で蜂の巣を突かれたように炸裂した。


補給チャンネルが先に爆発した。


「入浴停止ってどういうことですか!?」「三号区画、今ちょうど洗髪中の人がいます!」「まだ洗ってる奴は今すぐ止めろ! あれは頭じゃない、艦全体の生存率だ!」


ジェスは笑いを堪えながら、ローカルチャンネルへ音声を振り分け、圧するかと目で訊いてきた。


「まだいい」私は言った。


こういう時は、少し叫ばせた方が健康的だ。本当に問題なのは不満ではなく、全員が突然黙り込むことだ——それはたいてい、誰かがもっと厄介なことをこっそりやり始めた合図だからだ。


果たして、第二波はすぐに来た。


厨房から、失恋通知を受け取ったばかりのような声が聞こえた。


「スープはどうするんですか? 今日は海藻の濃厚スープの日だったんですけど!」


明らかに年上の炊事下士が即座に怒鳴り返した。


「どうするもこうするも、今日からそれはスープじゃない。塩気のある温水だ! 鍋は置いておけ、水は回収槽に戻せ、海藻は引き上げて明日もう一回煮ろ!」


……上出来だ。


これが雪風の日常感だ。


「同じ船に乗っているから団結しよう」ではなく、「死ぬかもしれないから、先に海藻を引き上げて再利用しよう」だ。


蘭はこれを聞いて、通信パネルの上で指を一瞬止め、口元がかすかに動いた。


「海藻を明日また煮るのは、戦時の料理哲学と言えるの?」


「資源の最大化と言う」アイダは顔も上げずに言った。「ついでに、人生への嫌悪感も最大化する」


第三波は、基層居住区からだった。


不満は直接的で、極めて人間らしかった。


「十六時間損管をやって、顔も洗えないのか?」「駄目だ」「じゃあ靴下だけでも洗わせてくれ!」「純水で靴下を洗ったら、一週間同じ靴下で当直させる」


最後に返したのは、竹中曹長だった。


通信の向こうが瞬時に静まり返った。


心の中で、その不運な兵士に半秒だけ黙祷を捧げた。こんな状況で問題を「靴下」まで具体化できる精神力は、ある種の文明終末への独特な理解と言えるかもしれない。


だが、全員が文句を言っているわけではなかった。


協力の声も、すぐに上がり始めた。


機関部が最初に返信してきた。


「機関部、了解した。用水は医療と冷却を優先する。給湯管に手を出す奴がいたら、俺が直接補助ボイラーに叩き込む」


その「俺」は、言うまでもなく、ヴィクトルだ。


彼の声が一度流れれば、艦全体が本能的に信じるはずだ——少なくとも、エンジンと暴力的な脅しの二点においては、機関部はまだ生きている。


医療区からも間もなく返信が来た。


「医療班、清潔処置の手順を調整済み。傷病者の表面処置は節水モードへ切り替えた。全艦に伝える——風呂に入らなくても死なない。傷口が感染すれば死ぬ。限られた水を、本当に血を流している人のために残してくれ」


見事な一言だった。


冷たく、正確で、医療班特有の職業的な傲慢さがある。非常にいい。こういう時に各部署が先を争って「うちが一番大変だ」と訴え始めるのが一番まずい。誰かが最初に「状況は最悪だが、私たちはまだ動ける」という姿勢を見せれば、他の部署もすぐには最悪を演じにくくなる。


艙内廊下の公共チャンネルに切り替えると、何人かの兵士が封鎖板を運びながら、ぼそぼそと話しているのが聞こえた。


「CIC、爆発でもあったみたいになってるって聞いたけど」「聞いたじゃなくて、本当にそうなってる」「Dは生きてる?」「生きてる。椅子に挟まって、警報より大きい声で叫んでた」「それなら大丈夫だ、声が出るなら口はある」


別の声が割り込んだ。おそらく、動力装甲で救出に来た警備員の一人だ。


「ハーヴィーも生きてる」「本当に? あの姿勢、もう祖先に挨拶しに行ったかと思った」「いや、医官によれば、顔が体の代わりに衝撃のほとんどを受け止めただけだそうだ」


艦橋が一瞬、静まった。


それからジェスが端末の後ろに体を縮め、肩が明らかに震え始めた。


「笑いたければ笑っていい」私は言った。


「我慢してる」ジェスが何とも言えない鼻声を出した。「でも『顔が体の代わりに衝撃を受け止めた』って……」


私も笑いたかった。


だがこの椅子に座っている以上、「全艦の生存に責任を持つ人間」という表の顔を保たなければならない。艦内コントの観客のように笑うわけにはいかない。


だから無理やり注意を仕事へ引き戻した。


「アイダ、CICの封鎖は終わった?」


アイダが艙内の映像を切り替えて見せた。


CICの入口はすでに臨時封鎖テープと権限ロックで塞がれ、損管兵二人が代替情報端末を外へ引き出していた。中にはまだ固定中の座席の残骸と歪んだコントロールフレームが見えた。営業停止を宣告された事故現場のようだった。


「封鎖完了」アイダは言った。「データラインは艦橋の副制御とセンサーバックアップ席に引き直した。CICがない分、いろいろと一拍遅れるが、少なくとも誰かが吐きながら仕事をする必要はなくなった」


「人道的な配慮に感謝する」


「吐瀉物が機器に入るのを防ぎたかっただけだ」


……そうだ。


これが雪風だ。人情味があるように見えるすべての行動は、最終的にはより実務的で、よりロマンチックでない理由に分解される。奇妙なことに、全員がそれほどロマンチックでないからこそ、この艦は妙に誠実に見える。


その時、補給チャンネルがまた一回跳ねた。


非常に若い声が、艦全体に殺されないように慎重に踏み出すような口調で言った。


「あの……配給の後、コーヒーは水に含まれますか?」


今度は艦橋でロイまで顔を両手で覆った。


蘭が冷たく口を開いた。「配給から外してほしいということなら、答えはノーだ」


向こうは少し止まって、明らかにまだ諦めていなかった。


「じゃあ濃縮コーヒー液を半分の水で——」


「駄目だ」私が直接チャンネルに割り込んだ。「二倍の水を使って一倍の覚醒を買おうとするなら、三日間の不覚醒で反省してもらう」


向こうが即座に黙った。


ジェスがついに笑い声を漏らした。


その笑いが、何か微妙な連鎖反応を起こした。全員が笑ったわけではない。だが、雪風の、今にも裂けそうに張り詰めていた表面が、ほんの少しだけ緩んだ。不満はまだある。疲労もまだある。多くの者は、さっきの跳躍事故からまだ完全には戻っていない。それでも、普段通りに互いへ言い返し始めた。


それで十分だ。


軍艦の上では、「日常への回復」とは、温かい朝の光でも、熱いコーヒーでも、清潔なシーツでもない。


誰かが配給に文句を言いながら、ちゃんと従っている。誰かが「こんな制度は最悪だ」と口では言いながら、その制度を少しだけましにする何かをすでに修理し始めている。誰かが泣き終えて、今は他人がコーヒーは水かと訊いたことを笑う余裕がある。


艦橋に残った、まだ生きているいくつかの顔を見渡しながら、雪風の最大の強みは火力でも、航速でも、人間を宇宙の辺境へ叩き出す骨董エンジンでもないかもしれないと思った。


半壊した人間たちを、日常へ無理やり組み直す力、それが一番の強みかもしれない。


ただし、その日常は、すぐに次の問題を迎えることになる。


氷封惑星のデータをメインスクリーンへ戻した。


青白い、死んだ星が、艦橋の前方で静かに輝いている。冷たそうだが、少なくとも交渉を吹っかけてこない石ころのように見えた。


「各員、文句は生き延びた後でゆっくり回顧録に書いてくれ」肘掛けを一度叩き、艦橋の注意を引き戻した。「配給は第一歩だ。第二歩は、水を探しに行くことだ」


ロイが顔を上げた。


蘭の視線も戻ってきた。


アカリはセンサー図をその氷封惑星に重ね、アイダはすでに採集要件の表を開いていた。


全艦がほんの少し日常を取り戻したと思ったら、私がその手で現実へ引き戻した。


上出来だ。


これは私がますます、人に嫌われる指揮官らしくなってきた証拠だ。


指揮官の最も嫌われる、そして最も価値のある機能の一つとは——


全員が、ようやく悪い日々の中で息継ぎの仕方を覚えた瞬間に、こう告げることだ。


すまない、悪い日々はまだ終わっていない。

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