107. 緊急招集 1
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
濡れた服を乾燥ラックに掛け、ドライヤーをしまい、浴室の床の水気をあらかた拭き終えると、この部屋はついに、さらに厄介な状態へと移行した。
惨めだからじゃない。
散らかっているからでもない。
ただ——あまりにも静かすぎた。
その静けさのせいで、このラブホテルのあらゆる備品がやけに存在感を放ち始めていた。
窓のない壁。
無駄にでかいベッド。
電源の落ちた立体投影テレビ。
妙に小さいソファとテーブル。
そして、どう嗅いでも普通のホテルにあるはずのない、あの甘ったるい芳香。
私はベッドの脇に立ち、部屋の中央に鎮座する不道徳なほど巨大なベッドを見つめながら、あることだけを考えていた。
このベッドは、まるでこの部屋の太陽だ。
他の家具も、私たち二人も、その引力で無理やり周囲を回らされている惑星にすぎない。
「いつまで見てるつもり?」
真紀の声が横から聞こえた。
振り返ると、彼女はすでに端末をテーブルに置き、上着を掛け、遊園地から持ち帰った袋まで几帳面に分類して並べ終えていた。あの無駄に自信満々な不細工なプニプニネズミのストラップは、今日一日の馬鹿げた出来事の戦利品のように、テーブルの角に吊るされている。
私は軽く咳払いをした。
「このベッドが連邦建築法に違反してないか確認してただけ」
「見たって分からないでしょ」
「少なくとも、視線で非難することはできる」
「ベッドは反省しないわよ」
「どうかな。これまでに人間の堕落を散々見てきたかもしれないし」
真紀はベッドをちらりと見た。
「なら、今日はだいぶ拍子抜けするでしょうね」
私は一瞬呆気にとられ、半拍遅れて彼女の言葉の意味に気づいた。
「……真紀、あんた最近、発言が危なくなってきてる」
「事実を言っただけ」
まただ。
この女の最も恐ろしいところはそこだ——からかっているような顔は一切しないくせに、言葉はいつも、私が一番直視したくない場所へ正確に直撃してくる。
結局、私たちは横になった。
「ベッドがでかい」なんていう、分かりきっていて何の役にも立たない無駄話はもうしなかった。布団を引き上げると、空調の暖気とシーツの清潔な匂いが一緒に包み込んでくる。表面上は、目を閉じさえすれば普通に眠りにつける夜にしか見えない。
残念ながら、それは表面上だけだ。
私は天井を向いて三分仰向けになり、寝返りを打った。
さらに二分後、もう一度寝返りを打つ。
しばらくして、隣から真紀の平坦な声が聞こえた。
「シモ」
「なに?」
「もう一回寝返り打ったら、ベッドが本当に反省し始めるかもね」
私はピタリと動きを止めた。
「寝てなかったの?」
「どう思う?」
「あんたみたいな人間は、横になった瞬間スタンバイモードに入るのかと思ってた」
「私は機械じゃない」
「でも、普段は本当にそっくり」
真紀はすぐには言い返さなかった。
部屋は暗く、枕元の小さなランプがわずかに黄色い光の縁を残し、彼女の輪郭を柔らかく沈めている。横向きに寝た彼女の髪は枕に散らばり、ルームウェアの襟元は姿勢のせいで少しだけ緩んでいた。普段、艦橋で見せる鋼板のように冷たい姿とはまるで違う。
不公平だ。
昼間であんなに厄介なのに。
夜になってまで、こんな顔をするなんて。
「また何を見てるの?」と彼女が訊く。
「見てるって、なんで分かるの?」
「あんたが静かになる時は、大抵頭の中が暴走し始めてる時だから」
私は眉をひそめた。
「それ、プライバシーの侵害にあたる観察じゃない?」
「効率のいい判読、ね」
「嫌味を専門スキルみたいに言うのが本当に上手いよね、あんた」
真紀は軽く「うん」と返した。
その「うん」は、明らかに肯定だった。
彼女を見つめていると、妙に胸が詰まった。不快なのではない。さっきようやく押さえ込んだはずのものが、彼女のその過剰なほど落ち着いた態度のせいで、少しずつ引きずり出されていくような感覚だった。
さっきバスルームの外で、あの瞬間は確かに——
私はすぐに思考を断ち切った。
これ以上考えたら、今夜は本当に一睡もできなくなる。
なのに、よりによって真紀が先に口を開いた。
「手、貸して」
私は呆気にとられた。
「は?」
「眠れないんでしょ?」
「その二つの因果関係、今その場ででっち上げたでしょ」
「かもね」と彼女は言った。「でも、とりあえず試してみて」
私は二秒沈黙し、結局手を伸ばした。
真紀はごく自然にそれを握った。
彼女の掌は温かく、指を曲げる動作に余計な力は入っていないのに、ひどく安定していた。変に色気付いた動作ではなく、むしろ当然のようにシンプルだ。だが、だからこそ、心拍が言うことを聞かなくなる。
「これで、無駄に寝返り打たなくて済む」と彼女が言った。
「手をつなぐことを、危険物を固定するみたいに言わないで」
「ある意味、そうだから」
「頭おかしいんじゃないの」
「今のあんたの方が、それっぽいけど」
手を引っ込めようとしたが、真紀はそのタイミングでこちらへ少しだけ身を寄せてきた。
本当に少しだけ。
だが、ベッドの上には誤魔化せる距離など元々残っていない。彼女が寄せたことで、「すべて正常だ」と無理やり自分を納得させていたラインが、一気に危険水域まで踏み躙られた。
「真紀」
「ん?」
「こんなんじゃ、余計眠れない」
「知ってる」
あまりにもあっさりと認めるものだから、どこからキレていいのか分からなくなった。
しかも、わざと飛びついてくるような接近ではない。
彼女はただ安定して、静かにそこで止まっている。これ以上近ければ異常だし、退けば不自然になる、そんな絶妙な位置。まるで、私自身が「自分も彼女と同じくらい冷静じゃない」と認めるのを待っているかのようだった。
「さっきは、あんなに強気だったのに?」彼女が低い声で言った。
喉の奥が締まった。
「今だって強気になれる」
「そう?」
「試してみる?」
真紀が私を見た。
至近距離でも、彼女の瞳は静かだった。だが、光が暗すぎるせいか、それとも私の頭が本当におかしくなっているせいか、その静けさの中に、すでに別のものが混ざり始めているような気がした。
「シモ」彼女は声を落とした。「あんた、強がる時ほど表情に出るから」
「……強がってない」
「出てる」
「私は——」
言い終わる前に、真紀のもう片方の手が上がり、指先が私の頬に軽く触れた。乾かしきれていなかった髪の一房を、そっと払い除ける。
ほんの一瞬。
だが、その一瞬があまりにも近く、あまりにも静かすぎた。
私は一気に言葉を失った。
「ほら」彼女は平坦に言った。「また静かになった」
本当に、首を絞めてやりたかった。
あるいは、キスしてやりたかった。
ある意味、その二つに大した違いはないのかもしれない。
結局、次の瞬間、私は本当に少しだけ前へ出ていた。
大きな動きじゃない。
彼女に退路を断たれた末の、意地を張った反撃に近い。
真紀は避けなかった。
ただ私を見つめ、呼吸すら途切れさせず、私の額が本当に触れそうになるまで近づいた時、まつ毛だけをかすかに震わせた。
わずかな動き。
でも、私には見えた。
その瞬間、ふと悟った——
彼女も、完全に平気なわけじゃない。
ただ、私より隠すのが上手いだけだ。
その発見はひどく腹立たしく、そして卑怯なことに、少しだけ私を安心させた。
私は低い声で口を開いた。
「今退いても、笑ったりしないよ」
真紀は私を見て、半秒ほど置いてから、ゆっくりと言った。
「そっちこそ、自分のこと笑わないでよ」
……本当に性格が悪い。
その言葉が落ちてきた瞬間、私はほとんど本能的に、前へ出て彼女に触れた。
ほんの短い一瞬。
唇と唇が触れる。取り繕う暇もなく、退路も用意していない動作。昼間のような探り合いでも、完全に思考が追いつかない衝動でもない。どちらかといえば——彼女のその態度に耐えきれず、これ以上受動的にならないために何かせずにはいられなかった、という感じだ。
真紀は避けなかった。
ただ静かにそれを受け止め、私がすぐに離れると思っていたタイミングで、かすかに追ってきた。
ほんの少しだけ。
だが、その少しが、一番堪えた。
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