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臨界の星穹  作者: Mr.佐藤焫焵
臨界の星穹:士官学校
338/651

107. 緊急招集 1

この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。

濡れた服を乾燥ラックに掛け、ドライヤーをしまい、浴室の床の水気をあらかた拭き終えると、この部屋はついに、さらに厄介な状態へと移行した。


惨めだからじゃない。


散らかっているからでもない。


ただ——あまりにも静かすぎた。


その静けさのせいで、このラブホテルのあらゆる備品がやけに存在感を放ち始めていた。


窓のない壁。


無駄にでかいベッド。


電源の落ちた立体投影テレビ。


妙に小さいソファとテーブル。


そして、どう嗅いでも普通のホテルにあるはずのない、あの甘ったるい芳香。


私はベッドの脇に立ち、部屋の中央に鎮座する不道徳なほど巨大なベッドを見つめながら、あることだけを考えていた。


このベッドは、まるでこの部屋の太陽だ。


他の家具も、私たち二人も、その引力で無理やり周囲を回らされている惑星にすぎない。


「いつまで見てるつもり?」


真紀の声が横から聞こえた。


振り返ると、彼女はすでに端末をテーブルに置き、上着を掛け、遊園地から持ち帰った袋まで几帳面に分類して並べ終えていた。あの無駄に自信満々な不細工なプニプニネズミのストラップは、今日一日の馬鹿げた出来事の戦利品のように、テーブルの角に吊るされている。


私は軽く咳払いをした。


「このベッドが連邦建築法に違反してないか確認してただけ」


「見たって分からないでしょ」


「少なくとも、視線で非難することはできる」


「ベッドは反省しないわよ」


「どうかな。これまでに人間の堕落を散々見てきたかもしれないし」


真紀はベッドをちらりと見た。


「なら、今日はだいぶ拍子抜けするでしょうね」


私は一瞬呆気にとられ、半拍遅れて彼女の言葉の意味に気づいた。


「……真紀、あんた最近、発言が危なくなってきてる」


「事実を言っただけ」


まただ。


この女の最も恐ろしいところはそこだ——からかっているような顔は一切しないくせに、言葉はいつも、私が一番直視したくない場所へ正確に直撃してくる。


結局、私たちは横になった。


「ベッドがでかい」なんていう、分かりきっていて何の役にも立たない無駄話はもうしなかった。布団を引き上げると、空調の暖気とシーツの清潔な匂いが一緒に包み込んでくる。表面上は、目を閉じさえすれば普通に眠りにつける夜にしか見えない。


残念ながら、それは表面上だけだ。


私は天井を向いて三分仰向けになり、寝返りを打った。


さらに二分後、もう一度寝返りを打つ。


しばらくして、隣から真紀の平坦な声が聞こえた。


「シモ」


「なに?」


「もう一回寝返り打ったら、ベッドが本当に反省し始めるかもね」


私はピタリと動きを止めた。


「寝てなかったの?」


「どう思う?」


「あんたみたいな人間は、横になった瞬間スタンバイモードに入るのかと思ってた」


「私は機械じゃない」


「でも、普段は本当にそっくり」


真紀はすぐには言い返さなかった。


部屋は暗く、枕元の小さなランプがわずかに黄色い光の縁を残し、彼女の輪郭を柔らかく沈めている。横向きに寝た彼女の髪は枕に散らばり、ルームウェアの襟元は姿勢のせいで少しだけ緩んでいた。普段、艦橋で見せる鋼板のように冷たい姿とはまるで違う。


不公平だ。


昼間であんなに厄介なのに。


夜になってまで、こんな顔をするなんて。


「また何を見てるの?」と彼女が訊く。


「見てるって、なんで分かるの?」


「あんたが静かになる時は、大抵頭の中が暴走し始めてる時だから」


私は眉をひそめた。


「それ、プライバシーの侵害にあたる観察じゃない?」


「効率のいい判読、ね」


「嫌味を専門スキルみたいに言うのが本当に上手いよね、あんた」


真紀は軽く「うん」と返した。


その「うん」は、明らかに肯定だった。


彼女を見つめていると、妙に胸が詰まった。不快なのではない。さっきようやく押さえ込んだはずのものが、彼女のその過剰なほど落ち着いた態度のせいで、少しずつ引きずり出されていくような感覚だった。


さっきバスルームの外で、あの瞬間は確かに——


私はすぐに思考を断ち切った。


これ以上考えたら、今夜は本当に一睡もできなくなる。


なのに、よりによって真紀が先に口を開いた。


「手、貸して」


私は呆気にとられた。


「は?」


「眠れないんでしょ?」


「その二つの因果関係、今その場ででっち上げたでしょ」


「かもね」と彼女は言った。「でも、とりあえず試してみて」


私は二秒沈黙し、結局手を伸ばした。


真紀はごく自然にそれを握った。


彼女の掌は温かく、指を曲げる動作に余計な力は入っていないのに、ひどく安定していた。変に色気付いた動作ではなく、むしろ当然のようにシンプルだ。だが、だからこそ、心拍が言うことを聞かなくなる。


「これで、無駄に寝返り打たなくて済む」と彼女が言った。


「手をつなぐことを、危険物を固定するみたいに言わないで」


「ある意味、そうだから」


「頭おかしいんじゃないの」


「今のあんたの方が、それっぽいけど」


手を引っ込めようとしたが、真紀はそのタイミングでこちらへ少しだけ身を寄せてきた。


本当に少しだけ。


だが、ベッドの上には誤魔化せる距離など元々残っていない。彼女が寄せたことで、「すべて正常だ」と無理やり自分を納得させていたラインが、一気に危険水域まで踏み躙られた。


「真紀」


「ん?」


「こんなんじゃ、余計眠れない」


「知ってる」


あまりにもあっさりと認めるものだから、どこからキレていいのか分からなくなった。


しかも、わざと飛びついてくるような接近ではない。


彼女はただ安定して、静かにそこで止まっている。これ以上近ければ異常だし、退けば不自然になる、そんな絶妙な位置。まるで、私自身が「自分も彼女と同じくらい冷静じゃない」と認めるのを待っているかのようだった。


「さっきは、あんなに強気だったのに?」彼女が低い声で言った。


喉の奥が締まった。


「今だって強気になれる」


「そう?」


「試してみる?」


真紀が私を見た。


至近距離でも、彼女の瞳は静かだった。だが、光が暗すぎるせいか、それとも私の頭が本当におかしくなっているせいか、その静けさの中に、すでに別のものが混ざり始めているような気がした。


「シモ」彼女は声を落とした。「あんた、強がる時ほど表情に出るから」


「……強がってない」


「出てる」


「私は——」


言い終わる前に、真紀のもう片方の手が上がり、指先が私の頬に軽く触れた。乾かしきれていなかった髪の一房を、そっと払い除ける。


ほんの一瞬。


だが、その一瞬があまりにも近く、あまりにも静かすぎた。


私は一気に言葉を失った。


「ほら」彼女は平坦に言った。「また静かになった」


本当に、首を絞めてやりたかった。


あるいは、キスしてやりたかった。


ある意味、その二つに大した違いはないのかもしれない。


結局、次の瞬間、私は本当に少しだけ前へ出ていた。


大きな動きじゃない。


彼女に退路を断たれた末の、意地を張った反撃に近い。


真紀は避けなかった。


ただ私を見つめ、呼吸すら途切れさせず、私の額が本当に触れそうになるまで近づいた時、まつ毛だけをかすかに震わせた。


わずかな動き。


でも、私には見えた。


その瞬間、ふと悟った——


彼女も、完全に平気なわけじゃない。


ただ、私より隠すのが上手いだけだ。


その発見はひどく腹立たしく、そして卑怯なことに、少しだけ私を安心させた。


私は低い声で口を開いた。


「今退いても、笑ったりしないよ」


真紀は私を見て、半秒ほど置いてから、ゆっくりと言った。


「そっちこそ、自分のこと笑わないでよ」


……本当に性格が悪い。


その言葉が落ちてきた瞬間、私はほとんど本能的に、前へ出て彼女に触れた。


ほんの短い一瞬。


唇と唇が触れる。取り繕う暇もなく、退路も用意していない動作。昼間のような探り合いでも、完全に思考が追いつかない衝動でもない。どちらかといえば——彼女のその態度に耐えきれず、これ以上受動的にならないために何かせずにはいられなかった、という感じだ。


真紀は避けなかった。


ただ静かにそれを受け止め、私がすぐに離れると思っていたタイミングで、かすかに追ってきた。


ほんの少しだけ。


だが、その少しが、一番堪えた。

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「普通かなぁ?」★三つを押してね!


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