106. 雨とラブホテル 1
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
雨は、もはや雨と呼べないほどだった。
天気担当の部署がついに我慢の限界を超え、積年の恨みと職場のストレスを丸ごとバケツごと地面にぶちまけたような、そういう土砂降りだった。
私と真紀が駅から走り込んできたとき、靴も靴下もとっくにずぶ濡れで、スカートの裾とジャケットの端は水の中から引き上げたばかりのようだった。
手にぶら下げた袋は雨に打たれてバサバサと音を立て、昨日百貨店で文明社会に再包装してもらったばかりの私の姿は、見る影もなかった。
ドアが閉まった瞬間、外の暴雨の音が半分に遮断された。
残りの半分が、ガラス扉と軒先を通して低く室内に圧しかかり、まだ遠ざかっていない何かの脅威のように、空気の中に沈んでいた。
そして内側の世界は――
正直に言えば、外の暴雨より警戒すべきものがあった。
私は玄関マットの上に立ち、髪からまだ水が滴り落ちる中、目だけで大廳全体をひと通り確認した。
ピンク色の間接照明。 過剰に柔らかいベルベットのソファ。 壁に掛かった、構図の意図が疑わしい抽象画。
カウンターの横には、ガラスのディスプレイケースがあり、中には、普通のビジネスホテルでは絶対に見かけないような、大人が黙って了解し合う種類の液体が並んでいた。さらに横には、控えめのつもりなのだろうが、どう見ても控えめに失敗している料金表があった――
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まぶたが激しく震えた。
よろしい。 大変よろしい。 ここは普通のホテルではない。 「怪しい」という言葉すら上品すぎる。
「ここはラブホテルです」という文字をネオンサインで顔面に溶接し、さらに「どうせ来たんだから純情ぶるな」という悪意まで付属しているような場所だ。
私はゆっくりと真紀の方を向いた。
彼女もその料金表を見ていた。
表情は変わらなかった。
これが彼女の最も恐ろしいところだ。 普通の人間なら、こういう状況では多少なりとも感情が揺れる。驚きでも、気まずさでも、せめて「あ、場所を間違えた」という最低限の人間らしい反応くらいは見せるはずだ。
だが真紀はなかった。
彼女はただ平静に私の隣に立ち、全身が半分濡れたまま、手にはあのプニプニマウスのストラップと買い物袋を提げ、犯罪現場に迷い込んだが冷静に非常口を確認し終えた優秀な生還者のような顔をしていた。
カウンターの奥から、スタッフが顔を上げた。
三十代前半に見える女性で、メイクは完璧で、口紅の色は攻撃的なほど鮮やかで、笑顔にはサービス業で長年あらゆる場面を見続けてきた者だけが持てる、慈悲と好奇心が混在する表情があった。
彼女の視線が私と真紀の上を滑った。
濡れた髪から。 同じくらい惨めな肩の線へ。 手の中の買い物袋へ。 あのプニプニマウスのストラップへ。 そして、明らかに一緒に雨宿りに飛び込んできた、二人の距離感へ。
一秒だった。
彼女の目が、「わかりすぎるほどわかった」という色に変わった。
「お二人、休憩ですか? お泊まりですか?」
私は口を開いた。
頭が一瞬、真っ白になった。
この質問は、理論上は単純だ。 だが全身びしょ濡れで、別の女の子と一緒にラブホテルのロビーに立ち、スタッフから「説明しなくても全部わかってますよ」という目で見られているとき、この世界で最も単純な質問でも、瞬時に高難度の尋問に変わる。
「私たちは――」
最初の一音節を発した瞬間、真紀が私より先に口を開いた。
「少し聞いていいですか。雨、すぐに止みそうですか?」
スタッフの笑顔に、さらに内容が加わった。
「今日の天気予報によると、この対流はあと二時間以上続くみたいですよ」
二時間。
私は危うく空に向かって中指を立てそうになった。
外のあの雨の勢いなら、二時間どころか、あと十分もすれば私たちは排水溝を伝って宇宙港まで流されていきそうだった。
スタッフは私たちの足元に徐々に広がっていく小さな水たまりを見て、さらに一言添えた。
「それにお二人、こんなに濡れたままでまた外に出たら、すぐ風邪を引きますよ」
彼女は自然に、親切に、本当にお客様のことを心配しているように言った。
だがなぜか、その「お二人」という言葉が耳に入った瞬間、私と真紀を自動的に一組として梱包するような危険な響きを帯びていた。
私は咳払いをして、状況を少しでも立て直そうとした。
「実は私たちは、ただ――」
「雨に降られたカップルさんですよね。わかります」
スタッフは頷き、迷子の少女に最後の体裁を保たせてあげるような、温かい笑顔で言った。
私は完全に詰まった。
わかります? 何がわかったの? あなたは何もわかっていない。
いや、今はそこが問題ではない。
こめかみが脈打つのを感じた。
「違います、私たちは――」
「初めてでも大丈夫ですよ。最初は少し緊張されるお客様も多いんです」スタッフはそう言いながら、とても気遣わしそうに部屋タイプのアルバムをカウンターの前に押し出した。
「あまり目立ちたくないなら、控えめなタイプのお部屋もございます。防音がしっかりしていて、バスルームも広くて、乾燥設備も完備していますから、今日みたいな天気にはぴったりですよ」
……終わった。
言えば言うほど深みにはまる。 しかも相手の専門的な手腕によって、石炭レベルの深みまで塗り込まれていた。
私は真紀に視線を向け、目で助けを求めた。
彼女は、そのアルバムを本当に開いて読んでいた。
私は窒息しかけた。
「真紀」
歯を食いしばって、小声で名前を呼んだ。
「ん?」
「そんなに真剣に読まないで」
「条件を確認してるの」
「今確認すべきものじゃないでしょ!」
「なんで?」
彼女は顔を上げて私を見た。その表情は平静で、ほとんど無邪気に見えるほどだった。
私は一瞬、どの角度から批判を始めればいいかわからなくなった。
スタッフはすでに非常に心得た様子で案内を始めていた。
「こちらは経典的なダブルルームで、設備はシンプルで価格もお手頃です。こちらは星夜テーマのお部屋で、浴槽が大きめです。こちらの場合……照明の調整ができて、マッサージ機能もついていて――」
「止めてください」
私は即座に声を上げた。
「後半の説明は一切不要です」
スタッフは「あらまあ」という顔をして、笑みをさらに含みのあるものにした。
「若い方は、ストレートですね」
私は違うと言いたかったが、今口を開けば状況がさらに悪化するとわかっていた。
真紀はアルバムを二ページめくり、あるお部屋の説明に視線を止めた。
「乾燥機はありますか?」
「ございますよ」スタッフはすぐに答えた。「バスルームに乾燥モードがあって、衣類乾燥ラックも完備しています。お二人、全身びしょ濡れですから、処理するのがずいぶん楽になりますよ」
真紀は頷いた。
「では、こちらの部屋で」
私は勢いよく首を向けた。
「ちょっと待って、もうそれで決めたの?」
「他に何かある?」
「他に――」
私は「他に普通のホテルを探そう」と言おうとしたが、その言葉が口から出る前に、外でドーンと鈍い雷が鳴り、続いて雨がさらに一段階激しくなり、ガラス扉の外はほとんど白い水のカーテンに変わった。
……よろしい。
天の時も地の利も人の和も、全部揃って私を穴に突き落とそうとしている。
私は目を閉じた。自分の尊厳がこの雨に地面に押しつけられて摩擦されているのを感じた。
「シモ」
真紀が突然呼んだ。
「何?」
「震えてる」
私は一瞬止まり、無意識に目を落とした。
確かに、肩が少し震えていた。
恐怖からではない。 少なくとも、全部ではない。 主な原因は、濡れた服が肌に張り付き、冷房が容赦なく効いていて、体温が失われていく速度が、このホテルが連邦の医療システムの業績アップに貢献しようとしているかのように速いことだった。
私は二秒ほど黙り、乾いた声でしか反論できなかった。
「寒いから」
「だから先に部屋に入るべきよ」
彼女の言い方は、あまりにも合理的だった。 合理的すぎて、抵抗を続けることが自分の肺に喧嘩を売っているのと同じに見えてくる。
スタッフはすでに端末を取り出していた。
「では、こちらのお部屋でよろしいですか? 宿泊と休憩、どちらにされますか?」
この質問には罠が仕掛けられていると私は感じた。 どちらを答えても、自分の社会的な死亡届に法的な証明を加えるようなものだ。
だが真紀は眉一つ動かさなかった。
「宿泊で」
私は危うく自分の唾で窒息しかけた。
「宿泊?」
真紀が私を見た。
「今夜は、どこかに泊まらないといけないでしょ」
「でも――」
「外はまだ雨が降ってる」
「それはわかってる」
「服が濡れてる」
「それもわかってる」
「それに、あなたが昨日、商務ホテルの配管がうるさいって言ってたじゃない」
それを言ったのは昨日の私ではなく、今日の朝のあなたよ。
私は口を開きかけたが、結局、有効な反論が何も出てこなかった。論理的には、彼女は全部正しかったからだ。
……腹が立つ。 正しすぎると、かえって腹が立つ。
スタッフはすでに手際よくチェックインの手続きを済ませていた。「本人確認はお一人分で大丈夫ですよ」という一言を、彼女はひどく自然に言った。まるで毎日、関係をあまり説明したくない様々な人々のために、社会の秩序を守り続けているかのように。
真紀が端末を差し出したとき、私の魂はすでに半分ほど体外に出ていた。
スタッフは部屋のカードキーと番号の書かれた金属のタグを一緒に渡し、実に専門的な笑顔を向けた。
「707。エレベーターは右手になります。大きなバスタオル、追加でお持ちしましょうか?」
私はまだその言葉の危険性を理解する前に、真紀はすでに答えていた。
「お願いします」
スタッフは頷き、カウンターの奥から厚手のバスタオルを二枚取り出し、品質の良さそうなドライヤーセットまで一緒に添えた。
「あと、お部屋の小型冷蔵庫には無料ドリンクが入っています。バスルームのお湯はすぐ出ます。ベッドサイドのランプとスピーカーも調整できます。追加のアメニティが必要でしたら、お部屋の端末から直接ご注文いただけます」
彼女が「追加のアメニティ」と言ったとき、語気が微妙に一拍止まった。
私はそのカタログに何が入っているか、まったく知りたくなかった。 本当に、一ミリも知りたくなかった。
真紀は荷物を受け取り、小声でお礼を言った。
私はその間ずっと、魂が天井に浮かんでいるような硬直した状態で、彼女の後ろについてエレベーターへ向かった。
エレベーターのドアが閉まった瞬間、私はようやく半日分の息を吐き出した。
「今、ひどく強い衝動がある」
真紀は隣に立ち、バスタオル二枚と袋を提げながら、平静に言った。
「何?」
「今日の朝ごはんから始まった全部の出来事を、あのプニプニマウスのせいにしたい」
「あれにそこまで責任は取れない」
「じゃあ天気のせいにする」
「雨もあれが降らせたわけじゃない」
「そんなに理性的でいないといけない?」
「誰かがそうでないといけないから」
私は振り返って彼女を睨んだ。
「どこかおかしいと思わないの?」
真紀は少し考えた。
「思う」
私は少し勢いを取り戻した。
「やっぱり――」
「カウンターの冷房が強すぎた」
「……」
彼女の共感能力に対して、ロマンチックな期待を抱いてはいけないことを、私はまた学んだ。
エレベーターがチンと鳴って七階に着いた。
ドアが開くと、廊下は無言ながらも極めて力強い方法で、この場所がいかに不真面目であるかを証明してきた。
照明は普通のホテルより暗い。 カーペットはより厚い。 壁には数メートルおきに、形が過剰に丸い壁灯が嵌め込まれていて、意図がありありと見える暖色の光を放っていた。空気にはかすかな香りが漂っていて、花の香りでも洗剤の香りでもなく、明らかに「宿泊需要」を超えた曖昧な匂いだった。
三歩歩いただけで、まだ生きていることを後悔し始めた。
707号室は廊下の一番奥にあった。
真紀がカードをかざすと、鍵が静かに鳴り、ドアが内側に開いた。
そして私たちは二人同時に立ち止まった。
内装が人の犯罪に加担するとはどういうことか、ようやく理解した。
部屋は広かった。
普通のホテルの部屋とは思えないほどに。 真ん中には大きなベッドがあった。普通の大きさではない。寝返りを打ちながら人生に疑問を感じられる、小規模な戦術会議も開けそうな、そういう大きさだ。ヘッドボードは一面の柔らかいウォールパネルで、色は深いワインレッドで、横には調光できるライトテープが嵌め込まれていた。天井の縁には間接光源が一周していて、明らかに読書のために設計されたものではなかった。
左手には、半透明のガラスで仕切られたバスルームがあった。
中には円形の浴槽があった。
大きかった。
一目見て、その設計意図を深く追求しないことを、生涯の誓いとして決めた。
さらに奥、ベッドの足元の向かい側の壁には、巨大なスクリーンが掛かっていた。下の小棚にはドリンクと氷入れが置かれていて、そして絶対に中身を確認したくない引き出しが一つあった。
私はドア口に立ち、その瞬間、完全に言語能力を失った。
ようやく、文明的な衝撃を受けすぎた後の平板な声で言った。
「……ここ、違法じゃない?」
真紀も二秒ほど止まった。
それから、ひどく冷静に言った。
「チェックインの流れを見る限り、合法だと思う」
「法的な意味で聞いたわけじゃない」
「じゃあ審美的な意味?」
「両方」
彼女はドアを閉め、バスタオルと袋をソファに置いた。
そう、この部屋にはソファまであった。 黒い革張りの。 私はコメントを控えた。
「少なくとも、ベッドは広い」真紀は言った。
私はゆっくりと彼女を向いた。
「今のその一言、まったく慰めにならない」
「事実を述べただけ」
「今日は、事実を述べる機能を少し切ってもらえない?」
「無理」
私は深く息を吸い、ゆっくりと吐き出し、入室一分以内に内部吐槷過多でショートしないよう努力した。
外の雨音は大きく、窓と外壁を打つ音が拡大されて、まるで空まで連帯してこの店のBGMを担当しているかのようだった。部屋の中は温かすぎるくらいで、人間の最後の理性まで一緒に柔らかくしてしまいそうな感じがした。
私は自分の濡れた袖口を見下ろし、それから雨に打たれた真紀の髪の毛先を見て、ようやく渋々認めた。
「風邪を引かない」という一点においては、彼女は正しかった。
真紀はすでに部屋の設備の確認を始めていた。
ラブホテルに特別な知識があるからではない。 単純に、彼女はどんな空間に入っても必ず環境チェックをする人間なのだ。たとえその空間が今、情侶消費主義による人類の羞恥心への全面的な攻撃のように見えていたとしても。
彼女はバスルームを確認し、乾燥機能のスイッチを押し、衣類乾燥ラックも確かめた。
「外套を脱いで」彼女は言った。
「その一言、この場所だと特別に危険に聞こえる」
「あなたの頭が汚れているのよ」
私はこの反撃で危うく噎せ死ぬところだった。
「私の頭が汚れてる? この部屋を見て、私を見て、それでも問題を私の頭のせいにするの?」
真紀は振り返り、本当に部屋を一瞥した。
それから私を一瞥した。
最後に、ひどく平静に結論を下した。
「部屋には確かに問題がある。でも、あなたにも問題がある」
……よろしい。
今日は完敗だ。
彼女はバスタオルの一枚を私に渡した。
「まず髪を拭いて」
私はタオルを受け取り、それでもあの大きなベッドをちらりと見てしまった。
本当に大きかった。 必要以上に大きかった。 まるで、ここに迷い込んだすべての人が、踏み込んだ最初の一秒から、運命のあの底意地の悪いユーモアを感じ取れるように、特別に設計されているかのようだった。
私は目を閉じ、あまり深く考えないことにした。 考えても、ベッドが小さくなるわけではないのだから。
「シモ」
真紀が突然呼んだ。
「また何?」
「そのベッドをずっと見てるなら、先に髪を乾かして」
私はハッと我に返り、耳の裏が一気に熱くなった。
「見てなかった!」
「うん」
「その『うん』、全然信じてない感じがする」
「見たから」
……この女は最近、本当にどんどん憎らしくなっている。
それでも私には、どうしようもない。
私は毛先を乱暴に拭きながら、心の中でプニプニマウスと暴雨とラブホテルの看板とパイク六号星の観光産業全体に、まとめて一本の恨み線を引いた。
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




