105. ぷにぷにマウスランドへようこそ 1
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
翌朝、私は光に叩き起こされた。
ロマンチックなピアノ曲でも流しておきたくなるような、優しい朝の光ではない。 ビジネスホテル専用の、カーテン越しにもかかわらず隙間から無理やり侵入してきて、公務員が定時に出勤するみたいに一切の情緒を無視してくる光だ。
私はベッドに横になったまま、三秒かけて自分がまだ生きていることを確認した。帝国軍に奇襲されていないし、ジェスの連続着信にメンタルを爆撃されて崩壊したわけでもない。深夜に、あまり活動的でいてほしくない種類の思考暴走で突然死したわけでもなかった。
よろしい。 今日はまだ、連邦が遺族年金の書類を出す必要はなさそうだ。
それから横を向くと、真紀はすでに起きていた。
いや、厳密には「今起きた」という見た目ではない。 どちらかといえば、午前四時に起きて朝の戦備チェックを完了させ、ついでに本日の補給計画をまとめ、ホテルの避難経路図を頭の中で三周ほどシミュレーションしてから、ようやく私が目を覚ますのを許してやっている、という感じだった。
彼女はもう着替えを済ませ、髪も整え終わり、ベッドの端に腰掛けて端末を見ていた。その姿勢は、ここが安ビジネスホテルではなく、上層部の作戦会議室か何かであるかのように、背筋が伸びきっていた。
私がまだ布団との精神的な生き別れを交渉していると、彼女が一度だけ視線を上げた。
「おはよう」と言うかと思った。
言わなかった。
彼女の第一声は、こうだった。
「シモ、荷物まとめて。今夜はここに泊まらない」
私はまだ布団に埋まっていたが、脳内だけは先に起き上がった。
「……何て?」
真紀の声色は、朝食が十時までで、それ以降は自己責任だと通知しているだけのように平坦だった。
「今夜は、ここには泊まらない」
私は上体を起こし、彼女を見た。顔つきは、突然の転属命令を受け取った間抜けな兵士そのものだったと思う。
「理由を聞いてもいい?」
「配管の音がうるさすぎるのと」彼女は言った。「トイレが漏水してる」
二秒ほど、私は黙った。
それだけ?
……それだけ?
配管の音がうるさいから?
私は一瞬、「人間の騒音耐性の標準偏差」についての学術論文を即興で書き上げそうになった。
彼女は、都市の暖房設備のメインパイプの隣で寝る日々を経験したことがないに違いない。 まして、ホームレス同然の暮らしで「人が住むべきではない場所」で夜を凌いできた年数を考えれば、私はさまざまな、あまり上品とは言えない生存スキルを身に付けている。
たとえば―― 隣が共鳴する配管であろうと、駅のアナウンスであろうと、酔っ払いの喧嘩であろうと、深夜に空き瓶を叩きながら政治演説を始める誰かであろうと、私は眠れる。 そして、ぐっすり眠れる。
これは才能ではない。 社会の底辺バージョンの進化だ。
「私は、どっちでもいいけど」
私は身を起こし、ブラシを手に取って、いつも独自の主権を主張してくるアホ毛を制圧しようとした。 結局、その毛は、連邦憲章に反旗を翻すかのように、しっかりと立ったままだった。
「今日は、どうするつもり?」
真紀はすぐには答えず、手元の端末を私の方へスワイプした。
次の瞬間、私の端末が短い通知音を鳴らした。
画面をのぞき込む。
広告だった。
色彩が暴力的なまでに鮮やかで、フォントは「全員の童心を差し出しなさい」と命令しているかのように甘く、とんでもないものが中央に印刷されていた。
私は三秒、その図案を見つめた。 もう三秒見つめた。
それから、できるだけ感情を抑えた声で、そのタイトルを読み上げた。
「……プニプニマウスランド?」
顔を上げて真紀を見る。
「遊園地?」
「うん」
彼女は、あまりにも当然のように答えた。
「ネットで調べた。パイク六号星で一番評判のいいアミューズメント施設らしいわ」
私は再び端末画面に目を落とした。
そこにいた「プニプニマウス」は、どこかで見たことのある有名なネズミと、異なる進化の枝から来たと思しき生物たち数種類が、倫理、美学、遺伝学の常識を同時に粉砕する大規模な事故に巻き込まれた結果として生じた、不幸な産物のようだった。
耳は不必要に丸く大きく、四肢は不自然なほど短く太く、笑顔はシロップのように粘りつき、目は子供を歓迎しているというより、次の犠牲者を物色しているようにしか見えなかった。
私はパイク六号星の住民の審美眼に疑念を抱き始めた。
軽い疑念ではない。 市役所の前にこの広告を掲げて、「公共の場にこの顔を載せたことについて謝罪を求める」署名活動をしたくなるレベルの疑念だ。
「この……」私は慎重に言葉を選んだ。「ちょっと、ブサイクじゃない?」
真紀が私を一瞥した。
「そうでもないと思うけど」
「そうでもない?」私は危うく噎せそうになった。「真紀、本気? これ、子供のトラウマと違法基改実験のコラボ商品みたいよ」
真紀はひどく冷静だった。
「口コミ評価は悪くない」
「この街の人たち、視覚判断能力を集団で失ってるとしか思えないんだけど」
「あなたの偏見が過剰なだけかもしれない」
「偏見じゃない。基本的な審美の自衛手段よ」
真紀は私の言い分を受け流し、広告の下にある詳細ページをタップした。
端末の画面には、さらに多くの情報が一気に表示された――大型のジェットコースター、水上ショー、ナイトパレード、限定スイーツ、コラボグッズ。そして、人の理性と財布を同時に処理してしまいそうなイベント一覧。
最悪なことに、真紀はそれを真剣に読んでいた。
私は二秒ほど彼女の横顔を眺め、妙な違和感を覚えた。
「……その手のものに、そんなに興味あった?」
「悪くなさそう」
彼女は言った。
悪くなさそう。
この四文字が彼女の口から出てきた衝撃は、飛田艦長がある日突然「生け花を習いに行く」と宣言したとしても、それに匹敵するレベルだった。
何に驚くべきなのか、すぐには判別できなかった。
九島真紀が遊園地に行きたいと言っていることか。 それとも、犯罪現場の証拠品のようなネズミの絵に向かって「悪くなさそう」と口にしたことか。
私は彼女を見つめ、彼女の顔に冗談の痕跡を探した。
なかった。 彼女は本気で検討していた。
その事実自体が、プニプニマウスよりもよほどホラーだった。
「一つ聞いていい?」私はアホ毛と格闘しながら、なんとか平静な声を保った。「どうしてそこに行こうと思ったの?」
真紀は少し考えた。
「昨日は、買い物して、ご飯を食べて、ホテルを変えた。どれも実務寄りの用件だった」
「離艦業務報告みたいなまとめ方だね」
「もともと処理すべき事項だったから」
「……好吧、これは否定できないけど」
彼女は端末を横に置き、顔を上げて私を見た。
「せっかく時間があるし、目的が単純な場所へ行くのも悪くないと思って」
私はブラシを下ろし、端末の中で不敵な笑みを浮かべる、全力でブサイクなプニプニマウスを見つめた。心中は複雑だった。
依然として、あの顔はひどかった。 弁明の余地がないほどに。
だが、真紀がそこへ行きたい理由が、本当に「目的が単純だから」だとしたら、私はもはや、このプランを頭から「精神汚染」として却下することはできなかった。
……ずるい。
こういうとき一番厄介なのは、彼女が何も大仰なことを言っていないのに、こちらがそれ以上突っ込むと、自分が空気の読めない人間になってしまうような気にさせられることだ。
もっとも、私はそもそも空気を読むタイプではないのだが。
「一つだけ言っておくけど」私はブラシを置き、最後の抵抗として口の強さを保つことにした。「もし本物のネズミも写真通りの顔だったら、今日一日、入園から閉園まで文句を言い続けるからね」
「やってみればいい」
「その言い方、やけに励ましてない?」
「止めてないだけよ」
「止めないのは、ある意味で励ましてるのと同じだと思う」
真紀は立ち上がり、私の方へ歩いてきた。
何か取りに来たのかと思ったら、ただ当たり前のように私の前で足を止め、軽く見下ろした。
「動かないで」
私は条件反射で固まった。
彼女は手を伸ばし、あのどうしても諦めないアホ毛を指で押さえて、横へ寝かせた。
指先が前髪を掠める。動きは軽く、早く、何もなかったかのように終わった。
それでも、私ははっきりと感じてしまった。
この女、最近、私に対して「この程度がちょうどいい」レベルの不意打ち行動に、妙に慣れてきていないだろうか。
「これでよし」
彼女は言った。
私は額に手を当ててみて、アホ毛が確かに一時的に鎮圧されているのを確認した。
「……私のこと、未完成の装備か何かだと思って整備してない?」
「思ってない」
「じゃあ最近、私の身なりを整える回数が妙に多くない?」
真紀は顔色一つ変えなかった。
「いつも、どこかしら整ってないから」
「その一言、地味に刺さるんだけど」
「でも正確」
「そういう正確さが一番嫌い」
彼女は何も答えず、昨夜整理しておいた荷物を手際よく袋に詰め直し始めた。その動きは、今日の行動計画などとっくに頭の中に組み上がっているかのようだった。私が何分の時点でプニプニマウスの悪口を再開するかまで、すでに見積もっていそうなくらいだ。
私は着替えながら、その背中を見ていた。バカバカしい感覚に襲われた。
昨日まで艦橋で実弾装填をしていたのに、今日は「プニプニマウスランド」と名乗る場所へ行く。 しかも、真紀と一緒に。
あまりにも宇宙規模の悪ふざけに見えた。
「シモ」
「ん?」
「朝ごはんは、外で食べる? それともここのを使う?」
私は時間を確認し、それから邪悪な笑顔のネズミが描かれた広告をちらりと見た。
「外で」
「理由は?」
「今日、あれと真正面から向き合う覚悟がいるなら」私は真剣に答えた。「その前に、まともなものを食べて、メンタルを整えておきたいの」
真紀は一度私を見、その目の奥に、ごく薄い笑みを浮かべた。
口角を大きく上げるような笑いではない。 氷の表面の下で、ごくかすかな水紋が揺れたような、短く、軽く、それでも人間の言語能力を確実に一部奪っていく笑いだった。
「わかった。外で食べよう」
私は視線を逸らし、シャツの最後のボタンを留めた。
よろしい。 今日が始まったばかりだというのに、すでに心臓の協調性に不安を感じる。
このペースでいけば、プニプニマウスの実物を目にする前に、別の原因で過労死する恐れがある。
……まあいいか。 少なくとも、報告書に書かれる死因が「ブサイクショック死」ではないことを祈ろう。
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