102. 惑星パイク6号 1
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
艦橋の空気が、数秒だけ静まった。
安堵からくる軽い静寂ではない。もっと厄介な種類のものだ――全身がまだ高圧作業から完全には降りていないのに、頭だけが先に「さて、お前たちがどれだけ間抜けだったかを精算するぞ」というプロセスに強引に切り替えられたような感覚。
雪風号はすでに港区に安定して収まっていた。 港壁を壊してもいない。接舷アームを使い捨て消耗品にもしていない。連邦軍が学校の顔面に直接送りつけられるような賠償請求書を増やしたわけでもない。結果だけ見れば、これは喜ぶべきことのはずだ。
飛田艦長の基準からすれば、おそらく「全員まとめて返品したいほどではない」という程度の話でしかないだろうが。
飛田は艦橋前方に立ち、精神寿命を十年は縮めそうな艦長席の背もたれに手を置いたまま、ゆっくりと私たち全員を見渡した。
その目つきは、老練な釣り師のそれだった。 自然を愛し、川辺で微笑んで写真を撮るような、穏やかな引退後バージョンではない。生涯釣りを続けてきて、今はもう浮きが揺れたくらいでは眉一つ動かさず、今日自分から針にかかったこの群れが、持ち帰って鍋にする価値があるかどうかだけを見ている、そういう目だ。
「諸君の今回の艦橋シミュレーション試験だが、前半はおよそ半分の点数だったな」
その語気は、感情を動かす価値もない物資リストを読み上げるように平坦だった。
「だが、後半の実際の操作は、まあ様になっていた」
まあ、様になっていた。 聞いてほしい。
私たちはさっき、全長二二五メートルの駆逐艦を港壁に突っ込ませかけ、ロイは「副長の一言を借りて自分のキャリアを死の淵から引き戻す方法」まで実演してみせた。それでいて飛田の口から出てきたのは、この一言だけだった。
「したがって、今回の期末試験、諸君はそれなりに良い点数が取れるはずだ」
彼は一拍置いた。
そして、最後の一太刀を入れた。
「おめでとう」
おめでとう、くそくらえだ。
後半の操作で失敗していなければ、今ごろ全員おそらく綺麗に爆散していた。一番マシな結末は、首都星の戦没者慰霊碑に名前が数人分増えることだろう。もっと現実的な可能性としては、私たちの死に方があまりにも愚かすぎて、連邦政府が「名前を刻むのはやめておこう。後世の人間に教育予算の使い道を疑わせても面倒だ」と判断するかもしれない。
私は無表情のまま立ち、心の中で連邦慰霊碑管理局の職員になりきって、一通りの審査と判決を下し終えていた。隣のジェスは、ひどく危険な周波数で微かに震えていた。
寒いからではない。 笑い死にしかけているのだ。
声を上げることだけは辛うじて我慢しているものの、肩と口元を痙攣させることで生命反応を維持しているその様子は、彼女がこのまま本当に壊れた通信機のようにショートを起こし、煙を噴き出して艦橋の床に倒れ込むのではないかと心配になるレベルだった。
飛田は、その様子に気づいていた。 だが、今日は機嫌がいいのか、あるいは私たちが雪風号を港区の公開ネタにせずに済んだことが、彼の殺意を一時的に「学生が呼吸するくらいは許容可能」な水準まで下げているのかもしれない。
ジェスを放っておいたまま、彼は話を続けた。
「それから、本日午後より、諸君には三日間の離艦を許可する」
さっきまでボルトで固定されていたような艦橋の空気が、そこでようやく少しだけ動いた。
本当にわずかだ。 だが、はっきりと。
私自身も、一瞬呆気にとられた。
三日間の離艦。
この四文字が飛田の口から出てくると、休暇通知というより、「圧力鍋から掬い上げたばかりの連中に、三日間の限定的自由使用権を発行する」という宣告のように聞こえる。
「生活必需品に不足がある者は、補充してこい」
飛田は言った。
「まともなものを食いたい者は、自分で探せ」
そこで、はっきりと私の方を一瞥した。
あまりにも正確で、思わずその場で申立書を提出したくなるほどだった。
「もちろん」彼は声色を変えぬまま、一言添えた。「せっかくの機会だ。デートして、親睦を深めるのもかまわない」
ジェスの震えは、そこでさらに激しくなった。
今彼女が口を開いたら、出てくるのは笑い声ではなく、救難信号と機械故障の中間のような怪音だろう。
CIC側でDが息を呑んだ。よほど重大なゴシップの宝箱が目の前で開かれたような顔をしていた。ハーヴィーは、といえば、ただ一度Dを見ただけだった。その視線の意味はおそらくこうだ。「ここで笑ったら、艦橋の床ごと持ち帰らせるぞ」
そして私は――
こっちを見るな。 私は生活必需品を補充しに行くのであって、連邦の人口政策に貢献しに行くつもりはない。
……よく考えてみれば、規律にかけては歩幅まで教範に載せたがるような体制が、学生の交際にここまで寛容なのも、少し奇妙ではある。
だが、百年戦争を続けてきた銀河連邦の人口ピラミッドには、おそらく地形図として使えるほど巨大な断層があるのだろう。学生の恋愛を禁止するよりも、成人したらさっさと何人か産んで、納税し、軍服を着て、できればそれなりに体面のいい死に様をさらしてくれる新たな連邦市民を量産してほしい、と願っているに違いない。
そう考えると、飛田の「親睦を深めてもかまわない」は、単なる冗談ではなく、政策執行側の影が少しばかり透けて見える言葉に変わる。
連邦のロマンは、やはり根っこから報告書の上に生えている。
飛田が咳払いし、私の健康的とは言えない社会観察を現場に引き戻した。
「離艦する者は、保安部で通信器を受け取っておけ」
彼は言った。
「三日後の深夜までに帰艦。時間に自信のない者、自分の記憶力に不安がある者は、通信器を活用しろ」
他の教官が同じことを言えば、多少は気遣いや配慮の響きがあるかもしれない。彼の口から出ると、「最後の防呆措置は用意しておいた。これでも迷子になったなら、それは純然たる個人の資質の問題だ」に近い意味になる。
「以上だ」
彼は背もたれから手を離し、投げやりなほど軽い口調で言った。
「解散」
艦橋全体に張り詰めていた弦が、その二文字が落ちた瞬間、一斉に緩んだ。
歓声ではない。 暴走でもない。 ただ全員の身体に貼り付いていた「今はまだ、記録映像に映えるような標準的な学員として振る舞わなければならない」という外殻が、一枚ずつひびを入れて崩れ落ちたような感覚だった。
Dが真っ先に、胸に溜めていた空気を吐き出した。
「……生き延びた……」
「ただの三日間の休暇よ。恩赦じゃない」エヴリンが冷ややかに言った。
「俺にとってはほとんど同じだ」
「それはお前の基準が低すぎるからだ」ハーヴィーが言った。
ジェスはようやく笑いの発作から回復しつつあり、片手をコンソールに突いたまま、まだ肩を震わせていた。
「駄目」彼女は言った。「本当に駄目。さっきの『親睦を深めてもかまわない』で、三日は笑える」
私は横目で睨んだ。
「三日だけにしときなさい」
「四日目は駄目?」
「四日目まで生きていたいならね」
「ひどい。高得点を取った学員の、同輩への温かい気遣いってこんな感じ?」
「もう一言でも続けたら、保安部に申請して、お前の端末を永久サイレントモードに設定させるから」
ジェスは目を細め、口角を上げたまま、明らかに飛田の先ほどの一言をネタに、どれだけのバリエーションのからかい方ができるかを頭の中で列挙している顔をしていた。その表情がひどく腹立たしい。特に腹立たしいのは、彼女がまだ何も言っていない段階で、私にはすでに彼女の頭の中の台本のいくつかが予想できてしまうことだ。
真紀はロイの横から一歩下がり、ついでにまだ艦橋に残っている操作記録に一瞥をくれた。
「先に通信器を受け取りに行こう」彼女は淡々と言った。
それだけだ。
そこに含みのあるニュアンスは何もない。ジェスのように「デート」だの「親睦を深める」だのを引っ張り出して、何度も磨き上げようとする気配もない。だがわけのわからないことに、彼女の口からこの一言が出ただけで、私はさっきの飛田の発言を、今すぐテープごと切り取って破棄したくなった。
理屈ではない。 そして非常に厄介だ。
ロイはまだ、完全には入港プロセスから抜けきれていない顔をしていた。艦橋の手順に一度絞り尽くされ、今は規律だけを頼りに人間の形へと自分を再構成している途中のようだ。
蘭は通信記録を片付け終え、立ち上がる動作もいつも通り無駄がなかった。表情もいつものように平坦だ。ただ、さっきの筑摩艦長の発光信号を思い出すたびに、嫌悪値メーターが一目盛り上がるのが目に見えるようだった。
「保安部、混むでしょうね」蘭が言った。
「それだけ、全艦の生存本能がまだ正常ってことだ」ハーヴィーが返した。
「通信器を受け取りに行くだけだろ。脱出ポッドの番号を配られるみたいな言い方をするなよ」Dが不満を口にした。
「大差ないわ」エヴリンが言う。
その一言には、私も危うく吹き出しそうになった。
飛田は、それ以上私たちに構わなかった。 すでに別の資料に目を落としていて、さっきまでのシミュレーションも、入港も、成績処理も、三日の離艦許可も、すべてが今日のタスク表に記載された「特に記憶しておく必要のない日常業務」の一項目にすぎないかのような自然さだった。
こういう人間が一番恐ろしい。 他人の神経を透けるほど薄く磨り減らしておきながら、それが日課に過ぎないからだ。
私たちは順々に自分の席を離れた。
私は最後に、艦橋前方の安定した港区の灯列と、飛田の背中を一瞥し、非常に場違いな一つの考えを抱いた。
連邦軍の教育の核心とは、おそらくこういうことなのだろう。まず死ぬ一歩手前まで追い詰めておいてから、「使い終わった道具」を片付けるような調子で三日の休暇を投げ渡し、「精神状態の修理は外でやってこい」と指示する。
そして三日後、きっちり元の場所に戻ってきて、次のラウンドを始める。
実に制度的に美しい。 そして、実に人間的ではない。
私は他の連中と一緒に艦橋の出口へ向かいながら、保安部までの道のりがとても静かなものにはならないだろうという予感だけはしっかりと抱いていた。
なにせ、さっき「親睦を深めてもかまわない」と正式に許可されたばかりの連中がいるのだ。 そして私の周りには、そのネタを絶対に見逃さない種類の連中が、よりによって一隻分、揃っていた。
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