101. 寄港 3
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
「続けろ」飛田が言った。
ロイの喉仏が動いた。
「はい」
その後、彼の動作はかえって安定した。
緊張が緩んだからではない。 自分がたった今、愚かな真似をしかけたと理解したからこそ、次の一呼吸から意識的になった、そういう種類の安定だった。
雪風号はゆっくりと接舷区画へと滑り込んでいく。
外部固定アームが展開し、港区の誘導灯が白から青へと切り替わった。艦体側面と接舷フレームの相対距離が徐々に縮まり、近づくにつれて奇妙な錯覚が生まれた。これほど巨大な、まるで動く金属の街区のような艦が、本当に収まっていく最後の数秒間だけ、まるで針の穴に糸を通すような細さに感じられるのだ。
「距離七〇」 「五〇」 「三〇」
艦橋全体の呼吸が、軽くなるのがわかった。
全員が知っていた。本当に恥をかきやすいのは遠距離での進入ではなく、この最後の一区間だということを。完成に近づくほど、完成したと思い込んではいけない。試験の最後の問題と同じだ。「ここまで書いてきたんだから」という油断で、最も簡単に死ぬのだ。
「微逆推」真紀が告げた。
ロイは従った。
「左側姿勢制御ノズル、〇・二補正」アカリが言う。
ロイはそれも入れた。
「距離一五」「一〇」「七」
「止めろ」
飛田が一言だけ言った。
ロイの手が、その場で止まった。
続いて、短く、しかし重みのある低周波の振動が、艦体外側から甲板を伝って上がってきた。衝突ではない。大型構造物がロックを完了するときの金属の噛み合いに近い音だ。外部固定アームが艦体に密着し、接舷フレームが荷重を受け始め、雪風号に残っていた最後のわずかな慣性が港区システムに静かに吸収されていく。
メインスクリーンの中央に、緑色のプロンプトが表示された。
【接舷固定完了】
蘭が即座に確認した。「港区より応答。本艦の停泊完了。姿勢偏差は許容値内」
ハーヴィーがデータを一瞥した。
「最終偏差、〇・二九」
「正規の艦員が初めて接舷したときより良かったりするんじゃないか」Dが小声で呟いた。
「今ここで拍手したら、CICから放り出す」エヴリンが言った。
「……心の中でだけ叩こうと思ってたんだけど」
「心の中も黙れ」
私は笑いそうになり、何とか堪えた。
ロイはすぐには動かなかった。 まだ舵輪を握ったまま、肩は汗をかいてはいけないマラソンを走り終えたばかりのように強張っていた。二秒ほど経ってから、ようやくゆっくりと手を離した。今この瞬間になって初めて、信じることができたかのように。大丈夫だ。船は壊れていない。自分もまだ生きている。
飛田は、停泊が完了した港区の灯列を見つめ、数秒間沈黙した。
それから口を開いた。
「ロイ」
ロイの全身が、また一度引き締まった。
「はい」
「及第だ」
……よし。
さすが飛田だ。
他の人間なら、二二五メートルの駆逐艦を指定の接舷位置に初めて入れ、一度は小さくないミスを犯しながらも最後に完全に立て直してみせたとき、少なくとも「よくやった」の一言くらいは出す。
飛田が出したのは二文字だけだった。
及第。
その二文字には慰めの色が一欠片もなく、むしろ裁判官が「ぎりぎり死刑は免じる」という判決を読み上げているような響きがあった。
だが彼はそこで止まらなかった。
振り返り、視線を艦橋全体に走らせた。
「ミスはどこにあった。自分で言え」
ロイは半秒間沈黙した。
「……左側へのドリフトが出た後、修正が早すぎ、量も多すぎました」彼は言った。「偏差を先に見て、それがどう拡大するかを見る前に、急いで量を補おうとしました。あの修正がもう少し大きければ、その後は蛇行修正の連鎖になっていたはずです」
「他には」飛田が言った。
ロイは唇を一度結んだ。
「修正を入れすぎたとわかった後、呼吸が乱れました」彼は素直に認めた。「副長が追って修正するなと言ってくれなければ、次の動作でさらに間違えていたと思います」
真紀は横に立ったまま、何も言わなかった。
飛田は頷いた。
「悪くない。自分がどこで間違えたかをわかっている。恥をかきかけたということしかわかっていないのとは違う」
……これは実に飛田らしい言葉だ。 称賛とは呼べないが、純粋な叱責よりもずっと上等だ。こう言われると、ひどく不快な種類の明晰さが生まれるからだ。そうだ、問題の核心は「恥をかきかけた」ことではなく、「船を壊しかけた」ことだったのだと。
飛田は続けた。
「入港は勇気の試験ではない。度胸の競争でもない。さっきお前が最初に犯したミスは、技術ではなく、心の問題だ」
「偏差を見た瞬間、すぐに自分が修正できると証明しようとした。それは冷静ではない。虚栄だ」
「艦体はあれほど巨大で、慣性もあれほど重い。一度修正を入れるたびに、お前は前の自分の動作と戦っているんだ」
「操舵手が一番愚かな死に方は、手が足りないことではない。自分のミスを他人に見られる前に消し去ろうと急ぎすぎることだ」
艦橋全体が、誰かが唾を飲み込む音まで聞こえそうなほど静まり返った。
私は認めなければならない。この言葉はロイだけに向けられたものではない。
これは私たち全員に向けられていた。
特に、まだ学んでいる最中でありながら、子供ではないと証明したくてたまらない私たちのような学生に。
ミスを犯した後の最初の反応は、止まることでも、見ることでも、自分が今しがた愚かな真似をしたと認めることでもなく、他人がそれを見る前に急いで消し去ることだ。消そうとすればするほど汚くなり、最後は場面全体を惨事に変えてしまう。
飛田の視線が一巡し、最後再びロイに落ちた。
「だが、一つだけ正しくやった」
ロイが顔を上げた。
「二度目を堪えた」飛田は言った。「最初の修正を入れすぎた後、三つ目のミスを続けてやらなかった。それが、今雪風が港壁ではなく港の中に停まっている理由だ」
Dは明らかに笑いたかったが、非常に空気を読んで堪えた。その、内出血しそうなほど笑いを押し殺した顔は、それ自体が一種の教育的価値を持っていた。
ロイは低い声で言った。「……はい」
飛田はひどく平坦にまとめた。
「今日のことを覚えておけ。入港の腕は、完璧な経験からは身につかない。危うく見苦しい死に方をしかけたあの一瞬から身につくものだ」
言い終えてから、一拍置いて付け足した。
「それと、次は副長に二度目の助け舟を出させるな」
この言葉が落ちたとき、ロイの顔は、靠港の間ずっとで初めて明確な反応を見せた。
恥ずかしさで死にそうというわけでもなく、生き延びた安堵でもなく。
人前で解剖されながらも、反論のしようがない、そういう複雑な気まずさだった。
飛田の言ったことは完全に正しかったからだ。
真紀はそこで静かに一言だけ付け加えた。
「最初の一回で見抜けば、私が二回目を言う必要はない」
ロイは即座に姿勢を正した。
「……はい、副長」
よし。 今夜の夢には確実に、左側サイドドリフト〇・八が出てくるだろう。
私は戦術席に背をもたせかけ、ようやく、ずっと胸に溜めていた息を静かに吐き出した。
雪風号は港の中に、揺れることなく停まっていた。 何もぶつけていない。 ロイも飛田にその場で解体されなかった。 あらゆる意味において、これは成功した入港だった。
ただ――
前方の、何事もなかったかのように冷たく輝いている港区の灯列を見て、それから、慢性的な公開処刑台を全身で乗り越えてきたばかりのロイを見て、私の頭には一つだけ、訓練精神をまったく尊重しない感想が浮かんだ。
連邦軍で最も恐ろしい交通の授業は、船を操ることではない。
船を操るとき、隣に飛田艦長が立っていることだ。
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