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臨界の星穹  作者: Mr.佐藤焫焵
臨界の星穹:士官学校
322/372

101. 寄港 2

この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。

「船を入れろ」


飛田艦長は、本当にその一言しか言わなかった。


激励もない。 「自分を信じろ」もない。 軍校の募集ポスターに印刷されるような熱血の無駄話は、一切なかった。


ただ一つ、非常にシンプルで、そして残酷な命令があるだけだ――この全長二二五メートル、中に四百五十の命を詰め込み、さらに財務省がその場で卒倒しそうなほど高価な連邦軍の資産一式を、無傷のまま港区にねじ込め、と。


私は突然、超光速航行も実はそれほど恐ろしくはないのかもしれないと思い始めた。 少なくとも跳躍のときは、物理学が共犯になってくれる。だが入港のとき、ミスを犯すのは自分一人だけだ。


「港区三番接舷シーケンス、誘導灯列の接続を確認」蘭の声は、フィルターを交換したばかりの通信機のようにクリアだった。「外部トラフィックコントロールより、本艦に対し現在の軸向を維持し、進入速度を毎秒六メートル以下に落とすよう要求」


「了解」ロイの返答は早かった。


早すぎた。 その早さは、余裕から来るものではない。半拍でも遅れれば、飛田にその場で視線で射殺されるのを恐れているような、そういう早さだった。


「近距離空域更新」アカリが言う。「右前方に姿勢修正中の補給艦二隻。左舷外側一二〇メートルにエンジニアリング艇一隻。港壁誘導レール、クリア」


「CIC、港区モデルを同期」エヴリンが引き継ぐ。


メインスクリーンの左側に、半透明の立体図が即座に展開された。前方の港区構造、誘導灯列、接舷アーム、相対航向、そして雪風号の現在の進入角度がすべて重ね合わされる。線が多く、数字はさらに多い。狂人が何十枚もの工業設計図を一つの画面に無理やり詰め込み、その中から唯一生き残れる道を操舵手に選べと命じているかのようだ。


ロイの手はすでに舵輪と推力コントロールレバーに置かれていた。


私からは彼の正面の顔は見えない。ただ、首の後ろがひどく強張っているのだけが見えた。誰かがそこに、見えない鋼のワイヤーをこっそり仕込んだかのようだった。


「速度四・八」ハーヴィーが数値を読み上げる。 「艦首偏角マイナス一・二度」アカリが言う。 「相対航線正常」蘭が補足する。


「維持しろ」飛田が言った。


それだけだ。 彼はロイのために余分な手助けをすることもなく、かといって手を抜くこともない。


彼は、学生が初めて入港するときに、隣に立って手取り足取り優しく教えるような艦長ではない。むしろ、人間を直接氷水に放り込み、岸に立って観察するタイプだ――さあ、こいつは泳ぐのか、それともただ喚くだけか、と。


真紀はロイの右斜め後ろに立ち、ずっと口を開かなかった。


それが、彼女が口を開くよりもプレッシャーを与えていた。 なぜならそれは、少なくとも今のところ、ロイの動作が彼女の介入を必要とするほどには間違っていない、ということを意味するからだ。


前方観測窓の外で、港区の構造がますます巨大になっていく。


誘導灯列が遠くから近づいてくる。まるで冷徹で理不尽な目の列のようだ。接舷区画の外側にある金属の骨組み、緩衝フレーム、作業アーム、そして停泊中の補給艦。雪風号が接近を続けるにつれて、それらはついに「巨大な人工物」としての真の重量感を示し始めた。


壮観だ。 そして、非常に非友好的だ。


なぜなら、それらの一つ一つが「ぶつかれば高くつくぞ」と警告してくるからだ。


私は戦術席で絶え間なく更新される近距離識別データを見つめながら、唐突に、ある一つの事実を真剣に理解した――入港が恐ろしいのは、それが戦闘に似ているからではない。


戦闘に似ていないからだ。


戦闘のとき、緊張の理由は敵や、火力や、運命や、明らかに定期的な脳のメンテナンスを怠っている連邦軍上層部の大物たちに押し付けることができる。


だが入港は違う。 入港は純粋な技術作業だ。


ぶつかれば、お前の責任。 擦っても、お前の責任。 たとえ艦体を停める姿勢が美しくなかっただけで、外にいる港湾作業員たちに「おや、練習艦のレベルってこの程度か」という顔をされたとしても、それはやはりお前の責任なのだ。


言い換えれば、飛田艦長が人生をエンジョイするには最適な状況だ。


「誘導軸まで距離四〇〇」蘭が報告する。 「進入速度四・三」ハーヴィーが言う。 「右舷外側の乱流がやや高め。左側への微修正を推奨」アカリが言った。


ロイの右手が、コントロールレバーを軽く押し込んだ。


雪風号の艦体には明確な振動はほとんど感じられず、ただ足の裏に非常に微細な姿勢修正の感覚が伝わってくるだけだった。こういうときにこそ、私は真に理解する。いわゆる軍艦の操舵とは、ヒロイズムとは何の関係もないのだと。


「突っ込む」のではない、「耐える」のだ。 格好良さではない、正確さだ。


「修正量〇・三」真紀がついに口を開いた。


彼女の声は高くなく、平坦で、余計な感情は一切なかった。


ロイは即座に応じた。「はい」


〇・三だけ修正する。 〇・五でもなく、一度でもなく、「大体これくらい」でもない。


そこが一番恐ろしいところだ。 なぜなら、この距離、この艦体寸法、この相対速度において、いかなる「大体」も、直接事故報告書への昇格を意味するからだ。


悪くない。 少なくとも飛田がまだ艦橋に立っているという前提の下では、全員の生存本能は正常に機能しているようだ。


「誘導軸まで距離二八〇」蘭が報告を続ける。 「進入速度三・九」 「軸向偏差〇・四。依然として許容範囲内」アカリが言う。


ロイの操作は悪くなかった。 むしろ、私が予想していたよりもずっと安定していると言えた。


彼の操作には、技術を誇示するような感覚も、「一発で決めてやる」という自己顕示欲もなかった。


全体のリズムは非常に実直だった。一歩ずつ速度を殺し、一歩ずつ軸を合わせ、本来人間の狭い港区に現れるべきではないあの巨大な構造物を、指定された区画へと少しずつ収めていく。


私は、このまま順調に進むのだろうと思っていた。


そのとき、雪風号の左側の姿勢データが突然跳ねた。


ごくわずかだ。 本当にごくわずか。


もし私が戦術席の横にある同期姿勢スケールを凝視していなければ、単なる目の錯覚だと思っただろう。


次の瞬間、アカリがすでに口を開いていた。


「左側へのドリフト量、増加」


ロイの肩が明らかに強張った。


「数値」飛田が言った。


「左サイドドリフト〇・八、継続して上昇中」アカリが報告する。「右舷外部のエンジニアリング艇のウェイク干渉により、局所的な姿勢偏転が発生」


「確認した」ロイが言った。


彼は即座にサイドスラスターで修正を入れた。


そして――修正しすぎた。


それは大きなミスではない。 少なくとも、全艦が港壁に激突し、軍校のケーススタディ教材の第一ページを飾るような大失態ではない。


だがこの距離では、小さなミスは当然のように拡大される。


雪風号の艦首姿勢は、その補正に引っ張られてわずかにオーバーシュートし、全体の軸向が逆方向へと逸れ始めた。パネル上の誘導線はすぐには赤くならなかったが、非常に見苦しい形になった。その見苦しさは、「今このまま放置すれば、後で本当に事故になる」というレベルのものだった。


「修正過剰」エヴリンの声が手術の告知のように冷たく響いた。


「わかっている!」ロイの返答は先ほどよりも焦っていた。


その焦った声を聞いた瞬間、私はまずいと思った。 入港において、焦りは連鎖的なミスを生む。


「追って修正するな」真紀が即座に言った。


よし、来た。 これが九島真紀の本当に恐ろしいところだ。


彼女は、ロイが完全に失敗を犯した後に火消しをするのではない。彼の脳が「あ、間違えた」という三文字に引きずり込まれそうになったその一秒に、最も転落しやすい道を先に塞いでしまうのだ。


「最初の揺り返しを見ろ」真紀は言った。「今、修正量を使い切るな」


ロイは息を吸い込んだ。


「……はい」


雪風号の艦体は、その過剰修正の余勢をわずかに残したまま、非常に小さな幅で揺り返しを始めた。


こういうときに一番愚かなのは、逸れるのを恐れて即座に舵とサイドスラスターを逆に入れ直すことだ。それを繰り返せば、船全体が酔っ払いのように左右に揺れ始め、最後には入港が公開処刑の場と化す。


ロイも当然、それを知っていた。 だから彼は耐えた。


私はその姿勢データを見つめながら、先ほどの超光速突入のときよりも、彼のために冷や汗を握りそうになっていた。超光速航行の恐怖は、結局のところ「宇宙に弄ばれている」という感覚に近い。だが今のこれは、一人の人間が自分の両手だけを頼りに、恥辱の淵から少しずつ自分を引き戻していく過程を、ただ見守るしかないという種類の恐怖だった。


「揺り返し、減弱開始」アカリが言った。 「軸向偏差〇・七。拡大停止」ハーヴィーが補足する。 「誘導線、まだ修復可能」蘭が報告する。


「今だ」真紀が言った。


ロイは今回、ごく小さな補正だけを入れた。


悔しがっているようにも、再び間違えるのを恐れているようにも見える、本当に小さな動きだった。


だが今回は正しかった。


雪風号の、少し見苦しくなっていた進入姿勢が、ゆっくりと誘導軸線へと引き戻されていく。艦首、艦腹、艦尾の相対位置が再び揃った。前方に迫る港壁の緩衝フレームは、もはや胃が痛くなるような角度ではなくなり、「まだ恐ろしいが、少なくとも正常な恐ろしさ」の範囲へと戻った。


私は、自分が息を止めていたことに気づいた。


……よし。 星野シモ。 お前が座っているのは戦術席だ。傍観席でもなければ、艦橋限定の不整脈観覧席でもない。それなのに、たった一度の入港修正で窒息しかけているとは。実に見上げた心構えだ。


ジェスが低く口笛を吹いた。


「立て直したわね」


「まだ停まってないわよ」私は言った。


「今のあなた、ちょっと飛田みたいに聞こえるわ」


「黙れ、それは侮辱よ」


「接舷ポイントまで距離一二〇」蘭が数値を読み上げる。「進入速度二・二」 「艦体姿勢、正常に回復」アカリが言う。 「港区固定アーム、待機」エヴリンが補足する。


飛田は最初から最後まで、一切手出しをしなかった。


一度もだ。


それが彼の最も恐ろしいところだ。 彼は助けないわけではない。 ただ、お前が助ける価値があるかどうかを先に見極めているのだ。より正確に言えば――お前が自分で自分のミスを回収できるかどうかを、まず見ているのだ。 回収できるなら、そのまま覚えさせる。回収できないなら、彼が引き継ぐ。そしてついでに、お前の人格ごと修正してやるのだ。

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