100.超光速航行 2
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
最終的に、霧島少佐はDをCICへ戻した。
もちろん、突然良心に目覚めて、青春期の男子に更生の機会を与えることにしたからではない。 どちらかといえば、彼女が本当にやりたかったことをすでに完了したからだ――Dに、彼女の目の届く場所では、ふざけることも道化を演じることも救命ロッカーに一緒に封印して、鍵を飲み込んでおくのが最善だと、完全に理解させた。
だからDが戻ったときの顔は、教官に補給食を没収されたばかりの大型犬のようで、肩まで半分落ちていた。
「俺、まだ何もしてないのに……」
「それがたいていの場合、問題の本体だ」エヴリンは顔も上げずに言った。
「犯罪の準備すらまだ始めていない」
「ならば少佐の制止は実に適切だった」ハーヴィーが一刀を加えた。
Dは口を開きかけ、結局黙って自分の席に収まった。いつもより三倍は行儀良く座っている。その光景は実に珍しく、珍しすぎて霧島少佐に連邦治安貢献章の申請をしてあげたくなるほどだった。
霧島少佐はCICの中に立ち、腕を組み、何事もなかったかのような顔をしていた。 上位者の余裕というのは最も恐ろしい。大声も机を叩く必要もない。一瞥するだけで、相手は生まれた日から自分がうるさすぎたのではないかと反省し始める。
雪風号はそのまま戦備航行を維持し、船団の座標へと向かっていった。
道中は異常なほど順調だった。
海賊もいない。見境のない私掠船もいない。改造した廃船で運試しをしながら補給船団から一稼ぎしようとする、頭に廃材を詰め込んだような人間も現れなかった。
これは雪風号が特別に恐ろしいからではなく、たいていは連邦の報復が面倒すぎるからだ。今日補給線を一口噛めば、明日には連邦艦隊に先祖の墓の座標まで申告させられる羽目になりかねない。
言い換えれば、宇宙にも宇宙なりの現実がある。 大半の人間は善良だから犯罪を犯さないのではなく、違反のコストが高すぎるからだ。 この世界は、制度から人性まで、一貫してロマンに欠けている。
私は戦術席の前で、ゆっくり流れる光点と識別枠を見つめながら、兵装状態を確認しつつ、頭を少し建設的でない方向へと滑らせていた。
たとえば、今回の受け渡しがこれほど退屈なほど順調なら、飛田が前に私たちを死刑囚のように追い込んだのは、どれだけが訓練で、どれだけが学生を苛めることへの個人的な楽しみだったのか、という問いだ。
この男が飛田という名字を持っている以上、後者が少なくとも四割は占めると私は見ている。
飛田艦長を教育界の慢性的な天災として分類しかけていたちょうどそのとき、メインスクリーンの左上に赤い点が一つ跳び出した。
私の背筋がほぼ同時に引き絞られた。 艦橋の空気も一瞬引き締まった。
「艦長、船団のシグナルを確認」アカリが口を開いた。
その語調は相変わらず平穏だったが、私には聞き取れた。その平穏の中に、警戒の縁からたった今退いてきたばかりの薄い硬さが一層混じっていることが。
レーダー席の前の識別枠が素早く展開し、複数の友軍コードと熱源の輪郭が順番に照合された。いくつかの赤い点が次々と友軍の色に切り替わる。補給船団の針路、艦数、護衛編成が一行ずつ列挙され、教科書の付録のように整然としていた。
つまり、空騒ぎだった。
私は声もなく息を吐き出した。
受け渡しが順調すぎて、悪態をつきたくなるほどだった。艦橋で「さっき心臓が余分に一拍打った」などと公言するのは適切ではないが、もしできるなら飛田に問いただしたかった。前の緊張しきった演習の半分は、本当にただ人を苛めるためだったのではないか、と。
だがその自殺行為のような問いを組み立て終える前に、飛田が先に口を開いた。
「ロイ」
名前を呼んだだけだった。 だがロイは電流が脊椎を掠めたかのように、明らかに体が一度揺れた。
その一揺れがあまりにも本物で、私まで彼を気の毒に思った。
飛田は前方の主窓を見たまま、語気にほとんど起伏がなかった。
「怖いか?」
……くそ。
私は心の中でひどく行儀の悪い言葉を一つ吐き出した。
この質問は本当に性質が悪い。普通の性質の悪さではない。押し間違えれば四百五十人を殺しかねないボタンを人の手に渡しておいて、「緊張してるか?」と聞きに来る種類の性質の悪さだ。
崖っぷちに立たせてハンドルを引き継がせてから、「プレッシャーを感じるな」と付け足すようなものだ。
一部の大人が学生に迂闊に近づいてはいけない理由は、法律が未成年を保護しているからではなく、学生が先に手を出しかねないからだ。
ロイの喉仏が動いた。手はまだ舵輪を握っていた。
「……はい」彼は正直に答えた。
本当に答えた。
私は一瞬、彼の誠実さを称えるべきか、彼の生存本能に黙祷を捧げるべきか判断できなかった。
飛田は今回は即座に追撃しなかった。ただわずかに顎を上げた。
「よろしい」
この「よろしい」は、言わないより恐ろしかった。
「怖くて当然だ」飛田は言った。「手だけは怖がるな」
ロイは返事をせず、ただ唇をより固く結んだ。 なぜなら、これから行うことは普通の航行操作ではないからだ。
私たちはまもなく超光速航行に入る。
これは艦長の判断への試練であり、操舵手の手腕への試練でもある。戦術長は事後に百の理由を分析できる。CICはデータを千ページの報告書にまとめられる。だが、全長数百メートル、四百五十の命と連邦軍の制式装備一式を積んだ軍艦を時空捻転航路に放り込む、その最後の一歩を実際に踏み込む人間は、やはり操舵手だ。
そして今日その位置に立っているのは、ロイだ。
「前方、水無月と筑摩が超光速航行に入ります」蘭が報告した。
メインスクリーンの外で、前方の二隻の艦がほぼ同時に変化した。
映画でよくある「ひゅっ」と消える演出ではない。どちらかといえば、まず何か見えない力が艦首の方向から艦全体を軽く引っ張るような動きがあり、輪郭が視野の中で微かに揺れる。それから艦体の外縁が引き伸ばされ始め、誰かが鉄灰色のシルエットを発光する細い線に引き延ばしたかのようになる。
その瞬間は極めて短く、自然界に現れるべきではない映像だと認識するのがやっとだった。そして次の瞬間、二隻はまるで放した輪ゴムが弾け飛ぶように、元の空間から消えた。
「……補給船団も超光速航行に入りました」アカリが低い声で言った。
彼女は追跡枠を一つずつ跳躍軌跡モードへと切り替えた。前方に密集していた友軍マーカーが急速に減り始め、消えていく時空の残滓だけが残った。黒い水面に誰かが数本の輝く傷を刻んだかのようだった。
飛田は私を見ることもなく、直接命じた。
「副長、超光速航行前警告を発令しろ」
「了解」
真紀は半秒も迷わず艦内放送器を手に取った。
彼女の声が流れ出した瞬間、艦橋全体が見えない一本の線で引き直されるように引き締まった。
「総員に告ぐ、これより超光速航行へ移行する。橙色警戒を発令! 全艦員、安全帯の固定を確認せよ。非戦闘配置員は直ちに最寄りの固定装置を掴め。繰り返す、本艦はこれより超光速航行へ移行する――」
語気は平坦で、ほぼ冷淡に近い。だがその冷淡さゆえに、疑いようのない安定感があった。氷で作られた刃のように、鋭く、清潔で、こちらが慌てたところで一緒に揺れることは絶対にない。
この場面で九島真紀から目を離せない人間は、恋愛脳か、生存本能に問題があるかのどちらかだ。 私は両方を少し持ち合わせているかもしれない。
「艦橋内員、安全帯を確認」真紀は放送を終えてから補足した。
艦橋全体に、金属の留め具が噛み合う音が一斉に響いた。
カチ。カチカチ。カチャ。
大きな音ではない。だが安心感がある。少なくとも一部のことは手順で解決できると示してくれるからだ。戦争、跳躍、死、命令、責任――これらはどれも大きすぎる。大きすぎて、人はしばらくの間、世界を安全帯一本、バックル一つ、確認動作一つに縮めたいと思う。
私は自分の安全帯を締め、ついでに兵装システムの待機状態をもう一度確認した。
秋水、待機正常。 ウォンバット、待機正常。 パルジファル、封鎖中。 主砲、第一段階予備充電完了。 近接防御マトリクス、連動正常。 エネルギー供給、安定。
よし。少なくとも、もし私たちが全艦まとめて時空理論と衝突しに飛んでいくとしても、雪風号は兵装が完全な状態で衝突するだろう。
飛田はロイの後ろに立ち、急かすことなく、ただ一度頷いた。
ロイは深く息を吸った。
それから機関テレグラフを、現在の速度から一気に「一杯」の目盛りへと叩き込んだ。
金属の指針が最大出力域に当たり、短く鋭い音を立てた。
その音は思ったより潔く、判決のように響いた。
「姿勢制御ノズル、連動待機」ハーヴィーがCICから報告する。
「航路解算完了。前方クリア確認」エヴリンが続く。
「時空波動場生成器、接続正常」アカリが言う。
「外部通信、跳躍前標準フォーマットへ切り替え完了」蘭が報告する。
一条また一条の手順が、雪風号全体を同じ一点へと押し進めていく。
最後に残ったのは、そのボタンだけだった。
艦橋で最も目立つ、青春小説には似合わないあのボタン。
ロイはそれを見つめ、指を宙に止めた一瞬、頭の中で百の自分が同時に叫んでいるのが私にも想像できた。
押した後は「始まり」ではない。「この瞬間から艦全体が、融通の利かない物理法則の手に完全に委ねられる」ということだからだ。
「六式時空波動捻転機関・『神風』、起動!」
ロイはほとんど歯を食いしばりながらその言葉を絞り出した。
次の瞬間、雪風号全体が低く轟き始めた。
爆発のような大音響ではない。艦体の奥深くから何かがゆっくりと目覚めてくるような振動だ。
甲板、シート、コンソール、舵輪、そして安全帯で固定された私の胸まで、次第に明確になっていく震えを感じた。
巨大で冷酷な金属の生き物が、艦腹の中でゆっくりと寝返りを打ち、それから目を開けたような感覚だ。
ロイの肩が明らかに一度縮んだ。
飛田の声が、彼の背後から降りてきた。
「怖くていい」
艦橋全体が一瞬静まり返った。
「だがお前は今、雪風号の操舵手だ」飛田は一語一語を刻むように言った。「四百五十の命は、お前に勇気を求めていない。正確さだけを求めている。慎重に、迷うな」
私は認めなければならない。この言葉は、どんな熱血演説よりも飛田らしかった。 そして、ずっと恐ろしかった。 彼はロイを慰めているのではない。責任の形をそのままロイの手の中に押し込んでいるのだ。包み紙すら渡さずに。
ロイは本当にそれを受け取った。
「……はい」
その音節は小さかったが、安定していた。
ほぼ同時に、艦橋とCICのメインスクリーンがすべて切り替わった。通常航行データを表示していたインターフェースが瞬時に隅へと圧縮され、中央に赤と黄色が交差する大きな警告文字が浮かび上がった。
【超光速航行 突入】
警告灯が一閃し、艦橋全体の色温度がさらに数段冷えた。
「跳躍準備完了」アカリが言う。
「跳躍航路安定」エヴリンが言う。
「艦体固定状態正常」ハーヴィーが補足する。
「全艦からの報告、安全扣具完了率九十八パーセント。残余は区画士官が対応中」蘭が素早くまとめた。
Dはよほど我慢の限界だったのか、最後にどうしても小声で一言押し込んだ。
「その二パーセント、随分と自由に生きてるな……」
「D」霧島少佐がひどく静かに呼んだ。
「……黙ります」
よし。宇宙に平和が戻った。
私は手を戦術席のコントロールリングに押しつけ、目を前方の観測窓に向けた。
雪風号の前方に広がる星海が、変形し始めた。
一瞬で真っ白になるのではない。 まず遠くのいくつかの固定恒星の位置が、水面に石を投じたときのような、目を凝らさないと気づけないほど微かな波紋を描いた。 それから波紋が外へと広がり、正面の空間全体が、熱せられたガラスのようにわずかに歪み始めた。光が引き伸ばされ、星の点が滲み、それまで見慣れていた宇宙の背景が、正常な遠近感と距離感を失っていく。
その光景は形容しがたい。 無理に言葉にするなら、世界全体が自分はただ揉み皺にできる一枚の紙に過ぎないと認めたような、そういう光景だ。
そして雪風号は今、その紙に新しい穴を強引に開けようとしている。
「跳躍!」
ボタンが押された。
その瞬間、艦体にさっきより深く、重い共振が走った。衝撃ではない。だが衝撃よりも説得力がある。
前方から溢れ出す白光が視野を飲み込み、周囲のすべての輪郭が前へと引きずられるように歪んだ。
安全帯が肩に食い込んだ。胃の中身が軽く抜き取られるような錯覚があった。耳内の圧力が変わり、自分の心臓の鼓動すら、一拍遅れて身体を追いかけてくるように感じた。
それから――
雪風号が消えた。
いや、正確には、私たちが自分たちの動きを感じているのではなく、元の宇宙空間が本当に後ろに置き去りにされたのだ。前方の歪んだ白光は裂け目であり、入り口でもあった。艦全体が神風機関の引き裂いた時空の波動に沿って、超光速航行へと突入した。
私は無意識に息を止めていた。
その一瞬、私は自分が戦術席に座っていることを忘れた。飛田を忘れた。CICを忘れた。前方にまだ追いつくべき船団があることも忘れた。頭の中に残ったのは一つの思考だけだった。
四百五十の命が超光速に放り込まれるというのは、口で言えば熱血だが、実際に感じると、全艦まとめて魂を物理学に三秒間貸し出して、物理学が完全な状態で返してくれる保証はないという感覚だ。
視野が再び安定したとき、自分の指がコントロールリングを白くなるほど握り締めていることに気づいた。
隣のジェスが私を一瞥し、口角をわずかに引き上げた。
「初めての跳躍?」
「……それは今さら聞く必要のある質問か?」
「さっきの顔、可愛かったわよ」
「もう一言でも余分に言ったら、ウォンバットの弾道予測にお前の名前を入力する」
「わあ、怖い。ようやく戦術席らしくなってきたじゃない」
言い返そうとした瞬間、前方の真紀がわずかに顔を傾けた。
本当に振り返ったのではない。ただそれほど短く、通りすがりのように、視線が一瞬こちらを掠めた。
その目は冷静だった。私が魂を置いてきていないかを確認するような目だった。
その一瞥は短かった。 錯覚と言われれば、そうかもしれないほどに。
だがなぜか、超光速突入で身体の中から抜き取られたような浮遊感が、その一瞥によって少し地に足がついた。
私はすぐに自分を罵り始めた。
よくやった、星野シモ。全艦が超光速突入を完了したばかりなのに、お前の最初の反応は跳躍後の火器管制同期の確認でも、兵装インターロックの確認でもなく、副長の一瞥で精神的安定を得ることだった。軍校に恋愛脳の懲戒規定があれば、私はすでに訓戒処分に値する。
だが自己批判を完了させる前に、飛田の声が降ってきた。
「戦術席」
即座に姿勢を正した。
「はい」
「跳躍後の兵装同期を確認しろ」
「了解」
よし。 青春、ときめき、詩情、超光速後の魂の残響、すべて一旦どこかへ消えろ。雪風号はまだ動いている。船団はまだ前にいる。飛田はまだ生きている。この三つが同時に成立している以上、誰も酔いしれていい時間はない。
私は視線を再びパネルへと落とし、指先で火器管制データを一項目ずつ確認し始めた。
ただ、今回は胸の中にあった冷たく硬い緊張が、静かに形を変えていた。
もはや恐れだけではない。 どちらかといえば――
私は本当にここにいる。 本当に雪風号の上にいる。 本当にこの人たちと一緒に、前方のあの宇宙へと放り込まれた。
そして、生きて帰らなければならない。
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




