96.戦術長 3
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
時間の進み方が、だんだんと理不尽になっていった。
艦内の夜間照明はとっくに柔らかいモードに切り替わり、廊下の外は静まり返り、遠くの機械の低い振動音まで船体の奥深くへ引っ込んでしまったようだった。二人部屋には机の上の読書灯だけが灯っていて、暖色の光の輪が、兵装マニュアルと端末の投影、そして徐々に人間性を失っていく私の顔の上に落ちている。
真紀はいつの間にか髪を束ねていた。 後ろで無造作にまとめただけなのに、うなじと横顔の線が露わになる。彼女が資料に目を落とし、時折顔を上げて質問してくるたび、灯りがその輪郭をかすめて、ひどく場違いな気の迷いを引き起こす。
本当に、場違いだ。 とりわけ私が「近接防御システムは第何級の脅威判定において、主戦術席の手動割り当てより迎撃弾幕の優先起動を選ぶか」などというものを暗記している最中に、昨日私の心臓をかき乱しておいて、今日は顔色一つ変えずに補習に付き合っている女が隣に座っているのは、公平ではない。
この宇宙は私に対して、少しも優しくない。
「シモ」
「ん?」
「また呆けてる」
「呆けてない」
「呆けてた」
「兵装システムと人生の関係について考察してたの」
「で、何が分かったの?」
発射モジュールのコードネームの列を見つめ、真剣に答えた。
「人生に、こんなに多くの発射モジュールは必要ないと思う」
真紀はすぐには突っ込まなかった。 二秒ほど私を見て、それから、ごく軽く笑った。
「それには同意する」
私は少し呆然とした。
こういうところで話を拾ってくる彼女は、本当に危険だ。 普段はあまり無駄なことを言わないから、一度でも調子を合わせてくれると、そのささやかな符合を、必要以上に長く覚えてしまう。
今がまさにそうだ。 本来なら「ウォンバット」と「秋水」の射程と適用場面の違いに集中すべき時間なのに、頭の半分は「彼女が今、笑った」という事実に持っていかれている。
私は本当に救いようがない。
「はい、次」真紀は無慈悲に私を現実へ引き戻した。「敵が高機動の小型群集目標で、なおかつ本艦が回避転舵中の場合、最初に何を考慮する?」
「……近接防御チェーンと『ウォンバット』の散布。主砲の射界と友軍の位置に応じて調整」
「理由は?」
「主砲は追尾コストが高いし、転舵中は解算も不安定だから。あの種の目標に大砲を持ち出すのは、大刀で蚊を斬るようなものだから」
「よろしい」
彼女は手を伸ばし、私の資料の端を軽く叩いた。
「そうやって覚えればいい。丸暗記じゃなく、まずそれぞれの刀が何を斬るためのものかを知ること」
私は少し虚を突かれた。
飛田が昼間に言ったことと、ほとんど同じ意味だ。なのに真紀の口から出ると、教官の訓示ではなく、彼女が本気で私が覚えられる方法を探してくれているように聞こえる。
「あんた……」
「ん?」
「普段、人に勉強を教えるときも、いつもこんなに厳しいの?」
真紀は二秒ほど沈黙した。
「違う」
「じゃあ光栄ね」
「こう解釈してもいい」彼女は私を見て、ひどく淡々と言った。「明日、艦橋で二度目の死を見たくないだけ」
胸の奥が、理由もなく一つ跳ねた。
同じ言葉を他の誰かが言ったなら、ただの普通の気遣いだろう。 だが真紀が言うと、彼女がこういうことを滅多に口にしないせいで、その一言がやけに鮮明に届いてしまう。
私は顔を伏せ、ノートを整理するふりをした。
「……あっそ」
「あっそって何」
「つまり」武装リストの文字列を睨みつけたまま、できるだけ普段通りの声を装った。「あんたみたいな人が、たまにまともなことを言うと、返し方に困るってこと」
「ちゃんと返してるじゃない」
「それは、かろうじて生き延びてるだけ」
「なら、そのまま生き延びて」彼女は言った。「あと三十分」
「三十分」と聞いた瞬間、本能的に身構えた。
「その三十分って、本物の三十分? それとも飛田式の三十分?」
真紀は一秒黙った。 そして、ひどく珍しく、視線をわずかに逸らした。
「……できるだけ、本物の三十分にする」
即座に指を差した。
「見た! 自分でも後ろめたい顔したじゃない!」
今度は、彼女は本当に笑った。 声を上げるわけではない。口角がはっきりと上がり、目元まで緩むような笑い方だ。その光景は、どんな砲塔配置図よりも殺傷力があって、危うく『パルジファル』が対艦大型誘導弾であって高級スイーツではないという事実を忘れかけた。
この部屋は危険すぎる。 私の成績にとっても、心臓にとっても。
◇
結局、その「あと三十分」は、最終的に一時間十分まで延長された。
わかっていた。 最初からわかっていた。
真紀がようやくデータパッドを私の手から取り上げ、「もういい、寝なさい」と言ったとき、私はひどく微妙な状態にあった。頭の中ではまだすべての文字が漂っているのに、目だけはもう勝手に閉じようとしている。
ベッドに倒れ込む直前、恨みがましく一言付け足した。
「もし今夜、夢に飛田が出てきたら、絶対タンホイザーを抱えて追いかけてくる」
真紀が卓上灯を暗くしながら、反対側から淡々とした声で返した。
「なら、ウォンバットで吹き飛ばせばいい」
「……ウォンバットは散弾型だよ」
「うん。だからよく効くはず」
枕に顔を埋めたまま、笑い声が漏れた。 笑い終えてから、自分でも信じられなかった。 深夜まで兵装名を叩き込まれて、最後に笑わされたのが、真紀の感情の起伏が一切ない冷笑話だったなんて。
この世界には本当に道理がない。
「おやすみ」彼女が言った。
「……おやすみ」
眠れないだろうと思っていた。 だが事実として、人間はある一線を越えて疲れると、眠れないどころか、夢を見る余裕もなく電源を落とされる。
ただ、完全に意識を失う直前、最後に頭に浮かんだのは「秋水」でも「ウォンバット」でも「パルジファル」でもなく――
真紀がさっき笑った顔、すごく綺麗だった。
……終わった。 私はたぶん、本当に救いようがない。
◇
翌朝、アラームが二度目に鳴ったところで、ようやく自分をベッドから掘り起こした。
頭痛。 目の渇き。 首のこわばり。 頭の中では兵装名の列が朝のランニングをしている。
ベッドの縁に座って三秒ほど呆け、自分がまだ生きていることに気づいた。これはもう奇跡の部類だ。
真紀はとっくに起きていた。 洗面台の前に立って襟元を整えながら、鏡越しに私を一瞥した。
「主砲に正面から掠められたみたいな顔してる」
「どうも。朝から元気な形容ね」
「事実を言っただけ」
足を引きずるように洗面台へ向かい、鏡を見た瞬間、危うく自分に敬礼したくなった。
目の下の隈。 正真正銘の隈だ。 「昨夜ちょっと夜更かしした」程度ではなく、今すぐ真っ白な服を着て、廊下の灯りが二回ほど点滅すれば、艦内怪談の主役に抜擢されてもおかしくないレベルだ。
「……」
「どうしたの?」真紀が訊いた。
「今の私のこの顔」鏡の中の自分を指差した。「兵装資料の表紙に貼って、『試験前の一夜漬けは推奨しません』っていう啓発ポスターに使えると思う」
真紀はちらりと見て、頷いた。
「確かに、説得力はある」
「ルームメイトを少しは慰めようとか思わない?」
「思ってる」
彼女が横から缶飲料を差し出してきた。 受け取って見ると、機能性のエナジードリンクだった。
「……これが慰め?」
「これも」さらに携帯食の栄養バーが差し出される。
手の中のそれを見て、二秒黙った。 それから、ひどく真剣な顔で言った。
「真紀」
「ん」
「あんた、本当に前線に送り出す兵士を飼育してるみたい」
彼女は少し考えた。
「ある意味、間違ってない」
反論できなかった。
朝食はほとんど本能で胃に流し込んだ。Dは私を見た瞬間に口笛を吹いて、昨夜は火器管制システム一式と殴り合ってきたような顔だと言った。ジェスは笑いすぎてトレーをひっくり返しそうになりながら、この隈を艦橋の損害報告に記入してあげようかと、ひどく熱心に申し出てきた。一番ひどいのはハーヴィーで、私を一瞥しただけで、冷静に結論を下した。
「有効だな」
「何が有効なわけ?」
「飛田の訓練方式だ」彼は言った。「少なくとも今のお前は、資料を確実に頭に叩き込んだ顔をしている」
「その隈から、どうやって知識の吸収率を読み取ったの」
「吸収できていなければ、ただ徹夜した顔になる。だが今のお前は、徹夜して成果を出した顔だ」
……この男の話し方は、本当にリンゴの皮を薄く剥くナイフに似ている。一枚一枚は薄いのに、確実に血が出る。
私たちが再び艦橋の扉の前に集まったとき、私はデータパッドを抱え、目の下に隈を乗せ、頭の中を兵装名で埋め尽くした状態で、「自力で立てる」と「引きずってもらう必要がある」の境界線上にいた。
ハッチが開く。
艦橋内の照明は廊下より一段明るく、一瞬で目が痛んだ。
飛田艦長が前方に立っていて、物音に気づいて振り返り、視線が私の顔で止まった。一秒だけ止まり、それから口角がはっきりと上がった。
終わった。
あの笑い方に、吉兆の要素は一つもない。
ジェスは私が艦橋に踏み込んだ瞬間、すでに声を潜めて、あの「楽しくて殴りたくなる」独特の口調で言った。
「わあ、戦術長閣下」
「今日のあなた、ようやく本当に発砲命令を下せる人の顔になってきたわね」
前方を見つめたまま、表情も変えずに言った。
「これ以上騒ぐと、第一射はお前に叩き込む」
「怖い怖い」彼女は心底楽しそうに笑った。「昨夜、しっかり頭に入ったみたいね」
なぜ一部の艦長が、艦内に営倉というものを残しておきたがるのか、今の私にはよくわかる。
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