91. メカニックたちの聖域 3
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
艦外無重力整備訓練区は、私が想像していたものとは少し違った。
広々とした、SF的な空間を想像していたが、実際はむしろ、わざと冷たく、硬く、人に優しくない工業倉庫のような場所だった。外側には大型の観察窓があり、模擬艦外壁と訓練フレームが見える。内側には艦外整備服、磁気吸着工具、姿勢制御スラスター、命綱、各種標準点検キットが一列に掛けられていた。
その装備の列を見ただけで、「今日、もし恥をかくなら、全身で恥をかくことになる」という予感が来た。
ヴィクトルは装備ラックの前に立ち、珍しく酒を先に飲まず、整備服の一着を叩いた。
「よく聞け。艦外整備はロマンじゃない。数学だ」
この一言で、ジェスでさえ眉を上げた。
ヴィクトルは続けた。
「外に出たら、上下はない。左右もない。床もない。あるのは方向と慣性と命綱と、自分の頭がまだ動いているかどうかだけだ」
整備服の背面についた小型姿勢制御スラスターを指した。
「これは格好つけるためのものじゃない。一度噴射すれば速度になる。もう一度噴射すれば制御不能になる。制御不能になった後、ヘルメットの中に吐いた者の後始末は俺がしない」
Dの表情が、その場で固まった。
「報告します機関長、その警告は非常に具体的です」
「毎年、実演する奴がいるからだ」ヴィクトルはDを見もしなかった。「しかも毎年、一人じゃない」
ロイは自分の装備ベルトを見下ろし、顔色が悪くなり始めていた。
「急に、教材になりたくなくなってきた」
「昨日からずっとなっているだろ」蘭が言った。
ヴィクトルは命綱の二重ロック法を実演しながら、リスクをメニューを読み上げるように並べた。
「第一、工具を手放せば、工具が飛翔体になる。第二、命綱の固定が甘ければ、人間が飛翔体になる。第三、スラスターを乱射すれば、自分が洗濯機に放り込まれたようになる。第四、慌てると掴む場所を間違え、間違えると一緒にいる相手を道連れにする。第五、相棒がいるからといって安心するな。相棒もお前より先に吐くかもしれない」
この授業の教育方針は、簡潔で力強く、そして徹底的に人に優しくなかった。
私たちは一人ずつ整備服を着始めた。
艦外整備服は、戦闘装甲のように攻撃と防御を重視したものではなく、むしろ厚みのある、機能優先の作業用の皮膚のようなものだった。固定環、磁気吸着バックル、姿勢制御ノズル、工具接続ポート、生命維持モジュール、すべてが体の外周に貼りついていて、高価な整備部品として梱包されているような感覚があった。
手袋を締め終えた時、真紀はすでに私の後ろで背面の保険環を確認していた。
「右側のバックルが底まで入っていない」真紀が言った。
「どこに第三の目がついているんだ」
「締める時に一瞬止まっていたからだ」
言い終えて、手を伸ばし、バックルを押し込んだ。カチッと、乾いた音がした。
……この人間は、本当に腹立たしい。正しいことをしているのは分かっている。でも、心臓が馬鹿みたいに半拍余分に跳ねる。
ジェスが反対側を通りかかり、この場面を目にした瞬間、短く口笛を鳴らした。
「二等室、アフターサービスも充実しているな」
私は顔も上げなかった。
「あんた、十分ごとに火をつけないと呼吸できないの」
「火をつけているんじゃない」ジェスは実に堂々と言った。「共同作業の連携を観察しているんだ」
真紀はジェスを相手にせず、工具パックを私の腰の側面に掛けた。
「スパナの接続口は左側だ。お前は右手で工具を持つ癖があるから、後で逆手に握るなよ」
「……分かってる」
ヴィクトルは最後に全員の装備を確認し、何の前置きもなく宣言した。
「よし、入れ」
「リラックスしろ」という言葉はない。
「まず慣れてみろ」という気遣いもない。
ただ――入れ。
訓練艙のハッチが開き、私たちは一組ずつ送り込まれた。磁気吸着の踏み板から足が離れ、固定面から身体が切り離された瞬間、頭に最初に浮かんだのは危機感ではなかった。
――ああ。身体というのは、本当に一瞬で「世界がどちらへ落ちるべきか」を忘れるんだな。
重さがない。
落下もない。
ただ、いつも頼りにしている方向感覚がふいに消え去り、呼吸まで無意識に慎重になっていく。
そして、この実に哲学的な瞬間に、Dが今日最初の醜態を披露した。
たぶん格好よく姿勢制御スラスターを一噴射しようとしたのだろう。だが力加減を誤り、その場でゆっくりと回転し始めた。
高速で転がる危険な展開ではない。
もっと悪い。
ひどく遅く、ひどく安定していて、ひどく間抜けで、しかも全員に丸見えの回転だった。
尊厳を失ったキーホルダーみたいに。
通信が一秒、静まり返った。
次の瞬間、ジェスが直接笑い出した。
「D、何してるの? 自分の三百六十度パノラマでも展示中?」
Dは回りながら、どうにか平静を保とうとした。
「これは……戦術的視野の拡張だ」
ヴィクトルの声が即座に通信へ割り込んだ。
「戦術の欠片もあるか。右側微噴射、短く当てろ、歯磨き粉を絞るんじゃない!」
Dは慌ててその通りにしたが、また力が強すぎた。回転は止まったものの、今度は横へ流れていき、最後は命綱にひどく無様に引き戻された。
ロイが通信の向こうで目を閉じた。
「機関長がさっき言っていた洗濯機の比喩、今ようやく理解できた」
ハーヴィーの方は、まったく別の光景だった。
無重力に入った最初の一瞬は確かに固まったが、すぐにリズムを掴んだ。推進、姿勢固定、手すりを掴む、移動。動作は決して綺麗ではないが、ひどく安定していた。観察区画から見ていたヴィクトルが、珍しく一度頷いたほどだ。
ジェスは、適応が異様に速いタイプだった。この人間は「普通ではないが面白い」環境に対して、恐ろしいほどの親和性を持っている。入って間もなく、手すりと短噴射を使ってフレームの間を滑るように移動し始め、まるで生まれつき艦外でリスクと恋愛するために作られたかのようだった。
私たちの組に割り当てられたのは「外壁整備パネルの交換+表面導流ケーブルの再固定」だった。
平たく言えば、指定位置まで漂っていき、故障した整備パネルを外して新品に交換し、隣で浮き上がっている導流ケーブルの固定線を溝へ戻す作業だ。
問題は技術ではない。
無重力だ。
力を借りる方向を一つ間違えれば、自分がパネルを直しているのではなく、パネルに嘲笑われることになる。
「まず自分を固定しろ」真紀の声が通信から来た。
「分かってる」
「疑っているわけじゃない。注意を促しているだけだ」
「その言い方、両方含んでるように聞こえるけど」
「なら、二重の保険だと思えばいい」
私は鼻を鳴らしたが、それでも命綱を二重にロックしてから、外壁の固定フレームの方へ滑っていった。
無重力下では、真紀の動作は普段よりさらに無駄がなかった。速いわけでも、見せびらかすわけでもない。一つ一つが、すでに計算し終えたかのようだった。スラスターは必要な量だけ噴射し、手すりを掴む手首の角度も最小限。余計な動作をすべて削ぎ落としたような動きだった。こういう人間と一緒に作業する最大の利点は、ひどく安心できることだ。最大の欠点は、自分が教育用ビデオに救われるべき一般人に思えてくることだ。
私は整備パネルの縁に体を寄せ、まず姿勢を固定してから、固定ボルトのロック解除に手を伸ばした。
「左上のボルトはまだ外すな」真紀が言った。
「なんで」
「導流ケーブルの張力が繋がっている。今外すと、パネルが先に跳ねる」
私は手を止め、視線を落とした。
本当にそうだった。
「……どうやって気づいたの」
「さっき、そこが震えていたからだ」
……なるほど。
いかにも九島真紀らしい答えだ。
私がようやく最初の固定具を外し終えたところで、反対側でまた惨劇が起きた。
アカリが焦ったのか、それとも格好よく反転できることを証明したかったのか、手すりを掴む方向を間違え、弾き飛ばされるように後ろへ漂い始めた。その拍子に、腰の側面に付けていた検査針まで一本、道連れにしてしまった。
「あ、あ、ちょっと待って待って――!」
その検査針が、実に不吉な速度で、ゆっくりと遠ざかっていく。
エヴリンがその場で手を伸ばして掴もうとし、危うく自分の姿勢まで崩しかけた。
ヴィクトルの声が即座に通信を炸裂させた。
「工具は後回しだ! 先に人間を固定しろ! さっき何と言った、もう忘れたか!?」
一番近くにいたハーヴィーの反応は恐ろしく速く、まず推進してアカリの姿勢を安定させた。別の整備員が伸縮式の磁気吸着ロッドを使い、あわや艦外漂流物になりかけていた検査針を回収した。
Dが通信の中で二秒黙り、それからひどく小さな声で言った。
「ほら見ろ。俺はさっき、回っていただけだ」
ロイが冷たく返した。
「それを誇ってるのか」
「違う。恥の等級を再定義してるんだ」
私は笑いを堪えながら、新しい整備パネルを所定の位置に嵌め込んだ。
真紀が横から固定フックを差し出してきた。
「受け取れ」
「了解」
私たちの組の作業は、意外なほど順調だった。
熱血的な連携ではない。お互いが自分の分をこなしながら、なぜか相手が次の瞬間に何を必要としているか分かっている――そういう感覚だった。無重力はすべての動作を遅くし、同時にすべての小さな失敗を拡大する。だからこそ、手順が噛み合った時の感触は、格別に明確だった。
「導流ケーブル」真紀が促した。
「見えてる」
浮き上がっている固定線を溝に押し戻し、ロックを掛けようとした瞬間、姿勢がわずかにずれ、身体が外側へ半寸ほど流れた。
真紀の手が、ほとんど反射的に私を引いた。
強くはない。
ただ、ひどく正確だった。
作業角度へ、ぴたりと引き戻される。
「焦るな」真紀が言った。
私は目の前の導流ケーブルを見つめたまま、「焦ってない」と言い返したくなったが、やめた。
さっき一瞬、確かに焦っていたからだ。
「……分かってる」
「ん」
たった一音だ。
なのに、無重力の中で聞くと、なぜか普段より少し近く感じた。
最終的に整備パネルの交換を終え、導流ケーブルを固定し、確認灯が緑に変わった時、私はようやく息を吐いた。背中がじっとり汗をかいていることに、そこで初めて気づいた。
無重力整備というのは、見た目よりずっと精神を消耗する。
全員が訓練区画から回収された後の光景は、五文字で言い表せた。
生きているが、見苦しい。
Dはまだ、自分の回転は事故ではなくスタイルの崩壊だと主張していた。アカリは飛んでいきかけた検査針について深く懺悔していた。ハーヴィーは息を整えながら、ヴィクトルに「あの整備パネルの接続口は九島重工の新型シールバックルを使っていなかったか」と確認していた。
ヴィクトルはそんな私たちを一通り眺め、まず酒を一口飲み、それから鼻を鳴らした。
「よし」
全員が顔を上げた。
「少なくとも、今日は誰も自分自身を『艦外修理』の対象にしなかったな」
……基準が低い。
低いと分かっていても、私たちは少し感動していた。ヴィクトルの口から「少なくとも自分を艦外修理の対象にしなかった」という評価をもらえたなら、それはおそらく本当に及第点以上なのだろう。
ヘルメットを外し、通常重力環境の空気を初めて吸い込みながら、頭に浮かんだのはただ一つだった。
第三考査が、ようやくその本当の姿を見せ始めた。
殴り合うのではない。
追いかけるのでもない。
斬り合うのでもない。
もっと静かで、いつの間にか事が起きる、別の種類のものだ。
厄介なことに。
そういう場所こそが、人と人の間にある、それまで言葉にできなかった何かを、少しずつ、確実に、輪郭のはっきりしたものへ追い込んでいく。
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




