91. メカニックたちの聖域 1
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
ヴィクトルの講義スタイルは、奇妙だった。
教科書通りの堅苦しさでもなければ、竹中曹長のように「死ぬかもしれないぞ」と脅して覚えさせるやり方でもない。ヴィクトルが何かを説明する様子は、もともと自分の頭の中に住んでいる機械を、その場で一つ一つ解体して見せているようだった――どこが核心で、どこが補助か。どこが壊れても慌てなくていいか。そして、どこに問題が起きたら、それが自分の担当区画でないことをただ祈って膝をつくべきか。
彼は話しながら、透明な投影パネルに手書きで構造図を無造作に引き出していく。
「雪風の主動力系統は三つのブロックに分けて覚えろ」ヴィクトルは言った。「熱源、変換、出力だ。細かい部分は覚えられなくて構わない。まずは機能を押さえろ。お前たちは機関兵じゃない。今日の授業が終わったからといって、自分でボイラーを解体できるようになれとは言わない」
そこで言葉を切り、また酒を一口煽った。
いったいどんな教育習慣だ、と心の中で突っ込みかけた次の瞬間、彼はすでに「可制御核融合熱汽ボイラー」が超高エネルギーの熱源を、いかにして艦内の安定した制御可能な熱汽循環へと変換しているかを、乱暴なほど明快な言葉で私たちに解体して見せ始めていた。
「心臓だと思えばいい。ボイラーが大きい心臓、熱交換回路が血管、出力段は力を必要な場所へ送る仕組みだ。この比喩は正確じゃないが、お前たちのような工学系以外の連中が生き延びるには十分だ」
生き延びる。
最初のうち、ハーヴィー以外の全員は、大体「この人は今、何語を話しているんだ」という状態だった。
ハーヴィーだけは、まったく違った。
最初の構造図が出た瞬間から、目が恐ろしいほど輝いていた。ついに自分が本当に慣れた戦場に踏み込んだ人間の顔だ。ヴィクトルが熱交換回路について説明している時など、ハーヴィーは無意識に前のめりになり、一言でも聞き逃すまいとするような姿勢になった。
そして私たち残りの人間は――
正直に言えば、最初の五分はまだかろうじて理解できていた。十分後には、いくつかの語彙がもはや魔法の呪文に近くなっていた。十五分後には、「世界にはエンジンを宇宙生成理論のように語れる人間が本当にいるんだ」という純粋な畏敬だけが残っていた。
そこで、ヴィクトルが突然話を止めた。
彼は俯いて名簿を見た。
それから、少し笑った。
嘲笑ではない。酔いが回って自分一人で可笑しくなっている笑いでもない。
「おや、有名人がいるな」という種類の、実に分かりやすい笑いだった。
顔を上げ、私たちの列を見た。
「九島家の人間」
私はほとんど即座に、誰を呼んでいるか分かった。
九島真紀が顔を上げた。表情は変わらない。ただ私には、彼女の肩がごくわずかに、一瞬だけ固まったのが見えた。
ヴィクトルが口の端をわずかに歪めた。
「お前んとこの製品は、よく持つな」
その一言が出た瞬間、クラスの少なくない人数が、反射的に九島真紀の方を振り向いた。
私も見た。
真紀の顔にはほとんど反応がなかった。だが「次の一言が簡単ではない」という警戒だけは、はっきりと滲んでいた。
案の定だった。
ヴィクトルは次の瞬間、直接口にした。
「九島真紀。高温超電導磁石と熱交換回路に使われる磁場拘束材料は、基本的に何でできているか、答えられるか」
私の頭の中:「……」
は?
今、何て言った?
呪文か何かか?
いや、違う。これはもう魔法の呪文を超えている。工学系の人間だけが解禁できる禁書の術式のようなものだ。
九島真紀も、まさかこんな角度から名指しで問われるとは思っていなかったらしく、一瞬、本当に言葉に詰まった。
まったく概念が抜け落ちた空白ではない。「領域はだいたい分かる、でもこの角度は鋭すぎる、今頭の中で高速検索をかけている」という種類の詰まり方だった。
教室が、一瞬静まり返った。
ヴィクトルは真紀を見つめながら、また酒を一口飲んだ。口調は厳しくない。むしろ少し気怠げでさえあった。
「どうやら、名声がすべてを保証するわけではないらしいな」
彼は酒壺を机に置き、視線を外した。
「分かる者はいるか」
その言葉が落ちるが早いか、ハーヴィーが手を挙げた。
反射のような速さだった。
ヴィクトルがハーヴィーを見た。その目に、初めてまともな興味の色が宿った。
「言ってみろ」
ハーヴィーはほとんど間を置かなかった。
「イットリウム系高温超電導体(YBCO)製の超電導テープ材です」
教室が一秒、静まり返った。
ヴィクトルが頷いた。
「よし」
たった二文字。
だが、その二文字が落ちた瞬間、ハーヴィーの全身が一段明るくなったのが、はっきりと分かった。
機関長の方は、工学系の背景を持たない連中の群れの中に、ようやくまともに会話できる生物を一匹見つけたかのように、目が少しだけ開いていた。
「では」ヴィクトルはハーヴィーに狙いを定めた。「陽子減速トポロジー場と、新型核融解剤の安定化機構についても、説明できるな」
私はその時点で、理解することを完全に諦めた。
これはもう授業ではない。召喚の儀式だ。
だがハーヴィーは、ようやく自分の出番が来たとでも言いたげに、背筋を伸ばして座り直し、声にわずかな得意が混じった。
「はい。炉心内部に、地球外由来の『ゼロ点格子安定剤(Zero-Point Lattice Stabilizer)』を注入します。この物質がプラズマの余剰運動エネルギーを能動的に吸収し、従来の核融合における激烈な爆発反応を、穏やかな『原子核融解(Nuclear Melting)』状態へと変換します」
ハーヴィーが一息で言い切った。
クラスの八割――私も含めて――が、同じ顔をしていたと思う。
――お前、普段から頭の中にこんなもの詰めてたのか?
ヴィクトルはそれを聞き終え、「教えがいがある」とでも言いたげな笑みを、実際に浮かべた。
「模範解答だ」
椅子の背に凭れ、ハーヴィーをしばらく値踏みするように眺めた。
「工学志望か」
ハーヴィーはほとんど即答した。
「報告します! はい!」
その「はい」の声量と気合いは、質問への回答というより、運命への告白に近かった。
ヴィクトルが頷いた。
「よし。暇な時に来い」
教室が静まり返った。
ハーヴィー本人も、一瞬だけ固まった。
ヴィクトルはまた酒を一口煽り、笑った。海賊顔というのは、笑うとかえって説得力が増す。
「もう少し教えてやれる。ははっ」
ハーヴィーは、その場で光を放ちそうだった。
Dは隣でその様子を眺め、神様に直接頭を撫でてもらった人間を目撃した時のような、複雑な顔をした。
「終わった」Dは呟いた。「ハーヴィー、今日本当に昇天した」
そしてこの時点で、クラス全員のヴィクトルに対する見方は、完全に逆転していた。
最初は「連邦軍はどうかしているのか」という疑念で見ていた酒飲みの機関長が、今は別の、もっと正直な感想に変わっていた――
連邦軍はどうかしている。
でも、この酔っ払いは、本物だ。
しかも、恐ろしいほど本物だ。
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次は見学だった。
ヴィクトルは前置きなど一切なく、私たちを小教室から引きずり出し、本物の整備区画へ連れて行った。
最初の場所は、ボイラー室だった。
扉が開いた瞬間、雪風全体の鼓動に正面から殴られたような感覚があった。
重く、轟き、絶え間なく稼働している。
設備一面が、鋼鉄の骨格に閉じ込められた巨獣のようだった。配管が縦横に走り、圧力計と整流弁が灯りの下で冷たく光っている。高温断熱層が最も危険な熱を内側に封じ込めているが、外周に立っているだけで、普通の暖房とはまるで質の違う、工業的で生々しい熱波が伝わってくる。
ヴィクトルが後ろへ手を向けた。
「よく見ろ」
機関室の中で、彼の声はいっそう掠れ、いっそう味わいが深かった。
「これが、雪風の心臓だ」
彼は口の端を上げ、この場所が立てる轟音をひどく気に入っているような顔をした。
「九島重工製、新型可制御核融合熱汽ボイラーだ」
それから、ごく自然に一刺しを加えた。
「もっとも、九島家の子どもには、あまり馴染みがないらしいがな」
私はほとんど反射的に、九島真紀の方を向いた。
案の定、真紀の肩がまたわずかに揺れた。
大きな動作ではない。でも、はっきりと分かった。
私は危うく笑いそうになった。意地悪な気持ちからではない。ただ――「なるほど、あんたにも、年上の専門家に的確に名指しされる瞬間というのがあるんだな」という、ひどく人間らしい感想だった。
真紀は私が見ているのに気づいたらしく、横目で一瞥してきた。
その目に込められた意味は、完全に読み取れた。
――笑いたければ笑えばいい。
私は俯いて一度咳払いし、機関室の熱気を避けているふりをした。
第二の見学場所は、超光速機関だった。
正直に言えば、あれはもう「一基のエンジン」と呼べるものではなかった。
部屋全体が、ある巨大な装置の一部になっているような感覚だった。コイル、環状構造、幾重にも組み合わさった場域モジュール、安定化フレーム、それらすべてが中央の光柱を取り囲んで配置されていた。その光は、不自然なほど明るく、室内全体を白く輝かせていた。まるで鋼鉄の艦腹の中に、誰かが馴致した星の光を一本、無理やり押し込んだかのようだった。
私は安全観測区画の外に立ち、その光柱を見つめながら、気の利いた一言を言うことすら忘れていた。
ヴィクトルは隣に立ち、口調はやはりいつも通りだった。
「雪風の超光速機関だ。これがあれば、雪風は超光速で跳躍できる」
一拍置き、正式名称を読み上げるのが面倒くさそうに、手を一振りした。
「六式時空波動捻転機関・神風だ」
それから、ヴィクトルは表情一つ変えずに付け足した。
「俺はずっと光速機関と呼んでいる。その方が舌を噛まない」
……なるほど。これが専門家の余裕というものか。他の人間が正式名称を聞いただけで理論物理学と神秘学の婚礼に迷い込んだかと疑うところを、この人間は「舌を噛まない方が大事だ」と言い切る。
Dは私の隣に立ち、光柱を見つめながら、声が少し小さくなっていた。
「雪風がまだ原形を保っているのは、全部こういう連中が底で支えているからだって、今さら気づいた」
「今さら?」私は言った。
「俺は今まで、軍艦は艦長と兵装で動くものだと思ってた」
「今は?」
Dは二秒ほど黙った。
「今は思う。艦を本当に走らせているのは、いつも一番まともな人間に見えない奴らだって」
……これは、意外と正しい。
二つの核心区画を見学し終えて小教室に戻ると、全員の状態は入室した時とは完全に変わっていた。
最初の「酔っ払いの海賊顔の機関長は、本当に大丈夫なのか」という疑念は、今や別の、もっと落ち着いた種類の畏敬に変わっていた。
ヴィクトル本人は相変わらずだった。ボーダー柄のシャツ、顎髭、酒の匂い、半閉じの目。だが今は、「この人間は今にも倒れるんじゃないか」という心配ではなく、もっと別の印象があった――こういう人間は、飲みながら喋っていても、清醒な人間の大半より十倍は分かっているのだろう。
ヴィクトルは机に戻り、酒壺を脇に置き、私たちを一通り見回した。
「さて」彼はゆっくりと言った。「実習の話をしよう」
小教室が、一瞬で静まり返った。
さっきまで、ハーヴィーが首席機関長に直接名指しで褒められ、その場で昇天しかけていた空気が、一気に「さて、次は誰が恥をかく番か」という通常の軍艦教育のリズムへ戻った。
ヴィクトルは手を上げ、投影パネルに先ほどより複雑な構造分層図を開いた。
「第一部、機関室内の基礎整備模擬操作だ」彼は指でいくつかの箇所を叩いた。「主ボイラーは解体しない。超光速機関の炉心には触れない。お前たちはまだ死に飽きていないし、俺も報告書を書く気はない」
この一言で、クラス全員の表情が同時に正直になった。よし。少なくとも、この酔っ払い機関長には最低限の職業倫理がある。
「やることは基礎的なものだ」ヴィクトルは続けた。「熱交換回路の簡易点検、圧力弁の手動校正、予備冷却ポンプの起動停止、整流継手の交換、それから標準整備盤のエラー警告の読み取りだ」
彼が「基礎的なもの」と言う時の口調は、飛田が「ちょっと一周してこい」と言う時、竹中曹長が「まず防御を教えてやろう」と言う時と、同じ種類のものだった。言っている本人だけが「基礎的だ」と思っている、あの基礎だ。
Dがすかさず手を挙げた。
「報告します機関長、確認させてください。機関長がおっしゃる『基礎的』というのは、人間にとっての基礎ですか、それとも工学系の怪物にとっての基礎ですか」
ヴィクトルはDを一瞥し、珍しく一秒ほど本当に考えた。
「お前たちにとっては、頭が痛いと死にたいの間くらいだ」
ハーヴィーは聞けば聞くほど目を輝かせ、今すぐスパナを渡されたら主機の外壁に抱きついて感動し始めるのではないかと思うほどだった。
ヴィクトルは名簿を眺め、無造作に組を分けた。
「二人一組だ。手は早くていい、頭が遅くても構わない。ただし、自分で配管に挟まるな」彼は名前を読み上げながら、荷物を仕分けるような口調で続けた。「Dとロイ。ハーヴィーとアイダ。ジェスと蘭。アカリとエヴリン……」
それから、顔を上げてこちらを見た。
「星野。九島真紀。お前たちは一組だ」
私は反射的に真紀の方を向いた。
真紀は特に何の反応も見せなかった。ただ平坦に「ん」と一言返しただけだ。昨日同じ部屋に泊まり、今朝一緒に食堂へ行き、テーブルの全員に野次馬根性全開で見物された人間とは、とても思えない落ち着き方だった。
……くそ。この人間の一番腹立たしいところは、いつでも過剰なほど安定していることだ。
ジェスは別の場所に立っていたが、組分けを聞いた後、まず眉を一度上げ、それから口の端がゆっくりと曲がっていった。
大きな笑いではない。「頭の中でまた脚本を書き始めた」と一目で分かる、あの笑い方だった。
私はその場で、見えなかったことにすることを決めた。
ヴィクトルは私たちの間の暗流などまったく気にする様子もなく、組分けが終わると同時に全員を整備模擬区へ追い立てた。
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




