88. 実技テスト、本番開始 3
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
その一言で、場が即座に茶番モードから実務モードへ切り替わった。
十一人が再び一列に並ぶ。Dでさえ、珍しく表情を引き締めた。
投影幕の艦内構造図が区画別の配置図に切り替わり、いくつかの節点が点灯した。中央主通路、B-7補給分岐、保守用ラダー、観測甲板下層、医療前段――どれも一度突破されれば、後がひどく面倒になる位置ばかりだ。
竹中曹長が向き直り、指揮棒で一点ずつ叩きながら言った。
「正式演習は誰が速く突っ込むかではなく、こんな艦内の厄介な場所で、誰が秩序を保てるかを見る。班分けは以下の通り」
まず中央主通路を指した。
「第一機動封鎖班――D、主任」
Dの背後に、存在しないスポットライトが当たったような気がした。
Dが顔を上げ、全身が明るくなった。
竹中曹長は続けた。
「ロイ、ハーヴィーを第一機動封鎖班に編入。任務は通路封鎖、仮目標の識別、負傷者引き摺り、緊急の押し返しだ」
この編成を聞いた瞬間、私は理解した。
Dは口が多く目が速くカオスに反応する。ロイは安定感がある。ハーヴィーは耐久力がある。この班は最も綺麗に戦うためではなく、最も荒れた場所を力ずくで繋ぎ止めるために組まれている。
竹中曹長は次に第二の節点を指した。
「第二節点制御班――真紀、主任。蘭、エヴリンを編入。任務は防衛線の維持、通信中継、火線の切り替え、節点の死守」
真紀は表情を動かさず、一言だけ言った。
「了解」
システムの応答のような簡潔さだった。
続いて、指揮棒が中央と前端の中間の位置に落ちた。
「前突・補位班――ジェス、星野、アイダ、アカリ。ジェスが前面圧力、星野が機動補位。必要に応じて第二節点の支援、または第一機動封鎖班への後退支援に回れ」
私は半秒、黙った。
分かった。
この配置は、明らかに意図的だ。
ジェスが前で突っ込み、私が中間で補い、真紀が後ろで統制する。三者のラインは平行ではない。無理やり交差させられている。どこかで問題が起きれば、私はジェスの火気と真紀の判断の間を往復しなければならない。
これはチーム分けではない。
ストレステストだ。
ジェスが先に口を開いた。不満は聞こえないが、喜んでもいない。
「星野が私の補位?」
竹中曹長がジェスを一瞥した。
「お前の補位じゃない。全線の補位だ」
そして私を見た。
「お前の位置が一番面倒だ。だから、誰より早く見て、誰より安定して動け。感情を足より先に突っ走らせるな」
……刺すところが、実に正確だ。
私は頷くしかなかった。
「了解しました」
真紀は反対側で何も言わなかったが、聞いているのは分かった。
そしてD――こういう場面を放っておけるDではない。
投影図を見て、私とジェスと真紀を見回し、口の端がゆっくり上がった。
その笑みは、ただの他人の不幸を喜ぶ笑いではない。台本を完全に理解し、第一幕で爆発が起きるのをすでに楽しみにしている演出家の笑みだった。
「いやあ」Dが言った。「この配置、なかなか面白いな」
「言葉を選んでから喋れ」ジェスが言った。
「選んでるさ」Dは両手を広げ、無実の顔をした。「前が暴力式缶切り、中間が機動式パッチ、後ろが低温指揮台。面白くないとは言えないだろ」
「あんた、『今日も無事に下校したい』っていう概念をどこかに落としてきたの?」私は聞いた。
Dが一つ咳払いし、急に真面目な口調に切り替えた。
「よし、真面目に行こう。戦術的に見れば、この配置は合理的だ」
「……あんたの口から『合理的』が出てくるとはね」
「星野、その一言は傷つく。第一機動封鎖班のコアバリューの一つは、俺がたまに本気を出すところなんだぞ」
ハーヴィーが小声で付け足した。
「しかも本気出すと、本当に役に立つんだよな」
Dはすぐさま振り向き、満面の感激顔を作った。
「ハーヴィー、お前からの肯定は、八十点よりよほど価値があるよ」
「それは八十点があまりにも綱渡りすぎて、思い出す気にもなれないだけだ」
横一列がどっと笑った。
竹中曹長だけが笑っていなかった。
「笑い終わったか?」
私たちは即座に口を閉じた。
「正式演習は明日からだ。今日の残りの時間は、班ごとに分かれて練習しろ。D、第一機動封鎖班を連れて中央環を回れ。真紀、第二節点制御班を連れて防衛配置に就け。ジェス、星野、お前たちの班は私についてこい。前面圧力と補位が互いの足を引っ張らないレベルまで仕上がるか、直接見てやる」
私は心の中で、自分のために線香を三本立てた。
ジェスがフェイスシールドを固定し、私の横を通り過ぎる時、低く一言だけ落とした。
「遅れるなよ」
私はジェスを振り返った。
「その言い方、挑発みたいに聞こえるけど」
「そのつもりだ」
「じゃあ、ついていけたら?」
ジェスは鼻を鳴らし、正面からは答えなかった。
「私を失望させるな」
それだけ言って、歩き去った。
私はその場に立ち尽くし、まだその一言を消化しきれていなかった。すると反対側から真紀も私の横を通り過ぎ、ジェスよりずっと短く、はるかに命令に近い一言だけを残していった。
「補位はまず節点を見ろ。人を先に見るな」
顔を上げると、真紀はすでに自分の班の方へ歩いていた。背中はいつも通り無駄がなく清潔で、さっきの一言が他人の頭の中にどれだけ長く引っかかるかなど、まるで意識していないように見えた。
……なるほど。
なるほど、ね。
一人は「遅れるな」と言う。
一人は「まず節点を見ろ」と言う。
そして私は明日から、この二人の間を走り回ることになる。
連邦軍の艦内対侵入演習は、ある意味において、空戦よりもよほど確実に人を殺す。
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午後の保安部訓練教室の空気には、なんとも形容しがたい匂いが漂っていた。
血の匂いでも、消毒液の匂いでもない。
大人が誰かを合法的に痛めつける前に、まず自分は公正だという顔をする、あの匂いだ。
私たち十一人が装備を下ろした直後、教室の前扉が「カチッ」と音を立てて開いた。竹中曹長は軍規のアラームのように正確な時刻に、硬い顔で入ってきた。歩調は速くないが、一歩ごとに全員の神経が一段ずつ締まっていく。
午前の筆記試験でほぼ全員の命の残量を搾り取られたばかりだ。午後は多少の緩衝があって然るべきだ、少なくとも連邦軍が未成年の訓練生に対して最低限の人道的配慮を持っているという幻想くらいは維持させてほしかった。
残念ながら。
私は保安部を過大評価していたらしい。
竹中曹長の手に、今日は講義資料も戦斧もなかった。
あったのは、箱だ。
橙色の、見せびらかすように鮮やかな箱。
その橙は、普通の工具箱の橙ではない。「これは高価か、危険か、あるいはその両方だ」という橙だ。軍艦の中にあると少し目が痛い。まるで救命ボートの色を爆発物の梱包に塗りたくったようで、連邦軍の工業美学を如実に体現していた――どうせ爆発するなら、せめて見えやすくしておけ、と。
彼はその箱を講台にパンと置いた。
全員の肩が同時に一度、跳ねた。
Dが低く息を吸い込み、私の斜め前の席から、ほとんど宗教的な畏敬に近い口調で言った。
「この色、見た目から人を幸せにする気がないな」
「お前の人生で、見た目から幸せにしてくれるものって何かあるのか」ジェスが後ろから冷たく笑った。
Dが振り返り、至って真剣な顔をした。
「おやつ」
「じゃあ、竹中曹長にその箱がクッキーかどうか聞いてみれば」
「俺はまだ生きていたい」
竹中曹長は私たちの溢れかけた生存本能など一切顧みず、講台の前に立ち、両手を後ろで組んで一通り見回した。
その目つきは、実に保安部らしかった。
学生を見ているのではない。まだ死んでいないから、もう少し訓練が必要な潜在的事故源を見ている目だ。
「今日は接舷戦を教える」
全員が半秒、固まった。
それから、教室に妙な集団的虚脱感が漂った。
……待て、何だって?
この言葉が聞き慣れないからではない。むしろ聞き慣れすぎているから、余計に不吉に聞こえる。教科書で「艦内近接戦」「気密扉争奪」「敵艦奪取作戦」という言葉を読むのとは、まったく意味が違う。前者は綺麗な専門用語だ。後者は、保安部の教官が目の前に立って、平静な顔でこう告げることだ。
――おめでとう。これからお前たちは、鉄の缶詰の中で近距離から互いに一生消えない心の傷を負わせ合う方法を学ぶ。
Dがゆっくりと手を挙げた。
竹中曹長はまぶたも動かさなかった。
「言え」
「報告します。今日の『教える』は、本当に説明が中心の『教える』ですか。それとも連邦軍版の『最初に少し説明してから、後はお前たちが死ぬのを見る』ですか」
竹中曹長がDを一瞥した。
その目の平静さから、彼がすでに心の中でDを一度埋葬し終えているのではないかと思った。
「お前たちの理解力次第だ」
「了解です」Dは頷いた。「後者ですね」
ハーヴィーが隣で顔を手で覆った。自分がこいつと同じ訓練班に入れられている事実を認めたくないような顔だった。蘭はいつも通り顔も上げず、冷たく一刺しした。
「教官語の解読が正確になったな。成長だ」
「ありがとう」
「褒めてない」
「最近みんな、いい言葉を半分だけ言ってから刺してくる。この風潮は健全じゃない」
「お前から学んだ」ジェスが言った。
Dは一瞬、自分の社会的貢献が正しく記録されていないと訴えたげな、傷ついた顔をした。
竹中曹長はその橙色の箱の蓋に手を置いたまま、急いで開けようとはしなかった。指の関節で二度、軽く叩く。
コン、コン。
大きくはない音だが、静まり返った教室の中では妙に明確に響いた。
「一般的に言って」竹中曹長は言った。「接舷戦に遭遇する幸運に恵まれた場合――」
「幸運」の二文字のところで、彼は一拍止めた。
隣のロイが口の端をひくつかせた。高確率で死人が出る状況を宝くじに当たったみたいに言う語感は、確かに保安部らしかった。ブラックユーモアよりもさらに黒い。
竹中曹長は続けた。
「これを必ず持っていくことを覚えておけ」
箱を開けた。
中には円筒状の容器が整然と収まっていた。固定金具、安全機構、起爆モジュールが完備されている。外殻の色は箱と同じく目に刺さるほど鮮やかで、側面には標準的な危険物マークが印刷されていた。起爆前から十分すぎるほど自己主張している。
「感熱式気化爆薬だ」竹中曹長は言った。「これで無駄な銃撃戦の多くを省ける」
全員が二秒、黙った。
三秒目に、誰かが笑い出した。
可笑しいからではない。竹中曹長が言いそうなことだから笑えたのだ。「余計な手順を踏むな、弾を節約できるなら節約しろ、直接的な方法で相手を押し返せるなら撃ち合いなどするな」という保安部の思想が、ひどく乾いた形で凝縮されていた。
竹中曹長は訓練用のサンプル缶を一本取り出し、半回転させて安全機構を見せた。
「艦内近接環境での銃撃戦は、全てを最も速く崩壊させる手段だ。視野差、跳弾、通路の狭さ、友軍の混在、それから穴を開けてはいけないものが山ほどある。配管、バルブ、気密扉の機構、自分の仲間だ」
「最後の一つ、ずいぶん具体的ですね」Dが低く言った。
「お前がとくに言い聞かせが必要そうだからだ」アイダが言った。
竹中曹長は下の小声のやり取りを無視して続けた。
「感熱式気化爆薬の目的は、人間を粉砕することではない。それは頭を使わない使い方だ。正しい使い方は、制圧、遮断、後退強要、空間の分断だ。相手が元の場所に居続けられなくさせる。相手の陣形を自壊させる。毎回正面から撃ち合わずに済むようにする」
一拍置いて、ごく普通の口調で後半を付け足した。
「相手が皇帝陛下万歳と叫びながら突っ込んでくる場合を除いて」
一秒、沈黙があった。
それから全員が本当に笑った。
私も危うく堪えきれなかった。
光景が目に浮かびすぎた。帝国兵、狭い通路、警報灯、赤い光が乱れ飛ぶ中、毒霧と煙の縁を踏みながら口上を叫んで突進してくる一団――荒唐無稽すぎてプロパガンダ映像にしか見えないが、実際にあり得ない話でもない。
Dが一番大きく笑った。
「それは面倒すぎる。化学的威嚇も通じないとは」
「それはつまり、相手が普通の面倒ではなく、上位の面倒だということだ」蘭が淡々と言った。
ジェスは腕を組み、口の端を上げた。
「むしろ好都合じゃない。少なくとも、誰を斬ればいいか分かる」
私は横目でジェスを一瞥した。
……この人間の戦術思考は、いつでも実にジェスらしい。
竹中曹長は訓練缶を箱に戻し、蓋を閉めた。
「笑い終わったか」
誰も正直に答えなかった。
「よし。笑い終わったなら覚えておけ。接舷戦で最も愚かなことは、艦内戦闘を野外平原での銃撃戦に変えることだ。視野もない、空間もない、そんな余裕もない」
「報告します」
今度手を挙げたのはロイだった。
ロイというのは、ある意味でこの班の貴重な存在だ。全員が空気に飲まれかけている時、彼は大抵まだ普通の人間の論理で「つまり実際どういうことですか」と聞いてくれる。時には命綱になり、時には火事場でメモ帳を持って消防士に放水角度を尋ねる人間に見えるが。
竹中曹長がロイを見た。
「言え」
「では、白兵戦以外に、遠距離の攻撃手段はないんですか」
この質問が出た瞬間、ロイが何を考えているか分かった。
ロイだけではない。全員が一度は考えたはずだ。
今は宇宙艦隊の時代だ。少し前には飛行シミュレーションでプラズマ機関砲、パルスレーザー、小型核融合魚雷の話を聞いていた。それが保安部に来た途端、装備の絵柄が突然シールド、戦斧、気化爆薬に変わり、時々「本当にどうにもならなければ火薬銃で」という補足がつく。技術ツリーがここまで進化しておきながら、艦内の路地戦になった瞬間だけ正直に原始人に退化する、この滑稽さ。
竹中曹長は一拍も考えずに答えた。
「ある」
ロイの目が少し輝いた。
「クロスボウで人を射ることができる」
教室が、完全に静まり返った。
後ろの方で、誰かが息を吸い込んで噎せかけた。
Dがゆっくりとロイを振り返り、「ほら見ろ、保安部の大人にまともな人間は一人もいないと言っただろう」と語りかけるような目をした。
ロイ自身も固まっていた。
「……クロスボウ?」
「そうだ、クロスボウだ」竹中曹長は表情を変えない。「低騒音、低熱源。特定の艦内条件下ではエネルギー兵器より位置を暴露しにくい。標準光束を乱射して通路を自分でも通れない状態にすることもない」
一拍置いた。
「ただし、それは本課程の範囲外だ」
Dが我慢できずに口を挟んだ。
「曹長、確認を。理論上、連邦軍艦内で敵と接触した場合、我々は片手にシールド、片手に戦斧、背中にクロスボウを背負ってもいい、ということでしょうか」
竹中曹長は、Dの方を見もしなかった。
「理論上、お前がそれをやり遂げられるなら、誰も止めはしない」
「……連邦軍は実に先鋭的だな」
「連邦軍が先鋭的なんじゃない」蘭が言った。「狭い場所で人を殺す時、使える物のほうが体面より重要だと、正直に認めているだけだ」
私は思わず蘭に拍手したくなった。
これ以上正確な説明はない。
保安部の授業というやつは、多くの場合、「どうすれば格好よく戦えるか」ではなく、「どうすれば十分に醜く、十分に安定して、十分に死ににくく戦えるか」を教えている。生きて敵を押し戻せるなら、武器の美学も、作戦のロマンも、英雄の様式美も、全部列の後ろに並べろ、という思想だ。
それが竹中曹長の、一番厄介なところで。
一番恐ろしいところでもある。
なにしろ、彼の言うことは、たいてい正しい。
竹中曹長は再び手を背に回し、視線を私たちの上に滑らせた。
「私の目標は、まずお前たちに基礎格闘を叩き込むことだ。私が斧を持ったお前たちを見て喜んでいるからじゃない。顔の距離まで詰められた時になってから慌てて覚えようとする奴には、大抵二つの末路しか残らないからだ」
Dが小さな声で合わせた。
「一つは死ぬ」
ハーヴィーが額に手を当てた。
「もう一つは、その死に方よりひどい死に方か?」
竹中曹長が、珍しく頷いた。
「だいたい、そんなところだ」
……その「だいたい」の中身を、詳しく聞きたいとは思わなかった。
教室が再び静まり返ったところで、竹中曹長は講壇脇から薄いデータパッドを一枚取り上げた。
「それから、今日の実技考査についてだが――」
その一言で、クラス全員の肩が一斉に強張った。
午前中の筆記でほぼ全員が集団再試験の地獄を覗いてきたばかりだ。今や「考査」という二文字を聞いただけで、条件反射的に身が固まる。竹中曹長があの妙に静かな声で話し始めると、身体の方が先に「ろくなことにならない」と判断する。
竹中曹長はデータパッドに目を落とし、すぐに顔を上げた。
「艦内防御の成績は、思っていたより良かった」
教室:「……」
この一言は、あまりにも怪しい。
廊下で突然誰かに「今日は顔色がいいな」と言われた時と同じレベルで怪しい。その一秒後には、大抵「じゃあ弾薬庫まで箱を三つ運んでくれ」と続く。
Dも明らかに何かを察し、椅子の背にもたれたままわずかに身を引いた。
「やばい」彼は小声で言った。「これは前フリだ」
「お前のカラス口が正しい日が来るとはね。悲しいわ」アイダが言った。
竹中曹長は、むしろ少し穏やかな口調で話を進めた。
「少なくとも、お前たちがシールドを持って一列に並ぶだけの馬鹿じゃないという証明にはなった」
目尻がぴくりと引きつった。
それはもう褒め言葉ですらない。断崖から引きずり上げてやった直後に、みぞおちに一発入れていくタイプの一言だった。
ロイはそっと息を吐いた。どうにかこの一言を表彰として受け取ろうとしているが、あまりに刺々しくて喉に詰まっている。
竹中曹長の口元が、わずかに上がった。
笑いではない。
大人が悪い知らせを口にする直前にだけ作る、あの薄い弧だ。
「だから、本来二回に分けるはずだった実技考査は――」
胸の奥が、嫌な音を立てて跳ねた。
来た。
「一回にまとめてやることにした」
教室は静まり返った。
さっきのクロスボウの時より、よほど静かだった。
聞き間違えたわけではない。だからこそ、どこから文句をつければいいのか分からなかった。
最初に声を出したのはDだった。
それは悲鳴でも抗議でもなかった。
魂が肉体の中で一瞬足を踏み外したような声だった。
「……は?」
ハーヴィーがゆっくりとDを見た。
「今のって、良い意味なのか?それとも、連邦軍特有の『良い意味』なのか、確認してくれ」
「俺は前者であってほしいけど、曹長の声色は完全に後者だな」
ジェスは逆に、少し前に身を乗り出した。目がわずかに光る。それは単純な好戦性というより、ようやく手応えのある問題を渡された時の集中だった。真紀の表情は変わらない。ただ竹中曹長を見て、この「一回」がどれほどえげつない形になるかを、すでに頭の中で計算し始めている顔だった。
私はと言えば――
午前中の筆記を、少し恋しく感じ始めていた。
少なくとも、紙はこっちを殴ってこない。
竹中曹長は、こちらの溢れかけている精神的ダメージなど構う様子もなく、データパッドを机に置き、両手を組んで、実にあっさりと言った。
「ルールは簡単だ」
簡単だ。
この三文字が保安部教官の口から出る時、その危険度は、民間伝承に出てくる「とりあえず落ち着け」とほぼ同義だ。
Dがごくりと喉を鳴らした。
「曹長、その『簡単』は、誰にとって簡単なんでしょう」
「私にとってだ」
……ですよね。
クラス全員が沈黙した。
竹中曹長が、ようやく後半を告げた。
「私を倒せれば」彼はにやりと笑った。「それで合格だ」
教室は、すぐには爆発しなかった。
全員の脳みそが、まず一拍止まったからだ。
処理能力を超えた情報を受け取ったシステムが、一瞬どこへ分類すべきか迷っている。冗談なのか、脅しなのか、軍事訓練の一環なのか、単なる大人の私怨なのか。
私は席に座ったまま、竹中曹長の、これ以上ないほど真面目な顔を見つめていた。頭の中に浮かんでくるのは、ひどく率直な一言だけだった。
……いや。
これ、どう考えても。
罰ゲームだろう。
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




