08. ヤバい男に目を付けられました 3
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
統合作戦司令部の内廊下は、外より静かだった。
穏やかな静けさじゃない。自然と息を潜めたくなる静けさだ。
床は遺影を撮れそうなほど光っており、両側の壁には細すぎてほぼ見えない導光線が埋め込まれ、冷たい白い光がすべての曲がり角を手術刀のように切り取っていた。私は軍官の後をついて歩き、ブーツの音の大半が吸い込まれ、乾いた残響だけが残る。棺の中で木板を軽く叩くような音だ。
廊下を人が行き交う。
黒い制服。灰色の制服。白い制服。
色は違う。表情は同じ。全員が人間性を一時的にロッカーに預けてから、カードを通して入ってきたみたいだ。
私たちは、馬鹿げた大きさの透明な展望壁の前を通り過ぎた。
外はドゥナン星の低軌道軍港だ。
艦艇が墓石のように係留架に並び、艦腹の灯火が幾重にも光っている。遠くでは曳航艦が、爆発で切断された装甲モジュールをゆっくりと押し進めていた。それは引き裂かれた金属の臓器みたいで、縁には溶融後に冷えた黒褐色のカール痕が残っている。さらに遠く、十二基の天幕軌道要塞が視界の果てに並び、銀青色の光暈が静かに浮かんでいた。極めて高価で、極めて偽善的な光輪だ。
私は外の景色を半秒見つめた。
美しい。
吐き気がするほど美しい。
停泊している艦艇、整備クレーム、行き来する軍用シャトル——すべて連邦がまだ生きていることを証明するための展示ケースだ。でも少しだけ視点を近づければ、装甲板の継ぎ目にまだ洗い切れていない焦げた血が見えるだろう。艙門の縁に高温で焦げた指の跡が見えるだろう。輸送車の上の、番号が貼られているが誰も引き取りに来ない袋が見えるだろう。
人類文明最後の灯台。
くだらない。
これは死体を油に溶かして、その油で看板を灯しているだけだ。
「一等兵。」
前を歩く軍官が立ち止まった。
危うく彼の背中に突っ込むところだった。
「何ですか?」
彼は身を引き、前方の扉を手で示した。
純黒の気密扉で、余分な装飾はなく、右側のドア枠に銀色の文字だけが嵌め込まれていた。
統合作戦司令部/作戦運用監理局/特別人事核定室(とうごうさくせんしれいぶ/さくせんうんようかんりきょく/とくべつじんじかくていしつ)
一読して笑いたくなった。
名前が長い部門ほど危険だ。これが今日学んだ職場の真理の第二条だ。
軍官はカードを通し、識別コードを入力し、掌紋認証を押した。
扉が音もなく滑り開く。
「どうぞ。」
彼の声がさっきより少し丁寧になっていた。
この丁寧さが余計に気に食わない。尊重を意味するんじゃなく、中に彼でさえ敵に回したくない人間が座っているということを意味するからだ。
私は中に入った。
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部屋は広かった。
オフィスというより、意図的に抑えた会議室に近い。四面の壁はすべて濃いグレーの吸音素材で、天井は高いが照明は低く抑えられ、自然と背筋を伸ばしたくなる圧迫感がある。中央に長いテーブルがあるが、実際に人が座っているのは最も奥の一端だけだ。
そこに、巨大な戦術観測窓がある。
窓の外は実景じゃない。ドゥナン防衛圏全体のリアルタイム戦術投影だ。十二基の天幕、三層の軌道防衛ライン、近地港、補給線、警戒航路——すべてが冷たい青白の線で空中に浮かび、極めて精巧な殺人おもちゃ箱のようだ。
その投影の前に立っている人間が、私に背を向けていた。
軍服は黒だ。
憲兵のあの眩しい黒じゃない。光を吸い込む種類の黒で、肩章と襟章の部分だけに銀色の冷たい光が残っている。
背が高い。刻薄なほど真っ直ぐ立っている。
私が最初に気づいたのは階級じゃなく、立っている位置だった。
ドゥナン主星と外縁防衛環の境界線の真前に立ち、まるで盤面に立った人間が気に食わなければ数万人を指で消せるような、そういう位置だ。
彼はすぐに振り返らなかった。
案内の軍官が先に敬礼した。
「報告、星野霜一等兵、連行しました。」
その人間が「ん」と一声出した。
声は高くない。でも明確だ。ナイフの背をガラスに当てたような音で、響かないが、反射的に距離を取りたくなる。
それから彼は振り返った。
……ちくしょう。
その言葉を条件反射で口に出しそうになった。
彼の見た目が恐ろしいからじゃない。まったく逆だ。連邦の宣伝映像が人々を愛国心で騙すために使いそうな、完璧な見本みたいな顔をしているからだ。
三十代前半くらい。彫りが深く、鼻筋が通り、黒髪は後ろに整然と撫でつけられ、制服に一つの余分なシワもなく、袖口まで完璧だ。目は冷たいグレーで、冬の凍りきれなかった海面みたいな色をしている。全体的に清潔で、克制されていて、高価で、頭から足の先まで「あなたの感情を聞きに来たんじゃない、あなたの価値を決めに来た」という空気を放っている。
こういう人間が徴兵広告に出れば、少なくとも二つの星区の若者を道連れにできる。
心の中で即座に警報が鳴り響いた。
まずい。
この顔は非常に危険だ。
恋愛的な意味の危険じゃない。政治的な意味で危険だ。
こういう顔をしてこういう地位まで上り詰めた人間は、たいてい悪役顔の連中より、ずっと悪役らしい。
「立ってるだけで高級ファッション誌の広告みたい」という一瞬の感想を、私は即座に絞め殺して脳内焼却炉に放り込んだ。
禁止だ。
星野霜、今日の少女趣味の配給量はすでに使い切った。残りの枠は、生きて退勤するために残しておけ。
彼はまず私の胸の臨時識別タグを一瞥してから、顔に視線を戻した。
外の連中みたいに二度見はしない。「十四歳」というデータに対しても、感情の欠片すら見せない。
ただ、静かで正確な査定だけがある。
修理する価値のある武器かどうかを見極める目だった。
「星野霜。」
「はい。」
「プリス星前線撤収作戦。臨界四号補給航路が帝国の側面攻撃を受け、艦橋損傷後も艦内に残留、二次火器管制修正と近距離艦首衝突を完遂。最終的に敵巡洋艦の主軸偏転と連邦右翼の突破を達成。」彼は手元の資料ボードを一瞥した。「戦果確認、撃殺四十七。間接戦果は別計上。」
その一連の内容を読み上げる口調は、発注リストを読むのと変わらないほど平坦だった。
私は立ったまま動かず、ただ一つのことを考えていた。
へえ。
命を賭けて手に入れたものが、あなたたちに整理されると、倉庫の棚卸しと同じ音になるんだな。
「自分がここに呼ばれた理由が分かるか?」
「おそらく、貴部署がついに私が悠々自適な文書官向きだと気づいて、明日からコーヒーを淹れて書類を届ける仕事を担当させたいと思ったからでは?」
案内の軍官の表情が、ほぼ崩壊しかけた。
前の男は私を一瞥した。
ごく薄い一瞥。
それから——彼は笑った。
さっき外でやっていた偽物の笑いじゃない。本当にわずかに笑意があった。ただそれだけで、氷の表面に細い亀裂が一本走ったくらいの量だ。
「外の者が三つの選択肢を見せたか?」
「見せた。」私は言った。「全部最悪だった。」
「あれは君が選ぶためのものじゃない。」
私は瞬きをした。
「なるほど。あの流れは最初から人を馬鹿にするためのものか。」
「テストするためのものだ。」彼は訂正した。
「私に頭があるかどうかのテスト?」
「少しの安心感と引き換えに、自分から一番腐りやすい場所に収まるかどうかのテストだ。」
その一言で、私は半秒黙った。
ちくしょう。
この人間の言い方は面白くない。でも、当たっている。
私はこういう「当たり方」が嫌いだ。
彼は机の後ろに戻り、指で光幕を軽く叩いた。さっきまで浮かんでいた三つの職務提案が消え、代わりに赤枠で囲まれた転属命令草案が現れた。
タイトルは短い。
特別戦術運用部隊/臨時編入審査
「特別」という二文字を見た瞬間、胃が一回締まった。
連邦で「特別」がついているものは、ほぼ例外なく正常じゃない。特別予算、特別任務、特別管理、特別処置。人間の言葉に翻訳すれば——何かあっても書面を多く残すと都合が悪い、ということだ。
「まず自己紹介をしよう。」彼は言った。「作戦運用監理局、第一特別運用科、大佐、レオ・ヴィスラン。」
よし。
名前も危険な長さだ。
レオ・ヴィスラン大佐。
私は心の中でその名前を刻み込み、注釈を付けた——顔がいい、声が冷たい、話し方が手術刀みたい、高確率でどこかおかしい。
彼は資料を私のほうに向けた。
「プリス星での君の戦闘記録を、全部見た。」
「じゃあ私が死にかけた精彩な場面もたくさん見たはずだ。」
「私が見たのは、艦橋が撃ち抜かれて退路が開いていた状況で、君が撤退を選ばず、最短時間で火器管制修正を完了させたことだ。」
「逃げても逃げ切れないと思ったから。」
「でも君は賭けた。」
私は口角を引き上げた。
「軍隊はこういう話が好きでしょ。低階級の砲灰が血気に逸って、連邦の栄光のために勇敢に一発賭けた——」
「血気じゃない。」彼は遮った。
部屋が一瞬、静まった。
彼は私を見た。その灰色の目が、場面の話を全部すり抜けて、あのとき私の頭の中にあった本当のものを直接見ているようだった。
「君は栄光のためじゃなかった。」彼は言った。「艦内の他の誰よりも早く計算した。その場に残って一撃を叩き込んだほうが、逃げるより生還率が高いと。」
私の背筋が、ごくわずかに張った。
この感覚が不快だ。
廃鉄と血の下を正確に掘り返されて、隠していた部品を取り出され、「ああ、やっぱりここにあった」と静かに言われるような感覚。
私は彼を見つめた。
「つまり大佐閣下は、私のこういう実用的な思考が気に入ったと?」
「判断力のある人間が好きだ。」彼は言った。「特に、周りが服従しかしない場所で、いつ規則を破るべきかを知っている人間が。」
……気持ち悪い。
この一言は、普通の上官が言うものじゃない。普通の上官は規律を守れ、忠誠を誓え、準則を暗記しろと言う。「いつ規則を破るべきかを知っている」ことを褒める人間は、天才か災害のどちらかだ。
そして連邦は天才を育てるのに資源を使わない。
だから答えはだいたい明らかだ。
「先に言っておくけど、」私は口を開いた。「これから『国家に君が必要だ』みたいなことを言うつもりなら、この高そうな床に吐くかもしれない。言葉を慎重に選んでほしい。」
隣の案内軍官が本当に息を飲んだ。
レオ・ヴィスラン大佐は眉一つ動かさなかった。
「安心しろ。」彼は言った。「君に愛国心は求めない。」
彼は手を上げ、別の書類を呼び出した。
今度は自分の名前が正式な術語の真ん中に置かれているのが見えた。横には、私がかろうじて読める項目が標記されている。
軍功申告:一級戦術応変章/特例審査中
私は少し固まった。
……は?
「プリス星での君の行動は、すでに軍功申告に提出されている。」彼は言った。「最終核定が下りれば、君の階級、待遇、および後続の編制が全面的に再評価される。」
私はその一行をしばらく見つめ、何も言わなかった。
感動じゃない。葬儀社から突然、年会員アップグレードの通知が届いたときみたいな困惑に近い。
連邦みたいな場所が、理由もなく飴を配ることはない。見た目が報酬に見えるものには、たいていもっと太い鎖が繋がっている。
「つまり、」私はゆっくり顔を上げた。「これは表彰なのか、それとも値上げして回収するのか?」
今度は、彼の笑いが少しだけはっきりした。
薄いが、確かにある。
「両立する。」
……なるほど。
少なくともこの野郎は正直だ。
私はむしろこういう正面から来る種類の悪党のほうが好きだ。犠牲と奉仕を口にしながら心の中では消耗品として扱う聖人型のゴミより、自分が何をしているか分かっている人間は、少なくとも道徳を香水代わりに振りかけない。
レオ・ヴィスラン大佐は資料を一段前に押し出した。
「君を呼んだのは、四十七人を殺したからじゃない。」
「残念、その数字には記念価値があると思ってたのに。」
「君を呼んだのは、全員が生き延びることを考えていたとき、君だけが分散思考で『どうすれば相手をより価値ある形で殺せるか』を考えていたからだ。」
部屋の照明は冷たい。
でも、この一言が細い針みたいに、ごく軽く鼓膜に刺さった。
いい言葉だからじゃない。事実に近すぎるからだ。
私は英雄じゃない。最初からそうじゃない。
あのとき私は、高尚でも熱血でも偉大でもなかった。ただ、煙を上げる壊れた機器と死体の間に立って、頭の中で素早く計算しただけだ——今脱出艇に飛び込んでも、たぶん死ぬ。ここに残って最後の一撃を叩き込めば、相手も道連れにできるかもしれない。
要するに、貧乏で、最悪で、命知らずの生存計算に過ぎない。
でも、この人間はそれを読んだ。
それが非常に、非常に不快だった。
少女漫画なら「理解される」ことを桜が舞って音楽が鳴って心臓が跳ねる場面として描くだろう。現実は違う。
現実は、連邦軍の最上層の一つにある部屋に立って、相手が自分の一番みっともない部分を読んでいることに気づき、心の中で一瞬だけ柔らかくなった何かを即座に蹴り戻して、コンクリートで封印したくなるだけだ。
心拍が上がるな。理解されたと思うな。それは危険だ。
私は顎を少し上げ、自分の声をより生意気に聞こえるように調整した。
「聞いてると、大佐は私に勲章をあげたいわけじゃなく、もっと汚い場所に押し込みたいみたいに聞こえる。」
「正解だ。」
否定すら面倒くさそうだった。
「統合作戦司令部が不足しているのは、言われた通りにする人間じゃない。」レオ・ヴィスラン大佐は言った。「規則が裂けたとき、自分で新しい道を補える人間だ。」
私は赤枠の転属命令を見つめ、胸の奥で何かがゆっくりと沈んでいくのを感じた。
来た。
やっぱり来た。
運命が私を思い切り蹴り飛ばす前には、たいていまず理性的な声でその理由を説明してくる。そうすることで、蹴り飛ばされても多少文明的に見えるとでも思っているのだろう。
「どこに編入するつもりですか?」
彼はすぐに答えなかった。
ただ手を上げて、机の上の他のすべての投影を消した。
部屋の中に残ったのは、私と彼の間の赤枠の書類だけになった。
「今日から、星野霜一等兵、君の転属申請は第一特別運用科が接収する。」彼は言った。「元の配置は凍結。六A倉の元部隊との連絡権限は停止。対外通信は審査管轄に移行する。」
私の心臓が、ごく細く、一拍止まった。
六A倉。
デイヴィッド。レイス。あの騒がしくて、臭くて、でも何故か一緒に生き延びた連中。
てっきり一時的な分流だと思っていた。
なのに彼の「連絡権限停止」の一言が、あの人たちを私の人生からハサミで切り取るように、きれいに断ち切った。
私は目を落とし、その一行を見つめた。
ちくしょう。
連邦の仕事の効率が神がかるのは、人と人の繋がりを切断するときだけだ。
「理由は?」私は聞いた。
「機密保持の必要性。」
「人間の言葉で言い直せ。」
「君がこれから行く場所は、古い繋がりを多く持ち込むのに適していない。」
私は二秒黙り、最後に短く笑った。
「なるほど。あなたたちみたいな高級な人渣は、友人関係を切り離すときまで制度的にやるのか。勉強になった。」
隣の軍官は今にも遺影になりそうな顔をしていた。
レオ・ヴィスラン大佐はただ静かに私を見ていた。
「拒否してもいい。」
その一言で、私は顔を上げた。
彼は両手を組んで机の上に置き、口調は平坦で、ほとんど残酷なほどだった。
「拒否すれば、元の三つの選択肢に戻る。軍功の核定を待って、通常配分。運がよければ一生駐点防衛兵。運が悪ければ、次に艦橋が撃ち抜かれたとき、誰も君を二度見しない。」
「受けたら?」
「忙しくなる。」彼は言った。「そして今より少し長く生きられるかもしれない。」
私は口角を引きつらせた。
この条件の提示方法は、本当に徹底して現実的だ。
名誉もない。理想もない。吐き気がするほど立派な言葉もない。
ただ、非常に連邦らしく、非常に実際的な取引だ。
——私のために働け。——その代わり、今より少し高い生存率を与える。
どんな愛国スローガンよりも誠実だと言わざるを得ない。
誠実すぎて、白眼を向けたくなる。
私は視線を書類から彼の顔に戻した。
この顔はやっぱり、過分に清潔で、過分に冷静で、私みたいな最悪な人生に現れるべきじゃない種類の顔だ。
本当に面倒くさい。
こういう、憎むにも論理が必要になる種類の人間が一番嫌いだ。
「大佐、」私は言った。「あなたみたいな人間は、ライトノベルだと大ボスか、前半十巻は死なない面倒なキャラのどちらかですよ。」
彼は私が何を言っているか明らかに分からなかったが、聞き返す気もなさそうだった。
「では、星野一等兵。」
彼は私を見た。その灰色の目は、嵐の一秒前の海みたいに静かだった。
「この転属命令を受けるか?」
私は赤枠の書類を眺め、今朝港で見たあのスローガンを丸めてこの白いビルの最上階の換気口に詰め込みたくなった。
唯有服役,方為公民(ゆいゆうふくえき、ほういこうみん)——服役してこそ、市民たり得る。
くたばれ。
私が生き延びるのは、誰かの市民になるためじゃない。ただまだ死にたくないだけだ。そしてこの巨大で白々しい絞肉機の中で、どこかに居場所を見つけなければならないなら——せめてナイフがどこから落ちてくるか見える場所にいたい。
私は手を伸ばし、その転属命令を自分の前に引き寄せた。
「先に言っておく、」私は顔を上げて彼を見た。「第一特別運用科が本当に私にコーヒーを淹れさせるつもりなら、わざと戦艦の冷却液みたいな味にする。」
レオ・ヴィスラン大佐は、今夜初めて最も人間らしい表情を見せた。
大笑いじゃない。ただ口角がごく軽く動いただけだ。
「構わない。」彼は言った。「元々甘いものは飲まない。」
……ちくしょう。
こんなタイミングで私の話を受けられる人間は、本当に面倒くさい。
そして本当に危険だ。
私は俯いて、赤枠書類の最下段にある確認欄を見つめた。胸の中に妙な感覚がある。
六A倉の、煙草と臭い靴下と安物の洗剤の匂いが混ざったあのドアから一歩踏み出して、もっと静かで、もっと清潔で、もっと巧みに人を食う場所に踏み込むような感覚だ。
前者はゴミ捨て場みたいなものだった。後者は手術台に近い。
でもどちらに横たわるのも、私だ。
私は電子ペンを手に取り、署名欄の上で半秒止まった。
それから、名前を書いた。
星野霜。
その瞬間、机の上の赤枠書類が自動的にロックされ、転属命令番号が一段繰り上がった。部屋の隅から極めて小さなシステム音が鳴った。機械が新しい部品を満足して飲み込んだような音だ。
レオ・ヴィスラン大佐は結果を一瞥して頷いた。
「よし。」
彼は振り返り、戦術観測窓のドゥナン防衛圏が再び点灯した。銀青色の天幕が輪を描いて広がり、冷淡で完璧な機械仕掛けの花のようだ。
「ようこそ、本当のB区へ、一等兵。」
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




