08. ヤバい男に目を付けられました 2
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
B区を抜けると、空気がまた変わった。
港区や外部の報到ホールには、まだ「人が多くてうるさい」という生きた人間の気配があった。でもここは完全に別物だ。
廊下は病院みたいに静かで、壁は手術室みたいに白く、行き来する人間も色が統一、表情が統一、足音が統一で、まるで同じ工場から量産された官僚型人類の群れだ。
壁の標識にはこう書かれていた。
統合作戦司令部/人員調整及び任務配置科
私はその文字列を見て、嫌な予感がした。
名前が長い部門は、たいてい碌なものじゃない。直接死地に送り込むか、送り込む前に三枚の誓約書にサインさせるかのどちらかだ。
私を迎えたのは一人の軍官だった。
軍官と言っても、擬態に成功した政府職員に近い。制服に一分の乱れもなく、肩章は眩しいほど磨かれ、髪は定規で角度を測ったように整えられ、笑顔は「政府はあなたを大切にしています」という錯覚を生成するのに最適化されていた。
正直言って、まったく必要ない。
この仕事は訓練を受けた猿でもできる。どうせ言うことは同じだ。
まず褒める。次に分析する。最後に連邦にとって一番コスパのいい場所に押し込む。
軍官が手を上げて私に座るよう示した。
「一等兵、星野霜。統合作戦司令部へようこそ。」
「はあ。」
私は座った。感激した顔を作る気はまったくなかった。
彼の笑顔は微塵も揺れず、むしろ少し柔らかくなった。
その柔らかさが、昔刑務所で見た徴募官を即座に思い出させた。
あれも同じ声だった。あれも同じ、人生設計を一緒に考えましょうという笑顔だった。違いは、あのとき背後に貼られていたのが「更生と服役は同じく誇らしい」という標語で、ここに掲げられているのが連邦軍旗だというだけだ。
結局、同じ包装紙だ。
「では、」彼は机の上の三つの電子ファイルを私の前に押し出し、にこやかに聞いた。「どのようにお考えですか?」
私はその三つの提案を見て、今すぐ立ち上がって彼の鼻梁を殴り割らないように、相当な自制力を発揮した。
一つ目は、政府傘下の評議会憲兵序列への転属だ。
タイトルを見ただけで笑いたくなった。
絶対にない。あの一番暖かい部屋に座っている連中の護衛に立てというのか?それなら帝国の主砲口に直接放り込んでもらったほうが、まだ死に様が綺麗だ。
二つ目は、駐点防衛兵だ。
これは要するに冷凍庫だ。一度入ったら人間の半分は終わる。毎日巡回、交代勤務、歩哨、報告書。運がよければ長生きできて、運が悪ければ退屈に死ぬ。連邦が「使えるが投資するほどでもない」人材を処分するための標準ゴミ箱だ。
三つ目は——
連邦艦艇兵兼陸戦隊適任序列(れんぽうかんていへいけんりくせんたいてきにんじょれつ)
私はその一行を二秒見つめ、口角を引きつらせた。
ちくしょう。
三つとも最悪だ。
これは選択肢じゃない。車に轢かれるか、火に焼かれるか、自分で飛び降りるかを聞かれているようなもので、しかも相手はにこやかに「ご自由にどうぞ」と言っている。
私は顔を上げ、彼を見た。
「一つ聞いていいですか。」できるだけ誠実な声で言う。「優雅にコーヒーを飲みながら出勤して、上官の書類を届けて、たまにスケジュールを整理して、暗くなる前に定時で帰れる、そういうのはないんですか?」
半分は嫌味のつもりだった。
ところが、彼は頷いた。
「あります。」
私は固まった。
……まじか。
本当にあるのか。
私は思わず少し前に身を乗り出し、目が〇・三秒だけ光った。
「本当に?」
軍官は私を見た。私がやっと人間らしい反応を見せたことに、少し満足したような顔だった。
それから、笑った。
さっきの型通りの愛想笑いじゃない。もう少し深く、もう少し危険な笑い方だった。
「あります。」彼はもう一度繰り返し、鋭い視線を私に落とした。「ただ、あなたにはまだ早い。」
空気が一秒、静まった。
私はゆっくりと瞬きをした。
なんだそれ。
「まだ早い」とはどういうことだ。
この言い方がおかしい。非常におかしい。連邦式の陰険な含意に満ちている。
普通の事務仕事に、こんな言い方をするか?
しない。
こう言うということは、その職位は「書類を届けてコーヒーを淹れる」仕事なんかじゃない。表向きは文書官、実態は上官の闇に葬るべき報告書を処理し、戦損の数字を洗浄し、戦死者名簿を書き直し、白い高層ビルの最上階に永遠に座っている連中のために、汚い命令を合法的な公文書に変える道具——そういうことだ。
つまり。
秘書は建前。道具が本音。
私は椅子の背もたれに身を預け、にこやかな男を見つめながら、心の中で彼と過去の徴募官たちを一緒に精神的な焼却炉に放り込んだ。
「率直に言いましょう、長官。」私は静かな声で言った。「連邦が最悪な選択肢を提供する安定性は、本当に尊敬に値します。」
彼の笑みは退かず、ただ指を組んで机の上に置いた。
「そして一等兵、あなたが危険な発言をする安定性も同様です。」
「お互い様ですね。」
私は机の上の三つの未来を眺め、ふと笑いたくなった。
外では十二基の天幕要塞が銀青色の光を放っている。純白の摩天楼は相変わらず清潔だ。標語は今後も「服役してこそ市民たり得る」と書き続けるだろう。
そして私は今、棺桶の引き出しみたいに冷たいこのオフィスで、三種類の絞肉機から一台を選んでいる。
連邦とは、本当に素晴らしい場所だ。
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「コーヒーを淹れるにも先に守秘義務の誓約書にサインが必要なんですか」という一言を彼の顔に投げつけようとした瞬間、机の左側のインターフォンランプが点灯した。
軍官は一瞥して、通話を繋いだ。
「はい。……了解。……今すぐ、ですか?」
それまで標準的な公務員のテンプレートから複製されたような笑顔が、初めて微かに変化した。
慌てではない。敬礼式の硬直でもない。「予定より事態が面倒になった」という、ごく細かな収束だ。
彼は通信ペンを置き、改めて私を見た。
「選ばなくてよくなりました、一等兵。」
私は椅子の背もたれに寄りかかり、面倒くさそうに片目を開けた。
「なんですか、連邦がついに第四の死に方を開発したんですか?」
「上からのお召しです。」
彼はそう言って、机の上の三つの配置提案を収納した。動作は鮮やかで、まるでさっきの人生の選択肢が最初から私がどれほど扱いにくいかを測るためだけのものだったかのようだ。
私は三つのファイルが机の上で三つの小さな光点に縮んでいくのを眺め、一つだけ結論を出した。
ちくしょう。
やっぱりな。
この場所のすべての扉の後ろには、また別の扉がある。安物のホラーゲームと同じで、唯一の違いは幽霊が軍服を着ていることだ。
「どなたですか?」
私は聞いた。
「行けば分かります。」
「なんと神秘的な。」私は無表情で言った。「サプライズを用意してくれることへの感謝を述べるべきですか?」
彼は私の声の刺を聞こえなかったかのように、「ついてきてください」と言った。
もちろん。
「ついてきてください」と言われて、いいことが起きた試しがない。子供の頃は先生に言われて職員室に連れて行かれた。刑務所では看守に言われて誰かに目をつけられた。連邦軍ではこの言葉の意味はおそらく——おめでとう、あなたの人生がより高い値段で再定価されます、ということだ。
私は立ち上がり、補給証を掴み、彼の後について部屋を出た。
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




