87. ペナルティ・テストは突然に 1
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
やはりだ。竹中曹長という人間は、ただの根に持つタイプではない。
「教育的意義」というやつを粉末にすり潰し、朝食に混ぜ込んで、尊厳ごと無理やり飲み込ませてくる種類の人間だ。
理由は単純だった。
前日の訓練室での流血事件――私が中等部のガキ大将を床に押さえつけて歯を叩き折り、DとKが「あと二発殴れば退役届を書くハメになる」という崖っぷちから私を引き剥がした、あの茶番劇――が、竹中曹長の、元々あまり豊富でなかった忍耐の残量を、私たち全員に対して著しく減少させたらしい。
だから翌日、保安部の授業が始まった瞬間、彼はホワイトボードに文字を書くことすら省いた。
講義資料と試験用紙の束を小脇に抱えて、そのまま教室に入ってきたのだ。
光景としては、至って普通だった。
普通すぎて、恐ろしいほどに。
なぜなら、大人が手にする最も恐ろしい武器は、銃でもアックスでもない時があるからだ。
紙だ。
とくに、分厚い紙の束。
訓練室の空気は、昨日よりずっと大人しかった。
大人しくするしかない。昨日の殴打事件の直後だ。私たち十一人が今日この部屋に足を踏み入れた瞬間から、「もう誰も、今日その場で爆発しないでくれ」という自制の気配がうっすらと漂っていた。Dが普段より二言ほど口数が少ない。それだけで、事態の深刻さは十分に証明されていた。
竹中曹長が前に立ち、手にした講義資料を机にパンと叩きつけた。
音は大きくない。
だが、部屋全体が一瞬で静まり返った。
彼は私たちを一通り見回した。
怒ってもいない。怒鳴りもしない。むしろ、ひどく穏やかとすら言える表情だった。
なのに、なぜか私は今すぐどこかに膝をついて反省文を書き始めたい衝動に駆られた。
そして、彼は口を開いた。
「融通を利かせてやれば、何でもありだと思いやがる」竹中曹長は言った。
……来た。
大人がもう道理を説く気をなくし、ただ清算だけを始める時の、あの独特な語調。それだけで、嫌な予感しかしなかった。
彼は手にした紙束をひょいと持ち上げ、戦利品を見せびらかすように私たちの前で一振りした。
「実戦練習をやりたくないなら、それでいい」彼はニヤリと笑った。「今回の近接戦闘考査は、筆記に変更する。一人でも不合格が出たら、全員再試験だ」
半秒の間があった。
それから、最後の一刺しを放った。
「ふふ、頑張れよ」
誓って言うが、その瞬間、訓練室にいた全員の魂が一度死んだ。
飛田艦長の恐ろしさは、こちらを高速空域に放り込み、回転しながら生き残れるかどうかを見るタイプのものだ。
竹中曹長の恐ろしさは、一段階上だ。
彼はまず、シールドの持ち方を教える。
次に、アックスの振り方を教える。
そして、「今日は少なくとも汗を流して殴り合えば乗り切れる」とこちらが油断したところで、静かに試験用紙を取り出し、こう告げる。
――来い、知識で互いをもう一度殺し合おうか。
Dが最初に崩れた。
「嘘だろ!?」椅子から跳び上がりそうになりながら叫ぶ。「近接戦闘が筆記試験?!これが連邦軍特有のブラックジョークってやつか!」
ハーヴィーは顔を手で覆い、声に絶望を滲ませた。
「ジェスにシールドで三発殴られる方がまだましだ。『標準六号戦斧の艦内狭所における持盾角度と圧歩原理を簡述せよ』なんか書きたくない」
「三発じゃ足りない」ジェスは腕を組み、昨日より険しい顔で言った。「無料で二発おまけしてやる。その代わり筆記は取り消してくれ」
「その言葉には感動した」Dが返す。「感動しすぎて、お前の遺書なら代筆してやってもいいが、試験の答案は代筆できない」
蘭は隣で冷静に講義資料の一ページ目を開いた。最初のページを見ただけで、眉が実に魂のこもった動きをした。
「『気化爆薬環境下で取ってはならない五つの誤対応』まで記述問題になってる」彼女は言った。「これは考査じゃない。報復だ」
「違う」真紀が私の隣で、すでに冷静に後のページをめくりながら言った。「制度化された報復だ」
私は彼女の方へ首を傾けた。
「そういうことを言う時、なんでいつもそんなに平然としてるの」
「感情は答案の助けにならないから」
「……あんた、本当に生きてる人間を慰めるのに向いてない」
「慰めてるんじゃない」真紀は淡々と言った。「連帯再試験制度の下で、お前が今日不合格になったら、全員に先に殺されると教えてるだけだ」
私は手元の講義資料に目を落とした。
一ページ目のタイトルは、実に端正な字体で書かれていた。
『連邦軍艦内近接防御及び反制基礎概論』
その下に、副題がある。
――延命を第一目的とした戦術実施について。
その場で汚い言葉を吐きたくなった。
平常なら、「連邦軍は殴り合いを学術シンポジウムみたいに書くのが好きだな」と突っ込みながら読む余裕くらいあっただろう。
だが今は違う。
今は「私が不合格になって、私一人が恥をかく」話じゃない。
「私が不合格になれば、全員道連れ」の話だ。
連邦軍が最も得意とすることの一つは、集団的圧力を、合理的かつ人の胃をねじ切るような形で設計することだ。
竹中曹長は、私たちの全員便秘状態の顔を見て、明らかに満足していた。
試験用紙をパンと机に配りながら、その語調はひどく穏やかだった。
「安心しろ、範囲は広くない」彼は言った。「講義資料はちゃんと配ってある。覚えればいい。昨日、あれだけ元気で、あれだけ場を盛大にしてくれた連中なら、今日もきっと学習意欲に満ちているはずだ」
Dが今にも息絶えそうな声で呟いた。
「昨日、星野に一緒に壁へ叩き込まれてた方が、今より幸せだったかもしれない」
「お前がもう半拍遅れてたら」ハーヴィーが言う。「今日は試験を受けずに済んでたぞ。医療ポッドの中で暗記の呪文でも唱えてたはずだから」
「そこが問題じゃない。竹中曹長がどうして笑顔で『ふふ、頑張れよ』なんて言えるかが問題だ!」Dは傷ついた顔で言った。「あの語調、戦斧で追いかけられるより怖いぞ!」
アカリは正直に俯いて講義資料をめくった。
「知識体系として見れば、この資料、よく整理されてる」
「今、あんたどっちの味方なの」思わず聞いた。
「再試験を受けたくない側」
……完璧な答えだ。反論の余地がない。
竹中曹長は、それ以上私たちに足掻く時間を与えなかった。
試験用紙を置くと、後ろ手に手を組み、爆弾を投げ終えて優雅に立ち去ろうとするろくでもない大人のように振り返った。
「一コマ自習。そのあと小テストだ」彼は言った。「私は他の班を見てくる。ゆっくり噛み締めておけ。防御の第一歩が、まず頭を使うことだということをな」
言い終えると、本当にそのまま踵を返し、部屋を出て行った。
ドアが閉まる。
空気が半秒、静止した。
次の瞬間、訓練室が爆発したように、全員が一斉に竹中曹長の父母と先祖に挨拶を送り始めた。
「人間のやることじゃねえ!」Dが最初に机を叩く。
「昨日の『飛田より優しい』発言は全部撤回する」ハーヴィーが言った。「あの二人は、専門が違うだけの悪魔だ」
「今なら飛田艦長に謝ってもいい」ジェスは険しい顔で講義資料をめくりながら言う。「あの人が人を痛めつける時は、少なくとも推進機を使う。択一問題は使わない」
ロイのこめかみに、青筋が浮き出かけていた。
「なんで近接戦闘の試験で『標準防爆シールドの近距離における三種の典型的誤用を挙げよ』なんて出るんだよ!」彼は言った。「こういうのは殴って覚えるもんじゃないのか、暗記するもんじゃなくて!」
蘭が平坦に一刺しした。
「昨日、あなたがその三種の誤用の見本市みたいに見えたから」
「……そのツッコミ、もう少しタイミングを選んでくれない?」
アッシュは椅子の背にもたれ、相変わらず淡々と言った。
「少なくとも今分かったのは、竹中曹長が昨日『まず手を動かしてみろ』と言った時、それは見逃してくれるという意味ではなかったということだ」彼は言う。「処刑を延期しただけだ」
「そんな正論、言わないでくれ」私は額を押さえた。「余計に絶望するから」
真紀はすでに講義資料の余白に印をつけ始めていた。
ページをめくる速度が異常に速い。精神的な折檻の最中でさえ、他人より効率的に見えるその姿が、腹立たしい。
私は横目でちらりと見た。
「もう要点を押さえてるの?」
「他に何がある」
「怒ってないの?」
「怒っても再試験の確率は下がらない」真紀は言った。「それに、Dと一緒に再試験を受けたくない」
Dが即座に顔を上げた。
「なんで俺がピンポイントで名指しされる?」
真紀は公文書を読み上げるような平坦さで言った。
「お前が一番、記述問題に『とりあえず殴ってから考える』と書きそうな人間だからだ」
「……それも一種の実戦精神と言えなくもないだろ」
「集団自決精神とも言うわね」ジェスが冷笑した。
私はこの連中が罵倒しながら講義資料をめくり、極めて非軍人的なやり方で互いを傷つけ合っている様子を眺めながら、ふと、連邦軍というのは本当に大したものだと思った。
昨日まで殴り合っていて、今日も竹中に腹を立てている連中を、「文句は言うが誰も読まないという選択肢は取れない」という状態に強制的に追い込む。この制度設計は、控えめに言って病んでいる。
そして不幸なことに、私はその病巣のど真ん中にいる。
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第二の病は、また別の種類のものだった。
しかも、自分で足を生やして歩いてきて、突然ひどく礼儀正しくなるという種類の病だ。
事の発端が誰の仕業なのか、私は今でも知らない。
分かっているのは――どこの馬鹿か知らないが、私の個人ファイルを勝手に盗み見た奴がいる、ということだけだ。
そこから先は、区画の与圧が漏れた時と同じで、もう誰にも止められなかった。
最初は、中等部のガキ数人の私を見る目つきがおかしいだけだった。
昨日のような「この先輩、からかえそうだな」という値踏みではない。何か……微妙な、好奇心と畏敬、そしてほんの少しの「マジで?」が混ざった視線だ。
続いて、噂が足を生やし始めた。
最初のうちは、まだ控えめだった。
「星野霜って先輩、以前本当に前線に出てたらしい」
「普通の学生じゃないって聞いた」
「昨日歯を折られたあいつ、地雷を踏んだんだ」
それが転がっていくうちに、どんどん膨れ上がった。
最終的には、私自身がその噂を広めた人間に拍手してやりたくなるレベルに達していた。
なぜなら、半分は事実で、もう半分は小説みたいにリアルだったからだ。
「あの人、昔、帝国の戦艦に斬り込んだことがあるらしいぞ」
「違うよ、艦ごと敵を粉砕したんだって!」
「敵艦を、自分で無理やり突っ込ませて開けたって聞いたぞ!」
「マジで!?」
「じゃなきゃ、昨日あんな目に遭うわけないだろ」
……いや。
ちょっと待て。
最後の一文だけは、あながち間違いでもない。
だが問題は、本来なら紙のファイルに収まっていて、権限を持つ大人しか読めないはずの前線記録が、今や中等部の間で都市伝説のように流通していることだ。これがまともなはずがない。
まったくまともじゃない。
だが、雪風という艦で一番不足していないものが、まともじゃない出来事だ。
かくして、中等部の連中の私に対する態度は、非常に劇的な変化を遂げた。
前日まで、私をからかえるかどうか目で測っていた連中が、翌日から私が廊下に、食堂の入口に、訓練区画の近くに姿を見せるだけで、あれほど口の減らなかったガキどもたちが自動的に姿勢を正すようになった。
「せ、先輩……お疲れ様です」
「星野先輩、おはようございます」
「どうぞ、お先に!」
通路の真ん中でトレイを持ったまま、私は自分がいつの間にか別の艦に迷い込んだのではないかと本気で疑った。
この光景を見たDの第一反応は、飲んだばかりのスープを噴き出しかけることだった。
「嘘だろ」彼は咳き込みながら笑った。「お前、今や血の匂いのするフィルター付きになったのか?」
「フィルターなんてぬるいもんじゃない」ジェスが食卓に寄りかかり、実に悪い顔で笑った。「恐怖伝説の具現化よ」
ハーヴィーは額を揉みながら、至極真面目な顔で言った。
「正直に言うと」彼は、私に道を譲ろうとして互いにぶつかりそうになっている中等部の生徒たちを眺めながら言った。「昨日の一件で、一番効果的だった教育成果が、お前が突然校内怪談になることだとは、思いもしなかった」
「連邦軍艦内に伝わる血染めの先輩」Dがすかさず続けた。「伝説によれば帝国の戦艦に斬り込み、艦で敵を粉砕し、素手で人の歯を叩き折るという――」
「黙れ」私は言った。
「ほら、制止する語調にまで迫力が増してる」彼は感動した顔で言う。
真紀は向かいに座り、ゆっくりと講義資料を次のページへめくった。
「昨日みたいに、皆に囲まれてジロジロ見られるよりはましだろう」彼女は言う。
「その言葉の前提は、私が今、艦内を徘徊する怨霊みたいになってるってことなんだけど」
「効果は出てる」真紀は言った。
……くそ。
完全には反論できないのが腹立たしい。
そして最も極端なのは、当然、あのガキ大将だった。
正確に言えば、元ガキ大将だ。
あの一件以来、彼の覇権は、彼の歯と一緒に叩き飛ばされたも同然だった。
艦内のどこで私と鉢合わせても――廊下でも、食堂でも、補給所でも、あるいは通路の向こうにわずかに私の影が見えただけでも――彼はまず硬直する。
続いて、顔から血の気が引く。
そして、悲鳴を上げる。
そう、悲鳴だ。
比喩ではない。
本当に文字通りの悲鳴だ。
「ひいいいいい――!」
それから、きびすを返して走る。
一度など、私がトイレの外の角を曲がっただけで、手にはちょうど洗い終えたハンドジェルを持っていただけなのに、あいつは私を見た瞬間、幽霊でも見たかのように後ずさり三歩、ゴミ回収箱を蹴り倒し、悲鳴を上げながら走り出し、勢いで靴が飛びかけた。
廊下中の全員が立ち止まって私を見た。
私はその場に立ち尽くし、ジェルを押し出す姿勢のまま、連邦軍はいつから艦内でこういうトラウマの標本を養殖し始めたのかと問い詰めたい気分だった。
Dは壁に手をついて笑い転げた。
「駄目だ」彼は壁を叩きながら喘いだ。「これは本当に駄目だ。あいつの中でお前はもう人間じゃない。戦術的災害だ」
ジェスは腕を組んで傍らに立ち、口の端を高く引き上げた。
「いいんじゃない」彼女は言った。「少なくとも、人を見たら逃げるってことだけは学習したみたいだし」
「あんたたち、少しは同情心ってものがないの」私は言った。
「あるよ」ハーヴィーが言った。「あいつよりお前への同情の方がずっと多い」
「比べ物にならないくらい」アカリが真面目な顔で付け加えた。
私は眉間を揉みながら俯き、自分の人生がますます説明のつかない軍艦校内伝説になりつつあることを感じた。
よりによって最悪なのは――これが案外、機能しているという事実だった。
中等部の連中は元々、うろちょろと動き回り、限界線を試したがる小型生物の群れみたいなものだった。それが今や、私から漂う出所不明の「血染めの前線伝説」の匂いを嗅ぎつけただけで、態度が揃って三段階は改まる。
以前は――
「おい、あの人が昨日の――」
今は――
「すみません、先輩。お先にどうぞ」
以前は――
「マジで?あの人そんなにヤバいの?」
今は――
「星野先輩がいる。静かにしろ」
引率の教員の目つきさえ、「昨日生徒の歯を折った本人」から、「……少なくとも、お前の近くにいると中等部は自分から秩序を守る」へと、じわじわ変わっていった。
この結果を、泣くべきか笑うべきか、本気で迷う。
真紀のコメントは一言だった。
「いい」
「どこがいいの」
「管理コストが下がった」
「あんた、本当に竹中曹長と共感力ゼロのコンビを組んだ方がいいよ」
「違う」真紀は私を一瞥した。「私は少なくとも、他人のファイルを盗み見はしない」
……それは、さすがに効いた。
私は顔をそらし、思わず笑ってしまった。
次の瞬間、Dが即座に顔を突き出してきた。
「おっと、笑った笑った」彼は言った。「各位注目。血染め先輩、九島限定版の表情を解禁」
「D」私は誠実な目で彼を見た。「あんたがもし死ぬなら、十中八九戦死じゃない。私とジェスに共同で埋められるはずだ」
ジェスが傍らで頷いた。
「その証言はしてあげる」
Dは傷ついた顔で胸を押さえた。
「お前たち二人にそれをされると、仲間外れにされてる危機感がすごいんだが」
ハーヴィーは冷静にスープを一口飲んだ。
「危機感じゃない」彼は言った。「常識だ」
テーブルが再び笑いに包まれた。
私はそこに座って、少し離れた場所で私を見た瞬間に音量を自動的に落とし、歩き方まで礼儀正しくなる中等部のガキどもを眺めながら、ふとひどく馬鹿げた結論に達した。
雪風号には、教育が二種類あるらしい。
第一は、竹中曹長の講義資料と試験用紙。
第二は、ガキ大将を床に押さえて歯が飛ぶまで摩擦すること。
不幸なことに、後者の普及効率の方が、明らかに高い。
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




