79. イレギュラー・パルス 1
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
諸君、私は今、艦長席に座っている。
「ふふ……」
正直に言って、これは私のせいじゃない。
雪風の艦橋は夜になると、本当に誘惑的すぎる。前方一面の強化観測窓の向こうに広がる、現実とは思えないほど静かな星海。コンソールを取り囲む冷白と淡い青の作業灯が、空間全体を高級で冷酷な夢のように切り取っている。そしてその中央に、この夢の玉座がある——少し高く、少し広く、位置が良すぎるほど良くて、肘掛けにさえ「座ったなら、この艦全体に責任を取れ」という傲慢さが滲み出ている。
そして私、星野霜は、当然こういう「一瞬だけ中二病が発症する」瞬間を見逃せるわけがない。
というわけで、私は何も考えずに飛田艦長が脇に掛けておいた予備の制帽を取り上げ、頭に被り、その艦長席に腰を下ろし、足をすっと前へ伸ばした。
……うん。
それっぽい。
少なくとも三十パーセントくらいは、それっぽい。
作戦図と、私の滅茶苦茶な指揮に振り回される人員が揃えば、今すぐ「宇宙艦隊最高司令官が朝食前に文明を救う」の即興劇を一本撮れそうな気がした。
「星野、ふざけてないで早く来なさい」
真紀は航法台の前に立ち、こちらを完全に振り向きもせず、「もう余計なコメントをする気力もない」という声で言った。
私は即座に手を上げ、まったく不必要な制止のジェスチャーをした。
「ノーノー、呼び方が違う——大艦長・星野元帥、九島二等兵」
真紀がようやく振り向いた。
その目が、ひどく平静だった。
平静すぎた。
嵐の前の海面みたいに。
「いいから聞きなさい」彼女は一語一語を切り出すように言った。「その中二を続けたら、一生後悔させてあげる」
……これは冗談じゃない。
私は口元の欠けた笑いを素直に引っ込め、それでも一言だけぼやいた。
「まったく、ユーモアのかけらもない」
艦長の制帽を元の位置に戻し、艦長席から飛び降りた。ところが、さっきまで得意になって座っていたせいか、降り方が甘くて着地が決まらず、艦橋の真ん中で「新任元帥、就任当日に殉職」を演じそうになった。
真紀が素早く手を伸ばし、私の手首をしっかり掴んだ。
「……ありがとう」
「自業自得」彼女は手を放し、冷淡に言った。「ふざけるにしても、安定感がない」
「あなたは褒めて伸ばす教育には向いてないわよね」
「あなた艦長席をおもちゃにするのには向いてない」
言い返そうとしたとき、艦橋の中で、軽い、しかし鋭い通知音が鳴った。
ビッ。
大きな警報ではない。
艦全体を叩き起こすような赤色警報でもない。
ただ、非常に嫌な種類の音だった。「何もないかもしれない」と「すぐ確認したほうがいい」の境界線上にある、あの音だ。
私と真紀は同時に止まった。
次の瞬間、右側のレーダー副ディスプレイに黄色い枠点が跳んだ。
艦橋の空気が、誰かに手で一気に絞られたようになった。
真紀の表情が、その瞬間に変わった。
慌ててでも、険しくなったわけでもない。
さっきまで私と言い合っていた彼女が、自分の内側へ引っ込んで、数時間前の当直中に見た、あの別の版の真紀に切り替わった。
「席に戻って」彼女が言った。
相談ではない。
命令だった。
私はほとんど反射で動いた。二歩で副席へ戻り、当直ボードと手冊を同時に広げる。真紀はすでにレーダー主制御の前に立ち、指先で素早く画面を切り替え、黄色の接触点を主側面ディスプレイへ拡大していた。
「右後方三十五度、距離八千六百」彼女は数値を見つめ、速いが一語一語がはっきりした声で言った。「相対速度は低い。識別コード、空白」
胸の奥が沈んだ。
識別コード、空白。
つまり、システムが友軍の正規航跡として処理していないということだ。
「船団内のノイズじゃない?」手冊をめくりながら訊いた。
「わからない」真紀はきっぱり言った。「だから、まず推測しない」
副レーダーのフィルタをもう一層切り替えると、黄色の枠点が画面の上で一度点滅し、消えなかった。前より、むしろはっきりした。
……まずい。
単純な画面ノイズではない。
私はすぐに当直手冊の接触異常処置のページを開き、目を走らせた。
「黄色灯が三回連続点滅する前に、まず三項目の複核を行う——」読みながら声に出した。「隊形照合、航路重複比較、窓外目視と副センサーの交叉確認」
「やって」真紀が言った。
即座に船団相対位置表を引き出し、右後方三十五度の方向を一列ずつ確認していく。
補給艦、輸送艦、護衛艦、すべての正規マーカーが揃っている。だが、あの黄色い点の位置は、登録済みのどの航跡とも一致しない。
「隊形表にない!」私は言った。
「わかってる」
真紀の声は変わらず安定していたが、さっきより一段低くなっていた。左手でモード切替を押しながら、右手はすでに光学補助ウィンドウへ画面を同期させていた。
「星野、前窓の右下へ。外を見て。ディスプレイだけ見ない」
すぐに立ち上がり、観測窓の右側補助観測位置まで駆けた。彼女が報告した方角に沿って、右後方の星域を見る。
最初は何も見えなかった。
ただ、肌が粟立つほど静かな星の光と、遠くで黒の中に釘付けにされたような船団の細い灯りだけがあった。
それから、見えた。
船ではない。
少なくとも、船には見えない。
右後方のやや下方、非常に弱く、不規則な反射光が、時折明滅しては向こうへ消えていた。表面が不均一な金属物体が、ゆっくり回転しているような光の動きだった。
背筋に走るものがあった。
「何かある!」振り向いて叫んだ。「完全な船体じゃない、破片みたいな——いや、コンテナみたいな形! 回ってる!」
真紀は聞いた瞬間に、光学拡大の倍率をさらに上げた。
ディスプレイ上の黄色接触点が、より細かい輪郭推定値を出し始めた。
長形。非対称。姿態不安定。相対推進特徴、極めて低い。
真紀の目が、わずかに細くなった。
「能動的接近目標には見えない」
「漂流物?」私は訊いた。
「可能性はある」彼女は言った。「でも、まだ安心しない」
そのとき、内部報告灯が二度点滅した。
主通信ではない。
船団データ同期の付帯メッセージだ。
私は副席へ戻り、遅れて入ってきたテキストメッセージを開いた。
内容は短かった。
後列輸送艦第十七号:外部装着補給固定架に異常、確認中。
その一行を見た瞬間、頭の中で線がつながった。
「真紀!」
「言って」
「十七号輸送艦が外部装着補給固定架の異常を報告してる!」画面を指した。「もし何かが脱落したなら——」
言い終わる前に、彼女はすでに十七号輸送艦の相対位置を引き出し、あの黄色い点と直接ベクトル重合をかけていた。
二本の線が副ディスプレイの上で、非常に近い位置で交差した。
極めて近かった。
真紀の目が、一段沈んだ。
「発生源、ほぼ一致」
心拍が一段上がった。
「じゃあ、脱落した補給モジュール?」
「または外部装着コンテナ、整備箱、装備パック」彼女の声はさらに速くなった。「種類は関係ない。重要なのは、今それが船団の航路付近で回転してるってこと」
私はすぐに手冊の次のページへ目を落とした。
「未識別漂流物に遭遇した場合、まず規模と脅威レベルを分類し、当直長に上報する——」
読みかけて、自分で止まった。
……待って。
当直長って、今、私たちじゃないか?
いや、正確に言えば、今この艦橋には、私と真紀以外、本当に誰もいない。
その現実が、この瞬間に急に具体的な重さを持ってきた。
顔を上げて彼女を見た。
「人を呼ばないと」
「そう」真紀は言った。「でも、先に言えることを整理してから」
これが彼女の強みだ。
状況が起きたからといって、ただ叫ぶだけではない。叫ぶ前に、相手が必要とするものを先にまとめておく。
彼女は素早く指示を出した。
「星野、今の時刻、方位、距離、相対速度を記録。それに一文追加——十七号輸送艦の外部装着物脱落の疑い、姿態不安定、自動信号の有無未確認。私は橋楼当直内線を開く」
「了解!」
ペンを走らせた瞬間、頭がさっきより澄んでいた。
時刻。方位。距離。速度。判断根拠。
一行ずつ書き込みながら、自分が完全に混乱しているわけではないと気づいた。それどころか、どこかに忌々しいほど冷静な興奮があった。出来事を期待していたわけじゃない。ただ——本当に夜間当直でこういうことが起きるんだ、という実感だった。手冊は脅し用じゃなかった。あの退屈で、欠伸が出そうな照合と記録の積み重ねが、全部この瞬間のために準備されていたんだ、という実感。
真紀はすでに内線を繋いでいた。声はいつもより短い。
「艦橋当直報告。右後方三十五度に未識別接触を発見。距離八千六百、低相対速、識別コード空白。光学観測で回転するコンテナ状物体と推定、後列第十七号輸送艦の外部装着固定異常報告と発生源を比較、脱落した補給または装備モジュールの可能性あり。当直士官および艦長の艦橋帰還を要請します」
一拍置いて、向こうの応答を聞き、もう一言付け加えた。
「現時点で能動推進特徴なし、敵性未判定。ただし位置が船団外縁に接近しており、後列への警戒修正の即時通知を推奨します」
ペンを握ったまま、心の中で彼女に拍手を送っていた。
あの言葉は、あまりにも無駄がなかった。
無駄がなさすぎて、彼女が最初からここに立つべき人間だったみたいに聞こえた。
通信が終わると、彼女は緩まずに私を向いた。
「書けた?」
「できた」
「漂流ベクトルも補って」
一瞬止まった。
「まだ計算してない——」
「完全に計算しなくていい。三回の点滅位置を見て」彼女はディスプレイ上でゆっくり回転している光点を指した。「自力推進じゃない。漂流は船団の後流と相対重力差に沿う。まず方向を掴んで。変化率は私が見る」
この瞬間、私は本当に彼女を見直した。
さっきの「艦橋に立てる人間みたいに見える」という程度じゃない。
もっと直接的なことだった——彼女は本当にできる。
慣れているとか、安定しているとかじゃない。状況が来たとき、人もことも、最初から正しい位置に並べて、混乱が育つ前に潰してしまえる。
「右下方向へ偏ってる」光点の三回の点滅位置を追いながら、素早く報告した。「直線じゃない。少し内側に切れ込んでる」
「私も同じ見方」真紀の指先がディスプレイ上を流れ、予測線を引いた。「後列船が変針しなければ、二十分以内に第三補給列の安全境界に入る」
胸が跳ねた。
「じゃあ、『何かが漂ってる』じゃ済まなくなる」
「そう」彼女は言った。「『誰かがそれを避けなければならない』になる」
言い終わると同時に、艦橋のドアが滑り開いた。
飛田艦長が戻ってきた。速かった。まるでそれほど遠くへ行っていなかったかのように。後ろにはマンニ大尉と、私が見たことのない夜間当直士官らしい男性士官が続いていた。
飛田艦長はドアをくぐった瞬間、最初の一言だけ言った。
「状況」
真紀は半秒も止まらなかった。
さっき整理した報告を、もう一度繰り返した。今度はさらに簡潔で、さらに鋭かった。私は隣に立ち、彼女が飛田艦長とマンニ大尉に向かってその数言を告げる様子を見ながら、ひどく奇妙な感覚を覚えた。
昼間は甲板の上で、眼差しひとつで中等部の男子生徒を凍りつかせていた。午後は訓練場で私の重心を修正していた。さっきは艦長席でふざけていた私を叱っていた。
なのに今、彼女はここに立ち、艦橋のちょうど真ん中で、誰かに特別に声を張るわけでもなく、状況を過不足なく伝えていた。判断根拠まで、一本も欠けていなかった。
飛田艦長は聞き終えて、一度だけ頷いた。
「よし、うまく繋いだ」
それから私を向いた。
「星野、続けて」
心臓が一拍跳ねた。
「はい」
私は当直ボードを前に差し出し、自分が目視した特徴、回転する反射光、それから遅れて届いた十七号輸送艦の異常報告を、一緒に告げた。途中で気づいたのは、自分がほとんど詰まっていないということだった。
急に上手くなったわけじゃない。
ただ、さっきの数分間で、真紀がすでにリズム全体を引き上げてくれていた。彼女は私の代わりに全部やったわけじゃない。私がどこに立って、何を見て、どう言えばいいかを、先に示してくれていた。だから私が口を開いたとき、漂流木を掴もうとしているのではなく、本当に手に取れるものがあった。
マンニ大尉は聞き終えて、低い口笛を吹いた。
「見張り組、やるじゃないか」
「今この呼び名、屋上で幽霊待ちの感じがしなくなってきた」と言いたくなるのをこらえた。
飛田艦長はすでに中央席に座り、指先で肘掛けを軽く叩いた。声は、仕事に入ると自動的に余分なものを削ぎ落とすあの調子に戻っていた。
「マンニ、レーダーを引き継いでくれ。後列への通報、第三補給列は予防的変針。当直士官、この漂流物を警戒図に標記、黄二で掛けろ。それと——」
私と真紀を見た。
その目は重くはなかった。それでも、私は無意識に少し背筋を伸ばした。
「二人とも残れ。最初の状況を掴んだのがお前たちなら、後続まで見届けろ」
「はい」真紀が先に答えた。
私もすぐに続けた。「はい」
飛田艦長はそれ以上何も言わず、次の命令の連鎖に入った。艦橋の光は変わらず、星海も変わらなかったが、場の節奏は別物になっていた。人が増え、声が入ってきた途端、それまでの静かな当直の薄い圧が、本物の仕事の密度へと締まった。
私は副席の脇に立ち、前方のディスプレイ上で正式に標記され、正式に処理され、正式に雪風の夜航判断の中に組み込まれていくあの小さな黄色い接触点を見つめながら、一つのことをはっきりと理解した。
さっきの数分間は、演習ではなかった。
シミュレーションでも、授業でも、「昨夜艦橋に上がった」と人に話すための観光でもなかった。
私たちが初めて、この艦の神経の上で、本物の何かに触れた瞬間だった。
大きくはない。
戦闘でもない。本当の意味での危機にも届かなかった。
だからこそ、これが雪風のやり方だと思った。最初から大事を与えるのではなく、心拍を上げるには十分で、力量の差を見せるにも十分な、夜間の小さな異常を使って、こう告げる——
ようこそ、本物の艦橋へ。
私は無意識に横を見た。
真紀は二歩と離れていない場所で、さっきの判定根拠を書き足していた。冷たい光の中で、その横顔はひどく静かだった。彼女は私を見ていなかったが、半時間前の私の目には映らなかったものが、今は見えていた。
彼女が変わったわけじゃない。
私が、ようやく本当に見たのだ。
まるでその視線に気づいたように、最後の一画を書き終えた後、彼女がわずかに顔を傾けた。
「何見てるの?」
半秒止まって、正直に答えた。
「さっき危うく失くしかけた自分の尊厳が、あなたに拾い戻してもらったかどうか、確認してた」
真紀は一秒黙った。
それから、ほとんど渋々というように、ごく小さく言った。
「さっきは悪くなかった」
その場で固まった。
……待って。
これはもう、三層の装甲と二枚の防火扉から辛うじて漏れてきた話じゃない。
正式な褒め言葉じゃないか。
彼女が熱でも出したのか確認しようとした瞬間、艦橋の右側からまた新しい報告音が入り、夜航当直はまだ終わるつもりがないことを知らせてきた。
私は深く息を吸い、ペンを握り直した。
今夜は、もう「ただの当直」では済まないとわかっていたから。
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




