76. 臨時の雑用係 2
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
中等部の見学組が乗艦するというのは、つまり少し賑やかな子供たちが数列に並んで、先生と士官に缶詰みたいに乗艦口から雪風に流し込まれる程度のものだと思っていた。
現実は違った。
本当の百人超えの中学生は、人数ではない。
現象だ。
災害警戒レベルで言えば「局地的豪雨」と「港区鳥類一斉暴走」の間に位置する、生きた事案だ。
私は上甲板の縁後方に立ち、接舷通路の向こうから制服の色は揃っているが動きはまったく揃っていない子たちが潮のように押し寄せてくるのを眺め、最初に浮かんだ感想は「多い」ではなく——
——終わった、この艦が汚れる。
物理的な汚れではない。
秩序上の汚れだ。
前の数列はまだまともで、明らかに先生に首根っこを押さえられて維持されている隊形だった。中段から先は人類の幼体による自由発展現象が随所に発生していた。歩きながら雪風の艦体を仰いで前の同級生に激突しそうになっている者、隣の人間をこっそり突っついている者、端末で盗撮しようとしている者、乗艦通路に踏み込んだ最初の一秒から全身に「絶対すぐやらかす」と書いてある者——。
「……これが国家の未来を引き受けるということか」Dが私の隣で両手をポケットに突っ込み、帝国滅亡の前兆を観察するような荘厳な口調で言った。「ただ、この未来はちょっとうるさい」
「未来じゃない、天罰よ」ジェスが無表情で言った。
「自分のことを棚に上げてよく言えるね」私が振り返った。
「自覚があるから言えるの。私は洗練された天罰、彼らは量産型よ」
「その分類、細かすぎる」
真紀は何も返さず、通路の方へ視線を一度流しただけで、眉がすでに軽く寄っていた。嫌悪ではなく、大量の頭痛の種が批次ごとに届きつつあるのを見るときの顔だった。
アイダ、エヴリン、アッシュもこのとき前列に呼ばれ、私たちと合流していた。アイダはいつも通り場を押さえる雰囲気で腕を組み、この災害にどの角度から切り込むのが一番省エネかを見定めているような顔をしていた。エヴリンはアイダの隣に立ち、笑っているのだが、その笑顔の中に危険な安定感があった——誰かが目の前で崩れたら、笑顔のまま秩序の中に折り返してやるという類の安定感だ。アッシュはすでに端末を見下ろし始めていた。昨日提出した実習計画書が今日から自分への天罰に変わりつつあることを、一口で理解させられたような顔だった。
案の定、竹中曹長は誰にも息を吐く暇を与えなかった。
一歩前に出た。声が朝霧を軍刀のように断ち割った。
「一四四班、聞け!」
私たち十一人はほとんど反射的に背筋を伸ばした。
「今から、お前たちは見学員ではなく臨時補助管理要員だ。任務は単純——先導、人数確認、監視、揉め事の芽を潰すこと」竹中曹長の視線が私たちの顔を一人ずつ流れた。工具箱の器材に番号を振るような目だった。「昨夜よく眠れたかどうかは聞かない。朝の汁に肉が入っていたかどうかも聞かない。中等部の生徒が乗艦したら、隊列を崩すな、人数を欠かすな、口はうるさくていい、足は勝手に動かすな」
ジェスの目尻が引き攣った。
……なるほど、この人は朝食の情報まで把握済みだった。
竹中曹長が続けた。
「編成。アイダ、エヴリン——前導と女子列担当。ロイ、蘭——中段秩序。ハーヴィー、アカリ——後段、落伍者を見ろ。Dとジェスは左側通路合流点に入り、堵め。星野、九島真紀は俺と一緒に中線の死角処理。アッシュは残れ、クリップボードを持て、俺と人数照合だ」
アッシュがその場で顔を上げた。
「俺ですか?」
「文句があるか?」
「……ありません」
「ならしっかり持て。数が乱れたら、最初にお前の責任だ」
隣で笑いそうになるのをこらえた。
計画書を提出した人間は最終的に現場の書記に引っ張られる——この世に書かれ損の書類はなく、ただ早く来すぎた天罰があるだけだ。
ジェスは明らかに自分の編成に不満だった。
「ちょっと待って、なんで私がDと同じ組なの?」
Dが自然に両手を広げた。
「宇宙はバランスを必要としているから」
「私が保母に見えるってこと?!」
竹中曹長は頭も向けず、直接返した。
「マッカロウ、お前は保母じゃない。迎撃網だ。一番速く走る何人かが最初にぶつかるのがお前だ」
Dがその場で声を立てて笑った。
「この役職名、気に入った」
ジェスの口角が二度引き攣り、最後は不満を飲み込んで低く一言だけ吐いた。
「……朝食、もう一杯食べておくんだった」
「今からじゃ遅い」私は言った。
真紀が私を淡く一瞥した。
「まだ軽口を叩いてる余裕があるなら、後で最初に小鬼に飲み込まれないようにね」
「ちょっと、私ってあなたの目にそんなに頼りなく映ってるの?」
真紀は考える間もなかった。
「昨日、八人部屋でトランク引いたとき、手を挟んでたじゃない」
「あれは地形の問題よ」
「あなた自身も問題の一部だった」
……そうだ、今日も同じだ。
艦がまだ完全に出港していないのに、私の人格的尊厳はもう真紀に定例的に半分沈められていた。
竹中曹長は私たちに雑談の時間を与えなかった。
大きく手を振った。
「各自、定位置に就け。生徒が乗艦したら、まず隊列を収め、それから分流する。繰り返す——まず隊列を収め、それから分流する。主通路で隊列を散らした者には、連帯報告書の書き方を教えてやる」
私たちはすぐに散った。
私と真紀は竹中曹長と一緒に中線位置に移動し、乗艦口から入った直後の最初の大合流点に正対した。そこは左右それぞれ艙内主通路と昇降機区に繋がっており、「あっちは何?」「そっちも見れるんじゃない?」という声が上がって子たちが鳩の群れみたいに一斉に炸裂しやすい地点だった。
立ち位置を決めた瞬間、第一陣の中学生が連れてこられた。
そして三十秒以内に、なぜ竹中曹長が開口一番「堵め」と言ったのかを完全に理解した。
本当に、自分たちで散るのだ。
前列はまだ先生について歩いているのに、後列ではすでに二人の男子が艦体を仰ぎながら右側の手すりに激突しかけていた。三人の女子が甲板の反対側に停まっている補給作業機を見て「ちょっとちょっとちょっとあれってモビルスーツじゃない?」と集団で叫んでいた。特別に細い子が一人、甲板に踏み込んだ瞬間から端末を目の高さに上げて撮影しようとしていた。
竹中曹長は足も動かさず、低く一喝した。
「端末を下ろせ。隊列、右に寄れ。前列、止まるな。後列、詰めるな。進め!」
その声は喋っているというより、大きな鉄定規で歪んだ空気をひと打ちで矯正するようだった。
本当に効いた。
その何人かは脳天を叩かれたように端末を慌てて収め、右に寄り直した。前列も歩き始めた。全体としてまだ落ち着かないが、少なくとも「これは一つの隊列です」という最低限の体裁は保った。
「……すごい」私は小声で言った。
真紀が隣で冷淡に一言添えた。
「これが専門家というものよ」
「いや、野犬でも一声で檻に戻せそうで」
「その表現が聞こえたら、あなたが先に入れられる」
私たちが話していた数秒の間に、二列目でまた問題が起きた。
太めの子が何かを見つけ、突然叫んだ。
「あっちって砲塔じゃないですか?!」
すかさず他の三人が振り向き、一人は隊列の脇から抜け出して手すりに近づこうとした。
心の中で「来た」と思う前に、足はもう動いていた。
「ちょっと、戻って! そこは——」
言い終わる前に、真紀が私より半歩速く前に出て、三人の前に立ちはだかった。触れはしなかった。ただそこに立っているだけで、声は甲板の風を一層凍らせるようだった。
「隊列に戻れ」
三人の中等部男子がぴたりと止まった。
正直に言えば、真紀という人間を中等部男子に向けると効果が非常に高い。
先生の「同学、そういうことはやめましょう」という諭し方でもなく、保護者の「危ないよ」という脅し方でもない。艦の規則が突然人型になって目の前に現れ、「もう一度動いてみろ」と告げているような感じだった。
一番胆の太い子が、それでも怖いもの知らずに訊き返した。
「なんでですか? 見るだけなのに——」
「ここは動物園じゃないから」真紀が言った。
「でも——」
「あなたの裏庭でもない」
その子はその場で詰まった。
笑いをこらえるのが精一杯だった。私は前に出て、もう少し人間語に近い説明を補った。
「あそこは作業区で、今は出港前の整備中なの。勝手に入ったら最低でも怒鳴られる、最悪どこかの艙門に挟まれて今日の安全教材になる。どっちがいい?」
その子は私を見て、真紀を見て、最後は素直に隊列に戻った。
次の瞬間、後方でまた炸裂した。
私たちの列ではなく、左側の合流点だ。
振り向くと、ジェスがすでに両手を広げて通路口に立ちはだかり、本当に文字通り罵倒する迎撃網になっていた。前に四、五人の子が横から抜けようとしていて、二人はまだ「ちょっと見るだけじゃないですか」という顔をしていた。Dは隣で人を堵めながら、口だけは相変わらずだった。
「おい、混乱に乗じて突破しようとするな、ここはダンジョンの入口じゃない。死にたいなら先に整理券を取れ」
「あっちが見たいだけです!」一人の子が不服そうに叫んだ。
「『立入禁止』が読めないの、それとも読めるけど人生に挑戦したいの?」ジェスが容赦なかった。
「あなたは軍人じゃないじゃないですか!」
「そう、軍人じゃない」ジェスはその場で顎を上げた。「でも今、あなたを押し返す権限は私のほうが上よ」
その言葉が落ちた直後、左側でさらに大きな騒ぎが起きた。
どこかの列から抜け出した細長い男子が、人の多さに乗じて臨時警戒ロープを潜り抜け、昇降機区に近い黄色ラインの外側に踏み込んでいた。
頭の中に二文字だけ浮かんだ。
終わった。
あの場所の脇は作業用昇降プラットフォームで、今は停まっているが次の瞬間に動かない保証はない。引率教師はまだ後方にいて、第一時間には間に合わない。アカリとハーヴィーは後段で落伍者を捕まえている。ロイの組は人の流れを隔てた向こうにいる。
竹中曹長が動いた。
「急いで走る」という動き方ではなかった。
距離、角度、人の流れの隙間をすでに計算済みの前進だった。三歩、二歩、一歩。無駄な動作は一切なく、黄色ライン内側に立ち、声が砲撃のように叩き落とされた。
「全員止まれ!」
合流点全体がその一声で重く押さえ込まれた。
「前列しゃがめ! 後列右に寄れ! 手を手すりから離せ! 誰も動くな!」
ごった煮になっていた生徒たちが二秒以内にほぼ静止した。前の何人かは驚いてそのまましゃがみ、後列も本能的に右に縮んだ。ラインを踏み越えた男子は全身が凍りついたように立ち尽くし、顔から血の気が引いていた。
竹中曹長は二度目の怒鳴り声を上げなかった。
ただその男子の前まで歩き、手を伸ばして——引っ張るというより、正確には「提げる」ようにラインの内側に戻し、立たせた。
「名前」
男子が震えた。
「……林、林拓也です」
「クラス」
「中二……乙組です」
「よし、林拓也。頭を上げて、標線を見ろ」
その子が素直に顔を上げた。
竹中曹長は隣の黄黒の警戒ラインを指で叩き、声は先ほどの怒鳴り声より小さかったが、ずっと冷たかった。
「この線は飾りじゃない。線の外は作業区だ。昇降プラットフォーム、艙門、重量物の吊り点、電力接続部——どれを踏んでも医務室行きになれる。運が悪ければ、家に帰るとき部品が一個足りなくなる」
その場の子たちが一斉に静まり返った。
さっきまで一番うるさかった何人かも、大きく息を吸えなかった。
竹中曹長が視線を全列に流した。
「聞け。雪風は遊園地でも展示館でもない。この船は動く。閉まる。熱くなる。そして、噛む。お前たちは今日、見に来た。試しに来たんじゃない。もう一度ラインを越えた者は、今日の見学資格をその場で取り消す。引率教師、元のクラス全員、連帯だ」
その一言が出た瞬間、効果は残酷なほど明確だった。
さっきまであちこちを見回していた中学生が一斉に、自動的に翼を畳んだ鶉の群れになった。
Dが左に立ち、小声で感嘆した。
「すごい。これが専門的な制圧というやつか」
ジェスが珍しく反論せず、低く鼻を鳴らしただけだった。
「今やっと、なんでこの艦の安全が彼の管轄なのかわかった」
アイダがこのとき前導区から折り返してきて、現場を一瞥し、素早く状況を判断した。
「怪我人はいない?」
「いない」エヴリンも来た。声は柔らかいが、内容は柔らかくなかった。「でもこの子たちをあと五分自由にしたら、消火器を記念品として持ち帰ろうとする子が出てくる」
「脳内でもう順番つけてる子がいると思う」ハーヴィーが後段から来て言った。
「脳内じゃない」蘭が冷たく補った。「目に書いてある」
ロイは別の場所で隊列の再整備を手伝っていた。もともと圧迫感のある顔は中学生相手にも十分効いていた。こっそり抜けようとしていた何人かは、ロイが立っているのを見上げた瞬間、動作が急に行儀よくなった。
アッシュはクリップボードを抱えて竹中曹長の後ろについていた。全身が「紙面の計画と現場の地獄の差を一気に理解させられた」という顔をしていた。
「人数は合っています」アッシュが端末を見下ろして言った。「現在、全員列内です」
竹中曹長が一度頷いた。余計な言葉はなかった。
「再編成。前導は変わらず。中段に一人追加、星野が入れ。九島真紀は中線に残れ。Dとジェスはそのまま左口を塞げ。ロイ、蘭は間隔を取れ、後列が一塊になるな。アイダ、エヴリンは女子生徒を先行させろ。ハーヴィー、アカリは後尾を締めろ。アッシュは歩きながら人数を報告し続けろ」
「はっ」私たちはほぼ同時に応じた。
前に移動するとき、さっきの林拓也という子の横を通った。彼はもう勝手に走り出す気はなく、ただ上目遣いで私を見ていた。大きな失敗をしてしまったが、このあと始末書を書かされるのかどうか気になっているという顔だった。
私は声を低くして言った。
「運がよかったわね。今日最初にぶつかったのが竹中曹長で、昇降プラットフォームじゃなくて」
その子の顔色はますます白くなった。
「す、すみません……」
「次は噛みつく場所で肝試しをするんじゃないぞ」
彼は勢いよく頷いた。
すると、隣に立っていたポニーテールの女子が、小声でそっと訊いてきた。
「先輩……あの黒髪の、すごく怖い先輩って、先輩のお友達ですか?」
一瞬固まって、彼女の視線を追った。
真紀は中線の位置に立ち、無表情で隊列の再整列を見ていた。甲板の風が毛先を軽く揺らしていたが、彼女自身はまるで越えてはならない黒い標線のように、じっと立っていた。
「……まあ、そんなところ」私は言った。
その子はもう一度私を見て、それから真紀を見て、唐突にこう言った。
「なんか、先輩の彼女みたいですね」
その場で自分の唾に窒息しかけた。
「ゲホッ、ゴホッ——あなた、その年でいったい何を見て育ってるの?!」
彼女は驚いた様子だったが、それでも大真面目だった。
「だって、さっきからずっと先輩の隣に立ってましたし。先輩が飛び出そうとしたら、あの先輩のほうが先に動いてたじゃないですか」
「あれは相互支援っていうの。彼女じゃない!」
「へえ……」
口ではそう言いながら、明らかに信じきってはいない顔だった。
もう一言言い返そうとした瞬間、真紀のほうが先にこちらを振り向いた。
「星野、何をぐずぐずしてるの」
「な、なんでもない!」
ポニーテールの子がすかさず「ほらね」という顔をした。
……終わった。
この子たちは、うるさいだけじゃない。
観察眼まで、忌々しいほど鋭い。
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隊列を組み直し、私たちはようやく第一陣の中等部生徒を正式に艙内へ案内し始めた。
そしてすぐに思い知った。「半強制的な保母兼任」というのは、想像よりずっと精神を削る仕事だと。
彼らは単に暴れるだけじゃない。
暴れながら、質問してくるのだ。
「先輩、この船って本当に別の星系にジャンプするんですか?」
「先輩、駆動炉って下のほうにあるんですか?」
「先輩、士官の人たちってあまり眠らないんですか?」
「先輩、さっきのおじさん、人を船の外に投げ捨てたりしませんよね?」
「先輩たちって、普段から本当に魚のついた朝ごはんを食べてるんですか?」
「先輩、あの怖い先輩って成績いいんですか?」
「先輩、さっき顔赤くなってませんでした?」
最後の質問は本気で違反項目に入れるべきだと思った。
「最後の質問は却下」私は無表情で言った。
「なんでですか?」
「あなたの今日の見学品質に影響が出るから」
「えー」
隊列の反対側では、Dがすでに半分本気、半分でたらめの調子で男子数人に吹き込んでいた。
「そうそう、この艦のハッチには全部機嫌があるんだ。勝手に触ると顔を覚えられるぞ」
「マジですか?!」
「嘘だよ。でも試してみてもいい。竹中曹長が先にお前の顔を覚えるだろうけどな」
ジェスが隣で白目を剥いた。
「余計なこと言わないで。あとで本当に都市伝説にする子が出るから」
「軍艦には多少、怪談の雰囲気が必要なんだよ」Dはもっともらしく言った。
「黙って。あなた、もう私の仕事を増やしてるから」
「その台詞、そのまま竹中曹長に返せるね」
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最も意外だったのはエヴリンだった。
エヴリンが女子生徒の列を担当したとき、彼女はまるで別モードに切り替わったようだった。話し方は相変わらず柔らかく、笑顔も変わらないのに、あれだけきゃあきゃあ騒いでいた女子たちが、彼女の手にかかると驚くほど素直に収まっていた。怖がらせているわけではない。エヴリンがリズムの掴み方をよく知りすぎているだけだ。緩めるべきときはきちんと緩め、抑えるべきときは「今は足元を見て。止まったら質問していいから」の一言で話の芽を全部切り落とす。
アイダは完全に正反対だった。
アイダは一切なだめず、「道を塞ぐな」「隊列を詰めろ」「振り返った者はやり直し」を、まるで規則そのものであるかのように言い渡した。それでも、これがちゃんと効いていた。生まれつき場を締めるために存在している人間というのは、確かにいるらしい。
そして真紀は——。
真紀はそもそも保母タイプではない。
どちらかといえば、「歩く校則」だ。
不思議なことに、子供たちはこれにもちゃんと従った。特に男子。あの年頃の男子にはどうも妙な本能があるらしく、近寄りにくく、言葉が短く、目つきが冷たい相手ほど、かえってふざける気になれないのだ。
途中、度胸だけはある中二の男子が一人、おそらく同級生の前で格好をつけたかったのだろう、真紀の横を通りざま、わざと訊いた。
「先輩って、絶対笑わないんですか?」
真紀は歩みも止めなかった。
「あなたに関係ある?」
列全体が一瞬静まり返り、次の瞬間、誰かが笑いを堪えて肩を震わせていた。
私まで笑いすぎて足が止まりそうだった。
その男子は耳まで真っ赤にして、大人しく前を向いて歩くしかなかった。
……よし、いい。
この艦に真紀がいるだけで、子供たちの無駄な自己アピールは少なくとも半分は減るだろう。
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第一陣を無事に指定集合区画へ送り届け、第二陣を迎えに戻ったとき、ようやく一息つく余裕ができた。
竹中曹長は合流点の中央に立ち、通路全体が動き出したのを眺めていた。相変わらず近寄りがたい顔つきだったが、さっきまでの「その場で処刑してやる」という圧力は、少なくとも一段落ちていた。私たちを一通り見回し、急遽引っ張ってきた学生助手がまだ使い物になるかどうか検分しているような目をした。
そして口を開いた。
「第一陣、かろうじて合格だ」
ジェスがすかさず小声でぼやいた。
「わあ、これもう褒め言葉のつもりですか?」
竹中曹長の耳が再び超自然的な性能を発揮した。
「マッカロウ。その減らず口が続くなら、次の陣は先頭を歩かせるぞ」
ジェスがその場で口をつぐんだ。
Dが隣で良心のかけらもなく笑った。
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私はその一連を眺めながら、ふと妙な実感が湧いた。
昨夜、私はまだ八人部屋のベッドに横たわって、自分はただ「艦に乗った」だけだと思っていた。だが今、子供たちと軍令と朝食の余韻と甲板の風音、そして山ほどの突発事態で埋め尽くされたこの通路の真ん中に立って、私はもう一つの事実をはっきり認識していた——。
私たちは乗艦しただけじゃない。
私たちはもう、この艦の上で働き始めているのだ。
たとえ今のところ、その仕事内容にほとんど尊厳がないように聞こえるとしても。
真紀がそのとき私の隣に来て、一瞥した。
「何その顔」
私は正直に答えた。
「実習初日の正式任務が、中学生の宇宙秩序維持だなんて、って思って」
真紀は半秒黙り、それからごく短く、鼻で笑った。
短い。
聞き間違いかと疑うほど短かった。
「それなら、早く慣れたほうがいい」彼女は言った。「雪風がまともな軍艦に見えるほど、その下の日常は大抵ろくでもないものだから」
「それ、経験談っぽい言い方だね」
「あなたと語り合ってるつもりはないけど」
「今のがもう、それに近いと思うけど」
真紀が横目で私を見た。
「星野」
「はい、黙ります」
口ではそう言いながら、なぜか少し笑いたくなった。
これがまだ始まりに過ぎないとわかっていたからだ。
中等部の子供たちは、まだ乗艦したばかりだ。
竹中曹長は、まだ第一波を鎮圧しただけだ。
一四四班は、実習生であると同時に半端な保母兼通路警備員であることを、たった今受け入れさせられたばかりだ。
そして雪風は、まだ出港してからさほど時間も経っていない。
この先は、もっと騒がしく、もっと乱れ、もっと面倒になるに決まっている。
……でも、なぜだろう。
私は少し、それを楽しみにし始めていた。
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




