↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
臨界の星穹  作者: Mr.佐藤焫焵
士官学校編
252/326

74. 雨夜の首都高速  1

この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。

「先輩?」


私がそう口にした直後、九島亜紀くしま・あき先輩は聞こえなかったかのように、手元のコンソールパネルを軽く叩いた。


センターコンソールのホログラムが音もなく切り替わる。渋滞を示す赤い線で埋まっていたナビゲーションマップが、見えない手に弾かれたように、道路網ごと横へスライドした。黄色のポルシェ911は急ブレーキを踏むことも、あからさまな車線変更をすることもなく、ほとんど理不尽とも言える切り込みを何度か繰り返し、私がさっきまで全く気づかなかった別のルートへと、いつの間にか誘導されていく。


──先輩にちょっと呼び出されて、世間話でもするんだと思っていたら、気がついたら話し合いの場所が先輩の私設尋問回廊だった。そんな感じ。


ワイパーが規則正しく左右に動いている。


前方の高架橋が雨霧の中に湿った冷たい銀線を引いている。水たまりのできた橋面に街灯が反射し、剥がれない魚の鱗のように張り付いている。911のエンジン音は分厚い車体に低く封じ込められ、胸の底を圧迫するような振動だけが残る。獣が一時的に牙を収め、それでも膝のすぐ脇で息を潜めているような、そんな感触だった。


車が橋に差し掛かる。 橋のたもとには検問所。 一目見ただけで理解した。


濃灰色の金属ゲート、その側面に嵌め込まれた、控えめすぎて逆に傲慢さを感じる家紋、詰め所の後ろに並ぶセンサー群、そして雨の中に立つあの看板——


九島重工所属 立入禁止


……なるほど、そういう「ついで」か。


私は喉まで出かかった皮肉を無理やり飲み込んだ。今夜の社会面ニュースに「連邦軍校の実習生、財閥の私道で謎の失踪」という見出しが増えるのは御免だ。


警備の制服を着た男が、すぐに詰め所から出てきた。動きに無駄がなく、明らかにその辺の警備員ではない。彼は傘をさして車の横に歩み寄り、腰を屈めた。亜紀先輩は相変わらずニコニコしたまま、むしろ余裕ありげに窓を半分ほど下げて、何かを差し出した。


IDカードのような、あるいは特殊な識別タグのようなもの。


男はうつむいてそれを一瞥すると、表情に一糸の乱れも見せず、即座に半歩下がった。 次の瞬間、ゲートが音もなく跳ね上がった。


……はいはい、そういうことね。 他人が首都の交通スパゲッティの中でコトコト煮込まれている間に、九島家は横から専用の鍋蓋を開けるわけだ。


車が再び滑り出す。タイヤが濡れて光る路面を踏みしめ、車体がわずかに沈み込み、そして滑らかに加速した。外の道路が一気に空く。街全体の喧騒が背後に閉め出されたみたいに、私たちだけが一般には公開されていない高速道路を、この先へと進んでいく。


高架脇の標識が街灯の下を通り過ぎる。


特定路線 九島重工専用


その文字列を二秒ほど見つめ、私は非常に複雑な気分になった。


一方では、世界のルールを自宅の絨毯みたいに踏み躙れる金持ちと大企業の力に、心から敬意を表したくなる。もう一方では、私は今まさにその絨毯の上——助手席に座っていて、隣には九島家本家の令嬢がいる。そして彼女はついさっき、こう言ったばかりだ。


『私は小さい頃から、真紀を見て育ったの』


この道は、もうただの道ではなくなった。 ここは彼女の縄張りで、彼女が選んだ方向で、彼女が私に昔話を聞かせるために用意した舞台だ。


雨粒が車窓を叩き、ガラスを伝って細長い水痕を引く。遠くの工業エリアに立つタワーと整備アームが、暗い雨の中で一つ、また一つと警告灯を点滅させている。黙って歩哨に立つ巨人たちのようだった。車内は暖かく、レザーと微かな香水の匂いが混ざり合っている。リラックスするどころか、逆にお互いの呼吸と距離を、嫌でも意識させられた。


亜紀先輩は片手でハンドルを握ったまま、私がまだ生きていることを思い出したかのように、ゆっくりと口を開いた。


「真紀はね、小さい頃、すごく静かな子だったの」


声は高くない。雨に語りかけているようにさえ聞こえた。


「おとなしくて可愛い、手のかからない静かさじゃないわ」彼女はくすりと笑った。「いろいろ考えているくせに、一言も口に出そうとしない、そういう静かさ」


私は口を挟まなかった。 嫌な予感がしたからだ。この会話の危険なところは、彼女が私を問い詰めるかどうかじゃない――そもそも問い詰める必要すらないことだ。


彼女が真紀を描写するだけで、私は勝手にその反応を顔に出してしまう。


「あの子、小さい頃は怒っても泣かなかった」亜紀先輩は前を見つめたまま、平坦なトーンで続けた。「ただ傍に立ってじっと見てるの。それで、誰が自分に借りを作ったか、誰より正確に記憶しておく。次に気づいた頃には、もうあの子がすべての道筋を決め終えてる」


喉の奥が微かに締まった。


……具体的すぎる。


ただの世間話とは思えないほど具体的で、私の脳裏には即座に真紀のあの無表情な顔が浮かんだ。冷たくて、静かで、何も言っていないように見えて、実はすべての言葉を計算し尽くしているあの顔。


亜紀先輩は私の沈黙を察したのか、ようやく首を傾げて私を一瞥した。


「あなたの前でも、そうなの?」


来た。 ほら見ろ。 わかっていた。


この人は昔話をしているんじゃない。思い出を釣り針にして、質問を一節ずつ私の口にねじ込んで、私自身に飲み込ませようとしているんだ。


私は、人の妹にこっそりキスをして、今その姉に私設高速道路上で尋問されている容疑者ではなく、極力「普通の人間」に聞こえるよう声を整えた。


「……たまに」私は言った。「でも、あいつは無闇に根に持つタイプじゃないですよ」


「あら?」


「つまり」私は即座に言い直した。「記憶はしてます。でも報復のためじゃない。なんというか……あいつは、無駄な言葉を口に出すのが好きじゃないだけです」


亜紀先輩は二秒ほど黙り、それから低く笑った。


その笑い声はとても軽く、雨音にかき消されそうなほどだったのに、私の背中の産毛をもう一周総立ちにさせた。


「あの子を庇うスピード、私が思っていたよりずっと早いのね」


「……」


しまった。 擁護しているように聞こえすぎたか? いや、違う。今さら否定しても、余計にそう見えるだけだ。


私は口を閉ざすことにした。言わなければ間違えない。多弁は身を滅ぼす——立派な自衛策だ。 だが残念なことに、この世界には、そういう自衛策をまるごと無効化してくる人間が腐るほどいる。しかも、よりによって相手の苗字は九島だ。


「あの子、昔はよく私についてきたわ」亜紀先輩は、私が助手席で縮こまりそうになっているのを気にする様子もなく続けた。「服の裾を掴んでついてくるような、可愛げのあるやり方じゃないわよ。真紀は小さい頃からプライドが高かったから。ただドアの横や、階段の降り口、廊下の角に立って、自分もたまたまそこへ行く途中だったふりをするの」


外の高架が大きくカーブを描く。橋の下に広がる港湾区のコンテナヤードが夜雨の中に規則正しく並び、照明が水蒸気に滲んで朧げな黄色を作っている。


「あの子、『そばにいて』とはあまり言わないの」亜紀先輩は言った。「でも、私の帰りが遅くなると、起きて待ってるのよ」


指先が無意識に丸まった。


この描写はまずい。 何がまずいって、温度が温かすぎることだ。尋問には聞こえない。むしろ、長年大切に保管されてきた個人的な記憶のようだった。だからこそ、油断できなかった。彼女が一つエピソードを語るたびに、目の前にカードを一枚突きつけられているようなものだ。聞こえてる? あの子がどうやって育ってきたか、わかる? それで、あなたはそのあの子をどうするつもり?


「あの子、今でも人を待ったりする?」


亜紀先輩の問いかけは自然だった。あまりにも自然すぎた。 天気を聞くみたいに。雨の強さを聞くみたいに。夕飯を食べたかどうかを聞くみたいに。


だが、私はその一言で危うく咽びそうになった。


「……先輩、その質問はちょっと——」


「答えにくい?」


彼女は微笑んで、指先でハンドルを軽く叩いた。


「それは、あなたが答えを知っている証拠よ」


今すぐ車から飛び降りたい。 もちろん、考えるだけだ。 九島重工の私有高速で車から飛び降りるなんて、反抗というより、相手の死体処理の手間を省いてやるようなものだ。


私は視線を逸らし、瞬く間に通り過ぎていくメンテナンス塔と閉鎖されたランプウェイを眺めながら、極力声を安定させた。


「……あいつは、自分から人を待つようなタイプじゃありません」私はゆっくりと答えた。「でも、もし何かを気にかけているなら、そう簡単には手放さないと思います」


亜紀先輩はすぐには相槌を打たなかった。


彼女はただ静かに車を走らせ、エンジンの低い唸り声にその短い空白を埋めさせた。雨の夜の専用高速はまっすぐに伸び、両脇のガードレールのセンサーライトが一つ、また一つと点灯しては流れていく。暗闇の中で誰かが私たちのために拍子をとっているみたいだった。


そして、彼女はとても静かに口を開いた。


「じゃあ、あなたは? 星野さん」


心臓が大きく縮み上がった。


「あなたは、誰かの心に居座っておきながら、平気な顔で立ち去れるような人間なの?」


車内が一瞬にして、ワイパーとエンジンの音だけになった。


私は前を見つめたまま、うなじが少しずつ熱くなっていくのを感じた。それなのに掌は冷たい。彼女は声を荒げることもなく、身を乗り出してくることもなく、その口調はむしろ温和とさえ呼べるものだった。しかし、その圧迫感は、さっき生徒会室で手首を掴まれた時よりもずっと明確だった。


なぜなら今度は、彼女は私を車に連れ込んだのではない。 私を「答え」の中へと追い込んでいるのだ。


「私は……」口を開いて初めて、自分の声が少し乾いていることに気づいた。「そういうことを、いい加減に扱うつもりはありません」


「そういうこと、とは?」


間髪入れずの追撃。 私はその場で自分の舌を噛み切りたくなった。


——そうだ、こういうところだ。 彼女は子供時代を語り、思い出を語り、妹がどうやってドアの横で人を待っていたかを語る。優しくて、礼儀正しく、少しだけ心を開いてくれた姉のように。そして、こちらがほんの一寸でも警戒を解いた瞬間に、その隙間から、まっすぐナイフのような質問をねじ込んでくる。


しかも、ひどく優雅に。 痛いと叫ぶことすら、こちらが失礼だと錯覚してしまうほど優雅に。


私は深呼吸をして、撃墜されたばかりの新米パイロットのように見えないよう堪えた。


「……真紀に関することです」


今度は、亜紀先輩はすぐに追撃してこなかった。 彼女はただ前を見つめ、口元に微かな笑みを浮かべたままだった。満足しているのか、単に私がこれ以上誤魔化すのをやめたことを評価しているのかは、わからない。


「そう」


彼女は低く呟いた。 車が再び加速する。前方の高架が港湾区の奥へと延びていき、遠くにはすでに宇宙港の外周を囲む誘導灯の群れが見えた。雨のカーテンの向こう側で、ぼやけた冷たい星の列のようだった。


亜紀先輩の手はしっかりとハンドルを握っていたが、声はさっきよりもさらに軽くなっていた。


「じゃあ、続けるわね」


彼女は少し間を置いた。自分にしか触れることの許されない、古いアルバムをめくるかのように。


「真紀が初めて人と喧嘩したのは、七歳の時よ」


亜紀先輩の声は平坦だった。今夜の献立と同じくらい、どうでもいい些細な出来事を語るように。 それでも、私の背筋は一気に強張った。


車は九島重工の専用高速に沿ってカーブを切る。ワイパーが規則正しく動き、ガラスの上の水痕を何層も削り取っては、すぐに新しい雨水がそれを覆い隠す。両脇のガードレールのセンサーライトが一節一節後ろへと飛び去り、誰かが夜を細長い短冊状に切り刻んで、私たちの横から一枚ずつ抜き取っているみたいだった。


「理由は本当に馬鹿げたものだったわ」彼女は前を見つめ、指を軽くハンドルに添えている。「私が机の上に置いていたものを、誰かが勝手に持っていっただけ。真紀は一言も発さずに歩み寄って、相手を床に押さえつけて、それを取り返したの」


喉が微かに動いた。


その光景……くそ、やけに説得力がある。


「先生が駆けつけた時、あの子の服は乱れて、手も擦りむけていたけれど、表情は相変わらず静かだったわ」亜紀先輩は淡く笑った。「あの子はただ一言、『それはお姉ちゃんのものだから』って」


車内が二秒間、沈黙した。 そして彼女は私に問うた。


「あなたは、それが単にあの子の気性が荒いからだと思う? それとも、小さい頃から、他人に触れさせてはいけないものを、明確に区別していたからだと思う?」


私はその唐突な切り返しに、危うく咽びそうになった。


来た。 まただ。 この人は昔話をしているんじゃない。真紀の子供時代を一枚一枚剥がしていって、そのナイフの柄を私に渡し、どこから血を流すか自分で選べと迫っているんだ。


「……わかりません」私は正直に答えた。 本当にわからないからだ。 あるいは、早急に答えを出すのが怖い、と言うべきか。


亜紀先輩はすぐに答えを補足するよう強要はせず、ただ「ええ」と短く応えた。私の躊躇いをそのまま回収して、彼女自身の引き出しに一旦しまったみたいだった。


「あの子は騒がしい子供じゃないの」彼女は続ける。「むしろ逆。真紀は小さい頃からずっと静かで、あまりにも静かだから、周りの大人はあの子が何も気にしていないんだと勘違いしていたわ」


車が弧を描くインターチェンジを下っていく。遠くの港湾区の灯りが雨のカーテンの向こうに広がり、霧に浸かった金属の星の海のように見えた。時折、貨物クレーンの赤い警告灯が暗闇の中で点滅し、沈黙した巨大な獣の目のようだった。


「でも、あの子は本当によく覚えてるの」亜紀先輩は言った。「誰がどれだけ長くそばにいてくれたか、誰が先に去ったか、誰が何を約束して、誰がそれを忘れたか。表面上は何も言わないけれど、そういうものを全部、あの子ははっきり覚えているのよ」


そこまで言って、彼女はついに首を傾げて私を見た。 その視線は重くなく、むしろ温和とさえ呼べるものだった。 だが、私は自分の掌が一気に冷え切るのを感じた。


「星野さん、こういう人間って、独占欲が強いと思う?」


……これは選択問題じゃない。 罠だ。 「強くない」と答えれば、私が鈍感すぎることになる。「強い」と答えれば、彼女が何を言わんとしているか、私が完全に理解していると認めることになる。


私は数秒間沈黙し、最終的に、もっとも死に直結しにくい答えを選んだ。


「……私は」雨に打たれて光る路面を見つめながら、ゆっくり口を開いた。「それは単なる独占欲ではないと思います。なんというか……あいつは、特定の人や物事を、自分の領域の中にとても真剣に置き入れているだけだと」


亜紀先輩の口角が微かに動いた。 笑ったようにも見えたし、この答えに「少なくとも完全に救いようがないわけではない」と評価したようにも見えた。


「悪くないわね」


彼女は視線を戻し、再び安定した手つきで車を走らせた。


「昔は私にもそうだったわ」


私は声を出さなかった。 なぜか、この一言はこれまでのどの思い出よりも個人的な響きを持っていた。秘密ではないが、誰にでも気軽に話せることでもない。


「私の帰りが遅くなっても、あの子は電話もかけてこないし、催促もしない」亜紀先輩は言った。「ただリビングに座って、本を読んでいるふりをするの。私がドアを開けると、そこでやっと一ページめくって、最初から待ってなんかいなかったみたいな顔をするの」


その光景は容易に想像できた。 小さな真紀が、背筋をぴんと伸ばして座り、顔には何の表情も浮かべず、手に本を持ちながら、心の中ではドアの外の足音を一つ残らず数えている姿。


……想像しただけで、胸の奥が妙に締め付けられた。


「一度、わざと一時間遅く帰ったことがあるの」亜紀先輩の口調は、残酷なほど平坦だった。「帰ったら、あの子は泣きもしなかったし、騒ぎもしなかった。ただ、次の日から、私のスケジュールを全部暗記し始めたわ」


私は思わず横を向いて彼女を見た。


「……全部?」


「全部よ」彼女は言った。「いつ授業があるか、いつ本家に行くか、いつ帰りが遅くなるか。一言も聞いてこなかったけど、それ以来、私が『音信不通』になるのはかなり難しくなったわね」


言い終えて、彼女は少し言葉を切った。 雨音がその短い沈黙を埋め、タイヤが水たまりを踏んで低い水音を立てた。


そして、彼女は再び問いを投げかけてきた。


「これでわかったかしら?」


心臓が跳ねた。


「何が、ですか?」


「真紀はね、あなたが今日少し近づいて、明日には何事もなかったみたいに引き下がれる、そういう相手じゃないってことよ」


その言葉が落ちた瞬間、車内の空気が一段と重く沈み込んだ気がした。


亜紀先輩の口調は相変わらず平坦だった。 高すぎず低すぎず、教養に溢れ、むしろ優しすぎるくらいの声。 しかし、私はもう完全に理解していた。


彼女は最初から、妹の子供時代をシェアしていたわけじゃない。 一段階ずつ、私に教えていたのだ——真紀がどういう人間かを。そして、もし私がそれに触れるつもりなら、決して中途半端な態度は許されないということを。


私は口を開きかけたが、言葉が出てこなかった。


なぜなら、問題はすでに「私が真紀を好きかどうか」なんていう、青春の恋愛クイズじゃなくなっていたからだ。


彼女が今、私に問うているのは、もっと厄介で、もっと適当に答えてはいけない別の問題だ。


私は一体、真紀を何だと思っているのか?


仲間か。 友人か。 心拍数を狂わせて、キスをした後、一晩中眠れなくさせる相手か。 それとも——もっとまずい、別の答えか。


こんな状況で、口に出せるわけがない。 逃げたいからじゃない。もし私がここで適当な、それらしい答えを取り繕えば、それこそが本当に彼女を汚す行為だとわかっていたからだ。


亜紀先輩も、おそらくそれを見抜いていた。 彼女はそれ以上追及しなかった。


ただ最後の高架を車で下り、港湾区のガラス張りの外壁と高塔が視界いっぱいに広がるのに任せた。夜雨の中、巨大なドックは都市の縁に沈む鋼鉄の峡谷のようで、構造骨格に沿って照明が奥まで連なっている。その湿った冷たい光の中に、私はもう、ぼんやりと見て取ることができた。

「とても面白い」★四つか五つを押してね!


「普通かなぁ?」★三つを押してね!


「あまりかな?」★一つか二つを押してね!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。