67. 胸のモヤモヤ 3
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
翌朝目が覚めたときの調子は、「一応生きている」と「昨夜のあの様子を誰にも見られていないよう祈る」のちょうど中間くらいだった。
洗面を済ませて階段を降りると、一階に足をつけた瞬間、キッチンのほうからコーヒーとトーストの匂いが漂ってきた。二十二番地の朝はたいてい両極端だ。誰も住んでいないみたいに静かか、難民キャンプみたいに騒がしいか。今日はその中間より少し騒がしい、標準値だった。
Dはダイニングテーブルについて、彼の人生哲学を一番よく体現した朝食――食えればいい、腹が膨れればいい、時間を無駄にしなければなお良い――を前にしていた。
ハーヴィーはもう起きていたけど、魂の半分はまだ地下のサーバー室に置いてきたままらしく、マグカップ片手に、存在しない回路図と交渉でもしているような目をしていた。
アッシュは窓際で資料を読んでいた。「話しかけるな、今日人類に優しくするかはまだ決めていない」というタイトルがつきそうな、朝限定の一枚絵みたいに。
ロイとランは何やら小声で話している。どうせまたスケジュールか物資の話だろう。
すべてがいつも通りに見えた。
ジェスを見るまでは。
彼女はシンクのそばに立って、トーストの端をくわえたまま、髪をちょっと乱れた感じに結んで、まだシステムが半分しか起動していないような顔をしていた。それが、振り向いて私を見た瞬間――
端末が熱暴走を起こしたみたいに一秒フリーズして、それからひどく不自然な動きで視線を逸らした。
その逸らす速さといったら、首の骨が心配になるレベルだった。
……ほう。
階段の最後の一段に立ったまま、私は妙にテンションが上がってきた。
ジェスの奴、昨日真紀に一発で打ち上げられてから、まだ修復が終わっていないらしい。
口の端が上がりそうになるのをこらえて、これ以上ないくらい平坦な声で言った。
「おはよ」
「どこがおはようよ!」ジェスがほぼ反射で噛みついてきた。声はいつもより半音高い。「もう昼近いでしょ。昨日校外実習でお疲れだった誰かさんが、やっとご起床ってわけ?」
攻撃は来た。
でも、明らかに照準がずれている。
今はまだ八時を少し過ぎたところで、昼まではまだ二度寝を二周挟めるくらいの余裕がある。
Dが朝食をかじりながら壁の時計を一瞥し、淡々と事実だけを口にした。
「〇八一二」
ジェス「知ってるし!」
D「そう」
ハーヴィーがコーヒーを口に運びながら、肩を怪しく震わせた。
私は笑いをこらえながら、コップを取りに行って水を注いだ。
「今日、ずいぶん機嫌悪いね」
「誰が機嫌悪いのよ!」ジェスが振り向いて睨んでくる。でも耳のほうが先に赤くなっていた。「私はただ、昨日用事を済ませに行った誰かさんが、なんか……その……」
言葉が詰まった。
私は水を注ぎながら、親切に続きを引き取ってあげた。
「効率よかった?」
ジェスの顔がぐにゃりと歪んだ。
「誰が効率の話してんの! 私が言ってるのは、その――帰ってきたときのあんたの顔がむかついたって話!」
水を吹きそうになった。
「私の顔がむかつくって、どういう意味」
「だからそういうやつよ!」手振りがどんどん大きく、どんどん収拾がつかなくなる。「その、えっと――分かるでしょ! なんか機嫌よさそうなくせに認めたくなさそうで、荷物いっぱい提げて、いかにも午後じゅうどこかで――」
そこまで言ったところで、彼女は自分で口をつぐんだ。自分が昨日の外出をどんどん意味ありげにまとめ上げていることに、遅れて気づいたらしい。
私はコップを置いて、ゆっくり彼女を見た。
「ジェス」
「何」
「今の、ほとんど昨日の行程レビューだけど」
「してないし!」
「しかも、感情のこもったやつ」
「星野、自意識過剰!」
いいぞ。
この一言で、攻撃の矛先は正式に的を外れ、昨日の「私と真紀」から、今日の「彼女自身」へと切り替わった。
隣でアッシュがようやく資料を下ろし、こちらをちらりと見た。
声には出さないその視線は、「いい燃料だ、続けろ」と言っているようなものだった。
そして、決定的に状況を崩したのは、そのタイミングで真紀がキッチンから出てきたことだった。
ちょうどお湯を沸かし終えたところらしく、自分のマグを手にしている。髪は簡単にまとめられ、表情は朝限定の、いつもより少しだけ柔らかい無表情だった。
彼女の視線が、私とジェスのあいだを一往復する。
「どうしたの」
聞かないほうがまだましだった。その一言で、ジェスは背中から高温電池でも突っ込まれたみたいに、さらに激しく爆発した。
「別に何でもない!」語速が怪しいくらい速い。「ただ、今日の朝ごはんがあんまり残ってないって話をしてただけ! 誰かさんが遅くまで寝てるから悪いの!」
真紀がテーブルを見た。
朝食は、どう見てもまだたっぷり残っている。
トースト。
卵。
昨日誰かが買ってきた、ハムの小皿まである。
彼女はもう一度ジェスを見た。
「さっき、彼女が帰ってきたときの顔がむかつくって言ってなかった?」
私は水を飲むふりをして、危うく噴き出しかけた。
ジェスがその場で石になった。
「九島、あんた――!」
「文脈を確認しただけ」
「誰も確認しろなんて言ってないし!」
「だって、話がぐちゃぐちゃだったから」真紀は静かにマグをテーブルに置き、私の斜め向かいに腰を下ろす。「分かりにくい」
この一言は容赦がなかった。
しかも、それが完全に本気で、悪意なく言われたものだったから、なおさら刺さる。
ジェスは口をぱくぱくさせたまましばらく固まって、最後に何の説得力もなく私を指差した。
「とにかく、あんたも調子に乗らないでよ!」
私は瞬きした。
「私が何に調子に乗るの」
「自分で分かってるでしょ!」
「分かんない」
「分かってる!」
「分かんない」
「あんた――」
次に出す有効な語彙が見つからなくて、彼女はそこで完全に詰まった。弾薬は十分積んでいるのに、火器管制システムが壊れた砲台みたいな顔で。
Dが彼女を一瞥して、極めて簡潔な結論を出した。
「今日、調子悪いな」
ジェスが勢いよく振り向く。
「Dは黙ってて!」
Dは何のダメージも受けた様子もなく、朝食に戻った。
「そう」
私はとうとう我慢できずに、声を出して笑ってしまった。
大笑いじゃない。短くて軽い笑いだった。でもジェスにはしっかり聞こえたらしく、顔がもう一段階、赤の方向へ振り切れた。
「何笑ってんの!」
「別に」私は頬杖をついて彼女を見た。「今日のあんた、可愛いなと思って」
わざとだ。
完全に、わざとだった。
昨日さんざん噛みつかれたんだから、今日仕返ししなかったら、星野霜という名前を逆さまに書いてやる。
案の定、ジェスはきっちり食いついた。
「誰が可愛いのよ!!」
その反応があまりに大きくて、ロイまで思わず顔を背けて咳払いした。むせたふりをしていたけど、たぶん笑いをこらえていただけだと思う。
真紀は隣で静かに水を一口飲んで、私の味方もジェスの味方もせず、でも一番致命的なタイミングでこう付け加えた。
「褒めてるんだよ」
ジェス「そこじゃないから!!」
最高だった。
本当に、最高だった。
笑いながら、私は遅れて気づいていた――この空気は、もう単なる朝の言い合いじゃない。
ジェスは今日、明らかにどこかおかしかった。口は相変わらず突っかかろうとしてくるのに、狙いはことごとく外れている。私はといえば、ただ適当に二言三言返しているだけのつもりが、返すたびにだんだん、彼女をからかっているような気分になってくる。そして真紀は、テーブルの中央から少し外れた席に座ったまま、表情はいつも通り静かなのに、最小限の言葉で場をもう少し奇妙な、もう少し笑える方向へと、少しずつ押し流していく。
これは危険だ。
床下に、まだ火のついていない導火線を誰かに埋められたような危うさだった。今はただ、細い線が一本あるだけにしか見えない。最後にどこまで燃え広がるのか、誰にも分からない。でも、少しでも勘が働くなら分かるはずだ――これは将来、必ず何かを引き起こす。
ただ、今はまだ、誰もが知らないふりをしていられた。
ジェスは最後には腹立たしげに自分のマグカップを掴み、私から少し離れた席へ移動した。口の中ではまだ「意味わかんない」「誰があんたたちなんか」「今日の空気、なんでこんなにうざいの」といった、まったく脅威にならない、むしろ少しばかり可愛げすらある文句をぶつぶつとこぼしている。
私はうつむいてトーストをひと口かじり、顔を上げた瞬間、ちょうど真紀の視線とぶつかった。
彼女は私を見た。
一秒。
ほんの一秒だけ。
そして、何もなかったように、ごく淡々と視線を外した。
なのに私は、そのたった一秒のあいだに、かすかな――本当にかすかだけれど、確かにそこにある――諦めと、それから私にしか向けられない、ほんの少しの甘やかしを読み取ってしまった。
終わった。
ただでさえ昨夜ろくに眠れていないのに、今朝この一瞥でとどめを刺された。今日一日、精神状態がまともでいられる気がしない。
そして何より致命的なのは、私がそれを少しも嫌だと思っていないことだった。
トーストをくわえたまま、思わずため息をつきたくなった。
二十二番地は、本当にどんどん厄介なことになっている。
しかもその厄介さは、地下室の配線がショートしたとか、キッチンが火事になったとか、ジェスが誰かとの口喧嘩に負けたとか、そういう種類の乱れじゃない。
もっと面倒で、もっと静かで、そして部屋に戻ってベッドに寝転びながら天井を見つめるハメになりやすい――そういう類の、厄介さだった。
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