06. 転属命令 6
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
艦橋を出て、少し歩いたところで、艦内放送が頭上に響いた。
「本艦、まもなく超光速航行に入ります。」
よし。
連邦は感情を整理する時間すら与えてくれない。
常に時間通り。常に効率的。常に、自分が昇格したのか、それともただもっと大きな絞肉機に移送されただけなのか考える暇を与えない。
私は通路に立ち、俯いてもう一度あの票を見た。
ドゥナン星。統合作戦司令部。
未来の匂いは、見た目は体裁がよくて実態は命取りの転勤辞令に似ている。
六A倉に戻って荷物をまとめるかと考えていると、後ろから足音が聞こえた。
振り返る。
デイヴィッドだった。
放送は彼も聞いていたらしく、歩くペースがいつもより少し速い。それでも、文書官特有の落ち着きは崩れていない。
「受け取ったか?」
彼が聞いた。
私は票を少し持ち上げた。
「受け取った。」
彼は紙面の目的地を一瞥し、その目がわずかに変わった。
大きな変化じゃない。でも見えた。
あの場所の重さを、彼は知っている。
「統合作戦司令部か。」彼は低い声で言った。
「そう。」私は肩をすくめ、できるだけ「別にどうってことない」のトーンを保つ。「上の人たちが私のことを気に入ってくれてるらしい。」
「……それは必ずしも良いことじゃない。」
「知ってる。」
誰よりも知っている。
目をかけられることは、見落とされることより危険なときがある。
でも今更、票はもう手の中にある。
人生はよくこういうものだ。二つの道のどちらかを選ぶんじゃなくて、一本の道が空から落ちてきて、元々立っていた場所を丸ごと潰してしまう。
超光速航行前の警告灯が点滅し始め、通路を明滅させた。
私とデイヴィッドは、そこに立っていた。
近すぎず。遠すぎず。
うざい。
こういう距離が一番、余計なことを考えさせる。
何か言おうとしたが、頭の中で最初に浮かんだのは——
あっちに行ったら、文書区のあの少しだけマシなコーヒーは飲めなくなるな。
……ちくしょう。我ながら情けない。
デイヴィッドが先に口を開いた。
「向こうに着いたら、無茶はするな。」
私は顔を上げた。
「その言い方、私の人格に対する長期的な誤解が含まれてない?」
「誤解じゃない。」彼は平然と言う。「昨日の実績に基づいた合理的な判断だ。」
私は思わず、笑った。
短かった。でも本当に笑った。
「まあいいか。」私はあの票をポケットにしまった。「じゃあ、あんたは? 文書官さん。これからも冷房の効いた部屋で高級コーヒー飲みながら、私たち前線の狂犬どものレポートをきれいに清書するわけ?」
「できれば、君の報告書に『敵艦に自ら体当たり』という文章を二度と書きたくない。」
「善処する。」
「君が『善処する』と言うとき、大抵まったく善処する気がない。」
「そう。」私はきっぱりと言った。「だいたい本当にないから。」
彼は私を見た。
私も彼を見た。
空気が、不意に静かになった。
気まずいわけじゃない。どちらかというと、言葉がすでに喉元まで来ているのに、誰もそれを落とすかどうかまだ決めていない、そういう静けさだ。
通路の灯りがまた一回、点滅した。
私は急に、少し苛立った。
この通路がこんなに静かなことに苛立った。超光速の警告がこんなに早く来ることに苛立った。そして自分が今、どこに視線を置けばいいか分からなくなっていることに、一番苛立った。
だから先に口を開いた。
「とにかく……」
「ん?」
「あんた——」
そこで、自分が詰まった。
ちくしょう。
何を言いたかったんだ、私は。
気をつけてと言いたかったのか。死ぬなと言いたかったのか。それとも、次に会うときは部屋の前で待ち伏せするなと言いたかったのか。
どれも、なんか違う。
デイヴィッドは急かさなかった。
ただ静かに、待っていた。
それが余計に厄介だ。
黙って待てる人間というのは、急かしてくる人間よりずっと、心拍数を乱しやすい。
私は結局、言葉を整えるのを諦めた。
そして一歩、前に踏み出した。
本当に小さな一歩。
でもその一歩を踏み出した瞬間、世界全体が少しだけ引き寄せられたような気がした。
彼の身体から、かすかな紙とクーラーとコーヒーの匂いがした。眼鏡のフレームの端に、点滅する警告灯が反射している。そしてその目が——この明滅する光の中で——昨日の医療ポッドの中で見たときより、少しだけ、まずかった。
ちくしょう。
待って。
この距離、少し近すぎないか?
半秒、退こうかと思った。
でも、なぜか足が動かなかった。
デイヴィッドも動かなかった。
ただ私を見ていた。
そして、本当にほんの一瞬だけ——
もし今、あとほんの少しだけ前に進んだら、全部が別の何かに変わる。
そういう感覚を、はっきりと感じた。
抱き合うとかじゃない。肩が触れるとかでもない。もっと直接的で、もっと明確で、もっとずっと面倒なやつだ。
耳の付け根が、じわりと熱くなった。
傷のせいじゃない。通路が蒸し暑いわけでもない。
自分でも分かってる。
ちくしょう。
嘘だろ。
まさにその瞬間——
「全艦、超光速航行に移行準備。全乗員は直ちに固定位置へ戻れ。」
鋭い放送が頭上から直撃した。
通路全体の警告灯が一斉に、目を刺すような赤に切り替わる。
私は誰かに危険な崖っぷちから乱暴に引き戻されたみたいに、反射的に半歩後ずさった。
心臓の音が、情けないくらい速い。
デイヴィッドも我に返ったように視線をそらし、低く咳払いをした。
「……艙位に戻ったほうがいい。」
私は即座にかぶせる。
「そう。」
早すぎた。あと一秒でも遅れたら、さっきの半秒を「本当にあった」と認めてしまいそうで。
ちくしょう。
私は視線を外し、頭の中は超光速固定手順のことしかないという顔を作った。
「その……」
一拍置いて、できるだけ普通の声を出す。
「あんたも。」
「ああ。」
また一瞬、静かになる。
それから私は、やっと一番慣れた話し方を思い出したみたいに、手を伸ばして彼の腕を軽く叩いた。
「死ぬなよ、デイヴィッド。」
その一言が出た瞬間、ようやくしっくりきた。
これなら、私だ。
デイヴィッドは私を見て、目の奥にまだ少し残っていた「何か」を、ゆっくりと元の静かな底に沈めていく。
それから、かすかに笑った。
「君もな、星野。」
私はくるりと背を向けて歩き出した。
かなり速い足取りで。
固定位置に急いでいるからじゃない。今ここでもう一秒立ち止まったら、頭の中でフルカラー再生されたあの半秒が恥ずかしすぎて、この通路ごと爆破したくなるのが分かっていたからだ。
---
六A倉に戻って、あの集団の運命と汗の匂いが染み付いたベッドに転がり込んだときには、すでに超光速航行が始まっていた。
艦体の低い唸り。艙壁のかすかな震え。
六A倉の変人どもは、相変わらず各自好きなことをしている。
レイスは固定ベルトがきついと文句を言い、アルヴィンはまた誰かに遠距離メッセージを投げていて、林薇は警告灯が肌を変な色に照らすと不満を漏らし、韓汐はもう目を閉じて休んでいて、ユリクは相変わらず静かな大型金属塊のようだ。
全部、いつも通り。
いつも通りすぎて、むしろ枕に顔を押しつけたくなる。
静かになると、頭が勝手に再生を始めるからだ。
戦場でもない。巡洋艦でもない。艦長のあの転属命令でもない。
さっき通路で起きた、短すぎるくせにやけに長く感じた、あの半秒だ。
あの距離。あの沈黙。あと少しで何かが起きそうだった、あの感覚。
ちくしょう。
私は布団を頭から引っかぶった。
だめだ。考えるな。
でも人間の脳みそは「考えるな」と命じられると、わざと反抗するみたいに、その映像をさらに鮮明に拡大して見せてくる。
しかも私は今、妙にはっきりと思い出せてしまっている——
あいつ、さっき避けなかったよな?
……やばい。
耳の付け根が一気に熱くなった。
今度こそ傷のせいじゃない。純度百パーセントの羞恥だ。
ちょうどそのとき、向かいのベッドから林薇が顔を出した。
「なに、自分で埋葬してんの?」
私は布団の中からくぐもった声で答えた。
「寝る。」
「今?」
「今。」
「耳、すっごい赤いけど。」
「超光速は暑いから。」
「はいはい、そういうことにしといてあげる。」
ちくしょう。
やっぱりこの女、いつか見抜くと思ってた。
私は観念して布団をさらに引き下ろし、顔の半分まで埋めて、目だけを上段のベッド板に向けた。
よし。
星野霜。
昨日、帝国の巡洋艦を一隻へし折ったときは顔色一つ変えなかった。
それなのに今日は、文書官とあと数センチでキスしそうになっただけで、六A倉のベッドの上で完熟トマトみたいに茹で上がってる。
たいした出世だよ。
……ちくしょう。
この件だけは、絶対にアルヴィンに知られてはいけない。
あいつに知られたら、私が下士官科に上がるまでの間、笑いのネタにされ続ける。
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