65. 愛車選びは慎重に 2
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
『生徒会および学務機関の注意を回避するための実行要項』
その一行を見て、私は小さく、しかし心からの畏敬の念を込めた声を漏らした。
「……あんた、目的をそのままタイトルにしてるじゃん。」
「これは提出用じゃなくて、あなたに見せるための内部バージョンだから。」彼女は冷静だった。「あとで対外用バージョンに書き直す。」
「プロすぎでしょ。あんた、学生なの? それともどっかの組織のコンサルタント?」
真紀は私を無視して、箇条書きの項目を読み上げ始めた。
「第一に、購入名義は個人のみ。部活、学院、生徒会、実習グループの名義は一切使わない。第二に、納車場所は必ず校外とし、校門付近には近づけない。第三に、駐輪場所は二十二番に固定し、校内の駐輪枠は申請しない。第四に、外装はダークグレー、ブラックブルー、マットアイアンなど、最も議論を呼ばない色を選ぶ。第五に――」
「待って、ブラックブルーって普通にカッコよくない?」
「格好いいけど、犯行予告みたいには見えない。」
「あんたの『格好いい』と『犯罪』の距離感の測り方、なんか微妙じゃない?」
「第六に、購入理由は退屈かつ正当であること。」彼女は私のツッコミをスルーして続けた。「校外居住のための通勤、日用品の買い出し、港区とキャンパス間の必要な機動力、および今後の実習における交通手配を見据えた、長期休暇中の車両への早期習熟。重要なのは――」
彼女はペンを伸ばし、その一行をトントンと叩いた。
「これらがすべて事実であること。」
私は彼女を見て、ふと笑いそうになった。
「つまり、あんたの真骨頂は嘘をつくことじゃなくて、本当のことを、他人が疑う気も失せるような形に並べ替えることなんだ。」
「そう。」彼女は淡々と言っていた。「目立たないための最も有効な方法は、偽ることじゃない。退屈であることよ。」
えげつない。
本当にえげつない。
もし将来、生徒会が私たちを捕まえることがあるとしたら、それは私たちがミスをしたからじゃない。九島真紀が正しいことをあまりにも綺麗にやりすぎて、その綺麗さが逆に怪しまれたからに違いない。
私はさらにページをめくり、最後のページにたどり着いたとき、危うく吹き出しそうになった。
そこには、こんな付録がついていた。
『購入後の初回使用ルート提案』
その下にはこう列挙されている。
キャンパス周辺の低速適応 鉑橋街〜生活圏の買い出しルート 港区外周の観察ライン 停泊区の合法的視認ポイント 高台視野の補完確認ライン
私は最後の一行をじっと見つめた。
「高台視野の補完確認ライン?」
「ええ。」
「人間の言葉に翻訳して。」
「山に登る。」
「ああ。」
彼女はコーヒーのカップを取り上げ、一口飲んだ。さっきまで「私を誘って山に行く」ことを、軍事的な外周視野確認の一部として包装していたことなど、まるでなかったかのような落ち着きぶりだった。
私は椅子の背にもたれ、わざと語尾を伸ばして言った。
「つまり、九島さんの完全な計画はこうだ。まず私に、完全に正当な理由で目立たず車を買わせる。次に、完全に正当な理由で私に付き合って港区へ雪風号を見に行く。そして最後に、完全に正当な理由で――」
「付近の制高点と帰路の状況を確認する。」彼女は言った。
「……あんたの面の皮、チタン・カーボン複合装甲でできてるの?」
彼女はようやく、一秒だけ言葉を止めた。
「私はただ、スケジュールを合理的に組んだだけ。」
「計画的犯行に見えるくらい合理的だね。」
「山に行きたくないなら、その項目は消してもいい。」
彼女の言い方は平坦だった。でも、私にはわかった。それは「押して駄目なら引いてみる」戦術でも、わざと釣ろうとしているわけでもない。彼女は本当に、選択権を私に委ねているのだ。昨夜のように。彼女のいつものやり方のように。
それがかえって厄介だった。
だって、これならまだ「下心見え見えじゃん」と厚かましくツッコミを入れられたのに、彼女がこんな「行かなくてもいいけど」という真面目な顔をしていると、こっちがこれ以上茶化すのは、まるで自分自身のほうにやましいところがあるみたいじゃないか。
私は咳払いを一つした。
「……行かないとは言ってないだろ。」
真紀が目を上げて私を見た。
「行くのね。」
「車を見に行くなら、ついでに帰りの道のテストくらいするだろって言ってんの。」私は自分の声が、何か危険な期待なんかじゃなく、ただのタイヤの摩耗について話しているように聞こえるよう努めた。「初心者マークが路面状況に慣れておくのは、すごく合理的だからね。」
彼女は二秒ほど私を見て、それからごく軽く「うん」と応じた。
「合理的ね。」
くそ。
その一言のほうが、正面から認めるよりもよっぽど、認めているみたいに聞こえるんだけど。
私はもう一度、あの鳴神の画像に目を落とした。認めざるを得ない。こいつは本当に、理不尽なくらい格好いい。あの冷たいブルーの光の輪、低く構えた前傾姿勢、雷と装甲を同じ骨格に閉じ込めたような迫力。まさに、思春期と軍産複合体が共謀して生み出した産物だ。
でも、真紀の言う通りだ。
これは買えない。
少なくとも、このバージョンは。
私が欲しいのは、合法的に公道を走れて、二十二番の前に目立たず停められて、人を乗せても空中分解せず、生徒会に見られてもせいぜい「ああ、本当に足代わりの車を買ったんだな」と思われる程度の代物だ。規律室の主任が見た瞬間、警備員を呼んで校門を封鎖させるような雷神じゃない。
「つまり、車種の方向性は、」私はテーブルをトントンと叩いた。「鳴神っぽいデザイン言語だけど、民間仕様、旧型、濃色、非武装、非同期、できれば一目で九島製だとわからないやつ。」
「そう。」真紀は言った。「あともう一つ。」
「なに。」
「名前が派手すぎないこと。」
私は彼女を見た。
彼女も私を見た。
「……あんた、まさか『鳴神』って名前すら避けるつもり?」
「当然。」彼女は常識を語るような平坦な声で言った。「あなたがそれに乗って出かけて、誰かに『何て車?』って聞かれたとき、『ああ、これはデュアル・プラズマコア搭載、神経同期可能、プロトタイプは内蔵機関砲付きの雷神シリーズ、鳴神だよ』なんて答えられないでしょ。」
「その前に始末書を三枚書かされるね。」
「だから対外的には、ただの中古の民間仕様車だとだけ言うの。」彼女は言った。「型番の略称も民間用のコードを使って、軍事用のルーツには触れない。」
私は急に好奇心が湧いた。
「じゃあ、その民間用コードって何?」
真紀はページをめくり、私に指し示した。
私はその、極限まで退屈な文字列をじっと見つめた。
『KGI-MC 417B 通勤型二輪機動車両』
私はその場で吹き出した。
「容赦ないな。これ、本当に追及する気起きる人間いる?」
「いない。」彼女は言った。「それが狙いだから。」
私は笑いながら、プランを最初のページまでめくり直した。
認めざるを得ない。この計画書は実によくできている。もし今、誰かが臨時監査に踏み込んできたとしても、真紀は顔色一つ変えずにこれを差し出し、「私たちはただ、法を守る学生として一般的な車両購入計画を立て、ついでに港区の交通習熟と生活動線の最適化を図っているだけです」と説明できるだろう。
しかも一番恐ろしいのは、彼女の言うことが全部事実だということだ。
私は彼女を見て、たまらず訊いた。「で、次は何をするの?」
真紀は自分のタブレットを片付けた。
「道は二つある。」
「うん?」
「第一に、私がこれを対外用にさらに簡略化して、あなたが手順通りに車を探す。第二に――」
彼女は一拍置いた。
「ハーヴィーを捕まえてきて、技術顧問にする。」
その光景は即座に想像がついた。
ハーヴィーはまず、ひどく面倒くさそうな顔をして「俺は今忙しいんだ」と言う。だが、車種、サスペンション、リニア駆動、九島技研といった言葉を聞いた途端、電流でも流されたようにブツブツ言い始め、口では「九島家の宣伝をする気はない」と必死に強調しながら、最後にはすべてのパーツを自分の恋愛遍歴みたいに語り出す。
大いにあり得る。
私は思わず笑った。
「よし、ハーヴィーを捕まえよう。」
真紀はうなずいた。私がそう選ぶと最初からわかっていたみたいに。
「じゃあ、今日の午後は私が候補車のリストをピックアップしておく。あなたは一つだけ担当して。」
「なに。」
彼女は私を見て、春の最も無害な風のように淡々とした口調で言った。
「今から、本当に車を買うまでの間、ジェス、D、アッシュ、特に生徒会関係者の前では、絶対に『最近車が買いたくてたまらない』という顔を見せないこと。」
私は一瞬きょとんとした。
「顔?」
「そう。」
「私、そんな顔してる?」
「してる。」彼女は言った。「あなたは何かを本気で欲しがったとき、まず目が裏切るから。」
私は口を開き、反論しようとしたが、途中で急に言葉が詰まった。
なぜなら、向かいに座る九島真紀が、ずっと前から観察していた事実をただ述べるような、ひどく静かな目で私を見ていたからだ。
推測じゃない。
見透かされているのだ。
私は訳もなく耳の付け根が少し熱くなるのを感じて、うつむいてプランの紙を片付け始めた。
「……わかったよ。」
「よろしい。」
「他には?」
「ある。」
「どうぞ、参謀総長殿。」
彼女はあの鳴神のコンセプト画像が印刷されたページを抜き取り、脇に置いた。
「この一枚は、あなたが持ってていい。」
私はその画像を見た。
「持っててどうすんの。」
「格好いいことと、自分に合っていることは違うと、自分に言い聞かせるため。」真紀は一拍置いて、さらに付け加えた。「それと、オリジナル版が買えないからといって、十分に似ていて、かつ捕まらない車を選べないわけじゃないと、思い出すため。」
その言葉は非常に理にかなっていて、同時に、ひどく無責任な励ましのようにも聞こえた。
私はその画像を受け取り、目を落とした。
冷たいブルーの光の輪、重々しい灰黒色の車体、低く構えたライン。文明社会の規約という檻に閉じ込められ、今はただの交通機関のふりをすることを覚えた雷獣。
私は紙をしまい、立ち上がった。
「よし。」私は言った。「じゃあ、まずは生徒会が心筋梗塞を起こさない車から始めよう。」
真紀も立ち上がり、テーブルの上の資料を一つにまとめた。
「それこそが、正しい低調よ。」
私は彼女の大真面目な顔を見て、ついに堪えきれずに一言付け足した。
「でも、本当のこと言うとさ。」
「なに。」
「もしこのあと、本当に私がバイクであんたを乗せて雪風号を見に行って、ついでに山に登ったら――」
彼女が目を上げた。
私はわざと語尾をゆっくりと引き伸ばした。
「あの『高台視野の補完確認ライン』ってやつ、私、一生あんたをからかうネタにするからね。」
真紀は無表情のまま、最後の資料を閉じた。
「構わない。」
「ずいぶん太っ腹だね。」
「まだ車も買えてないくせに、調子に乗らないの。」
私:「……」
素晴らしい。
見事な意趣返しだ。
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