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臨界の星穹  作者: Mr.佐藤焫焵
士官学校編
207/333

59. 鉑橋街(はっきょうがい)22番地 3

この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。

三階から下りて、一階の大リビングへ戻ったとき、私にはもう、第144班の全員がここを埋め尽くす光景が見えていた。


あの大テーブルの上には物が山積みになるだろう。


キッチンには常に誰かがいるだろう。


裏庭には洗濯物が溢れるだろう。


地下室には出所を聞いてはいけない機材が詰め込まれるだろう。


二階からは男子階特有の、素朴な混沌の気配が漂うだろう。


三階は表向きの文明の下で、無音だが凶悪な縄張り争いを続けるだろう。


……どう見てもろくでもない。


でも、どう見ても私たちにぴったりだ。


うつむいてグループを開き、メッセージを投げ込んだ。


星野「見てきた。二十二番地、住める。でかい。不当なくらいでかい」


三秒と経たないうちに、


グループが炸裂した。


ジェス「???????」 ジェス「その説明、物件の評価っていうより、年上のお姉さんの胸のサイズの話みたいなんだけど」


星野「黙って」


真紀「まず結論から。階層は」


さすがだ。


この女の人生には自動フィルターでも内蔵されているのか、ジェスのああいう戯言を最初から環境ノイズとして処理できるらしい。


私はその馬鹿でかいテーブルの端にもたれ、窓の外の裏庭を見ながら文字を打った。


星野「一階は共有エリア。リビングが馬鹿みたいに広くて、十一人掛けの長テーブルがある。キッチンは十分。洗濯室も広い」 星野「地下室は分厚い」 星野「学期中ずっと秘密を詰め込んでも音が漏れないくらいに」


ハーヴィー「地下室?」 ハーヴィー「どのくらい厚い? 機材は置ける? 重電は引ける? 換気は?」


彼の目が突然輝いた様子が、ほとんど見えるようだった。


星野「その反応を見てると、地下室の存在を教えたのは失敗だった気がしてくる」 星野「でも答えはイエス。たっぷり置ける。今から目をつけるのはやめて」


D「車位」


いいね。この人は永遠に、まず機動力から聞く。


星野「車一台、バイク二台。平面。裏庭の横に貨物用エレベーターがあって、地下に直通」


今度は、グループが五秒間、完全に静まり返った。


そして、その分だけ、次の爆発は大きくなった。


ロイ「待って、貨物エレベーター???」


蘭「地下直通?」


アカリ「……この家、もともと何のために建てたの」


ジェス「ははははは、大好き」


ハーヴィー「貨物エレベーター???????」 ハーヴィー「シモ、そこを動くな。今すぐ行く」


星野「サボって突っ込んできたら、そのエレベーターであんたを地下に封印するから」


真紀「三階は?」


顔を上げて階段のほうを見た。


頭の中に自動的に、七人の女子、七つの部屋、二セットの浴室の配置図が浮かび、おまけにジェスと真紀の部屋が近すぎたら深夜にドア越しで口喧嘩する未来まで付いてきた。


星野「三階は七部屋。浴室は完備が二セット」


今度、最初に飛び出してきたのはジェスじゃなく、蘭だった。


蘭「七部屋?」 蘭「待って、女子は一人一部屋?」


ジェス「おおおおおおおおお——」 ジェス「これは面白くなってきた」


アカリ「面白いのはあんたであって、家じゃない」


ジェス「分かってないな。こういうときこそ、本当の戦争が始まるんだよ」


真紀「一人一部屋なら、配分はずっと楽になる」


ジェス「真紀、それを送信する前に、胸に手を当てて『シモに一番近い部屋を狙ってない』って言える?」


チャットが一瞬、静かになった。


そして。


真紀「動線しか気にしてない」


思わず吹き出しそうになった。


動線。


いいね、この言い訳、昨日も同じパターンを聞いた。


ジェス「そうそう、あんたの部屋のドアからシモの部屋のドアまでの、専用動線ね」


星野「まだ引っ越してもいないのに、三階の空気を新婚のご近所トラブルみたいにするのやめてくれない?」


アカリ「もう手遅れ」


二階のほうも、大して穏やかじゃなかった。


D「男子階は?」


星野「二階。男子四人は住める。浴室は一セット」


ハーヴィー「一セット???」 ハーヴィー「先に言っとくけど、濡れたタオルを俺のベッドに投げるのは絶対に許さないからな」


ロイ「じゃあ先に約束しろよ。ネジとレンチを浴室に持ち込まないって」


ハーヴィー「それは別の話だ」


D「別じゃない」 D「共同生活の中では、それは同じ話だ」


これを見て、思わず笑ってしまった。


よし、男子階も始まった。


蘭「つまり、基本方針は成立。男女で階層を分ける、共有エリアは独立、地下は機能拡張用」 蘭「問題は部屋割りとルール作りに集中する」


ジェス「わあ、『ルール作り』」 ジェス「蘭、その単語のせいで、引っ越しじゃなくて停戦協定でも結びに行く気分になってきた」


アカリ「いいえ。どちらかというと冷戦ね」 アカリ「特に三階」


真紀「異論なし」


ジェス「あんた、それ認めるんだ???」


真紀「誰かが先に挑発しなければ、という前提で」


ジェス「私はただ、多少表現力が豊かなだけだもん」


星野「それは表現力とは言わない。事故率が高いって言うの」


そのとき、ロイが真面目な顔で話題を財務方面に引き戻した。


ロイ「喧嘩は後にしろ。このレベルの家が本当に取れるなら、家賃と補助は計算し直さなきゃいけない」 ロイ「それに、一人一部屋と二人部屋混合とでは、共用収納と生活コストにも差が出る」


ハーヴィー「男子階は、少なくとも大部屋の雑魚寝だけは勘弁してほしい」


D「同意」


アカリ「女子階だって大部屋は無理でしょ」


ジェス「笑える。七人の女子で大部屋?」 ジェス「三日目には内部革命が起きるのが見たいわけ?」


真紀「二日目」


星野「あんたたち、崩壊のスピードに自信持ちすぎじゃない?」


ジェス「シモ、違うよ」 ジェス「自信があるんじゃなくて、お互いのことをよく知りすぎてるだけ」


鬱陶しい。


でも、正しい。


リビングの中央に立ち、この静かすぎる大きな家を見回し、それからグループで飛び交うメッセージにもう一度目を落とした。ひどく荒唐無稽な気分になった。


家はまだ決まっていない。


誰もまだ引っ越していない。


なのに、第144班はすでに文字の上で、この家を一度住み荒らしてしまっていた。


アイダが横で、私がチャット画面を見つめて上の空になっているのを見て、わずかに眉を上げた。


「どう?」


「みんな、まだ引っ越す前から精神的にはもう入居してる」私は画面を少し彼女のほうへ傾けて見せた。「今のチャットの中には、性別戦争、縄張り争い、浴室戦争、それから真紀が『動線』で包んだ個人的な意図が同居してる」


アイダは数行を眺めて、唇の端を曲げた。


「活気があっていいじゃない」


「災害みたいに聞こえるけど」


「その二つは矛盾しない」


今日、二度目にこの台詞が成立した。


グループはまだ続いていた。


蘭「誰が誰の近くかは後回しにして。まず各階の基本ルールを固めよう」


ロイ「賛成」


D「賛成」


ハーヴィー「賛成。ただし、鼾をかく人間の隣にならない権利は先に確保しておきたい」


ジェス「ははは、それ、本来シモが最初に言うべきセリフじゃない?」


真紀「もう言ってた」


……なんでそんなことまで覚えてるの。


いや、待って。おかしいのは「なんで覚えてるのか」じゃない。


「なんで私はもう、彼女が覚えていることに慣れ始めているのか」だ。


この習慣は、本当に危険だ。


危険というのは、ある日ふと我に返ったとき、自分の生活リズムの一部が、いつの間にか別の誰かに受け止められていたと気づく、そういう種類の危険さだ。


端末の画面を消し、深く息を吸い、もう一度開いた。


星野「とにかく、二十二番地は取りに行く価値がある」 星野「広さも間取りも使える。地下室も使える。共有エリアも十分」 星野「とりあえず口を閉じて、今夜から部屋割りを考えて」


送信した瞬間、グループが一瞬だけ静まり返った。


それから全員が、本当の大惨事がようやく降臨したとでも言いたげに、再び炸裂した。


そのめちゃくちゃに流れるチャット画面を眺めながら、ゆっくりと顔を上げ、二階と三階へ続く階段を見つめた。


……そうだ。


本当に厄介なのは、これからだ。


今この瞬間から、私はもう「この家に住めるかどうか」を考えていない。


考えているのは——


誰がどの部屋に住めば、入居一週目で誰かが誰かを先に殺さずに済むか、だ。

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「普通かなぁ?」★三つを押してね!


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