06. 転属命令 3
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
データ、タイムライン、兵器コード、火器管制パラメーター、艦内位置記録。見ているだけで頭が膨張しそうになる。
「文書区の人間って、一つのことを十個のことに分けて書くのが趣味なの?」
「違う。」彼は冷静に訂正した。「一つのことを十個に分けて書かないと、上官が十一個目を見て見ぬふりをするからだ。」
……なるほど。
文書室で長く生き抜いた者特有の悟りだ。
私は彼をちらりと見た。
「馴染むの早いね、デイヴィッド・ローゼン。」
そのフルネームを口にした瞬間、彼は目を上げて私を一度見た。
ごく短い視線。
それでも、私は自分が何か微妙な地雷——あるいは境界線——をうっかり踏んでしまったような気がした。
しまった。
他人のフルネームなんて、あまり頻繁に覚えるべきじゃない。物事が急に具体的になりすぎてしまうから。
私はすぐに視線を落として資料をめくり、ただの思いつきで言っただけという顔を作った。
デイヴィッドはそこを突っ込まず、ただページの一つを拡大した。
「ここからだ。君がブリッジの主導権を奪取した直後から。」
私はその映像を見つめた。昨日、血まみれで髪を爆発させ、まるで屠殺場から臨時で戦術指揮官に抜擢されたような自分の姿を見て、少し複雑な気分になる。
「ひっどい顔。」私は評価を下す。
デイヴィッドは画面を見た。それから、私を見た。
そして言った。
「そうでもない。」
私は即座に顔を上げる。
「あんた、『そうでもない』依存症か何か?」
「違う。」
「じゃあなんで? 昨日の医療ポッドと今日のここで、もう二回目だけど。」
彼は二秒ほど沈黙し、それから極めて平坦な声で返した。
「君が毎回、すごく気にしてるような顔をするからだ。」
……ちくしょう。
図星すぎるだろ。
いや、私そんなに分かりやすい顔してたか?
一瞬、言い返してやろうかと思った。だが、彼の言い方があまりにも静かすぎて、ただ事実を述べているようにしか聞こえない。
それが余計に腹立たしい。だって、自分の面子を保つために、「ただ事実を述べている人間」を口封じに殺すわけにはいかないからだ。
理論上は可能だとしても。
私は咳払いをして、話題を本筋にねじ曲げた。
「無駄話はいい。続けろ。」
彼は空気を読んで追撃をやめ、画面をブリッジの主制御エリアにスライドさせた。
「ここだ。君は帝国艦隊の初期陣形をどう判断した?」
よし。
戦術の話なら簡単だ。少なくとも戦術なら、耳が熱くなることはない。
私は椅子を少し近づけ、ホログラムのリプレイを指差した。
「連邦の初期配置は扇形の前進圧迫。先端を包み込もうとした。でも帝国が側面に増援を差し込んだせいで、元の包囲口が逆転して連邦自身を締め殺しかけてた。あの端の艦——つまり私たちが奪った船——の位置は、ちょうどその封鎖口の縁にあった。」
デイヴィッドは頷き、指を猛烈な勢いで動かして記録する。
「だから君は、そのまま離脱するのではなく、敵の火力チェーンの内側から発砲することを選んだ。」
「そう。そのまま逃げても意味がない。逃げ切れないし、ただの敗走になる。どうせあの位置にいるなら、先にデカい一撃をぶち込んだほうがマシ。」
私は一呼吸置き、さらに付け足した。
「どうせ死ぬなら、少しでも投資対効果の高い死に方をしたいでしょ。」
彼は目を上げて私を見た。
「君はいつも、そうやって危険な判断を自分に納得させてるのか?」
私は椅子の背もたれに寄りかかる。
「じゃあ何? 『連邦の栄光のために』とか熱血ぶって言えって?」
「そういう意味じゃない。」
「分かってる。」私は戦術リプレイの中でへし折られた帝国の巡洋艦を見つめ、少し声を落とした。「ただ、私は先に最悪な言い方をしておくのに慣れてるだけ。そうすれば、最後に本当に死にかけたとき、少なくとも馬鹿みたいには見えないから。」
文書区が半秒、静まり返った。
周囲ではまだ誰かがキーを叩いている。冷房は効いている。情報ウィンドウは層をなして浮かんでいる。
それでも私は、デイヴィッドの手がピタリと止まったのを、はっきりと感じ取った。
長くはない。だが、私が「さっきの言葉、思ったより本音っぽく聞こえたかも」と自覚するには十分な時間だった。
しまった。
失言だ。
適当な軽口で上書きしようとした瞬間、彼が先に口を開いた。
「俺は……」
彼は少し言葉を選ぶように、間を置いた。
「昨日のあの状況で、君はよくやったと思ってる。」
私はすぐには返事をしなかった。
こういう言葉は、上官の口から聞くのと、一緒にブリッジにいた人間の口から聞くのとでは、重さがまるで違う。
前者はただの採点だ。後者は、もっと——
まあいい、どうでもいい。
私は結局、鼻を鳴らすだけで済ませた。
「あんたたち、今日はどうしたの? 揃いも揃って急に人を褒めちぎって。」
「褒めてるんじゃない。」彼はデータウィンドウを見つめたまま、やはり平坦な声で言った。「事実を報告してるだけだ。」
……よし。
またこれだ。この静かな直球が一番ウザい。
私はとりあえず水を飲んで冷静になろうと決めたが、視線がちょうど彼の手元にある、本物のコーヒーのように見える液体に落ちた。
即座に焦点をずらす。
「ちょっと待って。」
私はその飲み物を指差した。
「それ何。」
デイヴィッドはちらりとそれを見た。
「コーヒーの代替配給品だ。」
私はそれを見つめる。さらに二秒見つめる。
「文書区にはこんなのがあるの?」
「ある。」
「六A倉にはない。」
「知ってる。」
「なんで?」
「あそこは居住区だからだ。」
私は無表情になる。
「やっぱりこの世界は、階級の抑圧でできてる。」
彼は一秒沈黙した。
それから、極めて自然な動作で、カップを少し私のほうへ押しやった。
「飲むか?」
私はその液体を見つめた。
正直言って、これはロマンチックなシーンでも何でもない。ただ前線の文書区で、配給のホットドリンクよりはずっと高級そうなコーヒー代替品が、ごく無造作に私の前に押し出されただけだ。
だが、こういう何気ない動作が一番厄介なのだ。
なぜなら、それは気づかせてしまうから。「ああ、こいつは『飲む?』みたいな質問を、こんなに自然に聞いてくる距離感になったんだな」と。
私は半秒ほど迷った。
そして、自分の食欲に対して誠実になることに決めた。
「……飲む。」
私はカップを手に取り、一口飲んだ。
……うわ。
本物のコーヒーとは言えないが、あの工業廃水に比べれば天と地ほどの差がある。その場で感動して泣きそうになった。
「これ、いける。」私は真剣に評価を下した。
デイヴィッドは私を見て、その目には明らかに笑いが混じっていた。
「それはよかった。」
私はカップを戻し、必死に普通のトーンを維持する。
「勘違いしないで。私はただ飲み物の評価をしただけで、あんたに感謝してるわけじゃないからね。」
「俺はまだ何も言ってないけど。」
「心の中では思ってたでしょ。」
「なら、君の推測はかなり正確だな。」
ちくしょう。
こいつ、今日調子良すぎないか?
私が睨みつけても、彼はただ俯いて戦術記録の整理を続けている。さっきの言葉も、ただ適当に投げただけだと言わんばかりに。
こういう人間は本当に武士道精神に欠けている。
なのに私は今、ここに座って、こいつと一緒に報告書を埋めなければならない。
本当に最悪だ。
……でも、よく考えてみれば。
六A倉の洗面台戦争に比べれば、ここに座って、かろうじて口にできるコーヒー代替品を飲みながら、デイヴィッドの静かな声で「昨日、どうやってあのえげつない体当たりを思いついたのか」と聞かれるのは——
そこまで悪くないかもしれない。
ほんの少しだけ、悪くない。
本当に、ほんの少しだけ。
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