55. 先輩からのオファー 3
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
結局、今日読むべき分の七割は終わらせた。残りの三割は理解できなかったわけじゃなく、頭が本当に限界だっただけだ。真紀はいくつかの要点を別の紙に簡単な表としてまとめてくれて、「夜、寮に戻ってもう一度見れば十分」と言った。その口調は補習をしているというより、勝手に動き回る機材の定期メンテナンスをしているみたいに平然としていた。
図書館を出てから、D、アカリ、ハーヴィーにメッセージを送った。
内容は簡単だった――上級生三人から声をかけられた。一週間以内に意向を返事するよう求められている。みんなの意見を先に聞きたい。
Dの返信が一番早かった。
D:実利はあるか?
いかにもDらしい。
無駄口なし、直接利益を聞いてくる。
アカリの返信は二分後だった。
アカリ:相手が仲間を探しているのか、道具を集めたいだけなのか、まず確認して。その二つはまったく違う。
これも彼女らしい一文だ。死んだ魚みたいな目をしたあの女は、文字にしても冷たく正確だ。
ハーヴィーは一番遅かったが、返ってきたのは長文だった。
ハーヴィー:サドが強いのは言うまでもない。ローゼンが本当に情報・戦術型なら、それも使える。ヴァンダーみたいな奴は、本当に人を導くか、本当に人を死地に連れて行くかのどっちかだ。向こうがお前にどんなポジションを求めているのか、先にちゃんと聞き出せ。上級生にタダで使われるな。それと、お前、今日の午後サボっただろ?
最後の一文を見て、こめかみがひくついた。
こいつ、どこにそんな情報網を持っているんだ。
「関係ないでしょ」と打ち返そうとしたところで、隣の真紀が抱えていた二冊の本を少し持ち直し、片手を空けて、滑り落ちそうになっていた私の教材を押さえてくれた。
「前を見て」彼女は言った。
「見てる」
「さっき柱にぶつかりそうだった」
「それは柱の問題」
「そう」彼女は平然と言った。「柱は謝らないけど」
……よし。この女、最近は嫌味まで遠回しに言うようになってきた。
夜、宿舎に戻ると、ジェスが机に突っ伏して何かを書いていた。
ドアの音を聞いて顔を上げ、私と真紀の間を視線で往復させてから、ひどく殴りたくなる、でも全部お見通しの笑みを浮かべた。
「おかえり。どう、図書館デートは楽しかった?」
「デートじゃない」私はすぐに言った。
「じゃあ、高強度学術密着行為ね」ジェスはあっさり言い換えた。「で、三人の上院美人先輩、今日はどれくらい甘い言葉を注ぎ込んできたわけ?」
私は本を置き、廊下での待ち伏せ、専門の開示、一週間以内の返答要求について、大まかに話した。
聞き終えたジェスは、まず口笛を吹いた。
「いいじゃん。電子戦のお嬢様、戦術理論のお嬢様、未来の艦隊提督候補。三択で選び放題。シモ、今のあんた、食堂の揚げたてチキンカツより人気だよ」
「人気もクソもあるか。今の私は、三社同時にヘッドハンティングされてる、これから解体される予定の社員に近いんだけど」
「で、どう返したの?」
「仲間に聞いてから、一週間以内に返事すると言った」
ジェスは頷いた。珍しく、半秒だけ真顔になった。
「その返し、悪くない」
真紀も淡々と「うん」と言った。明らかに同意していた。
座ろうとしたところで、ジェスが何か思い出したみたいに指を一本立てた。
「あ、そうだ。どうせ期末前の編組の話が出たついでに――私、爆弾を一個持ってる」
この出だしを聞いた瞬間、胃が先に縮んだ。
「誰かのパンツと誰かの靴下を同じ洗濯機に突っ込んだ系の爆弾じゃないでしょうね」
「違う、それはせいぜい風紀案件」ジェスはにこにこしながら言った。「これはもっと上等」
彼女は手に持った紙を、ひらひらと振ってみせた。
「知ってる? 正式に部隊登録して、二週間の休暇から戻ってきたら、学校側は全員を『集中居住』に叩き込むつもりらしいよ」
部屋の中が、一秒だけ静まり返った。
私は眉をひそめる。「集中居住?」
「そう。簡単に言えば、期末の実戦配備演習を控えたあんたたちを、一番管理半径が短くて、監視しやすくて、いつでも引っ張り出して整列させられる場所に再び詰め込むってこと」ジェスは、まるで他人の不幸を読み上げるような軽快な口調で言った。「スケジュールは完全統制、出入りも統制。誰かが夜中に二回咳き込んだだけで、上が把握できるような場所にね」
「……キモい」
私は低く吐き捨てた。
「この軍の学校がキモくなくなった日があったら教えてよ。記念に花火でも打ち上げてやるからさ」
ジェスはヒラヒラとその紙切れを揺らした。その口元の笑みは、さらに一段と輝きを増している。
「でもね、これには続きがあるの」
私は彼女を見た。
真紀も視線を上げる。
ジェスは、もったいぶるようにゆっくりと核心を口にした。
「『優勝組は、校外居住を申請できる』」
私は思考が止まった。
「……は?」
「文字通りの意味」ジェスは紙を机に叩きつけた。「特権よ。枠には限りがあるけど、確実に存在する。部隊の資格が十分に強固で、申請理由が完璧なら、二週間の休暇明けに集中居住へ入るのを免除されて、校外での編組居住に切り替えられる」
部屋に、ふたたび静寂が落ちた。
今度は、自分の脳みそが恐ろしい速度で回転し始める音が聞こえるほどの静けさだった。
校外居住。
集中居住の回避。
この言葉の殺傷力は、今日遭遇した上級生三人を束ねたものより遥かにデカい。
なぜならこれは、単なる「どこに住むか」という問題ではないからだ。
あの息の詰まるような、最も強固な管理チェーンに首を繋がれずに済むということを意味している。
生活空間、行動の自由、そして実戦に向けた備えのペースが、根底から変わる。
そして同時に——もし本当に申請が通った場合、誰と誰が住むのか、どう住むのか、どんな生活になるのかという、極めて生々しい現実問題に直面することも意味していた。
私はゆっくりとジェスに視線を戻した。
「その情報、どこから引っ張ってきた?」
ジェスは、いかにも彼女らしい、完璧な胡散臭い笑顔を浮かべた。
「あたしが普段、口が悪いだけの女だと思ってた? 伊達に情報屋の真似事をしてるわけじゃないのよ」
「そこは聞いてない」
「はいはい。重要なのは、この情報が正確で、規定も本物だってこと」彼女は両手を広げた。「さあ、問題です。あたしたち、これ申請する?」
私はすぐには答えられなかった。
頭の中で、処理しきれないほどの情報が同時に爆発していたからだ。
私はジェスの手にある紙から、ゆっくりと真紀の顔へ視線を移した。
彼女もまた、その紙を見つめていた。
驚いているわけでも、興奮しているわけでもない。私が最近になってようやく見慣れてきた——彼女の頭の中にある、混沌を整理するための専用の歯車が、音もなく回り始めている時の顔だった。
……最悪だ。
今の私は、彼女のその表情を見ただけで、次に始まるのが「議論」ではなく「計画」だと分かってしまう。
ジェスも明らかにそれを察知したようで、さらに意地悪く笑った。
「おっと、九島さんが計算を始めたわよ。どう? もう家具の配置でも考えてる? それとも、まずは星野のベッドの下にあるチェリーコーラを、どうやって合法的に没収するか考えてるとか?」
「第一に、宿舎に家具は配備されません」真紀は極めて平坦な声で口を開いた。「第二に、彼女のコーラを没収するつもりはありません。消費量を制限するだけです」
私は弾かれたように顔を上げた。
「おい」
「一日三缶も飲んでいたら、今後実際に艦へ上がった時、船より先にあなたの胃が壊れます」
「一日三缶も飲んでない」
真紀は私を見た。その瞳はひどく静かだった。
私自身が、一瞬だけ後ろめたさを覚えてしまうほどに。
ジェスがバンッと机を叩いて大笑いした。
「終わったわね。その顔、九島さんは絶対あんたの消費量データを持ってるわ。星野、あんたもう『付き添い』じゃなくて『飼育』されてるじゃない」
「黙れ」
「やだね」ジェスは笑いを少しだけ収めると、例の紙を私たちの真ん中へと押しやった。「さて、真面目な話をしようか。校外居住はタダで配られるお菓子じゃない。学校側がこれを許可するのは、優勝組に戦術的価値があるから。そして、期末前に部隊としての編成状態を維持させ、自主的な整備効率を上げさせるためよ。要するに、首輪の紐を少し長くしてやって、こいつらが自分で自分の首を絞めるかどうか見物しようって魂胆」
「いかにも学校側が好きそうな手だ」私は冷笑した。
「でしょ? 思いやりがあるわよね。泣けてくるくらい」
真紀は紙を手に取り、最初から最後まで一通り視線を走らせた。
彼女が情報を処理する速度は、相変わらずゾッとする。単に読むのが速いのではない。情報が彼女の中に入った瞬間、表面に留まることなく即座に解体され、分類され、重み付けされ、見えないファイリングキャビネットに整然と飲み込まれていくのがはっきりと分かるのだ。
数秒後、彼女は紙を置いた。
「これが事実なら、私たちが検討すべきなのは『住むかどうか』ではありません。『誰の名義で申請するか』『編成をどう記述するか』『誰を居住範囲に組み込むか』。そして——」
彼女は言葉を切り、私を見た。
「あなたが、それを望むかどうかです」
私は少しだけ虚を突かれた。
……くそ。
てっきりそのまま独断で計画モードに突入すると思っていたのに、まさか私に決定権を投げてくるとは。
彼女らしくない。
いや、彼女らしいのだが、それはあくまで「今のバージョンの彼女」に限った話だ。
以前の彼女なら、まず完璧なプランを構築してから、私をそこへ押し込んでいただろう。今の彼女もプランは作るが、少なくとも最後の一押しをする前に、私の顔色を窺う程度のことは覚えたらしい。
……こういう進歩は厄介だ。彼女を理不尽に嫌い続けるのが、ひどく難しくなるから。
私は膝に肘を突き、床へと視線を落とした。
「集中居住は鬱陶しい」私は言った。
「校外居住だって、楽になるとは限らないわよ」ジェスが釘を刺す。「自分たちで背負うものが増えるってことだからね。スケジュール、装備の整備、物資の管理。誰が遅刻したの、誰がクソ野郎だの、誰が夜中に起き出して部隊全体の精神状態を削っただの、全部学校のせいにはできなくなる」
「分かってる」
「それに、本気で申請するなら、あたしたちの部屋だけで済む話じゃない」ジェスは指を振った。「Dやハーヴィー、アカリたちも最初から計算に入れておくべきね。そうじゃないと、後になって一部は外、一部は集中居住に収監なんてことになったら、部隊が真っ二つに割れる」
その言葉が落ちた瞬間、部屋の空気がスッと冷えた。
彼女の言う通りだったからだ。
第144組はもう、「誰と誰が仲がいいか」なんて次元の集まりではない。期末で本当にこの編成で戦場に出るなら、居住環境や行動のペースそのものが戦力の一部になる。
言い換えれば、校外居住は福利厚生のように聞こえて、その実、一種の「前倒しのシミュレーション」なのだ。
学校側が生活の細部にまで介入してこなくなった時、果たしてこいつらは、すぐに腐り落ちないような小型のシステムを自力で構築できるのか——というテスト。
……そこまで考えた時、ひどく嫌な予感が背中を這い上がってきた。
私たちは「快適な暮らし」を申請しようとしているのではない。
「本物の部隊になること」を前倒しで申請しようとしているのだ。
そして一度「本物」になってしまえば、多くのものが同時に現実味を帯びてくる。
例えば、責任。
例えば、ポジション。
例えば——これまでは宿舎の規則や日常のノイズで誤魔化せていた、特定の人間との距離感。
私は無意識に顔を上げ、ちょうど真紀の視線とぶつかった。
彼女は私を見つめたまま、何も言わない。
けれど、その瞳はあまりにも静かで、あまりにも直接的で——まるで「この道を選ぶ覚悟が、あなたにあるか」と問うているようだった。
……おい。
こういう時に、目で会話しようとするな。
私は逃げるように視線を外し、ジェスを睨みつけた。
「つまりあんたが言いたいのは、これは単なる引っ越しじゃなくて、期末前の生活様式そのものを再編成するってことだな」
「ご名答」ジェスは指を鳴らした。「おめでとう、無料で『現実』をプレゼントよ」
「この景品、返品できるか?」
「却下。連邦の軍学校は、個人の感情を返品理由として受理しないの」
私は舌打ちをして、椅子の背もたれに深く寄りかかった。
真紀は、極めて平坦な声で補足を入れた。
「ですが、申請が通れば、より完全な自習空間が確保できます」
「……」
「より安定した休息時間も」
「……」
「そして、邪魔されることのない部隊編成の議論の時間も」
「お前の本命は、その最後の一個だろ」
「すべてが重要です」
横で、ジェスが肩を震わせて笑いを堪えていた。
「九島さん、あんたって人は本当に……『この子と少しでも長く一緒にいたい』って欲求を、『部隊の効率化』って言葉で包装するの、天才的に上手いよね」
「そのようなことは言っていません」
「口では言ってないけど、全身から滲み出てるわよ」
「ジェス」
「はいはい、黙ります」彼女は両手を挙げて降参のポーズをとったが、次の瞬間には我慢しきれずに追撃を放った。「でも真面目な話、校外居住の申請には大賛成。少なくとも、夜中に隣のベッドの体力馬鹿がいびきをかいて、エンジンが爆発したみたいな音を聞かされずに済むし」
私は危うく吹き出しそうになった。
「その理由は、かなり説得力があるな」
「でしょ? それに考えてもみてよ。集中居住ってことは、学校側がいつでもドアを叩いて、点呼して、部屋を漁って、首根っこを掴んでいけるってこと。校外居住なら、少なくとも自分たちで閉められる『扉』がある。扉を閉めれば、外の制度は半分死ぬのよ」
その言葉に、私の心が微かに揺れた。
扉を閉めれば、外の制度は半分死ぬ。
……その光景を想像するだけで、ひどく甘美だった。
私が自由を渇望しているからではない。軍の学校という場所においては、「自分たちの意思で開け閉めできる扉を持てるかどうか」すら、すでに贅沢品になり果てているからだ。
真紀は紙を綺麗に折りたたみ、机の上に戻した。
「今夜は結論を出さなくていい」彼女は言った。「ですが、明日から他のメンバーの意向を確認し始めます。D、ハーヴィー、アカリ、それから……居住編成に組み込むべき他の候補者たちも」
彼女の口調はひどく安定していて、ただ明日のリストを読み上げているかのようだった。
だが、私はよく知っている。「明日から確認し始める」というフェーズに入った時点で、それはもう単なる冗談ではない。
この爆弾は、今この瞬間から正式にカウントダウンを開始したのだ。
「ずいぶんと仕事の手際がいいな」私は彼女を見た。
真紀は、ごく自然に私の視線を受け止めた。
「あなたがこれ以上考えると、自分で自分を怖がらせて、面倒くさがるからです」
「……お前、最近ますます私の分析に磨きがかかってないか?」
「最近じゃないわよ」ジェスが横から口を挟む。世界が燃えるのを楽しみにしている狐のような笑みだった。「彼女はずっとあんたを分析してたの。ただ、今はもう隠すのをやめただけ」
私は机の上のクッションを掴み、ジェスに向かって全力で投げつけた。
ジェスは笑いながらそれを受け止め、椅子の背もたれに深く沈み込んだ。今日の娯楽メーターが完全に振り切れたような顔だった。
「まあ、とにかく一つだけ覚えておいて」彼女はクッションを抱き抱え、珍しく少しだけ真面目なトーンになった。「もし本当に申請を通すなら、それはただ『快適に暮らせる』ってだけの話じゃない。第144組は自力でシステムを回せるって、学校側に宣言することになる」
私は数秒間沈黙し、
ゆっくりと頷いた。
「分かってる」
分かっているからこそ、厄介なのだ。
申請が通ってしまえば、私たちは本当に「一つの部隊」として生き始めなければならない。時間割の中や、演習場の中や、点呼の書類や名簿の上だけではない。毎日目を覚まし、飯を食い、本を読み、装備を手入れし、互いの精神状態に干渉し合う——そういう生活の細部において。
それは、焚風よりも厄介な代物だ。
焚風はせいぜい、人を焼き殺そうとするだけ。
だが部隊生活というやつは、人間が生きたままの状態で、少しずつ、他人の輪郭と噛み合う形へと削り取っていくのだ。
私は、そういう不可逆的な変化が一番嫌いだった。
……問題は、どうやらもう手遅れらしいということだ。
私は机の上の紙切れを見下ろした。それはもはや申請書というより、ある種の予告状のように見えた。
これからの二週間の休暇、次の一ヶ月、あるいはまだ見ぬ雪風号での日々が——もう二度と、これまでの「各自が勝手に耐え、各自が勝手に生きる」というやり方では進まないのだという予告。
ジェスが欠伸をして、デスクランプの明るい方を消した。ベッドサイドと机の小さな明かりだけが残る。宿舎の中が一段階暗くなり、空気もそれに合わせて静まった。
真紀は広げていたノートを片付けた。その動作も相変わらず整然としていて、静かだった。片付け終わると、彼女は私をちらりと見た。何気ないようにも、意図的であるようにも見えた。
「シモ」
「何」
「明日は、また授業をサボって寝たりしないでね」
「あれは学習環境の戦術的調整だ」
「ええ」彼女は頷いた。「なら明日は、あなたの学習環境がまた調整されすぎていないか、私が確認しに行きます」
言い返してやろうとしたが、ジェスがクッションに顔を埋めて吹き出していた。
「助けて、今のマジで同居前の予行演習じゃん」
「あんた、いつ寝るんだよ」私はジェスを睨んだ。
「寝る寝る」ジェスは寝返りを打ってベッドに潜り込み、ひどく殴りたくなるような手つきでこちらに手を振った。「おやすみ、未来の校外居住・共同管理人のお二人さん」
私は深く息を吸い込んだ。
今は殺意を保留することにした。軍の学校で死体を処理するのは骨が折れるし、明日はチームメイトの意見を聞きに行かなければならない。後始末をしている暇はないのだ。
私は机の上の紙を手に取り、最後にもう一度だけそれを見てから、ノートの間に挟み込んだ。
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




