55. 先輩からのオファー 2
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
連邦軍学校中央図書館は、呆れるほど大きかった。
見栄えのための空虚な「大きさ」じゃない。
足を踏み入れた瞬間、「この建物、近所の建物を何棟か密かに飲み込んで今の姿に育ったんじゃないか」と本能的に疑いたくなる、本物の大きさだった。中庭は過剰なほど吹き抜けになっていて、透明なドームが午後の光を格子状に切り取り、床、手すり、幾層にも積み上がった書架の間に落としている。
ある種の高性能監視システムの、穏やかなバージョンとでも言うべき明るさだった。二階、三階、さらにその上にも環状の歩道橋があり、学生たちが行き来していた。知識と単位に追い立てられる渡り鳥みたいに。
人は多かった。
多すぎて、静けさそのものが騒がしく感じるほどに。
資料を抱えて速足で通り過ぎる者は、一歩遅れたら教授にその場で処刑されるとでも言いたげだった。
長机に突っ伏してノートを取る者は、自分の未来の遺影に添える説明文でも書いているみたいだった。窓際の席でイヤホンをつけている者は、目が虚ろで、統計学に魂を抜かれたばかりのようだった。
二階に上がり、書架のそばの隅の席を選んで座った。
光は十分で、静かで、世界から少し距離を置くのにちょうどいい。もちろん、ここで悪いことをするつもりはない。今日は勉強しに来たのだ。本当に。
手元の教材を一列に並べた。
『艦隊管理基礎』 『艦上勤務ローテーションと調整』 『連邦駆逐艦標準操作構造抄録』
表紙を見ただけで、自分のために衛生兵を呼びたくなった。
一冊目を開くと、状況は昨日よりさらに悪化していた。
今日は真紀が隣にいて、人間の言葉に変換してくれるわけじゃないからだ。文字はたちまち本来の醜い姿に戻り、正装した蟻の群れみたいに紙面を這い回りながら、「艦隊配置ノードと補給優先順位の動態的関連については付録七を参照のこと」などとほざいてくる。
付録七なんて知るか。
三十分以上粘って、無理やり二章を読み終え、数行のメモも取った。それから、午前の授業があまりに催眠的だったせいか、逃げ出した後の緊張が緩んだせいか、それとも図書館の冷房がちょうど合法的な睡眠薬みたいな温度だったせいか、気づいた時には視線がふわふわし始めていた。
だめだ。寝るな。
自分に言い聞かせる。
この段落だけ終わらせて。
せめてこの図表だけ対応を取って。
次の瞬間、額はもう腕の上に落ちていた。
…… ……
目が覚めた時、最初に感じたのは何かを見たことじゃなかった。
隣に誰かがいる、という感覚だった。
その存在感は奇妙だった。重くなく、急いでもいない。通りすがりでもなく、席を借りたいわけでもなく、まして逃げ出して爆睡している一年生を引きずり出しに来た司書でもない。むしろ誰かが静かに隣に座って、しばらく経っていて、しかも今すぐ起こすつもりが全くない、そういう気配だった。
まぶたが動いたが、すぐには開けなかった。
理由は簡単だ。
軍学校でここまで生き延びておいて、目が覚めた瞬間にまず死んだふりで状況を観察するくらいのことができないなら、あの火の星に行った意味がない。
うつ伏せの姿勢を保ち、呼吸を平らにして、耳だけを澄ませた。
ページをめくる音。
ごく軽い。
紙が揃えられる微かな摩擦。
ペン先がページの上で止まり、短く走る音。
そして、ひどく聞き慣れていて、ひどく腹立たしくて、でも妙に安心する気配が、静かに隣にあった。
……真紀。
見なくても分かる。
「隣で寝ているあなたを見守る」という行為を、当直巡回みたいに当然のこととしてやれるのは、彼女しかいない。
私は動くのを堪えた。
数秒して、ごく小さな音がした。手元から滑り落ちかけていたペンを拾って戻し、ついでに折れかかっていたページをそっと伸ばすような音。
その動作はあまりにも小さかった。
今ここで目を開けたら、かえって余計なことになりそうなくらいに。
だから死んだふりを続けた。
どうせ――ほんの一時だけ。ほんの少しだけ。
「……シモ」
彼女がごく小さく呼んだ。
起こすための音量じゃない。何かを確認するような声だった。
耳の奥がじわりと痺れ、危うくバレるところだった。
またこれだ。
この二人は、いつからこんなに当たり前のように私をこう呼ぶようになったんだろう。
林間学校の時だろうか。
焼肉の後だろうか。
それとももっと前、みんなが生き延びることと強がることで手一杯で、「ねえ、いつからそう呼ぶようになったの」なんて、青春恋愛コメディにしか出てこないような細かいことを気にする余裕がなかった頃か。
……まあ、いい。
過ぎたことは過ぎたことだ。
私はうつ伏せのまま、魂が抜け出た後の物体を演じ続けた。
二度目の呼びかけはなかった。
でも、彼女が立ち去っていないのは分かった。
そこに座っていた。ランプみたいに静かに。ひどく面倒で、ひどく理不尽で、それでも私みたいな人間の隣にいることが、どんどん自然になっていく存在として。
どれくらい経ったか分からない。私はようやく、ゆっくりと薄目を開けた。
そして、見下ろしてきた彼女の視線と、真正面からぶつかった。
……最悪だ。
彼女は絶対に知っている。私がとっくに目を覚ましていたことを。
真紀は私を見ていた。表情はほとんど変わらず、視線だけがひどく静かだった。まったく風のない水面みたいに。手元には自分のノートが開かれ、私の『艦隊管理基礎』は彼女の側に置かれていて、ページの余白には整った小さな文字の注記がいくつか増えていた。水筒は右手で取りやすい位置に移され、肘の下で潰れていた紙も重ね直されていた。
この女は陪読しに来たのか、それとも私の生活動線を接収しに来たのか。
喉が少し乾いていた。結局、一番無意味な出だしを選ぶしかなかった。
「……なんでここにいるの」
真紀は二秒、私を見た。
「今日の午後、授業に出てなかった」彼女は言った。
「だから?」
「だから、図書館にいると思った」
「その言い方、逃亡兵を捕まえに来たみたいなんだけど」
「本当に逃げるつもりなら、どこへ逃げたかくらいは把握しておかないと」彼女は静かに言った。
その言葉はあまりにも滑らかだった。
呼吸みたいに滑らかだった。
チームメイトとしての口調なのか、それとももっと粘度の高い、もっと個人的なやり方で私を自分の管理範囲に囲い込もうとしているのか、一瞬判断がつかなかった。
上体を起こすと、肩が少し凝っていた。髪もひどい有様だろう。真紀は私のこめかみにできた赤い跡を見て、手を伸ばし、ごく軽く指先で触れた。
撫でたのではない。
ただ指先が軽く当たって、跡がひどくないか確認しただけだった。
でも問題はそこにある。
もし彼女が堂々と触ってきたなら、私はすぐに毛を逆立てて反発できたはずだ。なのにこの触れ方はあまりにも抑制されていて、私の逃げ場を残しているようでもあり、自分の体裁を守っているようでもあった。
「よく眠れなかった?」彼女が聞いた。
「図書館の机が硬すぎるだけ」
「最近、もともと睡眠が良くないでしょ」
「なんであんたが知ってるの」
「知ってる」低く言った。「夜中に寝返りを打つ頻度が、ここ数日で増えてる」
私は黙った。
照れたからじゃない。ある事実に急に気づいたからだ――この女はすでに、私が眠れない夜の寝返りのリズムまで覚えていて、私はそれを今になってようやく自覚している。
これは危険だ。
非常に危険だ。
視線をそらし、机の上の本を見た。
「あんた、ほんと監視システムみたい」
「シモが規則正しく寝て食べてくれるなら、監視頻度は下げる」
「誰が監視していいって許可したよ」
「シモは断ってない」
……このセリフ、本当に殴りたくなる。
顔を上げて睨むと、彼女はただ私の本を正面に向け直し、ある段落を指差した。
「ここ、マークしておいた。このページの後半が分からないのは、内容が難しいからじゃない。著者の書き方が神経症みたいだから」
言葉に詰まった。
そして、ひどく情けなく、彼女の注記に目を落とした。
どの段落も短く、明快に切り分けられていた。どれが定義で、どれが判断の論理で、どれがただ著者が「簡単なことを帝国暗号みたいに書ける」と証明したいだけの自己満足なのか。艦上の輪番、補給確認、情報の回送の順序を並べ直した簡単なフローチャートまで、横に描き足してあった。
「……いつ書いたの」
「シモが寝てる間に」
「隣に座って、私のノートに書き足してたわけ?」
「じゃなければ、何を?」彼女は私を見た。「起こして、この本とまた一人で殴り合いさせる?」
くそ。
正論すぎる。
彼女の書き込みを見つめていると、顔が少し熱くなった。ドラマチックな胸の高鳴りじゃない。もっと厄介なものだ。一人で意地を張って乗り越えるしかないと思っていた穴を、誰かに無言で塞がれた時、最初に来るのは感動じゃなくて戸惑いだ。
なぜなら、慣れ始めてしまうから。
私は慣れるのが嫌いだ。
特に、人の好意に慣れるのが嫌いだ。
でも、もっと悪いことに、私はもうこの習慣を本当に手放したいのかどうか、自信が持てなくなっていた。
「シモ」
彼女がもう一度呼んだ。
ごく軽く。
顔を上げた。
真紀は私を見ていた。視線が顔の上に落ち、半拍だけ沈黙してから言った。
「次に本当に疲れたら、寄りかかって寝ていい。無理しなくていい」
「誰が無理してるって」と言い返すつもりだったのに、口から出たのは違う言葉だった。
「……あんたが、いつも隣にいるとは限らないでしょ」
彼女が、わずかに息を止めた。
とても短く、とても淡く。それでも、彼女の顔から私が読み取れる数少ない、はっきりとした停止だった。
そして、低く言った。
「シモが必要なら、いる」
……終わった。
この一言は、やりすぎだ。
露骨さの問題じゃない。精度の問題だ。細い針で、一番見られたくない場所を正確に刺されたような。しかも傷つけるためじゃない。「ここは、ちゃんと見えている」と告げるためだけに。
私は慌てて本を自分の方へ引き寄せ、忙しいふりをした。
「ま、まずこの問題」私は言った。「ここのフロー、なんで輪番確認を補給チェックより前に置いてるの?」
真紀は数秒私を見つめ、最後には何も指摘せず、私の言葉に乗ってくれた。
「人が先に崩れたら、その後いくら物資が揃っていても意味がないから……」
彼女は説明を始めた。
声はまた、あの安定した、平坦な、私のために道を舗装してくれるようなリズムに戻っていた。
私はそれを聞きながら、耳がこれ以上熱くならないよう必死でこらえた。
よし。
大変よろしい。
私は今、二年生の艦隊管理を補習するだけでなく、九島真紀に対する自分の言語免疫システムが段階的に機能を失いつつあるという新しい問題まで、同時に処理しなければならないらしい。
人生は本当に充実する一方だ。
図書館を出た頃には、空はもう夕方に傾き始めていた。
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
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「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




