53. 先行履修 4
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
だがなぜか、直感で後者を選んだ。
……よし。なんかちょっと可愛い。 違う。撤回。その形容詞は危険すぎる。
「で、雪風のほうは?」私は滑り出そうになった怪しい感想を踏み潰し、強引に本題へ引き戻した。「本当に乗ることになるなら、少なくとも駆逐艦が一番死にやすい理由くらいは知っておかないと」
「死ぬ理由はいくらでもある」真紀の答えは、棺桶のカタログでも選んでくれているのかと思うほど誠実だった。「でも一年生にとっては、『なぜ一隻の船が、まだ浮いているのに死んだも同然になるのか』を理解するほうが先」
彼女は別の、艦上勤務ローテーションの章を開き、いくつか素早く印をつけた。
「艦上は、艦長が命令を下して全員が無双する、なんて単純なものじゃない。船を最初に壊すのは、たいていもっと間抜けな理由。情報の伝達ミス。シフトの乱れ。補給の見積もり違い。医療の優先順位の誤り。限界なのに無理をする人間。分かっているつもりで、触ってはいけないシステムをいじる人間」
私は本能的に言い返した。「最後の一つ、私のこと当てこすってる?」
「当てこすりじゃない」真紀は私を見た。「予防」
「……」
彼女はペン先で私の本をコンコンと叩いた。薬を飲みたがらない子供をたしなめるみたいに。
「シモの長所は、反応が速くて、現場の勘が鋭くて、人が限界を迎える時の顔を知っていること。短所は、『今自分が前に出れば、とりあえずその場はもつ』と簡単に信じ込むこと」
反論しようと口を開いたが、なぜか言葉が出てこなかった。
あまりにも的確すぎたからだ。
私の性格を分析しているのか、それとも林間学校でのあのろくでもない場面の数々を解体して、「あの時あなたがどうやって肩で無理やり支え続けたか」を突きつけているのか、それすら分からないほどに。
「艦の上では、あなたの肩だけで全部を支えることはできない」彼女は声を落とした。「人が増え、システムが大きくなれば、本能だけでは全員を救えない。いつ動くべきか、いつ勝手な判断をすべきでないか、それを他人に分からせる方法を先に学ばなきゃいけない」
図書館の中は静かだった。
無音の静けさじゃない。誰かの呼吸、ページをめくる音、椅子がこすれる音が、全部遠く、軽く押し殺されている。遠いのに、彼女が話し終えた最後の言葉の余韻が空気に溶けていく音だけは、はっきりと聞こえた。
私はその本をしばらく見つめ、最後に小さく舌打ちをした。
「……そんな言い方されると、私が今までずっと出鱈目やってたみたいに聞こえるんだけど」
「今までずっと出鱈目だった」真紀が言った。
「ちょっと」
「でも、他の人より出鱈目の成功率が高かった」彼女はさらに一刺し加えた。相変わらず平坦な声で。「それが問題。成功しすぎた人間は、リスクを自分の味方だと勘違いする」
私は手の中のペンを半回転させ、ようやく渋々認めた。
「分かった。今の言葉は一理ある」
「知ってる」
「あんた、最近そのセリフ好きだよね」
「シモが最近、私に一理あると認めることが増えたから」
……こいつ。
睨みつけてやろうと思って顔を上げると、ちょうど彼女が、さっき私が手を止めたサンドイッチの残りを、私の手元に少し押しやってきたところだった。
ごく小さな動き。私の方を見てもいない。 でも、そのあまりにも自然すぎる小さな動作が、一番腹立たしい。
まるで彼女の中で「私が勉強に集中すると食べるのを忘れる」という事実がすでにデフォルトで組み込まれていて、それを自分の管理範囲内に収めているみたいだ。さらに最悪なのは、私自身もそれが間違っていないと、少しずつ思い始めていることだ。
これは本当に危険だ。
何が危険かって、自分がつまずきそうな場所を、口に出す前に誰かが先に埋めてくれる。それが続くと、その「埋めてもらった」感覚に、うっかり依存し始めてしまうからだ。
私はサンドイッチを一口かじり、さっきの一瞬のまずい考えを咀嚼でごまかそうとした。
真紀は何も気づいていないかのように、先を続けた。
「まず、艦隊の運用を三つの問題に分解する」彼女は私の余白のページに書き込んだ。
誰が動くか 何を使って動くか 誰がどこへ動くかを決めるか
「人、物資、命令」私はその三行の文字を見た。
「そう」彼女は頷いた。「この先出てくる複雑なものは、ほとんど全部この三つの変形にすぎない。まずこれを掴んでおけば、雪風の関連資料を読む時も、少なくとも宇宙人の交尾記録を読まされているような気分にはならない」
スープを吹き出しそうになった。
「その例え、最悪」
「でも、分かったでしょ」
「……あんたのその効率的な言い方、本当に嫌い」
「知ってる」
私は白目を剥きながらも、彼女が今書いた三行をもう一度書き写した。
字は少し乱れている。 頭もまだ完全に追いついていない。 でも少なくとも、さっきのように教材を開いた瞬間にその場で気絶したくなるようなレベルではなくなった。
さらに数ページめくると、今度は少し脈絡が掴めるようになってきた。どこが指揮系統の話で、どこが補給拠点の解説で、どこが単に著者のカフェイン過剰摂取による行政フォーマットへの病的な執着なのか。たまに行き詰まると、真紀が横から最短の言葉で引き戻してくれる。丸ごと説明し直すわけでもなく、自分が馬鹿になったように感じる過保護な世話でもない。
私が苛立ち始め、混乱し始め、力技で内容を飲み込もうとする直前の、まさにその絶妙なタイミングで、正しい場所に一刺し入れてくれる。
……本当に彼女らしい。
「シモ」
「ん?」
「今、眉間に皺を寄せる方向が間違ってる」彼女が突然言った。
「は?」
「この段落、理解できなかったわけじゃない」彼女はページの下部をペン先で叩いた。「理解した上で、嫌悪感を抱いてる」
私は二秒沈黙し、最後にはひどく面目を潰された気分で認めるしかなかった。
「……うん」
なぜなら、その段落にはこう書かれていたからだ。
『補給により一部の艦艇しか維持できない場合、いかにして戦力の中核を優先的に選択すべきか』
人間の言葉に翻訳すれば、こうなる。
――物資が足りない時、誰を先に生かし、誰を後で死なせるか。
私は雨林で、こういう選択を見た。 ただあの時は、水や薬、そして人を引きずって走れるかどうかを選んでいた。 今は場面が変わり、包装が変わっただけで、骨組みは同じ残酷な論理だ。
真紀は私を見つめ、声を落とした。
「今は、ただ覚えておくだけでいい。急いで好きになる必要はない」
……その一言は、どんな慰めよりも効いた。
私は本を半秒だけ閉じ、また開いた。
「分かった」深呼吸を一つ。「じゃあ、続けよう。どうせ九島家に嵌められたんだし、今さら逃げても遅い」
真紀の口角が、ごく薄く動いた。
「『九島家』じゃない」彼女は言った。「今回は、私がシモの埋め合わせをしてる」
「へえ?」
「うん」
「じゃあ、私が本当に雪風に乗って、こんなの覚えきれなくて艦橋で恥をかいたら――」
「恥なんか、かかせない」彼女の言葉は速かった。ほとんど間髪入れずに。
私は一瞬、呆気に取られた。
彼女自身も気づいたのだろう、ペンを握る指先が半秒ほど止まり、それから普段の彼女らしい言い回しを付け加えた。
「……少なくとも、見苦しい真似はさせない」
私は彼女を見つめ、急に笑いたくなった。
嘲笑じゃない。 押し潰されそうになっていた時、隣にいる誰かが、その重さの半分をいつの間にか先に背負ってくれていたと気づいた瞬間に込み上げてくる、あの妙で、場違いな笑いに近かった。
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