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臨界の星穹  作者: Mr.佐藤焫焵
臨界の星穹:士官学校
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53. 先行履修  1

この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。

林間学校が終わって四日目、私はようやく一つの事実を確信した。


人間の適応力は、本当に洒落にならない。


そうでなければ説明がつかない。ついこの間まで、七十二時間ごとに摂氏千九百度のフェーン現象が吹き荒れる地獄のような星で、泥と汗と止血パッドと「まだ死にたくない」というわずかな執念だけで生き延びてきたはずの人間が、今こうして教室に座り、ノートを取りながら「昼、限定の白身魚フライサンドを奪いに行くべきか」なんて真剣に検討している。


もっと恐ろしいのは、こういう日々をどこか「普通」だと感じ始めている自分がいることだ。


――これが、この軍学校のいちばん汚いところだ。


すぐには人を壊さない。


ただ毎日、毎日、毎日、「これでも生きているうちに入る」という基準線を、少しずつ下方修正してくるだけだ。


「シモ、三行目、写し間違えてる」


隣から、鉛筆の尻で私のプリントを軽く突く者がいた。


顔を上げると、九島真紀が無表情のまま、自分のノートをこちらへ一センチだけ押し出していた。


一センチだけ。


ひどく抑制されていて、ひどく礼儀正しく、ひどく育ちがよくて、そして――ひどく腹立たしい。


なぜなら、その一センチを人間の言葉に翻訳すると、こうなるからだ。


――間違ってるのは分かってるでしょ。自分で直して。私に書き直させないで。


「間違えてない。先生の口が速すぎるだけ」私は声を潜めて言い返した。


「ううん、さっき上の空だった」真紀は平然と言った。「窓の外を三回見たし、前の二年の男子を二回睨んでた」


「睨んでない。深度のある観察をしてただけ」


「そう」


この「そう」を翻訳すると、こうなる。――自尊心がどう足掻こうと、ぼんやりしてたのは事実。


拳に少し力が入った。


林間学校から戻って以来、真紀は最小限の労力で私を苛立たせる方法を着実に会得しつつある。しかも厄介なことに、彼女はもう組に配属されたばかりの「素性を疑うべき上院のお嬢様」ではない。フェーンの熱風の前で一緒に地面に伏せて、一緒に水を数えて、夜中にJäger(猟人)が外を巡回する足音を一緒に聞いた相手だ。誰かと一緒に八分通り焼け死にかけると、それまで武器として使えていた警戒心の多くが、途端に使いにくくなる。


ましてや今は、彼女は堂々と私たちの寮に住み着いている。


抗議しなかったわけじゃない。


かなり大きな声で抗議した。


だが寮の割り当て表、生徒会の承認印、欠員補充に伴う後方業務の効率性、時間割の連続性、そして「世の乱れを心底楽しむ女」ことジェスがクッキーを齧りながら横で観戦していたせいで、私の抗議は最終的に、小型犬の遠吠えみたいな背景音に成り果てた。


「ねえ、星野」


反対側で、ジェス・マッカロウが椅子を少し後ろに傾け、教官が黒板に向き直った隙に首を傾けてきた。声は密輸品でも売りさばくみたいに潜めている。


「気づいてる? 最近九島、めちゃくちゃ星野にくっついてるよね」


「気づいてない」私は即答した。


「気づいてる」彼女は私より速く即答した。


真紀は顔を上げず、手を動かしたまま言う。「聞こえてる」


「聞かせるつもりで言ってるんだけど」ジェスはひどく殴りたくなる笑みを浮かべた。「あんた最近、自分で飼い主を選ぶ高級軍規猫みたいだよ。普段は『人間なんか要らない』って顔してるくせに、気づいたら星野の隣を占領してるし」


「今朝あなたが熱いミルクを私の教科書にこぼさなければ、シモのノートを借りる必要もなかった」真紀の声は天気予報並みにフラットだった。


「あれは事故」


「あなた、笑ってたけど」


「本当に面白かったから」


私は目を閉じて、息を一つ吸った。


よし。正式に再開してから四日目、私の左右はもう地獄のデュアルチャンネルサラウンドに進化していた。左には冷静沈着な計算型の粘着質、右には人の人生が炎上するのを笑って見物し、ついでにガソリンまで差し出す愉快犯。そして私は? その中間に挟まれた、運悪く二つの小型戦略兵器の間に座らされたただの十四歳の少女だ。


この一文を校内誌に投稿したら、「内容が非現実的すぎる」という理由で突き返されるだろう。


チャイムが鳴った時、私は初めて心から、チャイムは文明社会最大の発明の一つだと思った。


教官が解散を告げるや否や、教室中に椅子の脚が床をこする音が響いた。伸びをする者、ノートの量に文句を言う者、急いで飛び出していく者。前列にいた二年生が何人か立ち上がると、教室全体の空気が一段、上へ浮き上がったような錯覚があった。


身長差のせいじゃない。


「お前たちより一年早く、この地獄で人間らしく生きる方法を身につけた」という気配の差だ。


だからこそ、最近私たちの生活に頻繁に顔を出すようになったあの三人の二年生が、ひときわ目障りだった。


エヴリン・サドがドアのそばで誰かと話している。白くて高価で、手汗を少しでもかいたら汚してしまいそうな高性能機材みたいだ。アイダ・ローゼンは相変わらず模範解答みたいな顔をしていて、その穏やかさが逆に背筋を冷やす。そしてアッシュ・ヴァンダー――あいつが廊下の突き当たりに立っていると、「授業を受けに来たんじゃない。この船がまだ沈んでないか確認しに来ただけだ」という妙な圧がある。


林間学校の成績が公表されてから、この三人はそれぞれのやり方で私たちに接触するようになっていた。


良く言えば先輩の引き立て。


悪く言えば、上級生の人材調達部門による現地視察だ。


「シモ」


真紀が立ち上がり、教科書を手際よく片付けた。鉛筆ケースの中の一本一本の向きまで事前に揃えてあるんじゃないかと思うほど、無駄のない動きだった。「今日、図書館行く? この前分からないって言ってた艦務の基礎資料、見つけておいたから」


「分からないなんて言ってない、教材の書き方が死ぬ前の遺書みたいなだけ」と言い返そうとしたところへ、教室の入口に生徒会の腕章をつけた先輩が現れた。


「星野霜はいるか」


クラス全体が自然に一拍静まった。


生徒会が怖いからじゃない。軍学校で正式な名目を持って訪ねてくる人間は、たいてい皆勤賞を渡しに来るわけじゃないからだ。


私はゆっくりと顔を上げた。「何ですか」


先輩は事務的に言った。「九島亜紀会長がお呼びだ。今すぐ。林間学校後の資料整理と表彰名簿の確認についてだそうだ」


心の中で警報が鳴った。


表彰名簿?


この口実は三流詐欺メール並みに薄い。


問題は、薄すぎるくせに生徒会らしくもあるということだ――薄すぎるから、誰も「薄い」とは言えない。


私が口を開く前に、ジェスが短く口笛を吹いた。


「へえ。星野、最近モテモテじゃん。二年の先輩たちに続いて、今度は生徒会長直々のご指名。もう一息頑張れば、来週あたり校長とお茶会できるかもよ」


「そのお茶会の中身が処分通知書と退学勧告なら、あんたに譲るけど」


机の上のノートをつかんで立ち上がると、真紀も顔を上げて私を見た。


短い一瞥だった。


でも意味は分かった。


――これは単純な用事じゃないと、彼女は分かっている。


当然だ。


九島亜紀は彼女の姉なのだから。「妹の保護」という文字をほとんど政治キャリアの下書きに書き込んでいそうな生徒会長が、今さら公務名目で私を呼び出す。これで単純な話だとしたら、連邦議会のあの十人の老いぼれが手を繋いで慈善団体でも作れる。


「すぐ戻る」私は真紀に言った。


彼女は半秒だけ私を見て、頷いた。「一時間を超えたら、生徒会に迎えに行く」


ジェスがその場で吹き出した。


「それ、残業する旦那に言う奥さんの台詞みたい」


「黙れ」私と真紀は同時に言った。


……よし。


急に、生徒会へ行きたくなくなった。


生徒会の執務室は、思っていたよりずっと静かだった。


死んだような静けさじゃない。すべての物が「証拠として提出しても見栄えがする」位置に収まっている、そういう静けさだ。机は整然とし、カーテンは半分だけ開き、書類は色分けされ、ティーカップでさえ互いに外交協定を結んでいるかのように並んでいた。


九島亜紀は窓際に座っていて、顔を上げて私を見た時の微笑みは、選挙戦にも、人を売り飛ばした後にハンカチを差し出すのにも、どちらにも使える種類のものだった。


「星野さん、座って」


「立ったままで結構です」私は言った。


「警戒心が強いのはいいことね」彼女は十指を組み、刃物の手入れでもするような穏やかさで言った。「特に、真紀をあの炎の星から生きて連れ帰ってくれた後ならね」


私は心の中で白目を剥いた。


来た。


妹を助けてくれてありがとう。だから今、少しお返しをしたい。聞こえは人情みたいだが、実際にはたいてい首を絞める投げ縄だ。


「会長がお礼だけを言いに来たのなら、人を寄越してカードでも送らせれば十分です」私は言った。「生徒会が紙一枚買えないほど貧乏だとは思いませんので」


亜紀はくすりと笑って私の棘を受け流し、そのまま自然に続けた。


「もちろんお礼を言いに来たのよ。でも家族のためでもあるし、真紀の将来のためでもある。あの子は軍学校から脱落するわけにいかない。それは、あなたにも分かるはずよ」


私は答えなかった。分かるどころか、分かりすぎるほど分かっていたからだ。


彼女は続けた。「だからお礼として、一つ先に教えておきたいことがあるの。ちょっとした秘密よ」


心の中の警報器は、今度は鳴るどころか煙を上げ始めた。


「期末実習は、大筋で決まったわ」


彼女は私を見つめた。ある種の死刑執行猶予を、ひどく優しい声で読み上げるみたいに。


「あなたたちの中で『可塑性がある』と判断された一群は、随艦実習に配属される。艦名は――雪風」


私は何も言わなかった。


彼女も急かさず、ゆっくりと最後の一刺しを加えた。


「目的地は、オリオン座アルファ星区の前線よ」


その瞬間、頭に最初に浮かんだのは、前線でも危険でもなく、私たちがついに正式な消耗品としてもっと大きな戦場へ押し出されるのかということでもなかった。


――くそ。


嵌められた。

「とても面白い」★四つか五つを押してね!


「普通かなぁ?」★三つを押してね!


「あまりかな?」★一つか二つを押してね!

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