52. 注目の的 2
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
掲示板前の騒ぎは、最後には「本物の大物の登場」という、ありきたりだけど校内ではいつでも効く空気に、強引に押さえ込まれた。
私はさっきまで、四方八方からの視線に耐えていた。
ああいう視線は本当にうっとうしい。
羨望、疑念、崇拝、反発、それから一番嫌いな種類――高危険度の実験槽から這い出てきたばかりの、本来なら注意書きを貼って全校に展示するべき「生存サンプル」を見るような目。
要するに、人を人として見ていない。
「ねえ、あなたたちって第144組だよね」を開幕の一言に選ぶ見知らぬ同級生に、三人目でそろそろ白目を剥きかけていたとき、中庭の向こうがふっと一拍、静かになった。
その静けさは、ちょっと独特だった。
誰かが「静粛に」と叫んだわけでも、教官が来たわけでもない。
ある種の人間が場に入ってくると、周囲が自動的に音量を落とす。「これはお前が気安く口を挟んでいい階級じゃない」という信号を、センサーが読み取ったみたいに。
私はそちらを振り返って、心の中で正直に結論を下した。
……ああ、面倒なのが来た。
先頭を歩いているのは、一目で「金がかかってる」と分かる先輩だった。
宝石をじゃらじゃら下げてるとか、そういう話じゃない。ここは軍学校で、上流社会のお茶会会場じゃないんだから。
問題は、「幼い頃から高規格のリソースの中で育てられました」という事実を、そのまま気配に育て上げてしまう人間がいる、ということだ。
制服は一分の隙もなく着こなし、金色の長い髪を後ろで束ねている。笑うと綺麗で、その綺麗さは、相手が次の瞬間に自分の人生をより高難度のステージへ突き落とすかもしれないと分かっていても、無意識に姿勢を正してしまう類のものだった。
隣のショートヘアの先輩は、まったく別の画風だった。
冷たく、鋭く、無駄がない。立ち姿は定規で測ったみたいに真っ直ぐで、肩のラインも視線も軍刀そのものだ。長々と社交辞令を交わすタイプじゃない。
最後の先輩は……そうだな。
Dが「歩く壁」だとしたら、この人は艦橋の最前列に立って、戦域図全体を眺めながら、今日のお前が「安全」側か「損耗」側か、片手間に決めてしまいそうなタイプだ。陰気でも、凶暴なわけでもない。ただ、ひどく嫌な種類の余裕がある。「お前より知ってることは圧倒的に多いが、その優位でわざわざ圧をかけるほど暇じゃない」という余裕だ。
隣で、ジェスがすでに腕を組んでいた。
これは彼女が砲撃を始める前の定番姿勢だ。
止める間もなく、三人はもう私たちの前に立っていた。
金髪の先輩が先に口を開いた。
「こんにちは」笑顔は完璧に教育された側のそれだった。「きちんと自己紹介しておくわね。エヴリン・サド」
ショートヘアの先輩が軽く頷く。
「アイダ・ローゼン」
最後の先輩は、実に無造作に片手を上げた。
「アッシュ・ヴァンダー」
私の中にいる「頼むから今日はもう新しいイベントを起こさないでくれ」という名前の小人が、その場で墜落死した。
なぜなら、この三つの名前、全部聞いたことがあったからだ。
私が特別ゴシップ好きなわけじゃない。この学校で、この名前を一度も耳にせずに過ごすほうが難しいだけだ。
案の定、ジェスは「普通の人間」が選ぶルートを選ぶつもりはないらしかった。
口の端が上がって、あの笑みが浮かんだ瞬間、私は「あ、爆薬を投げ込む気だ」と悟った。
「あら、上院の先輩方じゃないですか」わざとらしく語尾を伸ばして、誠意のかけらもない丁寧さで言う。「今日は中庭に、できたてほやほやの生存者サンプルを視察にいらしたんですか?」
私はその場で顔を両手で覆いたくなった。
お前、よく言うな。
しかも、よりによって毎回、一番言っちゃいけない場面で。
だがエヴリンは怒るどころか、訓練された高級な捕食者みたいに、笑みをさらに深めた。
「違うわ」彼女は言った。「第144組の名簿が出たばかりだから、今年生き残った顔ぶれを先に見ておこうと思っただけ」
……口調はひどく丁寧だった。
だが翻訳すればこうなる。「品定めに来た」と。
私が場を少しでも文明的な方向へ引き戻そうとしたところへ、アイダがあっさり二撃目を入れてきた。
「三ヶ月後の期末、お前たちはそんなに暇じゃないはずだ」彼女は私たちを見据え、天気予報でも読むような平坦な声で言った。「誘いに来るかもしれない。先に顔を覚えておく」
はい、前置きゼロ。
この先輩たち、揃いも揃って効率が良すぎる。
私たちがようやく雨林から這い出てきて、学校側がようやく「生き残った者」を掲示板に貼り出したばかりだというのに、次の段階の人脈接触が、もう玄関口まで来ている。
連邦の教育システムは、本当に不人道なほど流れが滑らかだ。
アッシュは近くの手すりに寄りかかり、視線を私たちに流して、最後に私のところで少し止めた。
「君が星野霜か」
私は無意識に背筋を伸ばした。
「……はい」
「第144組のFrost01か」
「今は違います」私は言った。「今はただ、掲示板に貼り出されて見せ物にされてる、普通の一年生です」
アッシュは少し笑った。
「その『普通の一年生』の基準、ちょっと高くないか」
「どうも。でも最近、褒め言葉っぽいものには何でも警戒するようにしてるので」
隣でジェスがぷっと笑った。
「当然でしょ。教務処に褒められてから、人類の言語システムそのものへの信頼を失ってるので」
「それは極めて合理的な心的外傷後遺症だと自負してますが」私は顔色一つ変えずに返した。
エヴリンはこの刺し合うようなやり取りをなかなか楽しんでいるようで、視線をぐるりと巡らせ、最後に九島のところで止めた。
「九島真紀、よね」
九島は微動だにせず立っていた。中庭のど真ん中というより、自宅の、特に波風の立たない会議室にでもいるみたいに。
「はい」
「医療ポッドでの発言、聞いてるわ」エヴリンは言った。「ずいぶん直訳が直接的だったそうね」
九島は瞬き一つしなかった。
「元の言い方が、遠回しすぎたので」
……よし。
確かに、彼女が言いそうなことだ。
そしてジェスは、当然この絶好の舞台を無駄にするつもりはなかった。
半歩前に出て、プロの解説員みたいにエヴリンを指し示す。
「せっかく正式に接触したことですし、うちの隊長にも背景の予習をさせてもらいますね」彼女は最高に意地の悪い笑みを浮かべた。「エヴリン・サド。サド軍事産業社長のご令嬢。実家はレーダー、スキャナー、それから電子戦関連機器を専門に扱ってます」
そこで一拍置いて、さらに満面の笑みを見せた。
「つまり簡単に言うと、戦場でこっちから相手が見えるか、向こうからこっちが見えてるか、そのどっちに転んでも彼女の家が儲かるってわけです」
エヴリンが眉を上げた。
「ずいぶん容赦のない紹介ね」
「うちの隊の伝統なので」ジェスが即答する。
九島がここで、ごく静かに補足を入れた。
「サド社の値段は、なかなか下がらない」
エヴリンが今度は、本当に彼女を見た。
社交辞令の一瞥じゃない。「ああ、分かってる側だ」という目だ。
「使ったことがあるの?」
「調達報告書で見たことがあります」九島は言った。「性能に問題はありません。ただ、たいてい予算部門のほうが先に倒れます」
私は笑いを堪えるのに少し苦労した。
さすが九島真紀。
人を褒めるときでさえ、どこかの部署に黙祷を捧げてくれる。
エヴリンの笑みが、さらに深くなった。
「その評価、気に入ったわ」
ジェスは止まらない。矛先をすぐ隣へ向けた。
「続いて、アイダ・ローゼン」ショートヘアの先輩を指し示す。「国防委員長カランド・ローゼンのご令嬢」
私は思わず聞き返した。
「あの、鳩派の国防委員長の?」
アイダがこちらを向いた。余計な言葉を全部切り落とすような、まっすぐな目だった。
「そう」
私が表情を整理する前に、九島がいつもの調子でもう続けていた。
「政治は分からない。政治のことは亜紀姉に聞いて。九島亜紀の将来は政界だから」
私は思わず彼女を振り返った。
「じゃあ、九島重工は誰が継ぐわけ?」
九島は間も置かずに答えた。
「私」
私は二秒、黙った。
「なんて景気のいい未来設計」
「失業したら、うちに相談に来るといい」彼女は淡々と言った。
「清掃員にはならないから」
その一言が出た瞬間、ジェスの目がキラッと光った。
脳内で警報が鳴り響く。
間に合わなかった。
彼女はもう、いちばん最悪な続きに入っていた。
「じゃあ、社長特命秘書兼、秘密の恋人ってのはどう?」
「黙りなさいよ!」
その場の空気が、一瞬だけ凍りついた。
最初に笑ったのはアッシュだった。
エヴリンは上品に、口元だけで笑いを押し殺した。
いつも軍刀みたいに真っ直ぐなアイダの顔さえ、ほんの一瞬だけ緩んだ。
肝心の九島は――
ただ、私の方を見ただけだった。
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