51. 星野の休日 3
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
半分ほど食べたところで、空気はようやく本当に解けた。
大団円的な温かさじゃない。
私たちのテーブルは生まれつきそういう画風とは合わない。
「よし、生きてここに座ってるんだから、あの二週間の恨みと笑い話をまとめて清算しよう」という状態に入ったのだ。
たとえばハーヴィーは、自分のあの三組の警報線は公式の褒賞の添付書類に記載されるべきだと真剣に主張した。
「少なくとも一言書くべきだろ。『ハーヴィーの工芸品は複数回の夜間生存において極めて重要な役割を果たした』って」
Dが直接返す。「いいぞ。『外観はゴミ』と注釈付きで」
ランが黙って一刀両断する。「でも一部の正規装備より効果はあった」
ハーヴィーの顔が複雑になる。
「お前ら、それ褒めてるのか貶してるのかどっちだ?」
「客観的描写」ランが言う。
ジェスは歯型の件を正式に争点として提出した。
「宣言しておくけど、あの夜足がつって隊長の腕を噛んだのは医療事故であって、攻撃行動には含まれないから」
「じゃあ私、精神的苦痛で慰謝料請求してもいい?」私が即座に反撃する。
九島が淡々と言う。「却下。あの時あなた、拒否しなかったから」
「拒否する暇もなかったんだよ!」
アカリがまたしても一言挟んできた。
「本当に仲がいいのね」
「どこが?!」私とジェスが二度目の同時爆発をした。
Dが横でビールを一口飲んで、ついにはっきり笑った。
よかった。
十六歳の合法成年男性に対するアルコールの主な効果は、酔うことじゃなく、傍観をより楽しむことだと分かった。
補考制度の話も、完全には消えなかった。
食事の中盤、ロイがやっぱり我慢できずに口を開く。
「本当に思うんですか……筆記と模擬戦の補考に回った人たちは、その後ずっと低いルートに固定されるって」
テーブルが少し静まった。
最初に答えたのはDだった。
「たぶん」
短いが、確信があった。
九島が箸を置き、穏やかな声で言う。
「そのルート自体を見下しているわけじゃない。後方も技術も副職も、本来どれも重要。でも問題は、学院が最初にそれを分流システムだと説明せずに、『救済措置』として見せていること。そこが一番汚い」
私も続けた。
「いちばん嫌なのは、あとになって多くの人が『自分は運が悪かっただけだ』『次はもっと頑張ればいい』って思わされるところ。本当は、最初に越えられなかった門は、単なる再受験じゃ済まないのに」
ハーヴィーは珍しく茶々を入れず、焼き網の肉を見つめたまま言う。
「つまり、俺たちが今『合格者』って呼ばれてることは、別のラベルを貼られたって意味でもある」
「そうね」アカリが言う。
ジェスが鼻を鳴らす。
「貼るなら貼れば?どうせもう貼られてる。少なくともこのラベルは、自分たちで這い上がって取りに行ったもので、誰かのペン先ひとつで配られたんじゃない」
私は彼女をちらっと見る。
……この女、時々自分で思ってるよりずっと良いことを言う。
「そうだね」私は言う。「ムカつくのは変わらないけど、少なくともこれはタダじゃない」
ハーヴィーが瞬きしてから、いつもの死んだ目に戻る。
「急に熱い話になってきたな。じゃあこのラベルを記念して、牛バラもう一皿頼むわ」
「ただ食べたいだけでしょ」九島が切り捨てる。
「そうだけど、言い方には精神価値があるから」
ロイが真面目にうなずく。
「合理的な感情転換だと思います」
「ロイ」私は真剣に見る。「君は本当に、たまには全部を合理化しない練習をした方がいい」
「……分かりました。やってみます」
次の瞬間、彼はこう付け足した。
「でも、皿を増やすのは確かにチームの雰囲気の安定に寄与します」
テーブルが再び崩壊した。
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焼き肉は予想よりずっと長引いた。
外は完全に真っ暗になるまで。
テーブルの上は、空になった皿がちょっとした戦果展示みたいになるまで。
「何となく、これから二回目もありそうだな」と、ぼんやり思い始めるくらいまで。
お開きの前、Dが最後の一口を飲み干し、グラスを置いてから、私の方を向いた。
「もし次にまた誘ったら」彼は言う。「今度もちゃんと寝てから来るか?」
口元が引きつった。
「このネタ、あと何回引っ張るつもり?」
ジェスは即答する。「少なくとも一学期は使える」
ハーヴィーが補足する。「途中でまた似た名言を出したら、延長もある」
「ひどくない?」
九島は静かな声で言う。
「それはあなたが、次は医療事故にならないように学べるかどうかにかかってる」
「その条件、私にクリアさせる気ないでしょ」
アカリがアイスウーロンのグラスを持ち上げ、最後の一口を飲んでから、静かに言った。
「ゆっくり覚えればいい」
彼女を見てから、テーブルの他の面子を見回す。なんだか笑いたくなった。
本当に面倒くさい連中だ。
Dは安定している。安定しすぎて、こっちが一番みっともない時に「焼き肉行くか」と普通の顔で聞いてくる。
九島は毒が強い。どこが痛くても、ついでに一言刺してくる。
ジェスはうるさい。口調だけで二本目の生命維持装置を回しているんじゃないかと思うレベルだ。
アカリは冷たい。冷たいからこそ、たまに投げてくるまともな一言が、余計に受け止めにくい。
でも、だからこそ。
この面子だからこそ。
この食事会は、マニュアル通りの「アフターケア」にはならなかった。
本当に私たちがあの雨林から、お互いを引っ張り出してきたことの、延長戦みたいな時間になった。
私は立ち上がって、ジャケットを肩にかける。
「じゃあ」私は言う。「次、もしまた誘うなら、一応、時間通りに来ることは考えとく」
ハーヴィーがすかさず手を挙げる。
「録音しておこう」
ジェスは悪い笑いを浮かべる。
「ポイントは『時間通り』ね。これは睡眠完了版の約束だわ」
「今すぐお前ら二人を雨林に送り返して再履修させることも考えとく」
「ほらね」ハーヴィーがDに言う。「隊長、完全に通常運転に戻った」
Dがうなずく。
「ああ、戻った」
睨みつける。
それでも彼は笑う。
……まあいい。
合法的に酒を飲める十六歳の大人に笑われるくらい、大したことじゃない。
店を出ると、街の夜風はただの夜風だった。
火の嵐じゃない。
焦げた灰もない。
視界を歪める熱波もない。
ただ、街灯と看板と歩道の間を普通に吹き抜けていく。
でも、店先で振り返って七人の顔を見た時、はっきりと分かっていた――
いくつかのことは、もう元には戻らない。
二週間は最低だった。
制度は最低なほど汚れている。
補考システムは笑い話みたいだし、倖存者ラベルはうんざりするくらい重い。
それでも。
「このメンツで一緒に耐え抜く価値があったか」と訊かれたら――
……たぶん、あった、と答えると思う。
ただし、そんなことは絶対、今ここでは口が裂けても言わない。
甘すぎるし。
ジェスに来年までネタにされるのが目に見えているから。
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




