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臨界の星穹  作者: Mr.佐藤焫焵
士官学校編
18/68

06. 転属命令 1

この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。

「くそっ、誰が俺の靴下を洗面槽に蹴り込んだ!」


その怒声で、私は目を覚ました。


これが六A倉ろくエーそうの朝だ。


鳥のさえずりはない。陽光もない。青春もない。


あるのは男の怒鳴り声、金属ベッドフレームの軋み、半死半生のエンジンの低い唸り、そして一晩かけて発酵した結果、「臭い」を超えて「完全に独自の個性を持った」艙内の空気だけだ。


目を開けて、頭上の上段ベッドの板を見つめる。二秒かけて自分がまだ生きていることを確認し、三秒目は昨日本当に眠れたことを後悔するのに使った。


……まあ、眠れないよりはマシか。


夢の中には帝国の巡洋艦が爆発音つきで出てきて、おまけに誰かの低い「力、抜けよ」という声まで混じってきたけど。


ちくしょう。


脳みそは本当に、一番うざいものを選んで再生するのが得意だ。


その考えを頭の中のゴミ箱に蹴り込んで、身体を起こす。肋骨が職業的な誠実さをもって、昨日のあれは幻覚じゃないと即座に知らせてきた。


痛い。


でも昨夜よりはだいぶマシだ。


ベッドの端のほうでは、レイスが椅子に片足を乗せて靴下を探しながら、まだ火をつけていない煙草を口にくわえていた。アルヴィンは上段から半分身を乗り出して、鳥の巣みたいな頭で堂々と自己弁護している。


「夜中に下りたとき踏みそうになったから、親切心でどかしてやっただけだろ。」


「洗面槽に蹴り込むのが親切か?」


「便器じゃないだけマシだろ。」


「お前、自分のこと気配り上手だとでも思ってんのか?」


「たまにな。」


私はベッドの端に腰を下ろし、この朝っぱらから栄養価ゼロの口論を眺めながら、六A倉の連中は本当に大したものだと感心する。普通の人間は起きてまず意識を回復させるが、こいつらは起きた瞬間から殺し合いを始める。今はまだ口頭の段階に留まっているだけだ。


韓汐はすでに上着を着込んでいた。


彼女はベッドの端に座ってブーツの紐を結んでいる。速く、正確で、静か。あらかじめプログラムされた機械みたいだ。林薇は小さな手鏡に向かって前髪を整えており、その手元には、嗅ぐだけで人類文明への希望を失いそうになるあの安物の香水が置かれている。


そしてユリクは——


彼は通路のど真ん中を塞いでいた。


わざとじゃない。彼のあの体格が立ち上がるだけで、六A倉は自動的に「災害時の避難動線シミュレーション」状態になるのだ。


私は毛布を抱えたまま二秒座り、ようやく現実を受け入れた。


よし。


新しい一日が始まってしまった。


本当に残念だ。


私は毛布を跳ね除けてベッドを降りた。が、床に足をついた瞬間、誰のものか分からないベルトに引っかかって危うく死にかけた。


「どこの馬鹿だよ、通路の真ん中に物投げたやつ!」


アルヴィンが即座に手を挙げる。


「俺じゃない。」


レイスが冷笑する。


「こいつがそう言うときは、八割がたこいつだ。」


「おい、偏見だろ。」


「お前に限っては事実。」


私は足元のベルトを拾い上げ、そのまま上段ベッドへ投げつけた。


「あんたの。」


アルヴィンは器用にそれを受け止め、ご丁寧に腹の立つ笑顔まで向けてきた。


「おはよう、衝突事故のお嬢さん。」


私は無表情で返す。


「もう一回変な渾名つけたら、清々しい朝の墜落ベッド体験をさせてあげる。」


「それ、血生臭すぎない?」


「私は常にリアリズム派なの。」


横で林薇が吹き出した。


「あんた、今日すっごい寝起き悪いね。」


私は彼女を睨む。


「六人部屋、老朽艦の空気、肋骨のひび、隣のベッドは夜中に六回も寝返り打つ。この条件で寝起きがいいやつがいたら教えてほしいんだけど。」


ブーツの紐を結び終えた韓汐が、淡々とトドメを刺す。


「アルヴィンは八回。」


私は即座に上段を見上げた。


アルヴィンは無実を主張するような顔をしている。


「……数えてたの?」


「眠れなかったから。」


韓汐の口調は時報のように平坦だった。


よろしい。


昨晩、あの地獄で苦しんでいたのは私一人じゃなかったらしい。


その事実が、私の心を微妙に平穏にしてくれた。


---


六A倉で最も残酷なのは、寝ることではない。


起きた後、五人の人間とたった一つの洗面台を奪い合うことだ。


私はこれまで、高架下、排水管の横、矯正施設の雑魚寝部屋などを渡り歩いてきた。理論上、集団生活に対する耐性は十分備わっているはずだった。だが連邦は、一隻の老朽艦を使って「上には上が、地獄の外にはさらに順番待ちの列がある」ということを私に再教育してくれた。


洗面エリアは六A倉を出てすぐの角にある。


ボウルが二つ。一度割れて無理やりくっつけられた鏡が一枚。修理を呼びたくなるほど点滅しているが、連邦が永遠に直さないであろう蛍光灯が一つ。


そして今この瞬間、六A倉の住人の三分の二がそこに詰まっていた。


レイスが左を占拠。林薇が右の鏡を奪取。アルヴィンがタオルを抱えて真ん中で割り込む角度を計算中。ユリクは礼儀正しいが体積を一切縮めない壁として、背後にどっしり構えている。


私は入り口に立ち、二秒沈黙した。


そして結論を出した。


これは身支度じゃない。


市街戦だ。


「どいて。」


私は口を開く。


レイスは振り向きもしない。


「並べ。」


「私、昨日巡洋艦に体当たりしたばっかりなんだけど。」


「なら今日はなおさら並んで、文明社会のルールを学ぶべきだな。」


「あんた、ほんと口減らないね。」


「どうも。」


林薇が割れた鏡に向かってリップを塗りながら、涼しい声で言う。


「うるさい、先着順。」


「昨日、前線じゃ先着順とは限らないって言ってたじゃん。」


「風呂の順番と洗面台は管轄法域が違うの。」


……なるほど。


判例の違いまで持ち出してくるわけだ。


力ずくで割り込もうかと思った矢先、韓汐が非常に現実的な動きで金属キャビネットから水不要の洗浄液を取り出し、私の手に押し付けた。


「時間の無駄。」


私はそのボトルを見た。


それから、すでに泥沼化している洗面台の戦場を見た。


そして最後に、素直に認めた。


「……あんたが正しい。」


前線において、尊厳には様々な形がある。


変人の群れと洗面台を奪い合うのを放棄するのも、間違いなく成熟した大人の振る舞いの一つだ。


私は壁に寄りかかり、洗浄液を顔に塗りたくり、ウェットティッシュで最低限の人間としてのメンテナンスを済ませた。ついでにアルヴィンの喚き声を聞き流す。


「おい! 俺のホットドリンクの配給分、誰か取っただろ!」


レイスが冷静に返す。


「俺だ。」


「なんで!」


「さっき『飲まない』って言ったからだ。」


「『今は飲まない』って言ったんだよ! 一生飲まないとは言ってない!」


「ならお前の表現力に問題がある。」


私は手を拭きながらしみじみと言った。


「あんたたちみたいなのが今まで生き残れてるなんて、帝国軍も相当努力が足りないね。」


隣に立っていたユリクが、ぽつりと返した。


「連邦も諦めてない。」


……一理ある。


あまりにも的を射すぎていて、危うく拍手するところだった。

「とても面白い」★四つか五つを押してね!


「普通かなぁ?」★三つを押してね!


「あまりかな?」★一つか二つを押してね!

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