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臨界の星穹  作者: Mr.佐藤焫焵
臨界の星穹:士官学校
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41. 信号弾  5

この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。

初日の夜は、早く来た。


日が沈むのが速かったわけじゃない。一度焼かれかけた後は、人間の時間感覚が自動的に縮む。火風暴から這い出て、手足がまだ自分のものだと確認した瞬間、見上げたら空はもう汚れた灰色から、もっと汚れた黒に変わっていた。


このクソ惑星の数少ない仁慈のひとつ——焚風は夜には来ない。


もちろん、連邦の仁慈は呪いより半段だけ上等なだけだ。「夜は安全」という意味じゃない。「夜は燃やされない。代わりに別の方法で始末される」という意味だ。実に心が温まる。


私たちは半分焦げた板根帯で、初日の野営地を決めた。地勢はわずかに高く、甘い匂いを出す水溜まりの窪みから十分な距離があり、頭上に絞焚藤がぶら下がっていない。近くに大型の食口羊歯も見当たらない。何より重要なのは、HUDで最寄りの公式シェルターが光っていないことだ。


光っていないということは、死んだドアだ。


この点は、午後に一度確認済みだった。実物のドアはそこにある。人間のために作られた鉄の棺桶みたいに分厚い。でも、隊長のHUDに表示されない限り、それは墓石と同じで、見ることはできても使えない。運を頼りに開けようとする奴は、たいていドアの前で息を切らして、その場で絶望するだけだ。


HUDの投影を暗くして、焼けた木の根の横にしゃがんで一瞥する。


「今夜は公式ポイントには触れない」と言う。「ここで野営する」


ジェスはバックパックを地面に放り投げ、どすんと音を立ててから、顔の汗を拭った。「珍しい。てっきり、さあ皆さん、今夜どの鉄扉がご慈悲をくださるか試しに行きましょう、と言うかと思ってた」


「そんなに運試しがしたいなら、明日お前を一人でドアを叩きに行かせてやる」顔も上げない。「開いたらお前の運がいい。鍵がかかってたら、連邦の教育が成功したということだ」


ハーヴィーはもう、空降倉から外した細いワイヤー、空の水袋のバックル、数枚の金属板、弾性固定バンドを地面に並べていた。その山は、ゴミ捨て場が突然入隊を決意したみたいに見える。


九島真紀は断熱布を広げながら、角を押さえつつ口を開いた。「夜間に能動的に攻撃する生物は、主に食肉植物です。他の活動種を刺激しなければ、リスクは管理できます。前提は——」


「前提は、私たちがバカなことをしないこと」私が引き取る。


彼女は顔を上げて私を見て、反論せず、ただ淡々と「ええ」とだけ言った。


本当に腹が立つ。あの「ようやく正解を言った」という顔は、反論されるより頭に来る。


ハーヴィーはワイヤーを引っ張りながら、手を動かし続けて冷たく言う。「テント外周に移動警報を張る。何かが線に触れたら音が出る」


それを見る。不細工さに誠意がある。廃鉄と怨念が作った私生児みたいだ。


「使えるか?」と訊く。


「使える」


「それならいい。見た目が悪くても構わない。どうせ私たちは美人コンテストに来たわけじゃない」


ジェスが横に来てのぞき込み、口笛を吹く。「ハーヴィー、それ、難民キャンプの手製楽器みたい」


「夜中に何かがそれを鳴らしたとき、まだ笑えるといいな」ハーヴィーは顔も上げない。


十分もかからず、警報線をテントの外周に二重に張り終えた。外側の線に何かが触れると、金属板に掛けてある張力が解放されて、三枚の薄い板が互いに当たり、低くて鋭い震え音を出す。大きな警報音じゃない。むしろ陰湿だ。夜中に耳元で誰かが指の爪で金属を引っ掻くような音。それを真夜中に聞けば、魂が先に半分目覚める。


テント自体も大したものじゃない。断熱布を骨組みに掛けて、内側にもう一層、空降倉から外した防湿膜を敷いて、四人を無理やり詰め込む。違うメーカーの四本の刃を、同じ鞘に押し込んだみたいだ。温もり?ない。狭いのは本当に狭い。


ハーヴィーは入り口寄りに横になり、工具と切断鉗を手元に置く。


九島は物資の横。水、浄水錠剤、薬のパック、記録ボードが、全部手を伸ばせば届く位置にある。


ジェスは私の右隣。刃を抜くとき体を反転させやすいからだと言う。


私は中央より前寄りに挟まった。最初に頭を上げて命令を出せる位置で、全員から一番文句を言われる位置でもある。


公平だ。


就寝前の水分配のとき、九島は表通りに処理済みの塩水パックを一つずつ渡してきた。


飲めるものだ。でも飲んだ後の感覚は、海水と金属が口の中で離婚した後に残した共同親権みたいな味だ。


一口飲み込んで、遺影みたいな顔になりそうなのをこらえた。


「この味、軍学校の精神そのものだ」


ジェスがバックパックにもたれてせせら笑う。「どんな精神?」


「何をもらっても、ありがとうと言わされる精神だ」


ハーヴィーが短く付け足す。「飲むのが早すぎる」


「分かってる」水袋を押し潰して、手元に押し込む。「明日も生きて、文句を言い続けるつもりだから」


テントの外の夜林は静かだった。


心地いい静けさじゃない。ここの静けさは湿った布みたいで、焦土を、残骸の枝を、みんなが昼間に熱波に削られた神経を、まとめて覆っている。遠くでときどき葉が擦れる音がする。妙に遅い。暗闇の中で誰かが指先を地面に這わせているみたいな音だ。


目を閉じて三十分も経たないうちに、警報が鳴った。


「チン」


細い音だ。でも針みたいに、まっすぐ鼓膜に刺さる。テントの中の四人がほぼ同時に目を覚ました。誰も声を上げない。布を跳ね上げない。ただ、全員の呼吸が一瞬で止まった。


私が先に口を開く。声を極限まで落とす。


「フロスト01から04、起きてる奴は死んだふりをするな。ジェス、左側。ハーヴィー、張力を確認。九島、匂いの発生源を見ろ」


「起きてる」ジェスはもう刃を手元に引き寄せていたが、動かない。


ハーヴィーが警報線の内側の引き金に指を当てて、二秒止まる。「外線、低位で接触。動きが遅い。大型動物じゃない」


九島の手がまず物資袋に向かい、それからジェスが昼間に替えた止血布に触れた。


止まった。


「原因が分かりました」低く言う。「血布の処理が不完全でした」


ジェスが暗がりの中で舌打ちする。「クソ」


私も同じ言葉が喉まで出かかったが、こらえた。今は罵る場合じゃない。まず牙の生えたものを追い払うほうが先だ。


テントの外から、かすかな擦れる音が伝わってくる。


爪が地面を引っ掻く音じゃない。濡れた葉が布の面に貼りついて、少しずつ探っているような音だ。近い。食肉植物がテントの外縁に沿って、新鮮な肉の匂いを嗅ぎつけた病的な老婆みたいに、ゆっくりと這い寄ってくる絵が浮かんだ。


「斬るな」ハーヴィーが先に言う。「汁液のほうが面倒になる」


「分かってる」ジェスが持ち上げかけた手首を押さえる。「九島、血布を挟み出せ。ジェス、右側に小石を投げろ。三メートルずらして。弱めに。ハーヴィー、向きが変わるのを待て」


九島の動きは速かった。工具袋から挟み鉗を抜いて、血のついた布を物資の端から少しずつ引き出していく。手が揺れない。揺れなさすぎて、こいつは悪夢を見るときも手順通りにやるんじゃないかと疑いたくなる。


ジェスがもう一方で小石を一つ探り当て、外に向けて投げた。


「コツン」


小さな音だ。でも、十分だった。


テントの外の擦れる音が一秒止まり、それからゆっくり右にずれていく。断熱布の下縁の、ごく細い隙間から、暗い色の葉の縁が滑り過ぎていくのが見えた。縁に細かい白い硬い歯が並んでいる。人間の少ない場所では物足りなそうな口だ。


九島はそいつが向きを変えた隙に、血布を遠くへ放り投げた。


数秒後、外でさらに速いざわめき音がした。あの化け物は血の匂いに引きずられていった。


テントの中が再び静かになった。十秒待ってから、ゆっくりと喉に詰まっていた息を吐く。


ジェスが背をもたせかけて、低くぼやいた。「初日の夜から噛みにくるとは、礼儀正しいこと」


「ルールを追加する」顔を一拭きする。「血のついた布は夜間にテントの周辺に置かない。飲み残しと食べ残しはまとめて密封。警報器の外周二重線は維持。次に同じことがあったら、まずやらかした本人を噛む」


ジェスが暗がりで白目をむいたが、声はおとなしくなった。「了解。あの布は私のミスだった」


こんなに早く認めるとは、少し意外だった。


ハーヴィーが警報線を締め直しながら、相変わらず冷たい声で言う。「もう一つ。夜に警報が鳴ったら、まず聞け。次に判断する。最後に動く」


「追加する」と言う。


九島が記録板にさらさらと二行書いて、低く返す。「記録しました」


私はバックパックに背をもたせかけて、目を閉じなかった。テントの天井が夜の湿気に押されてわずかに窪んでいるのを見上げる。


三人はまだそれぞれ欠点だらけだ。ジェスは口が悪い。ハーヴィーは物を直せる氷の塊だ。九島の話し方は論述問題の模範解答みたいだ。でも少なくとも、真夜中に警報が本当に鳴ったとき、誰も先に隊全員を道連れにしなかった。


基準は低い。


でも蒸発の森では、低い基準がそもそも贅沢品だ。


---


二日目の朝、私たちは野営地を畳んで北東に切り込み、初めて「見えるのに入れない」公式シェルターを肉眼で見た。


そいつは焦げた土の斜面に半分埋まっていて、防爆ドアは怪物を閉じ込めるために作られたみたいに分厚かった。ドア脇の識別灯は死んだ赤色で、HUDには何も表示されていない。


表示なしは、開いていないということだ。


ジェスが斜面の端にしゃがんで、刃先で地面の跡を突いた。「誰かが来てる。一班じゃない」


彼女の刃先の先を目で追う。


ドア脇の石の面に、硬いもので刻まれた記号がいくつも並んでいた。


48。63。71。52。


半分だけ描かれた円と矢印もある。開放時間の差を記録しようとした誰かの痕跡に見えた。


九島がしゃがんで少し見てから、平らな声で言った。「誰かが開放サイクルの規則を調べています」


「当たり前だ」と言う。「ここに一ヶ月近く放り出されるなら、それを調べないなら、自分をどう均一に焼くかでも研究するつもりか?」


ハーヴィーがドア脇の温度に手を当てて、すぐに引いた。「完全施錠。力技は無意味だ」


「最初から顔で突破しようとは思ってない」立ち上がって、もう一度HUDを確認する。「一つ覚えておけ。これからは、光っていない実物シェルターは全部墓石扱いだ。観察には使える。命を賭けるな」


ジェスが首をかしげて私を見て、口の端を引いた。「フロスト01、今日は話し方がだんだん嫌われ者のベテラン兵みたいになってきた」


「褒め言葉として受け取る」と言う。「愛される死体より、嫌われて生きてるほうがいい」


---


二日目から、第144班のリズムが少しずつ固まってきた。


昼間は進み、ルートを確かめ、処理できる水を探す。


午後は一番ひどい熱域を避けて、遮蔽はあるが食肉植物に囲まれない縁を伝って進む。


夜は野営。四人で同じテントに詰め込まれ、ハーヴィーは毎晩あの不細工だが誠実な警報器を張り直す。


三日目、私たちは遠くから、別の公式シェルターの外周をすでに三班が狙っているのを見た。


誰もドアに正面から突っ込もうとはしない。みんな周辺に観察点を作り、マーキングをして、後の手を残している。木の幹に時刻を刻む者、焦げた炭で石の面に略図を描く者、風上にただ座って、獲物がスコープに入ってくるのを待つ者。


「根気があるわね」ジェスが焦げた木の陰に伏せて、小声で言う。


私は望遠鏡でその数班の学生を見た。誰も本当に話していない。互いを睨み合っているだけだ。あの静けさは平和じゃない。シェルターには脚がないから逃げない、今日動かなくても明日は殴り合いになると、全員が分かっているときの静けさだ。


「シェルターは逃げないからだ」と言う。「だから狙う価値があり、記録する価値があり、奪うために誰かを殴る価値もある」


九島がHUDの冷えた光のマーカーを見ながら、淡々と付け足す。「小冊子には長期占有の規定がありません」


「つまり異議申し立てができる」ジェスが口の端を上げる。「拳でも申し立てできる」


ハーヴィーが望遠鏡を下ろして、裁決みたいに短く言う。「近づくな。あそこは今、局面だ」


うなずく。


彼の言葉は正しい。


この場所で一番不気味なのは、ルールが多いことじゃない。ルールが意図的に書き切られていないことだ。校方は半分を小冊子に書いて、残りの半分を実戦に置いて、骨で学ぶのを待っている。学ぶのが遅ければ、誰かが代わりに教えてくれる。拳で、あるいはシャベルで。


---


四日目、私たちは本当の焚風が来る前に、前兆だけで先に野営地を片付けた。


絞焚藤が幹に張りつき始め、地面の大きな羊歯が口を閉じ、熱風が湿い粘りから乾いた灼けに変わった。システムが赤くなる前に、私たちはもうテント周辺の匂いの発生源を片付け、水袋を封じ直し、警報器を外周の早期警戒線に切り替えていた。


誰も余計なことを言わない。誰が何をすべきか、みんな自分で動いていた。


気づいたときには、私はハーヴィーの固定バンドを引くのを手伝っていて、九島はもう時間と風向きを書き終えていて、ジェスは外周を回って戻ってきて「左側に異常なし、右後方で植物が移動」と一言報告していた。


口には出さなかったが、頭の中では分かっていた。


第144班は、もう無理やり寄せ集められた四人の運の悪いガキには見えなくなっていた。気性はまだそれぞれ最悪だが、少なくとも互いを早死にさせない方法を知っている四人の、運の悪いガキだ。

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