41. 信号弾 2
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
続く十分間、自分の肺と頭が熱泥の中でかき回されている感覚だった。
ハーヴィーは工兵シャベルと金属板で硬土層を砕いた。棺桶を百回掘ったことがあるみたいに、手際が鮮やかだ。ジェスは砕けた土と腐葉を外に引き出しながら、ずっと罵っている。内容は主に、校方、この星、連邦、そして運命という、罵られて当然の対象を中心に展開されている。
九島は防虫膏を洞口の外縁に一周塗り、断熱布と固定ピンを取り出した。手の速さが怖い。彼女の「有能さ」は、熱血型のそれじゃない。手術刀を連想させる種類の有能さだ。冷たく、正確で、見ているとなぜか落ち着かない。
私は外周を守りながら、HUDと目視を交互に切り替え、頭上から垂れてきた細い蔓を切断刃で払い落とした。
払い落としてから気づいた。普通の蔓じゃない。
断口から半透明の膠が滲み出て、淡い甘い匂いが漂ってくる。
「クソ、フロスト02!一歩下がれ!」
ジェスの反応は早かった。すぐに後退する。次の瞬間、隣でちぢこまっていた低い灌木が突然開いた。葉じゃない。中に、黒い殻の幼虫がびっしりと詰まっていて、甘い匂いに引き寄せられたみたいに、切れた蔓に向かってうごめき始める。
「本当に気持ち悪い」ジェスが外側の腐葉を一蹴りして、うごめく塊を覆う。
ハーヴィーは顔も上げない。「蹴るな。振動で別のが来る」
「三秒前に言ってくれたら感謝できたのに」
「お前が三秒前に頭を使ってたら、俺も楽だった」
拍手しそうになった。
いい。まだ生きていて、互いに憎み合う余裕がある。
「黙れ、早くしろ」カウントダウンを睨む。「残り十一分」
---
四人がぎりぎり入れる深さまで掘り進んだとき、風が急に強くなった。
吹くんじゃない。押してくる。
空気全体が見えない手のひらに押されて、一方向に絞られていく感覚。樹冠の上層から低い轟音が伝わってきた。一層ずつ重なって、遠くに見えない列車が森を踏み越えていくみたいだ。
HUDが再び跳ねた。
【外部温度:48.9°C】
【外部温度:53.4°C】
【熱波前鋒、加速】
「入る前に最終確認」洞口にしゃがんで、言葉を最短に圧縮する。「フロスト03、支持は?」
「持つ。四時間、快適とは言えないが、すぐには崩れない」
「フロスト04、封口は?」
「断熱布二層、泥封一層、指幅の換気スリットを残す。外部温度がさらに上がれば、換気は交代制で制御する」
「フロスト02、外に追手は?」
ジェスは半秒、耳を澄ませた。珍しく真顔だ。
「左後ろに二班、走ってる。かなり急いでる。それと——」
言葉が終わらないうちに、遠くの林から短くて鋭い悲鳴が聞こえた。
芝居がかった種類じゃない。肺が高熱と恐怖に同時に押し潰されたときだけ出てくる、裂けた音だ。
そして、すぐに消えた。
誰も何も言わなかった。
こういうときに何かを言うのは、余計なことだ。肉汁に祈りを捧げるみたいに、役に立たないし、後味も悪い。
熱くて湿った空気を一口吸う。喉が、砂紙で擦られたみたいだ。
「全員、洞内へ。急げ」
ジェスが先に金属板を入り口の側面に嵌め込んで、第二の遮蔽板にする。ハーヴィーが最後に退いて、短い支柱で内側を支える。九島が断熱布を引き下ろした瞬間、洞内が暗くなる。歪んだ灰赤色の光が、細く一筋だけ差し込んでくる。
私は最後の一秒、外を見た。
林が色を変えている。
燃えている明るさじゃない。すべてのものが、もっと大きな熱に前もって洗われたような色だ。幹が暗くなり、葉が縮れ、遠くの空気が溶けたガラスみたいに歪んでいる。
耳機の中で、教務処の声が、犯罪を誘発するほど落ち着いている。
『主熱波到達まで、十、九、八——』
---
洞の中は、狭すぎた。
四人と四セットの装備。汗、泥、金属、防虫膏の匂いが全部混ざって、軍学校の宿舎と修理場と遺体袋を一緒に鉄桶に詰め込んで蓋をしたみたいだ。
ジェスが右で肩を密着させながら、低くぼやく。
「フロスト01、もし判断が外れてたら、幽霊になっても先にお前に噛みつく」
「幽霊になってから言え」
ハーヴィーが前で支持フレームを押さえ、釘みたいに冷たい声で言う。
「無駄口を叩くな。熱波が来る」
九島が、処理済みの塩水の小袋を私の手元に差し出してきた。声は、相変わらず平らだ。
「隊長、先に一口含んでください。もうすぐ、喉が先にやられます」
受け取ったとき、指先が彼女の手の甲に触れた。
冷たくはない。ただ、彼女の手のほうが、私の手より揺れていない。
本当に腹が立つ。
海水を薄めたみたいに不味い液体を口に含んで、HUDの温度が跳ね上がっていくのを睨む。
【外部温度:71.2°C】
【外部温度:96.8°C】
【主熱波、接触——】
次の瞬間、世界が見えない巨獣に一発叩かれた。
轟音。爆発じゃない。空気そのものがぶつかってくる音だ。
洞口の断熱布が一気に膨らんだ。外から断続的な鋭い嘯きが押し寄せて、まるで雨林全体が真っ赤に焼けた炉に放り込まれて、無理やり曲げられているみたいだ。土が震え、石根が揺れ、頭上の支持フレームが歯の浮くような軋みを上げる。
私はすぐに体を低くして、洞壁に手をついて、強引に口を開く。
「フロスト01、報告。全員、状態を言え!」
「フロスト02、生きてる、気分は最悪」
「フロスト03、意識あり、支持正常」
「フロスト04、正常。換気スリット維持可能、現時点で調整不要」
「よし」喉がもう乾き始めているが、声を保つ。「これから四時間、誰も正気を失うな。フロスト02は外部の音を聞け。フロスト03は支持点を監視。フロスト04は時間、飲水、換気を管理。残りは——」
顔の汗を一拭きして、口の端を上げる。
「連邦の善意と、自分の命の硬さに任せる」
ジェスが暗闇の中で笑った。短く、しゃがれていて、刃の背で鉄を擦るような音だ。
「それ、連邦よりずっと頼れる」
外の火風暴が、本格的に咆哮し始めた。
私たち四人は、初めて、編制表のためでも、コールサインのためでも、教官に立たされたからでもなく、ここにいた。
今この瞬間、誰か一人でも崩れれば、残りの三人が本当に一緒に蒸し焼きになる。
それだけの理由で。
私は焼けた洞壁に背をもたせかけて、HUDで温度が上がり続けるのを見ながら、外で蒸発の森が焚風に一層ずつ焼かれていく音を聞いた。
いい。
林間学校、開校初日。第144班は点数より先に、じっくり煮込まれる鍋の中身を手に入れた。
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




