34. ぐうの音も出ないほどに 3
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
点呼が終わると、下院混宿の廊下は一日の中で一番うるさくて一番臭い時間帯に入った。
洗濯室はエンジンが爆発しそうな音を立て、給湯室では誰かが共用バケツをまた勝手に動かしたと言い合っていて、廊下の床は半乾きで、踏むたびに靴底がわずかに引っかかる。頭上のファンは一生懸命回っているが、降りてくる風は洗剤、汗、古い木材、湿気が混ざった、この寮専用の黴の香りを運んでくる。生物兵器として学校の収益に貢献できそうな場所だ。
私は倉庫から引き取ってきた補給袋を抱えて、自分たちの廊下に足を踏み入れる前に、ドアの前に人が固まっているのに気づいた。
雑談のふりが、ひどく下手だ。
水を飲んでいる二人は、コップを口に当てたまま何分も動かない。タオルを抱えて壁にもたれている一人は、視線がずっと私たちの部屋のドアに向かっている。「見てないけど実は首がもげそうなほど見ている」という野次馬のポーズは、見飽きるほど知っている。
理由は単純だ。
九島真紀が部屋のドアの前に立っていた。
足元には収納ボックスが二つ、軍規バックパック一つ、私の顔より真面目な硬質ケースのファイルボックスが一つ。横には臨時搬入許可証がバインダーにきちんと挟まれている。引っ越しですら前線補給拠点を接収するみたいな気配を出せるのは、正直言って面倒くさいし、正直言ってたいしたものだ。
ジェスが私より先に口笛を吹いた。
「ようこそ下院混宿観光区へ。」彼女は野次馬たちに手を振る。「入場料は一人五十、近づきすぎたら清掃費を加算します。」
何人かが即座に忙しいふりをして散った。熱湯で跳ねたみたいな散り方だ。
私は鼻を鳴らして補給袋を肩に上げ直し、ドアの前まで歩いた。
「荷物はこれだけ?」
「第一便です。」九島は言った。
「第二便もある?」
「本が一箱、替えインナー二セット、予備の整理ボックス一組。明日届きます。」
私は彼女を二秒見た。
「混宿に引っ越してくるの? それとも前進基地を設営するの?」
「スペースが許すなら、両立します。」
……はい。
この人と話すのは、きれいに切り揃えた鉄板に額を打ちつけるみたいな感覚だ。わざとぶつかってくるわけじゃない。その鉄板がただそこにある。
私はドアを押し開けた。
部屋の中は相変わらず、半死半生の古い様子。蛍光灯は少し黄みがかっていて、右の上段ベッドのフレームは少し傾いていて、壁の角の塗装が剥げていて、窓際の物干し紐に速乾タオルが二枚まだ乾いていない。空いているベッドはサイラスが使っていたもので、板は残っているが下の引き出しは石でも飲み込んだみたいに引っかかり、ベッドの柵も少し緩い。リンデが昼間に「今日中に完了させる」と言った割に、夜になって見ると、ベッド番号の更新とロッカーの鍵の交換だけで、「修理する」という定義をどうやら床の下まで圧縮したらしい。
さすが総務だ。
私は補給袋を机の上に放り投げ、あの空きベッドに顎をしゃくった。
「あなたの新しい玉座。噛みつく引き出しと、ときどき幽霊みたいな音を立てるベッドフレーム付き。」
九島は近づき、まずベッドの縁に手を当てて押し、それからしゃがんで引き出しを引いた。
半分しか開かないところで止まる。
彼女は一秒止まり、角度を変えて、もう一度引いた。
やはり止まる。
ジェスが隣で楽しそうな声で言った。
「下院の歓迎の儀。」
九島は何も言わず、収納ボックスの側ポケットから折りたたみのドライバーを抜いた。
私は振り向いた。
「……それまで持ってきたの?」
「基本的な修繕工具です。」彼女の声は夕食にスープがあります程度の平静さだった。「住環境の質は運任せにすべきではない。」
「聞こえた? 総務全員、今日もまとめて怒られた。」ジェスがドア枠を叩いて、いない観客に実況中継している。
九島は引き出しを丸ごと外し、レールを確認し、指先で内側の埃をひと拭きした。眉一つひそめず、ドライバーを口に咥えて、頭を下げて分解し始める。
私は横で五秒ほど見ていて、胸の中に妙な苛立ちが浮かんだ。
嫌いとは違う。
「くそ、この女本当に何でも自分でやる」という種類の煩さだ。
環境に適応しに来たんじゃない。環境を修正しに来ている。
しかも役に立つ。
ジェスが私の腕に肩をぶつけた。
「手伝わないの?」
「必要なさそうだし。」
「ふうん。」ジェスが笑う。「じゃあそっちで睨んでるのは、目の力でレールを直そうとしてる?」
「監督してる。」
「図星突かれてる。」
「今日暇すぎない?」
「暇じゃない。」彼女は真顔で言った。「上院のエリートが下院の家具に平民化される瞬間を見届けるのに忙しい。」
九島は私たちの横でのやり取りなど聞こえていないみたいに、引っかかっていたレールを外してから歪んだ金属の縁を確認し、別の小袋から細かいサンドペーパーと布テープを取り出した。
思わず目を閉じた。
「お前、どこでもドア持ってるの?」
「違います。」即答。「リストを作ってあるだけです。」
「もしかして宿舎が火事になったとき何から先に救うかも順番つけてある?」
「つけてあります。」
「……くそ。」
ジェスはその場で笑い崩れ、ドア枠から滑り落ちそうになった。
もう一人の下院の女の子が上段ベッドから二度ほど覗いてから、空気を読んで引っ込んだ。それも当然だ。今日は棟全体が、上院の人間が第144班に補充されて正式に混宿に引っ越してきたことを知っている。口に出すかどうかは別として、全員が心の中で同じことを考えているはずだ——
あの人がおかしいか。
私たちの班がおかしいか。
両方かもしれない。
十分後、九島が引き出しを押し込むと、「カチッ」と音を立てて定位置に収まった。きれいな音で、少し腹が立った。
彼女は立ち上がり、こめかみの汗を手でさっと後ろに払った。声は変わらず平静だ。
「使えます。」
私は近づいて引いてみた。
本当に、すんなり動いた。
「……なんでこれができるの?」
「家の人が、部屋に誰かを呼んで直してもらうのを嫌がるので。」彼女はドライバーを仕舞いながら言った。「だから自分で覚えました。」
もう一言二言嫌みを言おうとして、口の前で止まった。
感動したわけじゃない。
この答えが実用的すぎて、野次馬話の余地が育たなかった。
ジェスはすかさず受けた。
「いいなあ。私が子どもの頃に覚えたのは、引き出しをパンパンに詰めてアートだと言い張る方法だけだった。」
「今もそうだろ。」私は言った。
「褒めてくれてありがとう。」
九島はベッドの整理を始めた。
私物を並べながら感傷に浸るタイプじゃない。置き始めた瞬間から三区画に分かれていた。ベッド脇のクイックアクセス、ロッカー内の長期保管、共用可能な支援物資。インナーは同じ大きさに丸めて、結束バンドの向きが全部同じ。医療パックは手を伸ばせばすぐ届く位置。ファイルボックスはロッカーの最上段。小さなラベルシールが二枚、ロッカーの扉の内側にもう貼られていて、一枚に「夜間」、一枚に「緊急」と書いてある。
私が見すぎていたらしく、ジェスが静かに口を開いた。
「星野、目つきが警戒から観察に切り替わってるよ。」
「行政ロボットじゃないか確認してる。」
「大丈夫、違う。」ジェスは声を落として、意地悪く笑った。「ロボットは自分でサンドペーパーを持ってこない。」
私は無視して自分のベッドに戻り、さっきついでに持ってきたテープを机の上に放った。
「これ、あげる。」
九島が振り向いた。「何に使うんですか?」
「ベッドの柵、夜中に鳴る。二巻きしておくと静かになる。」私は少し間を置いて付け加えた。「じゃないと夜中に寝返りを打つたびに、部屋全体が何かが這い込んできたと思う。」
九島はそのテープを見て、それから私を見た。
「ありがとうございます。」
私は即座に眉をひそめた。
「そんな正式な言い方しないで。ビルを一棟寄付したみたいに聞こえる。」
ジェスはその場で机に手をついて笑った。
「星野、あなた今、ちゃんとお礼を言われることにもアレルギー出てる。」
「アレルギーじゃない、慣れてないだけ。」
「同じ。」
「違う。」
「はいはい、社交システムが先天的に未校正なだけ。」
そのテープで口を塞いでやりたかった。
九島はそれ以上何も言わず、テープを受け取り、私が言った場所に二巻きして、ついでに緩んでいたベッドの柵のネジも締め直した。動作は無駄なく、初めてこういう部屋に入った人間には見えない。
さらに腹が立つのは、それが終わったあと、そのベッドが本当に前よりまともに見えたことだ。
妙な感覚がした。
この人は部屋を荒らしに来たんじゃない。
「なんとか人が生きていける」方向に引っ張りに来ている。
くそ。
この評価、まだ早く出したくない。
三人でしばらくごたごたした。ジェスは口では「精神的サポートのみ」と言いながら、結局ベッドフレームを左に半格ずらしてロッカーの扉が全開できるようにしてやった。私は九島が延長フックを間違った位置に結びかけたとき、手を伸ばして場所を変えてやり、ついでに夜中に踏むと猫の尻尾を踏んだみたいな音がするフロアタイルの場所を教えた。
荷物がだいたい片付く頃には、廊下の音も少しずつ沈んでいた。洗濯室の轟音はまだ続いているが、一枚壁を隔てた向こうの低い振動になっている。窓の外の夜気はこもって熱く、網戸の端で蚊が当たっている。隣の部屋から誰かが汚い言葉を吐いた。たぶんまたお湯が切れたのだ。
完全に標準的な下院の夜だ。
部屋の机の上に、一人分が増えていた。コップ一つ、小分けにした浄水タブレットの袋一つ、それから九島がロッカーの扉の内側に貼ったばかりの小さな表。大きくはなく、字は整然としていて、「共用物資の場所と夜間緊急取り出し順序」が書いてある。
私はその紙を二秒見つめた。
「これまで作るの?」
「暗闇の中で手探りすると、最初に人を起こすのは音で、最後に人を殺すのは時間です。」九島は言った。
「この人の喋り方、本当に全部先に計算してから口に出してる感じがする。」ジェスは自分のベッドに寝転がり、両手を頭の後ろで組んだ。「いい知らせは、うちの班にやっとまともな人間が来たこと。悪い知らせは、まともすぎて怖い。」
私は靴をベッドの下に蹴り込んで、ベッドの端に腰を下ろした。スプリングが不満そうにきしむ。
「まず『まとも』の定義を聞かせて。」
「あなたじゃない。」ジェスが即答した。
「お前でもない。」
「だから九島の番が回ってきた。」
九島は最後のロッカーを閉めながら、静かに言った。「褒め言葉かどうか判断しかねます。」
「この部屋では褒め言葉。」私は言った。
彼女が顔を上げた。
一瞬、表情は変わらなかった。相変わらず、泥でも塗りたくなるほど清潔な顔。でも私はなぜか、彼女が意味を受け取ったと感じた。
「歓迎します」みたいな気色の悪い意味じゃない。
ただ——
少なくとも今のところ、誰も彼女を追い出そうとしていない。
私にとって、それはかなりの譲歩に近かった。
消灯の十分前、棟全体の放送がザッと鳴り、誰も本当には聞いていない夜間規定を例のごとく読み上げた。灯りが落ちると、部屋は窓から差し込む灰青色の夜の光だけになった。廊下の突き当たりの、半分壊れた非常灯がドア枠の縁をかろうじて照らしている。
下院の宿舎は消灯後のほうが、かえって音がはっきりする。
寝返りを打つ音、咳払い、上の階のどこかでアルミ缶が蹴り飛ばされる音、洗濯室の機械の低い唸り。ベッドが喋り、ファンが愚痴を言い、蚊が耳の周りを飛ぶ音まで妙に腹立たしい。
私は仰向けになって、頭の後ろで手を組み、天井の地図みたいな水染みを見上げた。
一人増えたら今夜はもっとうるさくなると思っていた。
なぜか、そうでもなかった。
九島は余計な音を立てない。荷物の整理ですら、騒音を計算に入れているみたいだった。
半分ほど静かにしていたところで、ジェスが先に口を開いた。
「先に言っておきたいことが三つある。」上段から声が落ちてくる。「一つ目、私が夜中に寝言を言っても、本当に誰かを殺したいわけじゃない。二つ目、星野が夜中に起き上がって人を睨んでも、本当に殺すわけじゃないけど、リスクは高め。三つ目、浴室の左から二番目のシャワーヘッドは角度がおかしくて、使ってる途中で突然壁に向かって噴射する。」
私は目を閉じたまま返した。
「一番大事なことを最後に言った。」
「生活の知恵は段階的に。」
向こうが少し静かになってから、九島が言った。「了解です。では私も三つ。」
私は目を開け、彼女のほうを向いた。暗闇の中では、ベッドの縁のわずかな輪郭と、ロッカーの扉の内側に貼った白い小さな表が反射する淡い光しか見えない。
「一つ目、朝は起きるのが早いので、洗面所の時間は取りません。二つ目、共用物資を補充したら先に表に書きます。三つ目——」彼女は半拍止まった。「もし私がどこか上院っぽすぎると感じたら、直接言ってください。」
部屋が一秒静かになった。
この一言は弱さを見せたんじゃない。
自分でナイフの柄を差し出してくる感じだ。「自分がどこで人を苛立たせやすいかは分かっています、斬るなら場所を先に言ってください」という意味の。
私は頭を天井に戻して、口が頭より先に動いた。
「安心して。」私は言った。「今一番上院っぽいのは、畳み方がきれいすぎるところだけ。見るたびに誰かに崩させたくなる。」
上段からジェスが笑いを堪える音がした。
九島の側が二秒静かになって、それからごく軽く返してきた。
「じゃあ、もう少し雑に畳む練習をします。」
私は少し固まった。
面白いからじゃない。
彼女が受け取ったからだ。
しかも、悪くない受け取り方で。
「やめて。」ジェスが上から笑って言った。「あなたが本当に私たちの崩し方を覚えたら、ハーヴィーが先に倒れる。」
「あいつは倒れない。」私は言った。「棟全体が集団で首を吊りたくなるまで罵り続けるだけだ。」
「大差ない。」
また少し静かになった。
今度の静けさは、さっきとは違う。気まずくもなく、他人同士が無理やり同じ空間に詰め込まれた空白でもない。どちらかといえば、それぞれ棱角のある物たちが同じ箱に押し込まれて、まだ完全には収まっていないが、少なくとも今のところは互いを切り裂かずにいる感じだ。
私は寝返りを打った。ベッドが軽くきしむ。
「九島。」
「うん。」
「夜中に外で誰かが走っても、必ずしも事件じゃない。下着を干し忘れた人が取りに行ってるだけかもしれない。」
上段からジェスが即座に抗議した。
「ちょっと、あれは事故だった。」
「事故で四フロア走ったの?」
「風が強かったから!」
九島の側がしばらく静かになって、それから私は低くて短い息の音を聞いた。
笑ったのか、ただ堪えきれなかったのか。
私は暗闇を二秒見つめて、最後に口の端を押し戻した。
まあいい。
少なくとも、木じゃない。
窓の外のどこか遠くから、夜の哨戒の笛が長く響いた。三日後には林の中に入る。七十二時間ごとに暴れる、あの場所に。そのときには、この部屋の誰の畳み方がきれいかとか、シャワーをどこで使うかとか、全部どうでもよくなる。
でも今はまだ、そうじゃない。
今の私たちはまだここにいて、互いを同じ空間にどう押し込むか、どうすれば相手に殺されずに済むか、口では互いを削りながら、ゆっくりと、誰の荷物がどこにあるか、誰の歩幅がどれくらいか、暗闇の中で返ってくる声が一番落ち着いているのは誰かを、少しずつ覚えていくのだ。
面倒くさい。
でも、数日前よりは少し、隊伍に近づいている。
私は目を閉じて、頭上でファンが力の限り回り続ける音を聞いていた。見知らぬ人間が部屋に入ってきたことへの拒否感は、まだ完全には消えていない。でも朝ほど、刺さってこない。
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




