34. ぐうの音も出ないほどに 2
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
午後三時、整備室B区は火をくすぶらせた鉄缶みたいだった。
鉄扉を開けると、熱気がキャンバス地、機械油、古い金属、埃と一緒に顔にぶつかってきた。私は反射的に鼻をすする。中には元の色が分からないほど使い込まれた作業台がいくつか並び、壁には工具、ハーネス、固定索、携帯スコップ、防水シート、それに私が名前を言えるものも言えないものも含めて細々したパーツがびっしり吊るしてある。隅には古い計量台があり、その横にタイマーと空の補給箱がいくつか置かれていた。
ハーヴィー・ノックスは既に中にいた。
作業台の端にもたれ、油性ペンを指で回しながら、相変わらず「世界中から睡眠を借りている」みたいな顔。私たちが入ってくると、視線は私を撫で、次にジェス、最後に九島で止まった。
一秒だけ。
多くの人間より短い。
そして多くの人間より厄介な一秒。
「来たな。」彼は言った。
「当たり前でしょ。私の幽霊が出欠を取りに来たわけ?」私はバックパックを作業台の上に放り出す。
ハーヴィーは私など見もせず、計量台を顎で示した。
「まず重さ。」
「お前と会うたび検品されてる気分だわ。」
「お前がよく自分を廃棄寸前品みたいに詰めてくるからだ。」
「お前な——」
「星野、今は黙れ。」ジェスが自然に脇に退く。「まず、あいつが九島をどう分解するか見たい。」
九島は自分のバッグを別の作業台の上に置いた。上院風の見た目だけいい軽量トラベルバッグじゃない。野外用の軍規バックパックに替えてあり、外付けはきれいにまとまり、コンプレッションストラップもきっちり締めてある。明らかに元のものではない。
横目で見た。ハーヴィーに「削れ」と言われたものは、本当に削ってあるようだ。
ハーヴィーは近寄り、バッグの側面の固定リングを指で引っかけた。
「表は自分で直した。バッグも自分で組み直したのか?」
「はい。」
「よし。全部出せ。」
九島は余計なことは言わず、バックルを外して中身を一つひとつ取り出し、作業台の上に並べた。
医療パック、浄水セット、防水シート、裁縫キット、調理器具、レーション、替えインナー、防虫スプレー、ロープ、シグナル布、簡易記録板、折りたたみウォーターバッグ、マルチツール。どれも分区して置き、向きまでほぼ揃っている。
ジェスが口笛を吹いた。
「この人、サバイバルしに来たんじゃなくて展示会しに来たんじゃない?」
「あんたみたいに全部を一個の爆弾みたいに詰め込むよりはマシ。」私は言う。
「私のは即興アートって呼ぶの。」
「死ぬ直前の即興劇だろ。」
ハーヴィーは私たちを無視して、机上を見下ろし、九島の医療パックを手に取り厚みを確かめる。
「パックが硬すぎる。」
九島が即答。「防湿のためです。」
「だから手袋が濡れたら開けられない。」ハーヴィーはパックを投げ返した。「野外は机の上でゆっくり並べる場所じゃない。止血帯は?」
九島が手を伸ばす。
「止まれ。」ハーヴィー。「手袋をしろ。」
九島は一瞬止まり、ポケットから作業用グローブを出してはめ、再び手を伸ばす。
動きは安定していたが、明らかに半拍遅い。
ハーヴィーはそれを見て、無表情のまま言った。
「十秒遅れれば半分だ。血溜まりが一つ増える。」
九島は頷いた。「了解。」
私は彼女が反論すると思ったが、しなかった。彼女はそのまま頭に保存し、あとで自分で直すつもりの顔。
こういう反応されると、堂々と嫌い続けるのが難しい。
面倒くさい。
ハーヴィーは炊具セットを取り上げ、中を見た。
「燃料の小分けがきれいすぎる。」
思わず笑いが漏れた。
「きれいすぎても怒られるの?」
ハーヴィーは私を一瞥した。
「怒られる。きれいにする余裕がまだあるってことだから。」
「……基準、厳しすぎない?」
「野外はもっと厳しい。」
これは反論できなかった。
九島はその燃料セットを静かに受け取り、その場で整理用の結束バンドを一本外した。「これで?」
「少しマシ。固定点をもう一つ減らせ。」
ジェスは作業台に寄りかかって、楽しそうに笑う。
「分かってきた。これ、テストじゃなくて調教だ。」
「お前も来い。」ハーヴィーが言った。
ジェスの笑顔が一瞬止まる。「……私は見学。」
「第144班に見学員はいない。来い。」
私は盛大に笑った。
天罰は早い。気分がいい。
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その後四十分、ハーヴィーは刃物で削るように、私たち全員のバッグと習慣を一つずつ削っていった。
私のチェリーコーラは当然また晒し者にされた。
「二本。」ハーヴィー。
「最初から二本しか残してない。」
「一本。」
「死ね。」
「半分でもいい。水袋に入れろ。」
「お前は悪魔か。」
「お前より三日遅く死ぬ悪魔だ。」
ジェスは横でしゃがみ込んで笑い、次の瞬間、自分のスナック袋がハーヴィーに持ち上げられた。
「何だこれ。」
「精神補給。」
「無駄な重さ。」
「お前、魂のない装備妖怪だな——」
「外せ。」
九島は反対側で、すでに自分の机の上を二巡目に組み直していた。今度はスピードが上がり、固定方法も明らかに「見た目」より「実用」に寄り始めている。止血帯を外側のクイックアクセスに移し、裁縫キットを底から上に持ってきて、共用医療パックの比重も再計算していた。
私は横でそれを見ながら、ふと笑いたくなった。
この女、午前は行政室でラベル付きファイルを武器にリンデを追い詰め、午後にはここでハーヴィーにその場で分解されて再構築されている。
実にフェアだ。
そして、実に下院らしい。
二回目のラウンドが終わったとき、彼女は二十八秒に収めた。
ハーヴィーが手でバッグの側面を叩く。今度は揺れなかった。
一言だけ。
「いい。残りは野外で。」
九島は頷いた。こめかみに汗が滲んでいたが、声は安定していた。
「十分です。」
私は眉を上げて彼女を見る。
「基準、低くない?」
「低くありません。」彼女はグローブを外してクイックポーチにねじ込んだ。「今の段階で、ここまでの値です。」
……それもそれで、いちいち腹が立つ。
ハーヴィー・ノックスは聞き終えても反論しなかった。ただ九島の修正済み補給配置表を机に広げ直し、油性ペンでいくつか丸を書き加えた。
「共用医療パックは九島が管理。ただし緊急アクセス権は九島だけじゃない。星野、ジェス、位置を覚えろ。」
「わかってる。」私は言った。
「水処理は九島が主担当、ハーヴィーが複確認。」ジェスが引き取り、わざと語尾を伸ばした。「私の担当は? その場で笑い死にして敵を倒すこと?」
ハーヴィーは顔を上げなかった。
「お前は観察と記録。それと、星野の頭が焼き切れたときに暴走を止める係。」
私は即座に向き直った。
「ちょっと待って、なんで私が先に焼き切れる前提なの。」
ジェスが私の肩をぽんと叩き、慈愛のこもった声で言った。
「前科があるから。」
「お前はないんだろうな。」
「あるよ。ただ私は認めるのが早い。」
防水シートに顔を押しつけてやりたくなる。
ハーヴィーはペンを放り出し、顔を上げて私たち三人を見た。
「よく聞け。表は表でしかない。今日から、お前たちは個別に準備するんじゃなく、同じ一本の命で重さを分け合っている。誰かが余計なゴミを一つ余分に持てば、最終的にそれは誰かの背中に乗る。」
整備室が一秒、静かになった。
感動したわけじゃない。
この一言が真っ直ぐすぎて、どこにも逃げ場がなかったからだ。
私は机の上のものを見て、それから九島が組み直したバックパックを見た。彼女はそこに立っていて、袖口が少し捲れ、手の甲が少し赤くなっていて、制服は朝ほど展示品みたいじゃなかった。ようやく、本当にあの場所へ一緒に行く人間の顔になってきた。
面倒くさい。
でも役立たずじゃない。
私にとって、それはかなり高い評価だ。
ジェスは自分のバックパックを肩に担ぎ直して、私の方に少し顎を向けた。
「どうする、隊長候補さん。」
「誰が隊長候補だ。」
「さっき彼女を見てた目、新型危険物資の入庫判定みたいだったよ。」
「損耗率の評価をしてた。」
九島は最後のストラップを引き締めながら、静かに続きを口にした。
「結果は?」
私は彼女を見て、鼻を鳴らした。
「とりあえず返品しない。」
ジェスがその場で笑い出す。
ハーヴィーは浅く目を逸らした。余計な会話に付き合う気はないが、止める気もないという顔だ。整備室の外の廊下から、遠く集合ベルの音が響いてきた。金属の余韻が長く乾いた音で続いて、まるで告げているみたいだった——どんなにチームっぽく見えても、三日後に林の中に入れば、壊れるものは壊れる。
私はバックパックを背負い直した。肩に重さがのしかかる感覚は昨日までの散漫な感じより、少しだけ安定していた。
少しだけ。
でも、それは覚えておける。
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