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臨界の星穹  作者: Mr.佐藤焫焵
士官学校編
114/151

31. 人間関係の調停、という名の脅迫 1

この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。

リンデを探しに行ったとき、私は実のところとても礼儀正しかった。


少なくとも表面上は。


本当に礼儀正しい人間は、心の中で「もう一度『システム総合評価』なんて言葉を口にしたら、申訴受領書を紙飛行機に折って襟元に突っ込んでやる」と何度もリハーサルしたりはしないだろう。でも仕方ない、私は十四歳だ。まだ成長期で、精神衛生状態も昔から安定した試しがない。連邦軍校が完璧な品性を育てたいなら、まず食堂のスープから始めるべきだ。


「今のその顔」ジェスが隣を歩きながら声を落とした。「告白しに行くみたいだよ」


私は彼女を一瞥した。


「告白って概念、どこかで致命的に歪んでない?」


「じゃあ修正するね」彼女は親切に言い直した。「軍法会議に訴え出に行く人の顔」


さっきよりずっと納得できた。


リンデを見つけるのは普段なら難しくない。総務という生き物の行動範囲は害虫と同じで、だいたい決まっている——窓口、倉庫、資料室、補給線、とにかく人の気分を悪くさせる場所のどこかには必ずいる。問題は、第三者のいない、かつ待ち伏せに見えないタイミングをどう見つけるかだった。


最後はやっぱりジェスのほうが一枚上手だった。混成寮と教学棟のあいだの側廊を曲がったところで、何かまともで怪しげな校内生存本能に従って、資料室の前で見事に本人を捕まえたのだ。


リンデは書類の束を抱えて中から出てきたところだった。 白シャツにダークカラーのジャケット、細いメタルフレームの眼鏡。髪も襟元も汗をかくという概念が最初から存在しないかのように整っている。こういう人間がいつか銃で撃ち抜かれたら、傷口から出てくるのは血じゃなくて事務手続き書式なんじゃないかと思う。


彼は私を見ると、歩みを半拍だけ止めた。 目に見えて、というほどではない。 ごく微細で、ごく短い、普通の人間ならまず気づかない程度の一瞬。 残念ながら私は今、そういう彼の細かな反応にやけに敏感になっている。


昨夜、温室で風紀委員長を抱きしめていた人間と、今この場にいる総務長を並べてみると、差はまるで別種の生物標本みたいに大きい。けれど私は知っている。あの二つの標本は同じ一人の人間だ。


そう思ったら、気分が少しだけマシになった。


「リンデ先輩」私は先に口を開いた。自分でも吐き気がするくらい、行儀のいい声で。「少しお時間、いただけますか」


彼は手元の書類に一度視線を落とし、それから私を見て、さらに私の隣に立つジェスを見た。どう見ても「あなたの一日が順風満帆でありますように」と言いに来た顔ではない女だ。


「分組の件なら、教務窓口へ行くべきだ」 「行ってきましたよ」ジェスがにこにこしながら受けた。「システム総合評価、機能補完、異動不可、一式セットで頂いてきました。見事すぎて拍手しそうでした」


リンデの表情は動かなかった。 「それなら、正式な回答はもう得ている」 「得たのは官話です」私は言った。「答えじゃありません」


この廊下の区間にはたまたま誰もいなくて、斜めに差し込む陽光が壁際の金属の手すりを白く光らせていた。私は彼を見つめながら、自分の声を、礼儀正しさは保ちつつ、必要以上に下手に出ているようにも聞こえない程度のフラットなラインに保った。


「最初にハッキリさせておきますが、特権が欲しくて来たわけじゃありません」私は手にしていた申訴受領書を軽く持ち上げた。「知りたいのは、第144組が本当に生存編組をしているのか、それともゴミの仕分けをしているのか、その一点です」


ジェスが横で小声で刺した。「今のところ、後者に見える」


リンデの視線がやっと受領書に落ちた。レンズの奥の目は、教範に載せられそうな冷たさだった。


「タラグとサイラスはゴミじゃない」 「私もそうは言ってません」私は答えた。「私たちにとって、彼らはシステムの奥底から掘り出されてきて、まだ機能ラベルも貼り終わっていない二人の未知の人間だと言っているだけです。午後には前置集合だというのに、教務はまともなチーム説明の一つも出そうとしない。これは公平なんかじゃない。目隠しをしたまま脱出ポッドに押し込んで、どうして感謝しないんだと聞いてくるのと同じです」


彼は返事をしなかった。 それでいい。 沈黙はたいてい、計算を始めた合図だ。


私は続けた。 「林間学校はグラウンドの周回走じゃない」私は言った。「炎の嵐は七十二時間で一サイクル。風速三百、外層温度千九百度。Jäger(猟人)は人を追い立てて、補給線を切って、遮蔽ポイントを前倒しで炙り出す。そんな状況では、隊の中の一人一人の機能が、言葉で説明できなきゃ困るんです」


リンデの眉間がほんのわずかに動いた。 「ずいぶん詳しいな」 「学校が説明しないものは、自分でかき集めるしかないんですよ」私は淡々と言った。「じゃないと外で死んだとき、さすがに恥ずかしい」


ジェスが半歩前に出て、壁に背を預けながら、相変わらず笑みを崩さなかった。 「それに先輩、この編成表の見栄え、本当によろしくないですよ」彼女は自分の端末をひらひら振った。「公平を装いたいなら、もう少しそれらしく装えばいいのに。今の配置、私みたいな行政音痴でもおかしいってわかるレベルです」


「言葉を選べ」リンデは言った。 「了解です」ジェスは素直に頷いた。「つまり、すごく不細工」


危うく吹き出しそうになった。


リンデは私たち二人を見て、「今ここで追い払ってしまうか、話だけは最後まで聞くか」を秤にかけているようだった。 最終的に、彼は後者を選んだ。


「何が欲しい」


その一言が出た瞬間、道はあるとわかった。 話を全くする気のない人間は、「何が欲しい」とは聞かない。 風紀を呼ぶか、フォームの山に蹴り返して終わりだ。


私はすぐに食いつくのではなく、むしろ半歩下がって、姿勢を少しだけ低く見せた。 「簡単ですよ」私は言った。「少なくとも第一波の炎の嵐を生き延びられるチームが欲しいだけです」


「もっと具体的に」 「私とジェスは固定」私は彼を見つめた。「今の第144組に欠けてるのは、はっきりした骨格です。ひとつは、私が把握していて、本当に役に立つ人間を一人、補強として入れるやり方。もうひとつは、タラグとサイラスの機能ラベル、前期の観察記録、チーム編成の理由を一通り開示してもらうやり方。少なくとも、学校が私たちをネタにして遊んでいるわけじゃないとわかる程度には」


リンデは二秒ほど私を見ていた。 「他の学員の完全な記録を閲覧する資格は、君にはない」 「なら、前者を希望するしかありませんね」私は言った。


廊下が一瞬静まり返った。 遠くから、どこか別のクラスのチャイムが聞こえてきた。水越しに響いてくるように、遠い。リンデは手にした書類をぴたりと押さえ、角が一つも浮かないようにしていた。この男は、本当にこういう人間だ。下院の女子二人に廊下で足止めを食らっていても、動きたがらない行政の彫像にしか見えない。


それから、彼が口を開いた。 「これは、俺への脅迫か?」


やっと来た。


私は彼を見つめたまま、ゆっくり笑った。 「いいえ、先輩」私は言った。「人間関係の調整です」


ジェスが慌てて顔をそむけて、肩が不自然に震えた。どう見ても、ここで吹き出して「交渉記録:同伴者、爆笑による窒息死」という新項目を増やしたくないのを必死に我慢している。


リンデの視線がレンズの奥で、やっと半度だけ冷たさを増した。 わかってくれた。 しかも、ただわかっただけじゃない。


私は温室の話をしていない。 写真の話もしていない。 昨夜の、校則に極めて不親切な月下の再会についても、一言も触れていない。


だからこそ、この匂いはかえってはっきりした。


ジェスが見事なタイミングで、さらに一刺しした。 「先輩、誤解しないでください。私たち、ただ同じ学校にいる以上、ちょっとした助け合いで済むうちは、わざわざ『本来見せるべきじゃないもの』に観客を増やさないほうが、きっとみんな幸せですよねって話をしてるだけです」


心の中で彼女に拍手を送った。 この女は普段の毒舌はともかく、本当に刺すときの刃の角度はいつもきれいだ。


リンデは長いこと黙っていた。 長すぎて、彼の頭の中でリスク項目が一列ずつ並んでいくのが、ほとんど聞こえる気さえした。


修正するか。 どこまで修正するか。 どれくらいなら痕跡を残さずに済むか。 そして—— 修正しなかった場合、私たちがどれくらい厄介な後始末になるか。


最後に、彼は眼鏡を指先で軽く押し上げた。 「お前に、編組を丸ごと指名させることはできない」 「わかってます」私は言った。 「表自体を作り直すつもりもない」 「それは見苦しいですからね」私は頷いた。「自爆させに来たわけじゃありません」


ジェスが横から添えた。「もっと見栄えのいい処理方法についての相談です」


私たちが、人質——じゃなかった、人間関係調整を芸術鑑賞みたいに語っているのを、彼はもう相手にする気もなさそうで、核心だけを告げた。


「第144組は、今日の午後の前置集合までに、機能ラベルの修正を行う」


私は黙って、続きを待った。


「タラグは外す」彼は言った。「ノックスを入れる」


まぶたが一瞬動いた。 ハーヴィー。


いい。 とてもいい。 予想よりずっと使える。


リンデは私を見つめたまま、物資配分表でも読んでいるかのような調子で続けた。 「サイラスは残す。炎の嵐域では、あいつの気象読解と地表熱流の識別は使える。マッカロウはそのまま。お前は——」少し言葉を切って。「お前のポジションは、最初から別のところで見られている」


あまりありがたい響きではない。 けれど、今は受け取っておくことにした。


「それから」彼は最後の一撃を足した。「これはお前が勝ったからじゃない。元の設定にラベルのミスがあったからだ」


私は頷いて、実にお行儀よく笑った。 「了解です。システムが今日の昼までに、急に良心を取り戻したわけですね」 ジェスも頷いた。 「システムって、本当に自己反省のできるいい子ですね」


リンデの目には、一瞬だけ、人類文明に対する失望がはっきり浮かんだ。


それから書類をまとめて、去ろうとした。 私のそばを通り過ぎる直前で、半歩だけ足を止め、低い声で、私にだけ聞こえる音量で言った。


「星野」 顔を上げた。 「何かを手に持っているからといって、握れているとは限らない」


彼の言葉を聞きながら、心の中でこう付け加えた。 ——先輩、昨夜温室に立っていたときのあなたの姿勢も、人生を握れているようには見えませんでしたけど。


口に出したのは別の言葉だ。 「大丈夫ですよ」私は笑って言った。「手が小さいんで。握れないものは、もともと隠しておくほうが慣れてます」


彼の目が、そこでようやく本当に冷たくなった。 いい。 このほうが、しっくりくる。


十分に離れたところで、ジェスがやっと我慢しきれずに私を振り向いた。顔には「さっきのは本当に反則」という文字が大きく書いてあった。


「人間関係の調整?」彼女は声を殺しながら、それでもほとんど痙攣するくらい笑っていた。「どこからそんな台詞が出てくるのさ」


私は申訴受領書を折って、ポケットに押し込んだ。 「その場の思いつき」 「さっきの笑い方、マジで交際枠で食っていく気があるのかと思ったからね」 「黙れ」 「でも——」彼女は少し笑いを引っ込めて、目だけが輝いた。「うまくいった」


私は短く応じて、廊下の向こうを見た。


ハーヴィーが入る。 サイラスは残る。 タラグは出される。


完璧ではない。 だが、十分だ。


そして何より、はっきりしたことが一つある。 リンデは面倒事を嫌う。 そして私は今、ちょうど面倒事になるのが得意だ。


「行こう」私は言った。 ジェスが眉を上げた。 「どこへ」 「ハーヴィーのところ」 ポケットに手を突っ込み、口の端をわずかに上げた。 「せっかくシステムに公平に配属してもらったんだ。どれだけ感動的な運命の配慮か、ちゃんと教えてあげないと」

「とても面白い」★四つか五つを押してね!


「普通かなぁ?」★三つを押してね!


「あまりかな?」★一つか二つを押してね!

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