29. 時の人 2
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
ハーヴィーとジェスを見て、私は突然、自分を昨日の桜桃コーラ二ケースの箱の中に押し込んで、この一日が最初から存在しなかったことにしたくなった。 無理だが。
ハーヴィーが先に口を開いた。語気は、半分焼き切れたネジの修理依頼を読み上げるくらい平らだった。
「教員室に一回行っただけで、大物二人の護送付きで戻ってきた」彼はまだ完全に遠ざかっていないレオンとハインリヒのほうを一瞥してから続けた。「効率がいいな。次は校長も連れてくれば」 私は無表情で彼を見た。
「できるなら昼飯を連れてきたい」 ジェスがすかさず続けた。口角の上がり方が相当性格が悪い。
「昼飯はそんな価値ないよ。さっきの帰り道の絵面だけで、上院が三バージョンの流言を書いて、下院が二バージョンの陰謀論を書くには十分」 「一バージョン減らして」私は言った。
「どれを?」 「私とケンタウルス星区司令官に血縁関係があるというバージョン」私は眉間を押さえた。「あれはバカすぎて自分でも読みたくない」
ジェスは真剣に少し考えた。 「いや、あのバージョンが一番長く流通すると思う。バカなバージョンほど学院では生き残りやすい」 これは正論すぎて、私にはとっさに反論できなかった。
ハーヴィーは手の中の半分解体したパーツ袋を折り畳んで、ようやく私の後ろにいる二体の災害級の人物から視線を私の顔に戻した。 「で?」 「で、って何が」 「呼ばれて半日、行政システムをどう狂わせるかを実演しに行っただけじゃないだろ」彼は少し間を置いて、毒を盛った。「まあ、確かにその方面の才能は十分あるが」 私は彼を見た。 「入学書類の補完」
ジェスは一瞬固まって、それから顔全体に「それだけ?」と書いた。 「それだけのために?」 「そう」私は言った。
「身内欄が空白、住所が空白、緊急連絡先が空白。学校が今頃気づいた。私が外で死んでも、通知書をどこに送ればいいかもわからないって」 ジェスは少し詰まってから、笑ってはいけない話を笑うのがとても上手い顔で笑った。
「なんて答えたの?」 「孤児だと言った」 「それは普通」 「それから住所を聞かれて、タランド星連邦高等矯正収容所第十四区を申告した」
ジェスがその場で声を上げて笑った。大きな笑いで、隣を通りかかった灰色の制服の二人が振り返るくらい。
「どうかしてる!」 「嘘じゃない」私は落ち着いて言った。
「あそこは確かに私が一番長く住んで、一番管理が行き届いていた場所だ」 ハーヴィーは一秒だけ黙ってから、結論を出した。
「合理的だ」 私は彼を見た。 「その『合理的』という一言が少し不快」 「お前の人生の履歴書が元々不快なんだ」彼は悪びれもなく言った。「それで?」
私は前方に顎をしゃくった。 「それで、自分が緊急連絡先になれると言った。そしてお前も今さっき見たとおり」 ジェスの顔から笑みが少しずつ引いた。
彼女は馬鹿じゃない。笑うのは笑うが、読むべきところはちゃんと読む。 「単純な書類補完じゃなかったんだ」と彼女は言った。「学校が本気でお前の責任の連鎖を調べ始めた」 私は頷いた。 「林間学校の編組が始まるから」
この一言が落ちると、ハーヴィーまで少し静かになった。 校門のあたりを行き来する音はまだ続いている。混成寮のほうで誰かが器材を運んでいる。遠くの教学棟の前にはまだ学生が散らばっている。それでもその一瞬、空気が変わったのがはっきりわかった。
ジェスが先に眉をひそめた。 「こんなに早く?」 「レオンが言ってた。前置き編組とリスク審査を先に動かすって」私は口の端を引いた。
「特別招集、観察班、緊急撤退権限、生存適性、医療責任、全部再確認が必要だと。普段は来歴不明の灰色の制服の新入生としてシステムに宙吊りにしておけたが、もうそうはいかない。これから学校が私たちを外に放り出すから」
ハーヴィーは柱にもたれ直して、視線を私の顔に落とした。システムに再値付けされたばかりのパーツを見るような目で。
「今日のあれは、お前の後ろ盾になるためじゃない」彼は言った。「お前のファイルを作るためだ」 「そう」私は言った。「ついでに全校に知らせる。私は書類一枚でうやむやにできる消耗品じゃないと」
ジェスが低く舌打ちした。 「これは大変だ」 「どこが大変なの」 「昨日、自分が特編の変なやつだと思われるのを気にしてたじゃない」彼女は私を見て、誠実すぎて逆に首を絞めたくなる語気で言った。「おめでとう。今日から変なやつじゃなくなった」 私は嫌な予感がした。 「じゃあ何になるの」 彼女が浮かべたのは、とても晴れやかで、とても死に値する笑みだった。 「全校の焦点」
私は二秒間彼女を見つめた。その四文字が禁固刑よりも汚く感じた。 「二十周走るほうがましだ」 「もう遅い」彼女は楽しそうに言った。
「さっきお前は二体の大仏に直々に下院区まで送ってもらった。上院の目はもうお前の背中に貼りついてる。文科系はお前の背景が天まで届いてると思うし、理工系はお前が何か秘密計画の核心サンプルじゃないかと疑う。
下院はお前がコネで来たのか、軍の門から来たのか、それとも門なんかなくて最初から空中投下されてきたのかを推測し始める」
ハーヴィーが横から静かに刺した。 「しかも今日の夕飯前に全バージョンが同時更新される」 私は二人を見て、こめかみが脈を打ち始めるのを感じた。 「少しくらい同情を見せてくれないの」 「無理」ジェスは言った。 「必要ない」ハーヴィーは言った。
いい。これが私の知っている人間性だ。
私は筆記パッドを脇に挟んで、顔を上げて校門上のあの冷たい校章を見た。昨日まで、私は重装課で盾と規則に一緒に押し潰されないよう頑張っているだけの新入生だった。
今日以降、私はたぶん誰もが来て一度叩いてみたくなる奇妙な金属の塊になる。実心か空洞か、それとも中に爆薬が詰まっているかを確かめるために。
この感覚は最悪だ。 場違いで、やたら目立つ。来歴不明のパーツを精密機械に無理やり打ち込んで、全校がそれがいつ先に爆発するかを待っているみたいだ。
ジェスが私の今の気持ちを読んだのか、語気を少し抑えた。 「でも全部が悪いわけじゃない」 私は彼女を見た。
「名声は若いうちに、とか言うつもりじゃないよね」 「違う」彼女はポケットに手を突っ込んで、肩を壁にもたせかけた。
「林間学校は最初から人を篩にかけるから。誰を隊に入れるか、誰が臨時の穴埋めか、誰を信用できるか、誰はただ使うだけか、そういうことは全部一度洗い直される。お前が今焦点になるのはプレッシャーだけど、少なくとも誰もお前を、一蹴りすれば隅っこで腐っていくような灰色のゴミパーツとは見なさなくなる」
ハーヴィーが頷いた。珍しく同意している。 「編組がもうすぐ始まる。情報は人に集まる。注目されることが全部悪いわけじゃない。
お前が耐えられればの話だが」 「それに」ジェスが少し笑った。「今のお前の状態で林間学校に行けば、誰が大物にぶら下がりに来ているのか、誰が本当に生き残りたいのかが、すぐわかる」
私は数秒黙って、最後に一言だけ吐き出した。 「そう言われると、この場所がさらに嫌いになった」 「おめでとう」ジェスは言った。「やっと合格した学員らしくなってきた」
ハーヴィーはパーツの袋を折り直してポケットに収め、語気は相変わらず平らだった。 「とにかく、今日以降は低空飛行は無理だ。
それを気にするより、林間学校で何が足りないかを考え始めたほうがいい。炎の嵐、湿熱、長期生存、追跡部隊——昨日買ったあの桜桃コーラ二ケース、全部は持っていけないぞ」
私は彼を見た。 「それまで口出しするの?」 「積載重量のことを考えてる」 ジェスがすかさず引っくり返した。 「嘘。自分のことを考えてる。お前がいざとなったらコーラだけ持って脳みそを置いてくるのが怖いんでしょ」 「二ケース全部持っていくつもりはない」私は言った。 「一ケース?」 「黙れ」
二人がそろって笑った。 私は校門の内側に立って、混成寮区と教学棟から流れてくる雑音を聞きながら、今日はまだまだ長いと思った。でも少なくとも今、二つのことははっきりしていた。
一つ目、私は本当に全校が注目するついてない奴になる。 二つ目、林間学校はもう噂じゃない。もうすでに影が私たちの足元に伸びてきている。
そして私に選択肢はない。 焦点になる前に、まず燃え抜かれない方法を覚えるしかない。
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