表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
臨界の星穹  作者: Mr.佐藤焫焵
士官学校編
104/137

27. ついうっかり、見てしまいました 5

この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。

翌朝最初に思ったのは、昨夜よく眠れたことへの驚きだった。


これは少し情けない。


普通に考えれば、前の夜に上院の後校舎の外で風紀委員長と総務長が植物温室で校則を敷物にしているところを目撃し、ついでに風紀委員会全体の血圧を一気に上げるのに十分な写真を撮ってきた人間は、眠れないか、悪夢を見るか、少なくとも夜中に三度は目を覚まして、あのメモリカードをとんでもなく馬鹿な場所に隠してしまっていないか確認するはずだ。


でも私はそうしなかった。


よく眠れたとは言えないが、特別悪くもなかった。たぶん連邦軍校の人体への破壊は効率を重視しているからだ。重装授業、外出購買、荷物運び、宿舎に戻って戦利品の分配、夜に後校舎まで試し撮りに行って高級な事故現場に遭遇、この一連を経れば、神経がどれだけ張っていても肉体の方が先にストを起こす。


起き上がって最初にしたのは、ライトノベルの袋を確認することだった。


あった。


あの発作的に長いタイトルの本が、袋の底で静かに横たわっていた。相変わらず安くて俗っぽくて、何の脅威もなさそうだった。裏表紙とカバーの間の小さな隙間に、二階堂・フレイヤとリンデ・ホフマンを揃って脳卒中に送り込めるだけの写真が入っているとは、誰も思わない。


これで少し気分がよくなった。


宿舎はまだ静かだった。誰も起きていないわけじゃない。みんな非常に節制した起き方をしていた。ベッドの端で髪を結んでいる者、布団の中で寝返りを打っている者、もう軍靴を足元に引き寄せている者。自分が今日もまた部品として機械に飲み込まれに行くとわかっている集団が、正式に呑み込まれる前の数分間、まだ人間らしくいられる時間を自分のために残しているみたいだった。


ベッドを下りて、服を着始めた。


昨日換えた速乾インナーは公給品と比べ物にならないほど快適だった。少なくとも朝一番から、軍需部と砂紙メーカーの間に利益供与があるんじゃないかと疑わずに済む。新しい靴下も前のより普通で、履いた瞬間に自分で水ぶくれを育てているという感覚がない。二重腰ベルトを締めると噛みがしっかりしていた。数周走ったら人生に疑問を持ち始める公給品の設計とは違う。


膝当てのバンドを引き締めながら、昨日買ったフィルターポーチをサイドの取付点に固定した。


今日に特別な授業があるからじゃない。


ただ、ハーヴィーの言葉が少しわかってきた気がした。


先にお前を殺しそうな部分を替える。


この言葉は実際的だった。温度がなかったが、悪意もなかった。そういう種類の祝福だ。


向かいのベッドのジェスはもう起きていて、ベッドの端に座って髪を束ねていた。顔を上げて私を見て、インナー、腰ベルト、バンドと視線を流して、最後に頷いた。


「今日はようやく人間らしく見える。」


上着のファスナーを半分上げた。


「昨日は?」


「昨日は三時限目が終わる前に装備に逆噛みされて死にそうな人に見えた。」


横目で見た。


「あなたの励ましはいつも奥行きがある。」


「仕方ない。軍校は楽観主義を育てない。正確さを育てる。」


反論しにくかった。


宿舎の他の人間も次々と動き始めた。廊下の外で声が聞こえ始め、水場の方からプラスチックのコップと金属の洗面台が当たる音が来て、遠くの放送システムが起動前の低い唸りを上げ始めた。大型の設備が暖機して、今日私たちをどう消耗させるかの準備を始めているみたいだった。


あのライトノベルをもう一度手に取った。


『このライトノベルのタイトルがなぜここまで長いのか、編集部の頭はおかしいんじゃないか件について』


タイトルを見るだけで事故みたいだ。


その一行を二秒見つめて、結局袋の底に戻した。昨日買ってきた菓子と一緒に並べて、袋ごとロッカーの奥に押し込んだ。特別深い場所でも、特別目立つ場所でもない。重要なものほど、怖がっているように隠してはいけない。


これも常識だ。


ロッカーを閉めながら、頭の中で今日の時間割を確認した。


午前一時限目、戦術理論。


タイトルを聞くだけで眠くなる。


戦術理論の授業の最大の特徴は、本当に何かを教えてくれることじゃない。もともとまだ生きていた脳細胞を非常に効率よく一個ずつ自主停業させることだ。教官が前に立ち、朝の人間社会に本来存在してはいけない安定した口調で、標準切入角度、典型的な艙室突入手順、理論的火力配分モデル、そして紙の上では美しくて現場では現実に半分ぶっ壊される標準解答を延々と語る。


この授業に対して私が持てる唯一の期待は、十分に退屈であることだ。


退屈なくらいがちょうどいい。頭を手で支えながら聞いて、その間に頭の中でゆっくり別のことを考えられる。


たとえば昨夜の写真が十分に鮮明かどうか。


たとえば二階堂が今日どこかおかしく見えるかどうか。


たとえばリンデがまだあんなに自然に総務窓口の後ろに立って、全校で自分が一番普通だという顔をできるかどうか。


そしてたとえば、ジェスへの探りをいつ、どんな形で始めるか。


ここまで考えて、自分でも少し可笑しくなった。


昨日までの最大の悩みは重装授業の肩紐、外出購買のリスト、チェリーコーラを二ダース一度に担いで帰るかどうかだった。一日後、悩みのリストには風紀委員長と総務長と、ライトノベルの中に暫定保管中の、当面は日の目を見せる気のないメモリカードが加わっていた。


人生設計はやはり細かく立てるべきじゃない。


朝の集合ラッパが鳴った。


冷たく、真っ直ぐで、一切の交渉を受け付けない音だった。誰かが全員の鼓膜の隣に立って言っているみたいだった——そろそろいい。個人の時間はここまで。今日の消耗品として出発する準備をしろ。


教科書とノートボードを掴んで、ジェスと一緒に宿舎を出た。


廊下の人の流れがゆっくり集まり始めていた。灰色の制服、足音、低い不満の声、歩きながら最後の一口の栄養バーを口に押し込んでいる者。階段の踊り場には洗剤、乾いた布、安物のシャンプー、寝不足の匂いが混ざっていた。もしこれを学院が公式の香水として登録するなら、名前は『青年死亡予備軍』にすることを提案する。


階段を下りて、寮前の集合区を抜け、教学棟へ向かった。


空はもう明るく、雲が薄く、朝の光が少し冷たいほど清潔だった。校舎の外壁が白く照らされ、地面の標線が刻薄なほど鮮明だった。昨日の校外外出が残していった少しの緩みは、今日にはもうほぼ回収されていた。学院はまたあの私が知っている機械に戻っていた。整然として、時間通りで、無表情で、昨日全員が一時的に箱から出されて息をしただけで、今日はまたそれぞれの割り当てられた場所に戻れという顔をしていた。


ジェスが隣で時間割を見ながら言った。


「一時限目が戦術理論。校方、朝一番から精神的安楽死を手配してくれてありがとう。」


短く息を出した。


「少なくともこの時間は走らなくていい。」


「そう、ただ座って、教官が一隻の船の標準突入手順を葬式の弔辞みたいに読み上げるのを聞けばいい。」


教学棟前の広場に差しかかろうとした時、校内放送システムが突然鳴った。


短い通知音が一つ。


それから、いつも中性的で標準的で余分な感情を持たないあのシステムの声が、四方から清潔に降ってきた。


「下院学員、星野霜——」


足が一瞬止まった。


放送は止まらなかった。その安定さがかえって不快だった。


「至急、教官室まで来ること。繰り返す、下院学員、星野霜、至急、教官室まで来ること。」


その場に立ったまま、手のノートボードが急に余分なものになった。


周りの人間はまだ歩いていた。まだ話していた。この放送が特定の誰かの心臓にどれだけの打撃を与えられるか、全く気にしていない者もいた。朝の光は変わらず明るく、風は変わらず冷たく、学院は変わらず何事もなかったように動き続けていた。


でもその一瞬、頭の中でいくつかの可能性が素早く流れた。


外出日の事後書類。


教官が臨時で呼んでいる。


何かの手続き登録。


あるいは——


そこから先は考えなかった。


本当にまずいことは、考え切る前に自分で歩いてくるものだから。


ジェスがゆっくりこちらを向いた。


「……あー。」


行政棟側の長廊を見つめ、息を一つ吐いた。


「今すぐあの退屈な戦術理論の授業を受けに行きたい。」


ジェスが頷く。


「おめでとう。今日のあんたには、その程度のツキすら残ってないよ」


私はバインダーを脇の下に深く挟み込み、翻って教官室の方へと歩き出した。


朝の光が酷く眩しい。まるで、そこら中のガラス窓が私を凝視しているかのようだった。


「とても面白い」★四つか五つを押してね!


「普通かなぁ?」★三つを押してね!


「あまりかな?」★一つか二つを押してね!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ