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離婚できないなんて…  作者: マーたん


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第七章:選ばれなかったもの

姉「はいどうもー、姉です」


弟「いや誰に向かって挨拶してんの」


姉「読者様に決まってるでしょ。あんたより大事なんだから」


弟「ひどくない!?」


姉「で、今回の見どころは?」


弟「いや俺が聞くの!?」


姉「だってあんた、何もできてないじゃん」


弟「ぐっ……」


姉「女二人に詰められて固まる男。以上」


弟「雑すぎるだろ説明!」


姉「まあ安心しなさい。私が来たからには話は動くわ」


弟「いや、余計ややこしくなる予感しかしないんだけど!?」


姉「うるさい。黙って見てなさい」


弟「この人マジで強すぎる……」


姉「というわけで、修羅場に第三勢力参戦です」


弟「戦争じゃんもう」


姉「それでは本編、どうぞ」



第七章:選ばれなかったもの


 沈黙が、張り詰めていた。


「選びなよ」


 美咲の声。


「全部壊す?」


 理奈の声。


 二人の視線が突き刺さる。


 逃げ場はない。


 答えを出さなければいけない。


(俺は――)


 その瞬間。


「ちょっと待ちなさいよ」


 場違いな声が、割り込んだ。


 三人同時に振り向く。


 そこに立っていたのは――


「……は?」


 見覚えのある顔。


 いや、忘れるわけがない。


「姉貴……?」


 腕を組んで立っていたのは、俺の姉だった。


 黒髪を後ろでまとめ、鋭い目つきでこちらを睨んでいる。


「何その地獄みたいな空気」


 開口一番、それだった。


「いや、なんでここに……」


「通りかかったのよ」


 絶対嘘だ。


 この人がそんな偶然で現れるわけがない。


「で?」


 姉貴は三人を見渡す。


「修羅場?ドラマ?それともただのバカ?」


「……関係ないだろ」


「大アリよ」


 即答だった。


「だってあんた、うちの弟でしょ」


 面倒くさいスイッチが入った。


「はぁ……」


 姉貴は大きくため息をつくと、ずかずかとこちらに歩いてくる。


 そして、俺の前に立った。


「まず状況説明」


「今それどころじゃ――」


 ――バチン!


 乾いた音が響いた。


 一瞬、何が起きたのか分からなかった。


 頬が熱い。


 殴られた。


「バカ」


 姉貴は冷たく言い放つ。


「いい歳して何してんのよ」


「……っ」


「女二人に詰められてフリーズ?情けなさすぎ」


 何も言い返せない。


 完全に図星だった。


「で?」


 今度は美咲と理奈を見る。


「どっちが何?」


 雑すぎる問い。


 だが――


「……妻です」


 美咲が先に答えた。


「元恋人です」


 理奈も続く。


「なるほど」


 姉貴は頷く。


「じゃあ簡単ね」


 え?


「全員めんどくさい」


 場が一瞬止まった。


「は?」


 理奈が眉をひそめる。


「失礼じゃない?」


「事実でしょ」


 姉貴はあっさり言う。


「そっちは脅して縛る系、そっちは引っ掻き回す系」


 的確すぎる。


「で、うちのバカは逃げる系」


 完全に詰みだった。


「……あの」


 美咲が口を開く。


「あなた、何者ですか?」


「姉」


 即答。


「以上」


 説明になっていない。


 だが、姉貴は構わず続ける。


「で、結論」


 腕を組む。


「こんなクソみたいな関係、続ける意味ある?」


 空気が変わった。


 それまでの“緊張”とは違う。


 もっとシンプルで、もっと本質的な問い。


「……それは」


 俺が口を開きかける。


「黙ってなさい」


 遮られた。


「今あんたに発言権ないから」


 ひどい。


「選べないなら壊せばいいのよ」


 姉貴は言う。


「どうせもう壊れてるんだから」


 その言葉が、胸に刺さる。


「ねえ」


 理奈が口を開く。


「簡単に言うけど、それで全部終わると思ってるの?」


「終わるでしょ」


 即答。


「むしろ始まる」


 理奈が目を細める。


「面白いこと言うね」


「でしょ?」


 姉貴はにやりと笑う。


 この人、楽しんでいる。


 完全に。


「ねえ弟」


 突然、こちらを見る。


「本音言いなさいよ」


 ドキッとする。


「どっちでもないんでしょ?」


 言葉を失った。


 図星すぎた。


 好きとか、愛してるとか。


 そんな単純な話じゃない。


 もう、とっくに壊れている。


「……俺は」


 声が震える。


「もう、疲れた」


 それが、出た言葉だった。


 静寂。


「……は?」


 理奈が呆れたように笑う。


「それが答え?」


「ダサ」


 姉貴も容赦ない。


「でもまあ」


 腕を組む。


「やっと人間っぽいこと言ったじゃん」


 褒めてるのか貶してるのか分からない。


「じゃあ決まりね」


 え?


「何が」


「壊す」


 あっさり言った。


「全部」


 その一言で、空気が変わった。


 完全に。


「待って」


 美咲が初めて焦りを見せた。


「それは――」


「嫌?」


 姉貴が見下ろす。


 美咲は言葉に詰まる。


「でしょ」


 ニヤリと笑う。


「だったら、あんたも覚悟決めなさい」


 視線がぶつかる。


「このまま飼うか、手放すか」


 理奈にも向く。


「引っ掻き回すだけか、本気で壊すか」


 そして――


 俺を見る。


「逃げるか、終わらせるか」


 選択が、突きつけられる。


 今度こそ、本当に。


 逃げ場はない。


 でも――


 初めて、選べる気がした。

弟「終わった……いろんな意味で終わった……」


姉「何言ってんの、まだ始まったばっかでしょ」


弟「いや完全に壊れたでしょ関係!」


姉「元から壊れてたでしょ」


弟「それはそうだけど!」


姉「で、どうすんの?」


弟「いやそれ今考えてるとこなんだけど!?」


姉「遅いのよ。だから詰むの」


弟「ぐぅの音も出ない……」


姉「まあでも、ちょっとはマシな顔になったわね」


弟「え?」


姉「前はただの逃げてる顔だったけど、今は“迷ってる顔”」


弟「それ進歩なの?」


姉「大進歩よ。人間に一歩近づいた」


弟「評価低くない!?」


姉「うるさい。ここからが本番」


弟「え、まだあるの?」


姉「当たり前でしょ。壊すって言ったんだから」


弟「やめてくれよその宣言!」


姉「次はもっと面白くなるわよ」


弟「不安しかないんだけど!?」


姉「というわけで、次章もよろしく」


弟「お願いします……ほんとに……」

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