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離婚できないなんて…  作者: マーたん


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47/52

それでも、忘れなかった

登場人物(最終章時点)


⸻


■ 黒瀬(くろせ) 恒一(こういち)


年齢:30歳

立場:青嶺学園教師


黒瀬 恒一


本作の主人公。


かつて

私立霧崎学園 で教師をしていた。


しかし、


* 生徒との問題

* 学園崩壊

* 教育委員会問題

* 榊原の陰謀


によって全てを失う。


その後、


地方の

青嶺学園 へ移る。


現在は静かに教師を続けている。


以前より感情を見せなくなったが、


授業だけは今でも本気。


また、


クロガミ と出会ったことで、


橘 ひより に関する記憶を失っている。


ただし、


心の奥には説明できない喪失感だけが残っている。


現在は

杉田 百子 と共に新しい人生を歩き始めている。


一言でいうと

記憶を失いながら前へ進む教師


⸻


■ 杉田(すぎた) 百子(ももこ)


年齢:29歳

立場:青嶺学園教師


杉田 百子


黒瀬と同じ学校で働く教師。


穏やかで優しい性格。


しかし内面はかなり強い。


過去に婚約者を事故で失っている。


そのため、


“過去に壊される苦しみ”


を理解している。


黒瀬の過去を全て知ったうえで、


隣に立つことを選んだ。


現在は黒瀬と共に暮らしている。


黒瀬の心に“誰かの痕跡”が残っていることにも気づいているが、


無理に踏み込もうとはしない。


一言でいうと

傷を知っているから寄り添える女性


⸻


■ 橘 ひより(たちばな ひより)


年齢:21歳

立場:元・霧崎学園生徒


橘 ひより


黒瀬の元妻。


秘密の結婚生活を送っていた。


しかし、


学校崩壊事件の末、


別れを選ぶ。


現在は別の男性と交際している。


穏やかな生活を送っているが、


心の奥には大きな空白が残っている。


実は、


黒瀬との記憶が消された瞬間、


ひより側にも“喪失感”だけが残った。


理由は分からない。


だが、


時々涙が止まらなくなる。


一言でいうと

忘れられた側になってしまった元妻


⸻


■ クロガミ


クロガミ


人の、


* 後悔

* 未練

* 絶望

* 忘れたい記憶


へ現れる謎の存在。


黒いコート。


赤い瞳。


関西弁で話す不気味な男。


人間なのか、


悪魔なのか、


幻覚なのか、


正体は不明。


代償と引き換えに、


人の記憶や感情へ干渉する力を持つ。


黒瀬から、


ひよりとの記憶を消した張本人。


ただし、


“感情の残り香”までは完全に消せていない。


そのため黒瀬は、


理由もなく胸の痛みを感じることがある。


一言でいうと

記憶を喰らう謎の存在


⸻


■ 榊原(さかきばら) 漣司(れんじ)


年齢:48歳

立場:元・霧崎学園教頭


榊原 漣司


かつての事件の黒幕。


* 美月

* みく

* 校内の噂

* 証拠写真


を利用し、


黒瀬を破滅へ追い込んだ。


事件発覚後、


教育界から姿を消す。


現在は消息不明。


一言でいうと

全員の人生を壊した黒幕


⸻


■ 七瀬(ななせ) 美月(みづき)


年齢:21歳

立場:元・霧崎学園生徒


七瀬 美月


かつてひよりの親友だった少女。


榊原の愛人関係となり、


黒瀬破滅計画へ加担。


現在は表舞台から姿を消している。


子供を産んだという噂もあるが真相不明。


一言でいうと

依存と愛に壊された少女


⸻


■ 水城 みく(みずき みく)


年齢:21歳

立場:元・霧崎学園生徒


水城 みく


叔父から脅迫され、


黒瀬へ接近した少女。


しかし途中から本気で恋をしてしまう。


事件後は地元を離れ、


静かに暮らしている。


現在も黒瀬への罪悪感を抱えている。


一言でいうと

恋と後悔を抱えて生きる少女


⸻


■ 奈々星(ななほし) 雫(しずく)


年齢:21歳

立場:元・霧崎学園生徒


奈々星 雫


ひよりへの嫉妬から、


秘密を教育委員会へ漏らした少女。


本人は正義のつもりだった。


しかし結果的に、


多くの人生を壊す引き金となった。


現在は、


自分の行動の重さを理解し始めている。


一言でいうと

嫉妬から全てを崩した少女


⸻


■ 奈々星(ななほし) 雅臣(まさおみ)


年齢:53歳

立場:教育委員会職員


奈々星 雅臣


教育委員会側の人物。


娘・雫から情報を聞き、


霧崎学園調査へ関わる。


しかし調査の中で、


学校内部の腐敗や陰謀を知る。


現在も榊原問題を追っている。


一言でいうと

真実を追い続ける男


⸻


■ 青嶺学園


青嶺学園


黒瀬が再出発した学校。


過去ではなく、


“今の教師としての力”


を重視する学園。


黒瀬と百子にとって、


新しい人生の始まりの場所。


⸻


■ 最終テーマ


この物語が最後に描いたのは、


⸻


「忘れても、心だけは覚えている」


⸻


という愛の形。

最終章:それでも、忘れなかった


 三年前。


⸻


 すべてを失った。


⸻


 教師としての未来。


 愛した人。


 守りたかった日々。


⸻


 それでも時間だけは止まらない。


⸻


*


 春。


⸻


 青嶺学園 。


⸻


「黒瀬先生、また徹夜ですか?」


⸻


 呆れた声。


⸻


 杉田 百子 がコーヒーを置いた。


⸻


 黒瀬 恒一 は苦笑する。


⸻


「……少しだけ」


⸻


「その“少し”が危ないんです」


⸻


 百子はため息をつく。


⸻


 でも。


⸻


 その目は優しかった。


⸻


*


 三年。


⸻


 黒瀬は変わった。


⸻


 笑わなくなった。


 感情を隠すようになった。


⸻


 けれど授業だけは違う。


⸻


 本気で生徒と向き合う。


⸻


 その姿だけは昔のままだった。


⸻


 だが最近。


⸻


 妙な夢を見る。


⸻


 夕焼け。


⸻


 教室。


⸻


 泣きそうな声。


⸻


「旦那様……」


⸻


 そこまでなのに。


⸻


 顔だけが思い出せない。


⸻


「……誰なんだ」


⸻


 胸だけが痛む。


⸻


*


 一方。


⸻


 遠い街。


⸻


 橘 ひより もまた、


空を見上げていた。


⸻


 今の恋人は優しい。


⸻


 穏やかな毎日。


⸻


 幸せなはずだった。


⸻


 なのに。


⸻


 時々、


 理由もなく涙が出る。


⸻


「ひより?」


⸻


「……ううん、大丈夫」


⸻


 そう言いながら、


 胸の奥が苦しかった。


⸻


 何か大切なものを、


 置いてきた気がする。


⸻


*


 その夜。


⸻


 黒瀬の前に、


“それ”は現れた。


⸻


 雨の路地裏。


⸻


 黒いコート。


⸻


 赤い瞳。


⸻


 異様な気配。


⸻


「……誰だ」


⸻


 男は静かに笑った。


⸻


「人はワシを、クロガミって呼ぶ」


⸻


*


■ クロガミとは


クロガミ


人の、


* 後悔

* 未練

* 絶望

* 忘れたい記憶


に現れる謎の存在。


人間なのか、


悪魔なのか、


幻覚なのか、


誰にも分からない。


ただ一つ確かなのは、


⸻


クロガミに出会った人間は、


人生を書き換えられる


⸻


ということ。


⸻


*


「お前、まだ過去に縛られとるな」


⸻


 クロガミが言う。


⸻


「……意味が分からない」


⸻


「忘れたいんちゃうんか?」


⸻


 黒瀬の目が揺れる。


⸻


 忘れたい。


⸻


 罪も。


 痛みも。


 失った日々も。


⸻


 そして。


⸻


 あの人も。


⸻


「代償は?」


⸻


 クロガミが笑った。


⸻


「記憶や」


⸻


「忘れてしもたら、人は前に進める」


⸻


「せやけどな」


⸻


 赤い瞳が細くなる。


⸻


「ほんまに大事なもんまで消えてまうかもしれへんで?」


⸻


*


 次の瞬間。


⸻


 世界が歪む。


⸻


 頭痛。


⸻


 崩れていく記憶。


⸻


 夕焼け。


⸻


 教室。


⸻


 涙。


⸻


「旦那様……」


⸻


 その声が、


 消えていく。


⸻


「っ……!!」


⸻


 黒瀬が膝をつく。


⸻


 苦しい。


⸻


 なのに。


⸻


 何を失ったのか分からない。


⸻


*


 翌朝。


⸻


「黒瀬先生?」


⸻


 杉田 百子 が首を傾げる。


⸻


「なんか今日、少し顔が穏やかですね」


⸻


「……そうか?」


⸻


 黒瀬は窓を見る。


⸻


 不思議だった。


⸻


 ずっと胸にあった痛みが、


 少しだけ消えている。


⸻


 何かを忘れた気がする。


⸻


 でも。


⸻


 思い出せない。


⸻


*


 帰り道。


⸻


「先生、今日ご飯作ります」


⸻


「また焦がすだろ」


⸻


「今日は大丈夫です!」


⸻


 百子が笑う。


⸻


 黒瀬も少し笑った。


⸻


 自然に。


⸻


 本当に久しぶりに。


⸻


 百子はその顔を見て、


静かに目を細める。


⸻


*


 百子にも過去があった。


⸻


 昔、


婚約者を事故で失っている。


⸻


 だから分かる。


⸻


 人が、


 過去に縛られて壊れていく苦しさを。


⸻


 だからこそ。


⸻


 黒瀬を救いたかった。


⸻


*


 一方。


⸻


 橘 ひより 。


⸻


 夜。


⸻


 突然、


涙が止まらなくなる。


⸻


「……なんで」


⸻


 理由は分からない。


⸻


 でも。


⸻


 何かが。


⸻


 永遠に遠くへ行ってしまった。


⸻


*


 路地裏。


⸻


 クロガミが笑う。


⸻


「これでええ」


⸻


 黒い影が揺れる。


⸻


「人間いうんはな」


⸻


「忘れへんと前に進まれへん生き物なんや」


⸻


 そして。


⸻


 クロガミは闇へ消えた。


⸻


*


 春。


⸻


 新しい日々。


⸻


 黒瀬 恒一 は歩く。


⸻


 隣には、


杉田 百子 。


⸻


 穏やかな空気。


⸻


 笑い声。


⸻


 普通の日々。


⸻


 それは、


昔ずっと欲しかったものかもしれない。


⸻


 そして。


⸻


 百子との世界が、


 ここから始まる。


⸻


 けれど。


⸻


 夕暮れ。


⸻


 ふと。


⸻


 黒瀬の胸が少し痛む。


⸻


「……?」


⸻


 理由は分からない。


⸻


 でも。


⸻


 春風の中で。


⸻


 遠くから。


⸻


「旦那様」


⸻


 そんな声が聞こえた気がした。


⸻


完

クロガミの演説


 暗い路地。


⸻


 誰もおらへん世界。


⸻


 黒い影だけが立っとる。


⸻


 赤い瞳。


⸻


 そして、


クロガミ は静かに笑った。


⸻


「人間いう生き物は、ほんま難儀やなぁ」


⸻


「忘れたい言うくせに、忘れられへん」


⸻


「捨てたい言うくせに、手放した瞬間に泣きよる」


⸻


 クロガミは夜空を見上げる。


⸻


「愛?」


⸻


「絆?」


⸻


「運命?」


⸻


「そんな綺麗な言葉並べてもな」


⸻


「結局、人間を壊すんは“感情”や」


⸻


 笑う。


⸻


 せやけど。


⸻


 その顔はどこか寂しい。


⸻


「せやからワシは救ったるんや」


⸻


「忘れたい奴から、記憶を奪う」


⸻


「前に進めへん奴を、歩かせる」


⸻


「過去に殺されるくらいやったら、消した方が楽やろ?」


⸻


 風が吹く。


⸻


 黒いコートが揺れる。


⸻


「けどな」


⸻


 クロガミの赤い瞳が細くなる。


⸻


「人間いうんは、ほんまおもろい」


⸻


「記憶を消しても」


⸻


「感情だけ残りよる」


⸻


「名前を忘れても」


⸻


「心だけは覚えとる」


⸻


 小さく笑う。


⸻


「せやから厄介なんや」


⸻


 遠く。


⸻


 春の風。


⸻


 誰かの笑い声。


⸻


 誰かの涙。


⸻


「黒瀬」


⸻


「お前は忘れた」


⸻


「せやけど、お前の心はまだ泣いとる」


⸻


「ひより」


⸻


「お前は失った」


⸻


「せやけど、お前の愛はまだ残っとる」


⸻


 クロガミは静かに振り返る。


⸻


「ほんま、人間は愚かや」


⸻


「せやけど――」


⸻


 一瞬だけ。


⸻


 優しい目になる。


⸻


「せやから、美しいんかもしれんなぁ」


⸻


 闇が揺れる。


⸻


 赤い瞳が消えていく。


⸻


「ほな、また会おうや」


⸻


「次に“忘れたい”と願った人間の前でな」


⸻


完

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