教師になる前
登場人物
『黒瀬恒一 ― 出会い』時点
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■ 黒瀬 恒一
年齢:22歳
立場:大学生(教師志望)
黒瀬 恒一
本作の主人公。
まだ教師になる前の姿。
不器用で口は悪い。
面倒事も嫌い。
しかし、
困っている人を放っておけない性格。
昔から、
「先生になりたい」
という夢を持っている。
ただし本人は、
“立派な教師”
になれる自信はない。
この頃はまだ、
今より少し笑っていた。
駅前で
橘 ひより と出会い、
人生が大きく変わり始める。
一言でいうと
不器用だけど放っておけない大学生
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■ 橘 ひより(たちばな ひより)
年齢:15歳
立場:高校一年生
橘 ひより
黒瀬が駅前で出会った少女。
美人だが愛想は悪い。
警戒心が強く、
簡単に他人を信用しない。
助けられても素直に感謝しないタイプ。
しかし本当は、
かなり寂しがり屋。
家庭環境にも少し問題を抱えている。
この出会いによって、
少しずつ黒瀬へ惹かれていく。
一言でいうと
素直になれない孤独な少女
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■ 酔っ払いの男
酔っ払いの男
駅前でひよりへ絡んでいた男。
黒瀬によって追い払われる。
二人の出会いのきっかけを作った人物。
一言でいうと
運命のきっかけになった迷惑男
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■ 未来の黒瀬とひより
この時の二人はまだ知らない。
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恋をすること。
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結婚すること。
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壊れること。
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忘れること。
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それでも、
心だけは残り続けることを。
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■ この物語のテーマ
『黒瀬恒一 ― 出会い』が描くのは、
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「人生を変える出会いは、突然やってくる」
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という始まりの物語。
黒瀬 恒一 ― 出会い
エピソード0「教師になる前」
雨だった。
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春なのに寒い日。
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大学帰り。
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黒瀬 恒一 は駅前を歩いていた。
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まだ教師じゃない。
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ただの大学生。
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夢だけはあった。
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「先生になりたい」
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それだけ。
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*
駅前広場。
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人混み。
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騒がしい夕方。
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その中で。
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「おい!!」
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怒鳴り声が響く。
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黒瀬が振り返る。
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男。
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酔っ払い。
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高校生くらいの女子へ絡んでいた。
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「無視してんじゃねぇぞ!」
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少女は怯えている。
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周囲は見て見ぬふり。
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黒瀬は小さく舌打ちした。
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「……最悪」
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本当は関わりたくない。
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面倒事は嫌い。
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でも。
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放っておけなかった。
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「やめてください」
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黒瀬が間に入る。
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酔っ払いが睨む。
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「なんだお前」
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「警察呼びますよ」
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「はぁ!?」
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男が掴みかかろうとする。
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その瞬間。
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「警備員来ましたー!!」
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黒瀬が大声を出した。
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「なっ!?」
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酔っ払いが振り返る。
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もちろん嘘。
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だが男は慌てて逃げた。
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「……はぁ」
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黒瀬は深くため息をつく。
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「大丈夫?」
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少女はしばらく黙っていた。
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そして。
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「……助けてなんて頼んでない」
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「え?」
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黒瀬が固まる。
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少女は不機嫌そうに髪をかき上げた。
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「別に一人でどうにかなったし」
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「いや絶対無理だったろ」
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「うるさい」
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可愛くない。
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第一印象、
最悪。
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でも。
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その目だけは、
妙に綺麗だった。
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*
「名前」
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「……は?」
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「助けてもらったし、一応聞いとく」
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「黒瀬」
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「下は?」
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「なんで?」
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「いいから」
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「……恒一」
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少女が少し笑う。
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「変な名前」
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「お前失礼だな!?」
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少女は初めて少し笑った。
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本当に少しだけ。
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「私は」
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風が吹く。
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桜が舞う。
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少女が振り返る。
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「橘ひより」
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それが。
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橘 ひより と、
黒瀬の最初の出会いだった。
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*
その時はまだ、
二人とも知らない。
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この出会いが。
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人生を壊して。
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それでも。
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人生を変えることになるなんて。
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エピソード0 完
ひよりの一言
橘 ひより
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「最初は、嫌な人だと思った」
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「口悪いし」
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「無愛想だし」
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「変にお節介だし」
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「でも――」
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「困ってる人を見ると放っておけないところは、昔から変わらなかった」
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「だから私は」
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「その不器用さが好きになったんだと思う」
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「……たぶんね、旦那様」




