第十章:
はっ
第十章:波瀾万丈の付き合う、結婚する
恋愛は、二人だけの問題では終わらない。
特に。
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相手が人気俳優で。
自分が警察官で。
周囲に面倒な大人が大量にいる場合は。
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なおさらだ。
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朝。
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蒼城中央警察署 。
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「おはようございまー……」
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若手署員の声が止まる。
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入口。
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そこにいたのは。
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帽子。
マスク。
サングラス。
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完全変装の男。
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だが。
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「……神崎蓮だ」
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一秒でバレた。
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「なんで分かるの!?」
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男――
神崎 蓮 が絶叫する。
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「オーラ」
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「隠して!?」
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署員たちざわつく。
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そんな中。
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奥から
西園寺 真希 が出てくる。
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二人の目が合う。
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一瞬、空気が変わる。
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「……何しに来たんですか」
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「迎え」
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「は?」
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「朝比奈に車禁止された」
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「子供ですか」
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「母親にも怒られた」
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「当然です」
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普通の会話。
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なのに。
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周囲の署員たちは確信していた。
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(付き合ってる)
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完全に。
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その頃。
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署長室。
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神戸署長 は死んだ目をしていた。
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「なんでうちの署が芸能スクープの現場みたいになってる」
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「楽しそうじゃない」
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ソファで笑っているのは
相沢 美玲 。
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「全然楽しくねぇ」
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その時。
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ドアが開く。
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入ってきたのは――
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斜別 管理官 。
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空気が重くなる。
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「……お前の息子、また署に来てるぞ」
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「知ってる」
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美玲、即答。
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「止めろ」
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「無理」
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「即答するな」
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斜別が深いため息をつく。
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「西園寺真希」
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「はい?」
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「お前、覚悟あるのか」
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突然だった。
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真希が固まる。
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「父親モード入った」
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美玲が笑う。
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「黙れ」
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斜別の圧が重い。
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「蓮は面倒だぞ」
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「知ってます」
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「芸能界はもっと面倒だ」
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「……はい」
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「しかもあいつは昔から、好きになると周りが見えん」
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蓮が後ろで吹き出す。
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「父親が暴露すんな」
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「事実だ」
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「うわ最悪」
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親子である。
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「で?」
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美玲がニヤニヤしながら聞く。
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「付き合うの?」
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真希、停止。
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蓮、笑う。
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「聞く?」
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「聞くわよ」
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「全国民聞きたいでしょ」
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「スキャンダルになるのでやめてください」
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真希が本気で止める。
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「でもさ」
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蓮が真希を見る。
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「お前、もう逃げないだろ」
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静かな声。
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真希が黙る。
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そして。
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「……逃げません」
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小さいけれど、はっきりと言った。
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空気が止まる。
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「おぉ……」
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若手署員、感動。
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「青春……」
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「うるさいです」
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真希が赤くなる。
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蓮が少しだけ笑った。
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数ヶ月後。
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季節が変わる。
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それでも。
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二人は相変わらずだった。
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「蓮、週刊誌」
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「また!?」
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「真希、事情聴取」
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「してません」
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「朝比奈ブチギレ」
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「想像できる」
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波瀾万丈。
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喧嘩もする。
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逃げもする。
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ぶつかる。
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でも。
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離れない。
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ある夜。
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海沿い。
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最初に蓮を見つけた場所。
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夜風。
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「なあ真希」
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「なんですか」
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「結婚する?」
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真希、停止。
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「……は?」
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「いや流れで」
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「流れで言うことじゃないです」
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「でもするならお前がいい」
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真っ直ぐだった。
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冗談みたいな空気なのに。
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目だけ、本気。
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真希が黙る。
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数秒。
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そして。
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「……断ったら?」
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「泣く」
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「俳優が?」
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「めちゃくちゃ泣く」
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「面倒くさいですね」
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「知ってる」
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少し笑う。
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真希も、小さく笑った。
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そして。
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「……考えておきます」
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「それ警察の保留回答みたい」
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「職業病です」
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二人で笑う。
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静かな夜。
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でも。
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もう孤独じゃなかった。
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後日。
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署内。
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「で?」
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若手署員が聞く。
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「結局付き合ってるんですか」
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真希が無言。
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そこへ。
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「俺の婚約者いじめんなよ」
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蓮登場。
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署内爆発。
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「こんっ……!」
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真希の顔が真っ赤になる。
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蓮、笑顔。
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その瞬間。
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遠くから。
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「神崎蓮ーーーーー!!!」
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朝比奈の怒声。
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「逃げろ」
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神戸署長、即判断。
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今日もまた、
蒼城中央警察署は平和ではなかった。
次の機会にお会いしましょう




