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離婚できないなんて…  作者: マーたん


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第三章:壊れた夜の続き

第三章を読んでいただきありがとうございます。


この章では、主人公と理奈の再会が本格的に描かれます。

そして、これまで曖昧だった“過去”が、少しずつ現実として浮かび上がってきます。


忘れたはずの夜。

終わったはずの関係。

それらが再び動き出すことで、主人公の逃げ場は確実に狭まっていきます。


さらに、妻・美咲にも変化の兆しが――。


物語の核心に触れ始める重要な章となります。

ぜひ最後までお楽しみください。

第三章:壊れた夜の続き


 店内は、三年前と何も変わっていなかった。


 薄暗い照明。

 静かに流れるジャズ。

 時間が止まったような空間。


 ただ一つ違うのは――


 そこにいる俺たちの関係だけだ。


「座りなよ」


 カウンター越しに、理奈が軽く顎で示す。


 俺は無言のまま、その隣の席に腰を下ろした。


 距離が近い。


 近すぎる。


 それだけで、過去が一気に蘇る。


「……で、何の用だ」


 なるべく感情を殺して言う。


 理奈はグラスを揺らしながら、くすりと笑った。


「相変わらずだね。余裕ない顔」


「無駄話するつもりはない」


「冷たいなぁ」


 そう言いながらも、その目は笑っていなかった。


 じっと、俺を観察している。


 昔と同じだ。


 人の奥を覗き込むような視線。


「結婚生活、うまくいってないんでしょ?」


 いきなり核心を突いてくる。


「……関係ないだろ」


「あるよ」


 即答だった。


「だって、それ私のせいでもあるし」


 心臓が、強く跳ねた。


「ふざけるな」


「ふざけてないよ」


 理奈はゆっくりとグラスを置いた。


 カラン、と氷が音を立てる。


「ねえ、あの夜のこと――忘れてないよね?」


 空気が凍った。


 その一言だけで、すべてが引きずり出される。


 忘れたことなんて、一度もない。


 忘れられるはずがない。


 * * *


 ――三年前。


 この店で、俺と理奈は再会した。


 偶然じゃない。


 あいつが仕組んだ“再会”だった。


 当時、俺はまだ結婚していなかった。

 美咲と付き合っていた頃だ。


 すべては、あの日から狂い始めた。


 酒を飲んで、言い争って、

 そして――


(やめろ……)


 思い出すな。


 あの先を。


 あの結末を。


 * * *


「思い出した?」


 理奈の声で、現実に引き戻される。


「……用件だけ言え」


 声がわずかに震えているのが、自分でも分かる。


 理奈は満足そうに微笑んだ。


「簡単だよ」


 一瞬の間。


 そして――


「私と、もう一度やり直そう?」


 耳を疑った。


「……は?」


「聞こえなかった?」


「正気か?」


「正気だよ」


 理奈は真っ直ぐに言い切った。


「だって私たち、あの夜で終わってないじゃん」


「終わってる」


「終わってない」


 即座に否定される。


「だってあなた、まだ“あれ”を抱えてるでしょ?」


 息が詰まる。


 言い返せない。


 それが、すべてを物語っていた。


「離婚できない理由」


 理奈が、ゆっくりとその言葉を口にする。


「私が知ってる理由」


 喉が乾く。


「……やめろ」


「どうして?」


「ここで話すことじゃない」


「じゃあどこならいいの?」


 理奈は少し身を乗り出す。


 距離が、さらに縮まる。


「ねえ」


 囁くような声。


「全部バラされたくなかったら、ちゃんと向き合おうよ」


 脅しだった。


 間違いなく。


 でも――


 それ以上に、確信している。


 この女は、本気だ。


「……何が望みだ」


「さっき言ったでしょ」


 理奈は笑う。


「やり直したいの」


「無理だ」


「じゃあ奥さんに言おうか?」


 その一言で、世界が止まった。


「あなたが何をしたのか」


「……っ!」


 拳を握る。


 歯を食いしばる。


 言えない。


 知られてはいけない。


 あの夜のことは――


「……分かった」


 気づけば、そう言っていた。


 理奈が満足そうに目を細める。


「話を聞くだけだ」


「うん、それでいいよ」


 嘘だ。


 そんなことで終わるはずがない。


 分かっているのに――


 もう引き返せないところまで来ている。


 * * *


 店を出たあと、夜風がやけに冷たく感じた。


 スマホが震える。


 画面を見る。


 ――美咲。


 しばらく見つめる。


 出るべきか。


 出ないべきか。


 そして――


 通話ボタンを押した。


「……もしもし」


『どこにいるの?』


 いつもの声。


 でも、どこか違う。


 静かすぎる。


「仕事だよ」


 また、嘘。


 その瞬間――


『嘘つかないで』


 背筋が凍った。


「……は?」


『今、どこ?』


 その声は、感情が抜け落ちていた。


 冷たい。


 ぞっとするほどに。


「なんで――」


『見えてるから』


 意味が分からない。


 けれど次の言葉で、すべてが崩れた。


『あなたのこと』


 通話が、切れた。


 夜の街の中で、俺は立ち尽くす。


 逃げ場は、どこにもなかった。

第三章を読んでくださり、ありがとうございます。


ついに「壊れた夜」というキーワードが明確に登場しました。

そして同時に、主人公が“離婚できない理由”の一端も見え始めています。


理奈はただの過去の人物ではなく、

主人公の弱みを握る存在として再び現れました。

その関係は、恋愛というよりも“縛り”に近いものです。


さらにラストでは、美咲の意味深な言動。

彼女は何を知っているのか。

それとも、すべてを把握しているのか。


ここから物語は、より逃げ場のない展開へと進んでいきます。


次章では、夫婦関係の裏側や、美咲の視点にも触れていく予定です。

引き続き読んでいただけると嬉しいです。


感想・評価もぜひお待ちしております。

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