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折に触れて廻る2  作者: 馬場 ヒロシ


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第22章 悲しみへの決別

恵美と由美の過去の関わりを知るべく高校に向かうヒロシだったが、そこには恐ろしい記憶が隠されていた。

紐解くことが苦しくなる。

そっと寄せ書きを裏返ししたヒロシだったが、そこに居た4人は驚愕した。

裏にはヒロシが書いた2行の文章・・

(今が幸せだった。愛は不滅だ。俺は追いかけて、いつか君をまた愛す)

だがその周りには幾つかの文面がビッシリと書かれていた。恐らく・・恵美が書いたものだった。

(真実をいつか分かって。・・私じゃない私がいる。・・あなたを心から愛す。この魂が消えても・・ヒロシ君をずっと見てるし愛する。僅かだったけど、私は一生分、幸せだった。・・もうどうやら限界。死が私に訪れる・・もうヒロシ君に会えない。後悔、無念、嫉妬・・怨念にならぬように・・もう一度抱きしめて欲しかった・・でも・・サヨナラね。ありがとうヒロシ・・私の愛する人)

みんなは大きさの違う文字を見ながら、恵美が既にこの世に存在しない・・そう感じ取った。

「・・これはいったい。ヒロシ君?」

サユリが心配そうにヒロシに話しかけた。

「恵美・・知らなかった」

「嵐山のやつ・・」

牛山もマコトも寄せ書きを見て驚きを隠せなかった。

「じゃあ・・私の親友はいつの間にか由美だったって事?あゝ!信じられない!」

牛山は高校時代に互いに笑って、映画を観たり爆笑しながら過ごした恵美が実は別人だった事にショックを受けていた。

「どうして?あそこまで完璧にできたの?あの子?信じられない!」

「じゃあ・・あの日ここに来て、泣いていたあの()は由美だった?俺も騙されたのか?」

マコトも気持ちが動揺したのだった。

「確かに・・2人には相違があったわ」

サユリが言い始めた。

「私が嵐山をマネージャーにと誘ったわ。その際に都内の喫茶店に何故か2人で来たのよ・・そっくりだと思ったけど・・実際に事務所に来たのは、恐らく嵐山恵美じゃなかったわ。私が知っている嵐山は秋祭りでヒロシ君の側を一時も離れず、優しい笑顔で癒やしていたわ。・・あゝごめん!盗み見するつもりじゃ無かったけど、荷物を取りに家に帰った時で、偶然に見かけたわ。・・嵐山はとても華麗だった。おとなしく、真面目で笑顔が優しく、誰もが好きになる美人だった。・・でも、事務所に来た彼女は少しガサツで、怒りっぽいし、どこか・・追われるような感じがした」

「だけど・・彼女はHiroshi Taniのことを熟知していたし、同じ大学に入学することも教えてくれた・・ここまで詳しいのだから・・嵐山恵美だと思ったわ」

ヒロシはみんなの話し声が聞こえぬほど落胆していた。

何度も次元を超越して、初恋の相手である恵美を救ったり、救われたり・・と全てを賭けて向き合ってきた。それが・・別人とは。

しかしヒロシはもっと重要なことを思い出した。

1981年の夏休み・・

あの日は妙に蒸し暑い日であった。

「ヒロシ、今日も図書館か?」

家にマコトから連絡がはいった。

「うん。こんな暑い日は市営図書館が一番だよな。冷房効いてるしそれに目の前には中華食堂まであるから、一石二鳥だよ」

夏休みのヒロシは日中は暑い家を避け、涼しい図書館で勉強をし、夕方からスーパーの荷出しのアルバイトをしていた。

「あっ、そう言えば嵐山だけど昨日、妙な所で見たぜ」

「・・どこで?」

「千葉敬徳会だよ」

「敬徳会って、研究所だよな。就活かな?」

ヒロシは少し気になったが、いつもの様に図書館に向かうのだった。

涼しい中勉強していたヒロシの所に、牛山と恵美がやって来た。

「ヒロシ!相変わらずだね。勉強一筋だね」

「まあ・・他にやる事もないし、誰かのせいで恋もできないしね・・」

「それって・・何気に遠回しに・・私に言ってる?」

恵美が少しヒロシを睨んだ。

「・・気にしないで。今は恋愛よりも受験だから。それに俺はまたいつか・・恋愛するだろうしね!」

昨年の2月に友達として再スタートし、会話はしていたが、どこかぎこちないヒロシと恵美であった。

「あゝ、そう言えば昨日は敬徳会で何やっていたんだ?就活か?」

牛山は他の生徒と会話しており、ヒロシと恵美の2人の会話だった。

「あゝ・・見られたのね。隠すつもりはないけど、双子の姉の由美が・・重い病気で。研究所といっても病院だから・・定期的に私が付き添って行ってるの」

「由美さん、そんなに悪いの?」

「・・言い難いんだけど、血液の癌・・先天性白血病なの・・中学の時に発症して、高校にもあまり通えてないわ・・」

「ああ・・ごめん。余計なこと聞いたね。良くなることを祈るよ・・由美さんによろしく言って」


ヒロシはこの会話を思い出した・・

「・・入院して治療を受けていたのは、由美さんではなかった・・恵美だった。俺はそんなことを今更に気づくなんて・・どんだけアホなんだ!一度も・・お見舞いにも行かなかった・・手を握る事も笑いかける事もしなかった・・バカすぎだよ!」

ヒロシは自分の髪を掻きむしり、床に膝をついた。

「ヒロシ君・・君が悪いわけじゃないわ・・騙して改名したい由美さんが悪いの・・自分を責めないで」

サユリは優しくヒロシを抱きしめ言うのであった。

「そうよ・・ヒロシ!由美が悪いわ!純粋なあなたを今日まで騙していたんだから・・」

「・・そうじゃないんだ・・情けないんだ。俺が、由美さんを絶対的に恵美と信じて、恋していた。寸分の疑いもなく恋していた・・それが情けない・・」

ヒロシには2人の違いを分かっているつもりだったが、結局は背丈も顔もスタイルも瓜二つの由美を恵美と感じていたのだった。

「終わったよ・・全て・・俺の全てを賭けてやってきたことは無駄であった・・あゝ、疲れた」

ヒロシはそう言い校舎を出て、ふらふらと歩き始めた。

(俺が、中学の時にイジメを受け苦しい時に、声をかけて、雨の日に俺の髪をそっとタオルで拭いてくれた・・中学卒業の時に<谷君は洋楽好きなの?私は全然わからないけど・・なんか凄いね>そう言ってくれた。高校に受かった時にも<やったね!同じ高校なんだね!よろしくね!>そう言って握手をしたての温もり・・初めてキスした時に<なんか・・変な味がする>って言って真っ赤になった時・・卒業後にバス停で会って、俺を今でも好きだと言ってくれたこと。結婚して、たくさんの幸せを互いに共有したこと・・君が消え、次元を再び超え探し回った・・全部・・恵美じゃなく由美を追っていたのか?とにかく情けない・・区別がつかなかったなんて、恵美を愛する資格なんて元々無かったんだよ)

衝撃の出来事と過去の事実に、ヒロシの心は打ち砕かれ、周囲が見えなくなってしまった。


その晩・・ヒロシとサユリは自宅に戻り、黙ったまま寝るのであった。

(ヒロシ君・・相当のショックを受けたのね。いったい由美はどうしようとしたのよ!ヒロシに今更、真実を言ってヒロシを惑わしたかったわけ?)

2人は裸になり抱き合ったが、ヒロシの心は空っぽであり、サユリを抱く気力もなかった。

それからというもの、ヒロシは何かが乗り移った様に廃人化していった。

レコーディングはしていたが、曲自体の編成が組めず、サユリはかなりの痛手だったが、ヒロシを支え続けた。

夜も眠れぬ様で、大量の睡眠薬や深酒をするようになった。

「ヒロシ君・・ヒロシ君?聞いてる?」

「ああ・・聞いてるよ」

「・・どうしちゃったのよ?天下のHiroshi Taniはどこにいっちゃったんですか?君のリフや、天才的な歌詞はどこに行ってしまったの?」

「・・少し黙っていてくれないか」

ヒロシにはすでに新たな歌を作る事も、“風はるか”ともセッションをできるほどの気力がなかった・・

自分が散々言い続けた愛する恵美は、とっくの昔に死んでおり、何度も時代を過ごした彼女は違う人物であった・・そのことは今更どうでも良かった。

ヒロシにとって何度も繰り返されたタイムリープに、何も意味が無かった・・そう思うと、あのまま路上で息絶えるべきだった・・そう思えて仕方がなかった。

最初の女房も、朱音も・・エミリも、最初からこうなり自分が気づく事を分かっていたんじゃないか?そう思うと、自我が許せなかった。

許せない・・と言うより、無駄であった・・

そう思うのであった。

生きる力は失せ、只々、時間だけが過ぎていく・・それこそが最後の自分の人生だったと思えたのだった。

そもそもだが、自分が過去に戻りたかったのは、堕落した自分を取り戻す為だったはず・・だが、毎回のように女性絡みで事件が発生して人生を(こじ)らせたのだった。心の底にあった恵美とのことが、どうにも気掛かりであり、その後の生き方を歪まさせた・・そう勝手に思っていた。堕落した60の自分に終止符を打つ時すら、恵美を想い出して涙が出たくらいだ。

堕落イコール初恋の失敗と心に刷り込んでいた。


それから3ケ月が過ぎ、“風はるか”は休止状態になった。無論、Hiroshi Taniが原因だった。

新譜も作らず、サユリとの活動も休止状態であった。

それでもサユリはヒロシを信じて、決して離れずただ待ち続けた。

(この人はきっと立ち上がる。こんな事でダメになる人ではない・・きっかけが欲しい。目を覚ます特効薬・・無ければ私が特効薬にならないと)

そんな折にある人物がヒロシを訪ねてきた。

それは驚くべく恵美と由美の父親だった。

「やあ・・久しぶりだね、谷君」

「あゝ、ご無沙汰しています」

「あの子の友人の牛山さんに聞いたんだ。君が恵美のことでかなり落ち込んでいると・・」

「・・あいつ。余計な事を。・・まあ元気は無いですけど、大丈夫ですよ。それに音楽活動もしてますので」

「・・嘘ばっかり。この人、最近は全然サボってるんです。心配です」

サユリはそう心配そうに話すのであった。

「谷君・・恵美のことで落ち込み・・奥さんに心配なように俺がきたんだよ。・・恵美は確かに死んだよ。俺は由美を改名させて、恵美として生かせた。君には気持ちはわからないと思うけど、俺たち夫婦にとって由美も大切な娘だ。

良かった・・優しい人と結婚できたからね。それ以外は望まないよ」

「恵美のお父さん?何を言いたいんですか?恵美が亡くなった事も、由美さんが幸せを掴んだ事も分かってますし、知っていますよ。わざわざ来てくれたには、別の話があるんでは?」

「ハハハ・・さすがだね。君は感も鋭いが、六感も鋭い・・」

「今から話すことは君にとってかなりショックで、君を傷つけるだろう・・俺はね、この事を君に話す為に長年待っていたんだ。恵美が・・俺をそうさせたかもしれない」

「どう言う事ですか?今更・・彼女について僕に伝えることがあるんですか?」

ヒロシは、最後の恵美の話をしっかり聞きたかった。

自分が信じて揺るがなかった事実が歪んでいたことに、ある意味決着を付けたかった。


「あれは・・1981年4月だった。由美と恵美は新学期の準備をしていて、新しい制服のチェックに忙しかった。でも、ある朝に恵美は鼻から血を流して家で倒れた・・俺は気付いていたが、意外と早くその時がきたんだ。・・恵美は1980年の11月に白血病と診断され、翌年の1月から3月まで厳しい治療を受けた。やっと・・学校にも行けるところまで来ていたけど、恵美には分かっていたんだと思う・・自分の体だから

残り少ないと・・緊急入院させて容態は安定したけど、そのまま意識が戻らなくなった。医師からはこのままでは、植物状態になる・・そう言われたんだ。尊厳死も考えたが、できなかったよ。大事な娘を殺すことはできなかった」

「じゃあ・・そのまま逝ってしまったんですか?」

サユリは言葉を選び聞いた。

「・・いいや。・・まだ生きている。植物状態でこの7年間眠ったままだ。・・家族だけが知っている」

ヒロシは青ざめ言うのであった。

「そ・・そんな・・恵美が生きている?どうして黙っていたんですか?どうして・・」

「君が・・いや君を自由にしたかったんだよ恵美は。自分の病気を知ったら、ずっと側で看病して、大学も諦めてしまうだろう・・そう恵美は思ったんだ。だから・・君には辛かったと思うが、付き合いを辞めたんだ。・・だが苦しい治療に耐えて3月に高校に戻った際に、最期に君と一緒にいたい・・そう恵美の心の苦しさが言葉となって、もう一度付き合いたい・・そう吐露させたんだろう。・・君から友達から始めよう!って言われたと俺に笑顔で報告してくれたよ。それが引き金となった。それから10日後に恵美が倒れた。

俺は・・恵美の顔を見ながら考えたんだ。恵美を生かすには、由美に託すしかないと。

恵美が元気な頃に言っていたんだ。自分と似た由美が可哀想だと。いつも比較されてきたから、素行も荒れ、悪い事も覚え精神的にも可哀想だと。由美は決して悪い子でないが、頭が良くて、誰にでも心を開く明るい恵美と比較されて生きてきたんだ。

だから自分に何かあったら、名前を逆にして欲しい・・と笑って言っていたんだ。

俺は悪いこととは分かっていたが、市役所に頼み込んで名前を改名させた。1981年8月に届出が受理され、嵐山由美は恵美になった。恵美は・・病院で過ごす病気の由美になった。

だから・・あの年の8月以降に君が会っていたのは、恵美ではなく由美だよ」

ヒロシが混乱するのは承知で恵美の父親は話をしたが、ヒロシは大きな衝撃とは感じず、表情の変化も少なかった。

「・・理解できます。親であれば、苦肉の選択だったでしょう。寝たきりの娘も愛おしい・・でも今を生きる娘も大事だと思います。由美さんが真面目になり、高校にも休みなく来れたのも、いいことだったでしょう。それに・・結婚もして、お孫さんまで出産したし・・親として喜ばしい。

だけど・・本当の恵美の尊厳は失われたんですね。病気になって、眠っている間に失われたんですね・・可哀想に・・まあ、死んだようなものだから仕方がないですか!心苦しいから僕に話すんですか!話をして、お父さんの心の痼りをなくしたかったんですか!」

サユリは慌ててヒロシの体を押さえた。

「やめなよ!ヒロシ君!お父さんだって苦しかったんだから。理解するべきよ!」

ヒロシは振り上げた握り拳を下ろし、悔しい心のうちを吐露した。

「僕は由美さんから、付き合うきっかけを作ったのは自分だと聞きました。でも・・今はっきりと分かりました。僕の歌を聴いてくれたのも、次の日にメモを僕にくれたのも、教室でにっこりと笑う姿も、一緒にジャムパン食べたのも、秋祭りに行ったのも全て・・恵美だったと。自分が初めて好きになった人物が由美さんだと勘違いして、このところ死人のようであったのが恥ずかしいです!本当に信じてあげれなかった自分が許せないんです」

サユリはヒロシの手を取り「仕方がないわ。あの人の話術があまりにもヒロシ君の、盲点をついていたんだから・・素直で正直な証よ」

そう(なだ)め落ち着かせたのだった。


ヒロシとサユリは次の日に恵美が入院している病院に行き、特別に面会をするのだった。

そこには真っ白なベッドに真っ白な厚手のシーツを被せられた、恵美がまるであの時と同じように眠っていた。

数々の医療機器が周囲にあり、万が一の準備がされていた。

「さあ、入って、あの子に会ってやってください」

恵美の母親が優しくヒロシの手を引き病室に入れた。

「もう6年・・この子はこの状態で、私が面倒を見てるの。目も開かず、口も聞かず・・ただ栄養を薬で摂っているだけで・・ウウ・・」

ヒロシは久しぶりに会う恵美に涙が止まらなかった。

「・・恵美・・うっうっ・・」

「母親はヒロシを残して病室から、サユリを連れて出たのであった。

「この子にたくさんの話をしてあげて・・きっと谷君に会いたかったはずだから・・」そう告げた。

病室に残されたヒロシはゆっくりと恵美の手を握った。

「・・暖かい・・生きてるんだね。恵美・・俺・・ダメなやつだよな。君がここに居たなんて全然知らなかったよ・・1981年の8月に由美さんに言われたことをもっと気にすれば良かった。そうしたら・・俺の無謀なタイムリープはなかったよ。君のせいにして、勝手にバカな人生を進んだよ。歳をとって気付いたんだ。あの17歳の自分に戻ってやり直したいと・・それから何度も人生を廻って・・でも答えはなかったんだ。答えはここにあったみたいだ」

ヒロシを涙を流して、恵美の手に柔らかく口付けをしたのだった。

「はーっ!もういいよ・・これで全部分かった。俺の人生で見つけられなかったものは、今ここにあるから・・十分に分かったよ。今までごめん!」

ヒロシはこの長い旅の終着を気づいた。

それはヒロシが我武者羅だった頃も、賭け事に借金地獄に、浮気や暴言に深酒とアル中・・全てが自分の初恋が成就しなかった事が理由でなく、自分の心の片隅に居続ける恵美に会いたい一心だった。

偶像の世界では何度も会ったが・・それは本物ではなかった。用意されていたステージに過ぎない・・この事実こそが本物だったと。

ヒロシはゆっくりと立ち上がると、意を決したように言うのであった。

「・・ありがとう恵美!俺は分かったよ。この繰り返された偶像の世界が、無意味だったと。だからね。もう悔いは無くなった。・・これから俺は俺の元いた場所に帰るよ。それが・・一番いい」

ヒロシは12階のベランダに出ようと歩き出した。

だが・・

その時だった・・

「ヒ・ロ・シ・・」

確かに聞こえた・・

ヒロシは窓を閉め恵美を見たのだった。

眠っていた恵美はゆっくりと目を開けて、天井を見つめ一粒の涙を流した。

ヒロシは驚き「恵美!恵美!分かるか?俺だ!」

そう言い恵美の手を握ったのだった。

「ヒロシ・・君」

ヒロシは急ぎで医師や両親を呼ぼうとしたが、恵美は手を外さず、ヒロシに椅子に座るように目で合図をした。

「・・今は何年の何月?なの?」

「・・うう・・89年の8月だよ・・いいから喋るな」

「・・そう?89年か・・もう26歳なのね・・歳とったわね・・」

「ちょっと待ってろ!みんなを呼んでくるから!」

そう言いヒロシは表にいる両親と担当医を呼んだ。

「・・奇跡だ!こんなことあるはず無い・・」

医師は恵美が目覚めた事に驚きを隠せなかった。

「恵美!恵美・・我が娘よ!良く頑張ってくれた・・」

「お父さん、お母さん・・ごめんね。年取ったわね。私のせいで・・それにありがとう!」

「嵐山!久しぶり・・私が分かる?」

「あゝ・・岡サユリさんだよね・・相変わらず美人ね。驚きだわ・・」

「うん!良かった・・目が覚めて」

母親は恵美のベッドをそっと起こし言うのであった。

「この人は今は有名な歌手だよ。アイドルから今はミュージシャンですよ・・」

「じゃあ・・岡さんは・・夢を叶えたんだ。良かったわね。・・じゃ・・Hiroshi Taniとの夢も?」

「うん!そ・・うううう!」

ヒロシはサユリの口を塞ぎ慌てて言うのであった。

「急にあまり会話はしない方が良いよ!ゆっくり・・ねえ!ゆっくり・・進もう。ね!恵美」

「うふふ・・ヒロシ君、何?赤くなってるの?・・でもそうね・・ちょっと疲れたわ・・」

そう言うと母親がベッドを戻し、担当医を入れて会話したのだった。

「じゃあ!俺は一旦帰るから・・明日、もう一度来るね!無理するなよ!じゃあ明日ね!」

そ言うとサユリの手を引き病室を出ていった。

恵美はクスッと笑い手を振った。

病院の外に出た2人だったが、険悪な雰囲気になっていた。

「何よ!ヒロシ!彼女が目覚めたからって!鼻の下を伸ばしすぎよ!まったく!」

「そ・・そんな事ないよ!まだ意識が奇跡的に戻っただけで、あまり騒がない方が良いかと思って・・」

「あら?そう?・・だったらなぜ私の話を(さえぎ)るのよ!言ったらまずい!」

「あの場でショックはダメだよ。俺と君が夫婦だなんて言ったら、ショックかもしれないだろう?」

「そうかしら?早目に伝えるべきじゃない?変な期待を持ったら・・それこそ落ち込むんじゃ?」

それもそうだと思うヒロシだったが、気持ちは一気に晴れ、今までの悩みや痼りが取れるようだった。




続く



恵美が奇跡的に6年ぶりに目を覚まして、ヒロシとの関係はどうなっていくか?

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