第23章 2人の幸せ
恵美の奇跡的な目覚めはまるでヒロシを待っていたかのようであった。
ヒロシにとって、サユリが今の伴侶であり愛することで、恵美を友として迎え入れた。
だが、ヒロシとサユリの生活に曇りも生じた。
恵美が死の淵から奇跡的に目覚め、ヒロシはしばし停滞していた曲作りを再開して、急ピッチで楽曲作成をするのだった。
気持ちの変化からか?曲調がメジャーコードを中心とした、妙に明るいイメージの曲が作られていった。
サユリは思うのであった。
(ほんとう・・ヒロシ君ってまさに正直そのものね・・作った曲がヒロシ君の今の心を表してるわ。これは早目に手を打たないとね・・手遅れになる前に)
仕事の暇をみてはヒロシは恵美の病室に顔を出していた。ただ彼女の身体を心配して毎回、面会はジャスト30分としていた。彼女の体が万全ではなかったからだ。
「ねえ・・ヒロシ君?高校の学祭の時に歌ったあの歌ね・・今思い出してもかなりの駄作だったわね(笑)。いくらなんでも・・あの歌詞はないわ!」
「えっ!?どこがだよ。いい歌詞だったと思うよ!」
「だって・・恵まれた美しい娘 嵐の如く山に吹く疾風に・・それって私の名前じゃない?かなり恥ずかし過ぎたわ。下向いて聞いてたわよ・・茜雲みたいに、誰も気づかない2人だけが分かるキーワードみたいなこと・・考えつかなかったの?今思い出しても恥ずかしいわ」
「あれは・・さ・・付き合ってまだひと月だっただろう?だから、こう・・なんて言うか?強調したくて・・俺の彼女だって!自慢したかったし、宣言みたいなもの。・・別にいいじゃん!昔のことだから・・あはははっ!」
「まったくヒロシ君たら!うふふ・・」
和かに互いに笑い、長い年月でできた溝を埋めるように、2人の関係性が近づく気配があった。だが会話に夢中になり時間が経つのを忘れると、ピピっピピっと時計が鳴り、30分経過を知らせた。
「ヒロシ君また来てね!・・本当は・・ハグして欲しいけど。ヒロシ君も感染症・・ダメなの知ってるわよね・・残念」
ヒロシはいつものように手の甲に優しくキスして
「いいんだ。君が元気ならまた会えるし。ああ・・また来るよ。風邪・・ひくなよ。じゃあ」
そう言い病室を出るのであった。
たったこの30分がヒロシと恵美には幸せであった。
決して再び結ばれる2人ではないが、今はこのままで良いと思っていたのだった。
そんなある日の朝だった。
サユリが珍しく朝食を準備して、食事をしながら話しかけてきた。
「ヒロシ君・・お願いがあるんだけど?」
「何?改まって」
「今日の打合せなんだけど、私の代わりに行ってくれる?大阪だけど・・」
「ああ・・まあ良いけど・・今日はこの後は病院に行くだけだから」
「ごめんね・・お父さんが急に会いたいって言うんだ。それに実家にも暫く帰ってないから、行こうかと思うの」
「うん!いいよ。行って来なよ。お父さんもひとり娘で心配あるんじゃない・・」
「ごめんね。遅くなるけど、夜には帰ってくるから、一緒にご飯食べよう!」
「うん分かった」
そんな会話からヒロシはサユリの代理で、“風はるか”ウインターフェスの楽曲打合せに大阪に日帰りで向かうのだった。
「もうひと月しかありませんので、曲順はこれで如何ですか?流れを作れると思うんですけど?」
「谷さん、いいんんだけど・・少し言い難いですが、彼女のアイドル時代の曲も1曲くらい入れたらどうか?と思うんです。そうすれば集まったお客様も懐かしく思えるんでは?そう思うんです」
「なるほど・・それも一理ありますね。・・じゃあ、1曲入れますが・・僕が少しアレンジ入れてもいいですか?そのままだと彼女が嫌がると思うので」
「あゝ!それもそうですね。それなら懐かしさと新しさもあって斬新でいいかも!です」
3時間程の打合せを終え、新大阪駅に向かいお土産を購入して東京に帰るヒロシであった。
まだのぞみ号が無く、3時間ちょっとの移動であった。
家に着く頃には、夜の10時過ぎになっていた。
既にサユリは家に戻っており、夕飯を準備していた。
「ただいま・・」「あゝ、おかえりなさい」
「・・ほんと今日は珍しいな。朝食といい、夕飯まで準備し作るの」
「私だって一応は女性ですから、これくらいは出来ますよ。珍しくなんかないですわ!・・で、打合せはどうだった?」
「あゝ、うまくいったよ!曲はアンコール入れて12曲・・で曲順も決めて来た。・・まあ、一つ問題があったけどね」
「えっ!何?当日の衣装とか?・・確かに最近ちょっと太ったかな?ダイエットしなきゃ」
「違うよ!(笑)、12曲の楽曲中に君がアイドル時代に歌っていた曲を入れるんだ。無論、君が嫌がると思ったから、俺がアレンジを加えるよ!」
「なあーんだ。良かった。それなら問題ないわね」
「君の方はどうだった。お父さんとお母さん元気だった?本来なら俺も行くべきだったよな?」
「あゝ、いつもの事だけど、早く子供作りなさいって・・まだまだ若いのに。二十代半ばだし、ゆっくりねって言っておいたわ」
「そっか。ご両親が元気なら良かった。あゝ、それとこれ大阪のお土産・・たこ焼き煎餅」
ヒロシはこの自然な会話や、笑いあえる関係に感謝した。既に恵美とは一緒になれずとも、彼女が早く元気になって生き続けてくれることを望んだ。
ヒロシには過去のような欲望は無く、サユリとの人生を歩んでいくと決意し、恵美はあくまでも友人として彼女の支えになりたいと考えた。
12月に行われたウインターフェスは無事に終了し、サユリは多くの“風はるか”ファンを魅了した。
フェスの終了後に2人はホテルにいた。
「あゝ!疲れたね!ヒロシ君、あそこで音・・外したでしょ!微妙に半音ずれてた」
「おおっ!気付いた?・・さすがだね。外したんじゃないんだ。態と半音下げたんだ」
「えっ!うそ〜ん?そんな筈ないわ。間違えよ!」
「・・ラスト2曲で君の声は限界だったよ。最後の高音のビブラート・・半音外れるって気付いたんだ。それでオリジナルのように下げた・・」
「相変わらず、深いわね?・・」
ヒロシは当日の後半からキーボード演奏でフェスに参加した。通常はコンサート等には絶対に参加しないが、ファン感謝デーでもある、“風はるか”ファスに演者として加った。
「でも・・やっぱり夫婦出演っていいわね!みんなから祝福受けてるみたいで」
「・・そうかな?ファンは“風はるか”を聴きたくて来てるんだから、俺の参加はちょっと違うだろう?」
ヒロシにとって彼女のフェスは裏方であり、全体のまとめ役であったので、そのように答えた。
ヒロシは音楽で食べていけるだけで満足であり、“風はるか”と一緒にいられることが何よりだった。
笑いながら話していた2人だが、サユリが急に真剣な眼差しで聞いてきた。
「ヒロシ君・・君にとって?私って・・何?」
「急にどうしたんだよ!神妙な面持ちで聴くなんて」
「君と結婚して2年・・音楽は最高だし、背が高くて日本人離れの顔とルックスで、私に優しいし・・愛してくれてる。でも・・何故か。何故かだけど、遠くに感じる時あるんだ。かなり前から一緒に生きてたけど、偶に・・ごく偶にだけど・・ヒロシが遠く感じる時あるの。・・それって私の考えすぎ?なのかな」
「なんかあったのか?」
「ヒロシは私が芸能人だから結婚した?それともお金に困らないと思った?・・だから?」
ヒロシには理解できていた。
誤魔化してはいるが、ごく偶に・・恵美を想ってしまう・・必然のように彼女を欲する時がある。
サユリへの愛は確かだが、確かだと思うほど、苦しくなることがあった。
それは僅かだが、サユリへの猜疑心があり、彼女がたまに起こす恵美に対する態度で分かっていた。
「何を言うんだよ。俺は君が好きだから結婚したんだ。それに偽善ならとっくに離婚してるんじゃ?」
「まあ・・そうだけど・・ああ、ごめん!今の忘れて!忙しかったから、つい愚痴が出たわ!ごめん」
そう言うと今度は、急にヒロシの手を取り、左右に動かし甘えるように言うサユリだった。
「ヒロシ君・・明日だけど、ショッピングに行こう!春服が買いたいわ」
「良いけど・・どこに行く?デパートそれとも専門店?どこでも良いけどさ・・」
「春服買って・・映画観て・・レストランで夕飯食べよ!久しぶりに羽伸ばしたいわ。いいでしょ?」
ヒロシは久しぶりに恵美の病院に行くことにしていたが、サユリは何かを察知したように、朝から晩までのスケジュールを埋めつくしたのだった。
「・・いいけど、余りはしゃぎ過ぎはよそう・・大イベントが終わったところだから・・」
「うん!で、いいでしょ!明日はヒロシとずっと一緒にいたいの!・・それとも何か用事があるの?」
「・・別にないよ。・・ふー・・あゝ!分かった。明日はそうしよう!朝早く起きて、出かけよう!」
「うん!ありがとう!・・でもね、その前にいいことしよ!もうしばしご無沙汰ですよ・・君の身体を忘れちゃうわよ!さあ・・」
その夜2人は久しぶりに遅くまで愛し合った。
ヒロシには理解できたようでできなかった。
サユリは普段はミュージシャンであり、多くの客に自分の歌を聞かせて、ステージ上で凛としている。
だが自宅のベッドではまるで別人であった。
ギャップだと思ったが、歌と違い妙に嫌らしく悶える様が、本当に“風はるか”本人なのか?と思ってしまうのだった。
結婚して女房となれば、皆がそうなのだろうか?と・・描いていた結婚生活にギャップがあった。
次の朝・・2人は朝早くホテルをチェックアウトし、
レストランで朝食を軽くとった後に、デパートに出かけ多々買い物をした。
その後ロッカーに買ったものを預け、映画館に向かい洋画を2本ほど観るのであった。
ちょうどBACK TO THE FUTURE Part IIIがやっていた。
ヒロシには何度目?と思うほど観ていたが、サユリにとっては初めてだった。
「ねえ・・マーティ・・撃たれちゃうの?」
「ああ・・大丈夫・・だ。防弾チョッキを身に付けるから・・心配無し」
映像では、ビフが撃った弾がマーティの胸に当たり、マーティは地面に倒れた・・だが。ご存知の通りだった。
「えー・・なんで分かったの?すご〜い」
ヒロシは冷や汗をかきながら・・「まずい」
そう思うのであった。
映画が終わる頃には夕方6時過ぎであった。
「お腹空いたねヒロシ君・・何食べる?」
「何でもいいけど、今日はラーメンがいいな」
「えー!ラーメン?お肉とかじゃなく?」
「たまにラーメンが無性に食いたい時あるんだ。学生の頃はお金もなくて、インスタントラーメンばっかり食ってたよ!それが妙に懐かしいし、貧乏だった頃を忘れちゃいけないと思うから・・」
「ヘー・・うん、分かったわ!・・じゃあ!あそこの古びた中華屋に行こう!ね!」
2人は自宅マンションの近くの古びた中華屋に初めて行くのであった。
「えっと何にする?俺は味噌バターにするけど」
「・・う〜。・・じゃあ私も」
「すみません!味噌バター2つお願いします!」
2人はラーメンが来るまで今日デパートで買った靴を覗き込んでいた。
「・・ねえねえ・・あの人・・“風はるか”かじゃない?ヘー・・こんな店に来るんだ!・・」
近くにいた親子がそんなヒソヒソ話をしていたが、2人には丸聞こえだった。
それを聞きサユリは誤魔化すことせず、堂々と親子に向かって言うのであった。
「今日はOFF!・・オフですから。私も普通の人間なのでラーメンだって食べるのよ!しかもですね今夜は私の旦那さんと・・」
「あゝ!Hiroshi Tani!すごー!格好いいんだ!」
「いい男でしょ?私の自慢の旦那さんですからね!」
「おい!サユリ辞めなよ!又週刊誌に書かれるぞ!」
「いいの、いいの・・私にだって自由が必要よ」
サユリは被っていたキャップを取ると、長いサラサラの髪を背中に流し、親子をそっと見たのだった。
「か・・可愛い・・」
思わず親子の息子の方が口から洩らした。
やはりスターは違うと思うヒロシだった。長く一緒にいると忘れてしまうが、“風はるか”はやはり有名なスター歌手・・慣れはしたが、アイドル歌手時代とは打って変わり、清純さは失せ、大人の女性に変わった。
それが妙に色気があり、ファンには堪らずミュージシャン“風はるか”も大人気であった。
ヒロシとサユリはラーメンが来るまで、瓶ビールをコップに注ぎ飲むのであった。
「ねえ?ヒロシ君は初体験は私じゃないでしょ?」
「っぷ・・公衆の面前で過激な話はやめろよ・・」
「うー・・気になる!気になる!」
「・・そうだと言ったら気が済む?」
「えっ!やっぱり・・嵐山とね?・・とほほ・・」
「で!どうだった?彼女は良かった?」
「・・・・」
「NOコメントなの?」
「・・そんなこと比べるものではないよ。女性との行為で良し悪しなんて・・前にも・・確かに同じことが・・」
「前って?」
ヒロシは過去に恵美から、朱音との夫婦生活を聞かれ、つい余計なことを言って激怒された経験があった。(同じこと・・言ったな。デジャブか?)
やはり・・廻っている。そう思うヒロシだった。
「いいから!この話はおしまい!次の曲の話をしよう!そっちがいい・・」
「それこそ、この場ではまずいじゃない?堂々と公衆の面前で!」
2人はモゾモゾしながら、小声でそんな会話を続けていた。
「はい!おまちどうさま!味噌2つです!」
ラーメンが運ばれて2人はラーメンを啜りながら、くだらない話を続けていたが急に、サユリが言い始めた。
「ヒロシ君は嵐山が生きてることを知らなかったのに、ずっと彼女を想っていたのには理由があるの?」
「あるよ・・俺にはトラウマだった。高校時代に付き合ったけど別れて・・別れ際に彼女に言われたんだ。(別れよ・・ヒロシ君がタイプじゃないの。もう辞めよ)・・その言葉が無性に悔しくて、悲しくて・・高校卒業までは悔しさが勝っていたんだ。だけど・・有名大学に受かり、講義についていけなくなって自主退学し挫折を味わって・・、そんな時に恵美に手紙を書いていた・・心のどこかで、想い続けている自分がいたんだ。でも・・笑っちゃうよね。手紙を読んでいたのも、君のマネージャーになって近くに居たのも・・恵美じゃなく由美さんだったわけだから。病床の恵美に会った時、すぐに気付いたんだ。自分の不甲斐なさを。思い込みで由美さんを恵美と信じきって、馬鹿だよな・・どこか違うと分かっていたはずなのに、気持が高揚して彼女が初恋の相手だと脳が思っていたよ」
ヒロシには廻る人生と度重なるリセットは、新たに恵美と生きていけるチャンスだと・・神がくれた施しだと思っていた。
だが最後の最期で実際の恵美に会うことで、やはり・・2人には結ばれる赤い糸は無かったと気付いた。
「君は今も彼女を想っているの?」
「ううん・・」
「・・よく病院に行くでしょ?」
「俺にとって恵美は既に恋愛対象じゃないさ。過去の産物だよ。蘇ってくれたこと神に感謝している。これからはいい友達として見守ってあげたいだけ」
「だから由美さんが俺との付き合いには無関係だったことに安心したよ。それに・・俺が彼女を傷つけたことも事実だし・・」
(ん・・待てよ。俺が過去に恵美を救い出したことも、恵美が俺を救ってくれたのも・・恵美では無かった?そうなのか?愛した彼女は?結婚して子供を授かったのも・・恵美ではなく、由美さんだったのか?だったら、俺は相当にアホだな!本当に好きな人がわからなくなっていたんだから・・最低)
「今・・変なこと想像してるでしょう?・・分かるよ!由美さんって巧みだよね。信じさせる天才だよ。私だって、変とは思いながら、恵美さんだと思っていたわ。・・目的は何だったんだろ?ねえ!」
「分からないよ。でも・・少なからず俺を愛してくれたことは確かだった。偽りや偽善だったかもしれないけどね。本気だった・・」
ヒロシは過去のバス停での出来事や、朱音に裏切られ苦しんだこと・・結婚してニューヨークまで新婚旅行したこと・・朱音の復讐に合い失ったことなど、想い出すと涙が溢れた。
「あゝ・・深いわね。2人の関係って・・でもね、今が幸せだからいいよね!ね!そうでしょ?」
「もちろんだよ。サユリに会って恋をして、俺はかけがえにない伴侶に出会えた。それで十分だ」
ヒロシにとって恵美は過去であった。それは今、病院のベッドに居る恵美ではなく、ほとんどが由美であった過去に、ある程度の裏切り感があったからかもしれない・・
「そうね。私も君に会えて最高だし、過去のことも気にしないわ」
2人は和かに笑って見つめ合った。
それから半月後・・2人はレコーディングに追われ、時間だけが過ぎる日々を過ごしていたのだった。
気が付けば恵美とはふた月以上も会っていなかったのであった。
「ふー・・やっと終わったな。ご苦労さま!・・喉は大丈夫?少し酷使したからな。帰って休んで」
「ふあ〜・・眠い。先に帰るけどヒロシ君は大丈夫?早く帰ってきてよね!」
「うん!大丈夫。後は片付けくらいだから・・」
サユリはタクシーで家に帰って行った。
ヒロシは楽器や音響設備をきちっとまとめて、床をモップ掛けしていた。
その時だった。
「ちょっとだけ失礼していいかな?」
ヒロシは突然の訪問者に驚いた。訪ねてきたのは恵美と由美の父親だった。
「ああ恵美のお父さん!」
「急に悪いね。お邪魔だったかな?」
「いいえ!大丈夫です。片付けていただけですから」
「良かった・・」
「突然、どうしたんですか?」
恵美の父親は神妙な表情で言うのであった。
「・・恵美が・・恵美が・・」
「彼女がどうかしたんですか?」
「・・・・突然だが、居なくなったんだ」
「えっ!どう言うことですか?」
「実は、先週退院したんだ。癌の兆候もなくなり、完璧ではないが良くなって、自宅に戻ったんだ。女房も喜んで暫くは、数年ぶりに恵美との過ごす日々に感謝したよ。だが・・一昨日に1通の手紙を置いて消えたんだよ。意味わからなくて。もしかして・・そう思ってここに来たんだが、どうやら・・君も初耳らしいね」
ヒロシにとっては衝撃な話であり、恵美がなぜ?姿を消すのか?意味不明であった。
「・・手紙?というのは?」
「あゝ!これだよ」
そう言い恵美の父親はバックから1通の便箋を取り出しヒロシに渡した。
「この手紙の内容は全く意味不明なんだよ。なぜ?このタイミングで・・この内容なんだ。そう思った」
ヒロシはゆっくりと便箋を開いた。
そこには父親が言うように意味不明な文面があった。
【お父さん、お母さん・・ごめんなさい。
私・・蜻蛉・・それに影。私が長い眠りで多くの夢を見たわ。そう・・男の子の髪を拭いてあげてる・・何故か分からないけど、笑いかけてその男の子に何かを言ってる・・と思ったら、その子の襟足の頭垢を払ってあげてる。本当に私なの?
洋楽雑誌を観てる・・食い入るように。・・その子が居ない。机にノートだけある。
そこに意味深い詩が書かれていた。・・何か感じるわ。遠い昔に空を見上げたら、茜色の空が綺麗にゆっくりと流れてた。見えるわ・・何度も
お母さん・・私・・なんか、凄くジャムパンが食べたいの。ジャムパンを買いに行くわ。たくさん買って、たくさん食べたいの・・
お父さん・・影なのよ。私・・だから静かにするね。すぐに帰るね・・じゃあね】
ヒロシには恵美が何を考えているかが、全く不明であり、何をしたいかも分からなかった。
「行く宛に心あたりはあるんですか?彼女は!・・恵美はどこに行ったんですか!」
「分からないから、ここに来たんだよ」
忽然と姿を消した恵美・・
ヒロシの心は騒ぎ出した。昔のように・・
続く
忽然と消えてしまった恵美に心配よりも、それ以上の心の衝動に駆られるヒロシ・・
彼はどうすべきなのか?
探すのか?待つのか?・・




