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折に触れて廻る2  作者: 馬場 ヒロシ


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19/21

第20章  裏切りと大きな秘密

風はるかの記者会見で、極秘婚が世に知れ渡り、障壁が生まれたが、ヒロシは避けながら過ごした。

だが・・そこに恵美が現れた。

ショッキングな話が展開されるのであった。

2人の関係が世に知れ、ヒロシは多くの芸能記者達に追われた。

「谷さん!“風はるか”さんとは一緒に生活していないのは本当ですか?生活費はやはり彼女が出してくれるんですか?学生生活に支障はないですか?」

大学に行っても・・

「谷君・・“はるかさんとは夜は熱いの?オッパイ大きいから興奮しちゃう?」

「不謹慎です!学生結婚なんて!どういうつもりですか?」

「サイン・・何枚か頼める?」

実家の両親にも・・

「息子さんが元アイドル歌手と結婚したことを知っていましたか?極秘と言ってましたけど」

「息子さんには過去にお付き合いしてた彼女とか居なかったんですか?」

「お嫁さんである”風さん“とは会いましたか?」

両親も毎度訪れる記者達にうんざりしていたので、そのうちに犯人の様に黙秘をするようになった。

「なあ・・サユリ。覚悟をしてたとはいえ騒々しいよな?毎日だし・・」

「そうね・・ごめんね。私のせいで・・でも、みんな直ぐに忘れるわよ!別の話題が出れば、そっちに行くわよ。それまでの辛抱だから・・我慢してね!」

2人は平日は会わず、当時では貴重だった携帯電話で連絡をしていたのだ。

だが思いもよらない事態が起きた。


ある日に高橋という男性がヒロシを尋ねてきた。

年は25歳程度で若い人であったが、話を聞いて驚いた。

高橋正夫さん・・実は恵美の旦那であった。

結婚式にも招待もされておらず、初めて会うのだが、ヒロシとは真逆で、背が低く小太りだが、真面目であり、話し方も落ち着きがあり、ヒロシに比較しても雰囲気は大人であった。

彼はヒロシと”風はるか“の結婚報道により、恵美が動揺して普通でない・・と言ってきた。

無論、高橋は恵美がかつてヒロシと付き合っていたことや結婚前まで気があったと・・知っていたが、知った上で恵美に結婚を申し込み、最終的にゴールインした。しかも子供を授り、妊娠中である事も言うのであった。

「高橋さんごめんなさいね。あなた達に迷惑をかけるつもりは微塵もなかったけど・・すみません」

「いいんです。でも・・報道を聞いてから、恵美がおかしくなって・・急にラーメンを爆食いしたり、夜中に部屋をぶらぶらと歩いたり、ぶつぶつと独り言言うようになったり・・最近は私の話を聞いているんだか?ぼーっとしてるんです。子供がお腹にいるから・・凄く心配なんです。・・恵美が」

ヒロシには多くを理解できなかった。

彼女がそうなる筈無いと思うのであった。幸せな結婚したのだから、恨みや辛みもなく、自分と恵美の青春は良い思い出として終われた筈・・

それが恵美がおかしくなる?あり得なかった。

「・・どうすべきですか?」

「あなたには申し訳ないですが、恵美に会って正直な気持ちを言って欲しいんです。・・終わったと。今も恵美はあなたを想っています。私には面と向かって言いませんが、影で(うつろ)な目であなたとの写真を見ていました。・・悔しいですけど、彼女は今でもあなたを想っています・・」

「それは難しい問題ですね!・・もしそうだとしても、あなたが恵美を目覚めさせないと・・僕が仮に彼女と話をして変わりますか?事実は事実だと認識して受け入れる・・大きな気持ちで彼女を包み込んでください。僕が彼女に話をしても余計にややこしくなるのでは?」

「いいんです・・彼女を無理やり女房にして毎日嬉しかったですけど、どこかで・・闇を抱えてました。それが・・分かっていたんです。だから・・あなたと”風はるか“さんの婚姻を知って相当なショックを受けたし、過去の恋人だといって多くの記者が取材に来て・・あなたを忘れずにいた自分の自我が蘇ったかも知れません。本当にずうずうしいですが、お願いを聞いていただけませんか?」

ヒロシにとって恵美は別物だった。サユリと結婚しても、心の中に恵美はずっといた。だが・・昔のように彼女の幸せを祈るのが、元カレの役目だと思い、気持ちを振り切っていた。苦しかった・・けど。


1987年4月・・

ヒロシは恵美に会うことにした。

恵美は既に子を身籠もっており、大きなお腹で現れた。髪はショートにカットされ、薄化粧で少し太った感じでもあったが、相変わらずの美人であった。

もう会うことがないと想って、気持ちを断ち切ったヒロシには複雑な日であった。

「あゝ・・ヒロシ君。待った?遅くなってごめん」

「うん大丈夫だよ。さあ、ゆっくりでいいからここに座って・・ああ、そっと気をつけて」

妊娠中の恵美に気を使うヒロシだった。

「元気だった?・・というか、今じゃ有名人ね。好きな音楽で有名人になったね。おめでとう!」

「ううん・・俺は昔のままのヒロシだよ!周りが勝手に騒いでるだけだよ。馬鹿な俺のままだよ」

ヒロシは恵美を見ながら近況の報告をするのであった。無論、記者に追われる日々も。

「・・ねえ、ヒロシ君・・今、幸せ?」

「あゝ・・たぶん」

「・・じゃあ良かった」

「もうお腹がパンパンだけど、外出はいいのか?」

「いいの。動かないとお産が厳しいから、歩くようにしてるわ。予定だと再来月の出産だから」

「そっか・・母親になるんだな。良かった・・」

「・・・」

「ちゃんと栄養補給はしてる?母親が気をつけないと、お腹の子は自分で栄養を摂れないからね」

「ヒロシ君・・私間違った・・」

「えっ、何を?」

「あなたを想っていたのに、(わざ)と違う選択をしたわ。でもね、”はるか“さんがまさか・・あなたと結婚するとは思わなかった・・ヒロシ君が立ち直れば良かっただけなのに・・彼女と一生一緒になるなんて・・予想もしなかったわ。でも・・結果ね。失敗も、後悔も予定されていたんだわね。私は所詮は代役だったから・・」

「おいおい・・そんなこと言うなよ。結果は結果だけど、君の選択がそうだとしても、お腹の赤ちゃんも結果だろう。それは喜ぶことじゃないか?旦那さんも優しい人だし、愛しな・・今を生きる自分と周囲を・・俺は少なからずそう思っている」

ヒロシは恵美の後悔という言葉に心を乱したが、今の彼女の幸せを祈ることが一番と思った。

「・・でも・・私が代役の恵美じゃなく、本物だったらあなたはどうするつもりだった?やっぱり・・この後悔する結果だった?」

「えっ!何を言うだよ!代役なんて。おかしいこと言うなよ。・・誰が誰の代役なんだよ・・全く・・」

「ヒロシ君!谷ヒロシ!目を覚ましなよ!!」

「何をだよ・・」

「いつまで引きずるのよ!妹だってこの生き方を知ったら嘆くわよ!・・どうして私の行動を止めなかったのよ!あなたならできたでしょ!」

ヒロシには訳の分からない言葉を言う恵美に不信感を抱いたのだった。

「妹・・?誰?」

「しっかりしな!」

「私の名前は?私は・・誰?」

「えっ、嵐山恵美で高校の同級生で、元カノだよ?」

「・・私のもとの名前は、嵐山由美です。恵美の双子の姉です。・・どう?思い出せた?」

「何を変なこと言ってるんだよ!・・君は君だろう。恵美は恵美だろう?」

「そう・・顔も声も同じ双子の姉妹よ。・・私が18歳から恵美と改名したわ。あなたの為に・・」

「・・何?言ってるんだよ?分からないよ?」

「あなたはそうやって、恵美を忘れないように・・いえ!無理に忘れないように心にしまい込んだわ。だから現世では私が恵美と思い込んでるわ。・・でもね、もう居ないの!恵美は!思い出して!18歳の夏を!思い込みもいいけど、一年に一度くらいは行ってやって!あなたを待ってるわ・・恵美が」

「・・どう言うこと?君が恵美で他には居ないよ。行くってどこに?全く!大丈夫?君は?」

「・・そうやって、いつまでも封印するするんだね。だから・・私には耐えれなかった。あの恵美の願いでも耐えれなかった。代役でも私を好きになってるかと思えば、急に妹との付き合っている場面を思い出し話すし、マネージャーとして会った時も何かよそよそしくて、現れたことに違和感があったと思った。楽曲作成中も、”はるか“さんと笑いながら、見つめ合ったり・・恋でなければいいと思ったわ。最悪は私が結婚するんだと知っても、来なかったよね?”好きだから誰にも渡したくない“・・そう言って欲しかった。でも心の奥底で、私が本物じゃ無いと分かっているから来なかったよね。幸せを祈るとか、子供ができて嬉しいとか?全く私のこと他人事だったわよね!しかも”風はるか“と結婚して有頂天なの?私とあの子に悪いと思わなかったの?・・最低」

ヒロシには全く分からない恵美の言動だったが、あることを思い出した。それは17の2月後半に恵美から、別れた2ケ月後に突然告白された場面だった。

「ヒロシ君・・私の勝手で別れようって言ってごめん。よく考えたけど・・やっぱり私ヒロシ君とずっといたいの。だから復活して欲しいんだ。私ね・・あなたのことが好き・・それに頑張って私の心を掴もうとする気持ちが嬉しくて、気持ちがうずうずして我慢できないの。もう一度・・私と居て!ね!」

「何言ってるんだよ!俺を簡単に振っておいて・・図々しいにも程があるよ!格下げだよ!」

「えっ?格下げ?どう言うこと?」

「友達から始めよう!好きとか愛してるとか?なしにして、暫くやってみよう!それで恋が芽生えたら、また付き合えばいいさ!」

「いいわね!そうする?さすがだねヒロシ君。・・でも私には時間がないようだから、早めにね!お願いします!」

ヒロシにはその頃の記憶が断片的であり、はっきりとした記憶ではなかった。

「・・分からないけど、君が・・今の・・君と違う・・気がする。・・俺の知ってる恵美は、君のように暴言は言わない優しい人だった・・」

それからの彼女との会話は成り立たなかった・・ヒロシは記憶を紐解くように、自分の高校時代を思い出すのであったが、さっきの場面以降は思い出せなかった。

アパートに帰るとサユリが居た。

「ヒロシ君!どこに行ってたの?私に連絡くらいしてよ!心配だったんだからね」

「あゝ・・ごめん。」

「・・どうしたの?・・なんか元気ないけど?記者にまた追われた?それとも学生に追われたり、罵声を受けたの?」

「いいや・・そうじゃないよ。君の前のマネージャーに会っていた・・」

「前の?・・嵐山!」

「うん。恵美の旦那から頼まれてね。仕方がなく」

「どう言うこと?なぜ嵐山に会ったのよ!未練でもあったの?それとも・・浮気?」

「おいおい!やめてくれよ!そんなんじゃないよ。それに彼女、妊娠していて再来月に出産するんだ」

「・・それってヒロシ君の子じゃ無いわよね?」

「馬鹿なこと言うなよ!ちゃんと今の旦那との子供さ。俺の訳ないだろう」

「冗談よ。でも・・何の話だったの?」

「よく分からないけど・・恵美が本当は恵美じゃ無いって言う話で、俺もこんがらがって意味不明なんだ!それに18の夏を思い出せなんて・・どう言う事なのか?ねえ!」

「言ったんだ。嵐山が・・悔し紛れだね」

「あゝ・・サユリがまで意味不明だな!」

「まあ・・いいわ。ヒロシ君は今のままでいいから、私と幸せ掴もう!私たちも子供作る?」

「えっ・・ますます怖いんだけど。君も大丈夫?」

「ええ!大丈夫だよ!まさしく大丈夫。私もいづれはヒロシ君の子供が欲しいってこと。今は・・ちょっと早いかな?まだ互いに子供だしね」

「びっくりさせないでよ!本気にするところだった」

「でも・・その予行演習はしてもいいよ!」

そう言うと”風はるか“は上着を脱ぎ、スカートもとり・・ブラウスもストッキングもとった。

「ひ・さ・し・ぶ・りに抱いて!もう・・我慢できないの・・」

そう言いブラも取り、ショーツも脱ぎベッドに横たわった。

「寒ーい。温めてヒロシ!」

「あゝ・・仕方ないなあ!今日は1回だけにしてよ!君も俺も疲れてるんだから」

「・・疲れていてもSEXは別でしょ?ほら・・下が正直だよ・・」

そう言ってヒロシのイチモツを掴んだ。

「ううん・・」

ヒロシも裸になりサユリの上に乗りベッドに入った。

その後は1回では終わらず、3度もしてしまった2人だった。

「なあ・・俺の記憶は確かだよな?」

「・・当たり前でしょ!私のHiroshi Taniだもの」

「じゃあ・・何であんな事を彼女は言って、おれに罵声を浴びせたんだろう?摩訶不思議だよ」

「きっと・・歌を君に歌って欲しかったんだと思う」

サユリは裸の体をヒロシに密着させ、そっと抱きついた。

「歌って?何の歌?今更・・」

「茜雲だよ・・嵐山を想って作った曲でしょ?・・歌詞の中にある・・(自分の今の想いが、過去にならぬように・・)・・そう言う歌詞あるでしょ。きっと君の想いが過去になったからだよ。嵐山にとって、君はいつだって今・・何だと思う」

「・・理解出来ないけど、そうなのかな?・・だったら別の人と結婚して子供ができても”想え“ってことか?ずいぶん図々しいよな?」

「出たね!久しぶりの君の女心分からん!が・・」

「ど・どこが?女心なんだよ!」

「女って、結婚しようがしまいが、結局は好きだった人を忘れられないものよ・・初めて好きだと思った時や、初めて手を繋いだ手の温もりや、初めてキスした思い・・忘れられないものだわ・・それが女心ってものなの・・分かった?」

「・・じゃあ、恵美は今でも・・」

「あゝ!そこは詮索しないものよ!」

「だけど・・俺が君と結婚したことに酷くショックを受けていたようだけど?問題が・・ある?」

ヒロシは今日の恵美の激怒する要因が”風はるか“との結婚だと感じていたのだった。

「ウウン・・それは・・ちょっと言い難いな」

「何だよ!秘密は無しだろ!それが約束だろ」

「・・ううん!そうね。ごめん」

「それで何?」

「私・・君を紹介される時に、Hiroshi Taniは絶対に好きにならないで!って・・嵐山に何度も言われたの。彼女はヒロシ君を堕落した生活から救うために私を紹介してくれたんだ。だから・・それを踏まえ!音楽活動を共にしたら、う〜・・分かんないけど、いつの間にか凄く気になって、君を1人で放っておけなくなって・・深入りしたら君が大好きになっていて収集つかなくなった。・・それがきっと彼女にバレたと思う。だから・・私が寝取った形?」

「寝取ったは大袈裟だよ!でも・・少なからず原因の一因ではあるか?」

「怒らないの!ヒロシ」

「今更怒っても・・戻るわけでもないし、君を俺も好きになったんだから、君だけが悪いわけじゃないよ!」

「流石だね。君はいつも冷静なんだ!」

「・・いや、気になるんだ」「何が?」

「君に恵美が辞めた・・と聞いて、俺・・焦りも、裏切り感も、止まさせることもしなかった。それに逆に彼女の幸せを祈っていたんだ・・」

「そ・それは、私がいたからでしょ?既に私たちが好き合っていたからだと思うわ」

そう言いサユリは自分の胸をヒロシの胸に当て、ズリズリしたのだった。

「おお・・感じるよ。辞めなよ!」

「そんな難しい話は辞めよう。もっといい事考えようよ!今が昔にならない様に、好き合っていこう!」

そう言うとサユリはヒロシの上に乗り、激しく上下したのだった。


それから1週間後・・

ヒロシは”風はるか“のマンションに引っ越しをした。

既に報道も下火になり、取材記者も少なくなっていた。

「やっとこれで新婚生活ね!長かったね」

「うん。半年以上だからな」

「この後スタジオ行くでしょ?」

「うん!アルバムの制作を再開しないと、発売日に間に合わなくなる。今日から徹夜で作業しないと」

「えっーえ・・徹夜で?死んじゃうわよ!」

「仕方がないだろ。君が結婚発表なんてするから、収集まで時間がかかったんだからね」

「そうでした・・」

スタジオで作業に入り、1曲1曲を入念にチェックを入れる2人だった。

3日ほど殆ど睡眠なしであったが、取り敢えずは形になり、バンドを入れてのレコーディングに辿り着いた。

「ふー・・やっとここまで来たね!ご苦労さま・・」

「あゝ・・眠いわ。今日は帰れるでしょう?」

「そうだな、レコーディングも済んだし、後は細かなところのチェックだけだ。修正部分は録音テープを編集しておくから、君は帰って寝て!」

「ええっ!まだヒロシ君は作業するの?」

「大丈夫だよ。簡単な編集だから、すぐ終わるよ。家で待っていて」

ヒロシはオープンリールに録音されたバンド音声と、”風はるか“の音声を合体させ、一つのテープを作成する作業をするのだった。

真夜中の深夜2時・・作業が終了してスタジオを出るヒロシは、ある事に気付いた。

「サユリは・・俺があの大学に入学する事を恵美に聞いたと言っていたけど・・恵美はどうやって俺が静岡学院に入学すると分かったんだ?卒業式の後に彼女は”風はるか“のマネージャーになるけど、俺が大学を辞めたことも、埼玉で新聞配達をしていた事も知らなかった筈・・」ふと、そう思ったのだった。

その時・・

「ヒロシ君・・」

「わあ!びっくりした!誰かと思ったよ!」

そこに居たのは、サユリではなく恵美であった。

「どうしたんだよこんな深夜に・・それにここ都内だよ?お腹が大きいのに・・」

「・・ごめなさい。急に来てしまって」

「まあいいよ、ゆっくりとこの椅子に座って・・」

そう言い恵美の手を取りスタジオのバックヤードの椅子に座らせた。

「連絡くれれば、迎えに行ったのに・・と言うか、俺がそっちに行ったのに」

「無理して言わなくてもいいわよ。さっきまで忙しかったんでしょう?前の喫茶店で見てたら、”はるか“さんが帰ってから2時間も経ってるわ」

「えっ!そんな前から居たのか?驚きだ。でも旦那さんは大丈夫か?心配してるんじゃないか?」

「大丈夫よ。近くにいるわ。車で待っていてくれてる」

「突然来るなんて急用なのか?」

「そうじゃないの。前に会った時の話が気に病んでしまって、どうしても決着を付けたかったの。この子が生まれる前に・・」

「じゃあ!2人でうちに来なよ。彼女に電話するから・・」

「ダメ!・・連絡しないで!ヒロシ君と2人で話をしたいの。”はるか“さんには言えない事情もある」

「よく分からないけど・・分かった」そう言い冷蔵庫からオレンジジュースを取り出して、コップに注ぎ恵美に手渡した。

「それで・・何を俺に言いたいんだ。前回は散々に貶されたけどね」

恵美は一口だけオレンジジュースを飲むと、テーブルに置き話し始めた。

「いい・・ヒロシ君、心してこれからの話を聞いて!あなたも謎だと思ってい事が分かるから・・」

「ああ・・うん」

「1980年9月に視聴覚室で歌うヒロシ君を見たわ。私を思って作ったと言う茜雲・・。私はそれに感動してあなたとお付き合いをする決意をしたわ。でもずっと前から・・あなたが好きだった。だからカセットテープに気持ちを録音した・・あなたはそれをだいぶ後に聞いた筈・・長渕剛の夏祭りのダビングテープの中で。でも・・あれを録音したのは私・・由美よ。私は次の日に学校であなたに返事をして、お付き合いがスタートした。でも・・それが恵美に分かってしまって・・(由美はヒロシ君が好きではなかったよね?

なのにお付き合い?おかしいでしょう?訳を教えてよ)そう恵美に責められたわ。

私はいつだって・・恵美の引き立て役だったわ。中学の時も優しい恵美は皆んなから好かれた。無論ヒロシ君も彼女が好きになったわ。高校は2人とも同じ高校に受かったけど、殆どは恵美は欠席してた。普段から見ていた恵美は私だったよ!ヒロシ君・・」

ヒロシは驚愕した。恵美が、別の恵美の話をし出した。意味不明な話にヒロシは驚いて、話を遮るつもりだったが、恵美がストップをかけた。

「いいから・・私の話を聞いて、お願いだから」

ヒロシは小さく頷き従うのであった。

「付き合い出して恵美が私もデートに行くと言って聞かなくて、何度か変わってヒロシ君と会っていた。ヒロシ君は少し気付いた筈・・ある時は大胆で笑い上戸で、負けん気が強い恵美と・・誰にでも優しく、恥ずかしがり屋で物静かで可憐な恵美・・

ヒロシ君が中学時代から好きだったのは、後者の方・・私ではなかった。

お別れ言ったのも私・・でも再度付き合いたいと言ったのは恵美だった。私だったら簡単に断ってきたと思う。でも恵美の真剣な眼差しで(友達から・・)と言ってくれた。

その後に何度私が言い寄ってもヒロシ君は、気持ちが戻らず卒業してしまった。

私は高校時代で隣の西風高校に通う”はるか“さんと知り合ったわ。夏祭りのヒロシバンドが演奏する際に・・(ねえ!あの人なんて言う人なんですか?チョー格好いい人!知ってたら紹介してくれます・・)

私はそう言われて即座に嘘をついたわ。あの人の彼女だって。そうしたら余計に喰らい付いてきて。仕方がなく(Hiroshi Tani)だよ・・そう教えたら、急にあの子興奮して(絶対にものにするわ)って、その日から姿を表さず、安心してたら”はるか“さんはトップアイドルになっていたわ。

そんなある日に連絡があって彼女と都内で会ったの。理由はマネージャーにならないか?という誘いだった。成績も悪く就職先もつまらない工場に決まっていたから、私・・彼女のマネージャーになる決心をしたの・・その後はヒロシ君が見た通りよ」

ヒロシにはあまりにも驚くべき話だった。

「・・あり得ない。双子?君が由美で、俺が好きだったのは恵美・・どの場面が恵美で、どの場面が君なのか?・・滑稽だな。俺はおかしくなりそうだ」」

「・・私はヒロシ君が・・」

「その後の言葉・・言わないで欲しい!俺はずっと騙されていたんだ・・。仮に君が由美で別に恵美が居るなら、俺はなぜ?気付かなかったんだ?おかしいだろ?普通、別人なら気付くだろう!どうして・・」

ヒロシはショッキングな話にガックリと下を向き涙した。

「・・サユリは?いいや、“はるか”はこの事を知っているのか?」

「うん・・高校の時に3人で会った事があるわ。その時に彼女は知った筈・・」

「この事が本当なら・・」

ヒロシは幾度も繰り返されたタイムリープを思い出し、彼女のためと思い次元を超えてきた事が、実は恵美ではなく、由美のためだったのかと思い、体の力が一気に抜けてその場に倒れてしまった。

遠くに呼びかける由美の声が響いたが、気を失うヒロシだった・・


続く





恵美は双子の妹とであり、ヒロシは姉の由美を恵美と思い生きてきたことにショックを受ける。

ヒロシは最終的な結論をみるたびに出る。

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