任務
「た…逮捕って……!えぇぇえええ!!?俺達、捕まっちゃうの!?」
「まあまあ、そう慌てずに。獄中生活も悪いものではありませんよ?」
「自由を拘束される時点で良くはないだろ。」
逮捕、の2文字に大慌てする俺を他所に、奏多は至って冷静だ。何なんだろう、この貫禄は…。
「逮捕云々の前に、状況説明ってもんがあるだろう?それをさせてくれ。」
「ええ、もちろん。それを先に伺うつもりでしたから。」
奏多は、先ほどまで起きた出来事を簡潔に説明した。突然、爆発音が聞こえたから、現場に向かったこと。事件の元凶のリベルティラバーと交戦。結果勝利し、話を聞こうとする。しかし、鐘の音によるビルの倒壊が発生。無事に着地し、安心したのも束の間、オスカー・ベルに見つかり、現在に至ること。
「ふむ…。つまり貴方達は彼らとは無関係であり、事件に首を突っ込んだ一般市民だ…と。」
「そうそう!」と俺が相槌を打つが、奏多は「いや。」と口を挟む。
「俺達は事件の元凶とは無関係だが、一般人じゃない。」
「え!?」
(な、何言ってるの奏多…!なんか、うまくまとまりそうじゃなかった!?)
「ほう?」
俺の不安や心配なんて気付く素振りもなく、奏多は話を続ける。
「一般人が事件に首を突っ込むのは執行官のあんたら的には信用出来ないだろう?もしかしたら、何かしらの形で彼らに関与しているんじゃ…って。
だから、例え無関係だったとしてもここで俺達を拘束する。…違うか?」
「貴方は、随分と頭が切れるようですね。ええ、そのとおりです。例え無関係でもここで逮捕…とまではいかずとも、拘束する事実は変わりませんよ。」
奏多はニヤリとしたかと思えば、話についていけずただ呆然とする俺に近づき、肩にポンと手を置いた瞬間、ぐっと体を寄せられる。
「うおっ!」
肩を組む形になり、オスカーと正面から向かい合う。彼は軍帽を被っていたためよく見えてはなかったが、正面からじっと見ると随分と顔立ちが整っているように見える。黒髪のセンター分けに紅い瞳。目の下に模様?みたいなのが入ってはいるが、それも彼の魅力を引き立てる。きっと村の女性が見たら、黄色い声援を挙げるだろう。
「おい、変革者…?大丈夫か?」
コソッと耳元から声が聞こえた。横を見ると奏多がじっと見ていた。俺が、ぼーっとしているのを見て声をかけてくれたようだ。
「だ、大丈夫!」
「なら良かった。」
そう言いながら微笑むと、オスカーに向き直る。
「俺達は一般人じゃない。Hello,world!…くらいは聞いたことあるか?」
「…その挨拶は。」
「俺達は協会所属の銀河戦士団のメンバー!俺が澄風奏多。こう見えて参謀をやってる!それから…。」
チラッと奏多が俺を見たので、さっきの挨拶を真似ながら、オスカーが来る前に話した俺の新しい身分を声に出す。
「は…はろーわーるど!銀河戦士団の期待の新人、変革者ことシルヴァ!いぃ!以後お見知りおきを!!」
「ぷっ…」
「あっ、今笑ったな!?」
「いや、笑ってない…よ…?ぷはっ!」
「笑ってんじゃん!」
「ごめんごめん、いくら最初の星での初めての任務とはいえ、名乗りが初めてでもここまでとは思わなくて…ふはっ!」
「つ、次の名乗りはもっと上手く出来るよ!」
「じゃあ、次の星に期待だな!」
漫才のようなやり取りをしていると、オスカーは悩んだような動きをしたあと奏多に質問をする。
「なるほど、貴方達が銀河戦士団のメンバーというのは分かりました。では、それの証明になるものをありますか?」
(証明!?そんなのあるわけが…!)
「ほらよ。」
奏多がオスカーに1枚の紙と手帳を見せた。
「この手帳は銀河協会所属の手帳。それから、そっちはアストレア政府の判子付きの滞在許可書な。それには任務が終了するまでの間、任務以外の事件に首を突っ込んでも良いとも書いてある。」
それらを受け取ると、オスカーはじっと見つめる。手帳をペラペラとめくったり、紙をひらひらして、判子を何度も確認している。最後に奏多の顔をじーっと見つめる。
「……どうやら、偽装ではないようですね。」
「だろ?」
「では、そちらの変革者さん?は手帳はないのですか?」
「残念ながら、手帳の発行には時間がかかる。だというのに、協会の連中は新人にすぐに仕事を割り当てる。…こうなったときに困るって分かってるはずなのにな。」
「つまり、無い…と?」
「ないが、今回は俺の顔を立ててはくれないか?協会に訴えてくれても構わない。今回は首を突っ込んだ俺の罪だ。」
「……。」
オスカーは暫く悩んだあと、はぁ…と溜息を1つ。
「…分かりました。今回ばかりは大目に見ましょう。貴方達がいなければ、被害はもっと拡大していた。功労者を捕まえて讃えられる警官なんて、いりませんよ、そんな人。」
「っ!あんた…!」
「代わりに、この紙を頂いてもよろしいでしょうか?それから、任務内容も教えていただきたい。」
その瞬間、奏多が固まった。が、すぐに元に戻る。暫くオスカーと目線を合わせ、熟考した後…。
「……ああ、いいだろう。」
と承諾した。
「今回、この地での任務は遺物『マイノリティ』を回収することだ。」
「なっ!」
「この星の何処かに封印されているのは間違いない。だが、何処にあるのかが不明だ。この遺物は、使いようによっては星を滅ぼすことが可能。協会の判断から、回収するように言い渡された。」
「……なるほど。それが、貴方が任務で来た理由ですか?」
「そうだ。」
「ふむ…。」
「…ん、どうした?」
「いえ、任務として来た理由は分かりました。…では、貴方が来た理由は…?」
奏多の空気が凍り付いた気がした。
「……なんのことかな?」
「まあ、個人情報をこれ以上詮索するつもりはないですよ。では、貴方達はこれで結構。あとは、今逃げようとしている貴方達です。」
オスカーの視線を追うと、いつ目を覚ましたのか、リベルティラバーのボスと構成員がその場から走って逃げているのを見つけた。
「あっ!あいつら!」
「まあ、俺の言葉なんて信じるわけがないか!」
「貴方がたは逃がすわけがないでしょう。」
そう言うと、オスカーは背負っていた警棒を取り出したかと思えば、大きなベルが警棒の先に出現した。
「でっかいベル!?」
「音速の衝撃波からは逃げられませんよ。」
彼が一つベルを振ると、音波が具現化し、音波を凝縮した衝撃波として、リベルティラバーが逃げる方向へ一直線に向かう。彼らに追いついた瞬間激しく爆発する。ベルの音と爆発音からシルヴァは思い出す。先ほど自分たちが落下した時も、ベルの音が聞こえたと。
「まさか、あのときの爆発!」
「正解です。」
遠目からもリベルティラバーが動かなくなったと分かると、彼はベルを仕舞う。
「では、私は仕事の続きがあるので。これにて失礼させていただきます。」
そのままオスカーは彼らを拘束するためにその場から離れていった。
「あ、そうそう。」
途中で足を止めて、オスカーがこちらを振り返る。
「この間任務中に、貴方と顔がそっくりな人を見かけましたよ。」
「………!」
「ご迷惑をかけた礼になるかは分かりませんが、一応お伝えしておきますね。では。」
残されたシルヴァと奏多はその場から動けずにいた。長い沈黙に耐えきれず、シルヴァは奏多に問いかける。
「なぁ、奏多。さっきのってどういう意味だったんだ?お前が来た理由って…。」
「………。」
奏多は無言のまま、返事をしようとはしない。
かえって気まずくなり、俯いていると、
「…まあ、ここで言うのもなんだ…。何処か食べる所にでも行くか?そこで話すよ。俺の目的。」
と提案する。食べる、という単語に俺が目を輝かせると、奏多はフフッと、先ほどの真顔とはうってかわって穏やかに微笑む。
「異論無し、ってことで…、行くか!」
「おー!!」
ご読了ありがとうございました!
奏多の本当の目的とは…?




