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星海神譚:Nexus of Destiny  作者: 日向
第1章 異世界からの来訪者
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戦いの後

「俺…勝った……?」


力いっぱい斧を振り下ろした衝撃からか、腕どころか全身が痺れる。脱力感さえ覚える。それでも、不思議と倒れることはなく、立ち続けることができる。

ぜぇ、はぁ、と呼吸を整えながら、シルヴァは辺りを見渡す。あれほど散乱していた瓦礫や残骸は2人の戦った場所から殆ど消えていて、かろうじて残っているのは柱や、大きすぎる瓦礫。そして、倒れているリベルティラバーのボスのみだった。


「あれ…俺達、皆吹き飛ばしちゃった…?」


他の構成員をオフィスから吹き飛ばしたのではないかという事実に震えていると、頭上からパチパチと拍手が聞こえてきた。


「お疲れ、変革者。」

「そ、うた…?」

「ははっ!くたくたじゃないか!まあ、いきなり木こりがこんな戦闘をしていたら、疲れるのもボロボロになるのも当然か。」


そう言いながら、奏多は柱の残骸から飛び降り、シルヴァの下へ駆け寄る。


「ほら、座りな。応急手当してやるから。」

「手当って…。」

「いいから!」


何処からか包帯や液体の入った容器を取り出しながら、奏多はシルヴァの体にある切り傷や擦り傷を消毒しながら、丁寧に包帯を巻く。


「手際がいいな…。」

「まあな。俺、要領いいからさ。大抵のことは何でもできるんだよね。……。はいっ、出来上がり!」


ものの数分足らずで手当を終えてしまい、彼の器用さを思い知る。


「さて、これからどうする?取り敢えず、騒動の原因は倒せたわけだが、これ以上ここにいるとそろそろ執行官が来ちまうからとんずらしようぜ。」

「え…、逃げるのか?」

「俺はともかくあんたがここにいるのはまずいからな。」

「そうじゃなくて。」

「ん?」


シルヴァは倒れて動かないボスをじっと見つめる。


「この人のことも、治してくれないか…?」

「……はぁ?」


(この人は俺から見れば間違っていることをしていたし、許せない。けど、何か事情がありそうだった。それを聞かないと…。)

敵だったやつ、しかも先程まで戦っていた相手を助けてほしい、なんて甘いことを言うのだろうか。奏多はガンと頭に衝撃を受けたような感覚を味わう。けれども、不思議と嫌悪感は抱かない。むしろ何処となく親近感を覚える。


(あぁ、似ている。あの人に。)


奏多が固まったまま動かないので、シルヴァはなにかまずいこと言ったのではないかとアワアワしてしまうと、奏多は「わかった、わかった。」と返事をする。


「仕方がないな。今回だけだぞ?」

「奏多……!!」

「子犬みたいに喜ぶなって、ははっ!」


頼みを聞き入れてくれた奏多はこちらも手際よく手当をする。手早く終わらせてしまうと、奏多は壁が崩れ落ちたオフィスから、地上を眺めていた。何かを探しているような視線だったが、その視線にシルヴァが気付くことはなかった。


「うぅ…!」


しばらくすると、リベルティラバーのボスからうめき声が聞こえた。


「よ、起きた?」


シルヴァが声をかけると、相手も近くにいると気づいた様子で、ゆっくりと身体を起こす。


「お、おい!無茶するなよ!」

「ふん…。これ、お前が治したのか…?」

「いや、奏多がやってくれた。」

「奏多…?あの、赤いのか?」

「うん。」

「二人揃って甘ちゃん小僧だな。」

「甘ちゃん?甘くないぞ、俺は!」

「物理的にじゃねぇ!性格が甘いんだよ!」

「誰かを助けることが甘いなら、そっちだって甘ちゃんさ!」

「はぁ!?」

「義賊っていうのは困っている人を助ける人なんだろ?そっちも甘いじゃないか!」

「甘いの意味も理解してない小僧がおかしなこと抜かすな!」

「なんだと!?」

「そっちこそ!」

「「ぐゔゔゔゔぅぅぅぅ!!!」」


_パチン。


「はい、そこまで!」


いがみ合いを途中で止められ、二人揃って見上げると、奏多がニッコリとした顔でこちらを見ていた。


「あんたらが仲良しなのは分かったから、甘ちゃん談義はそこまでにしてくれ。」

「なんだと!?」

「そ・れ・よ・り・も!やるじゃないか、変革者!一応魔力を使えるボス相手に勝つなんて、すごい!」

「えーと、それほどでも?」

「うんうん。自信を持ってるのはいいことだ。正直ここまでやれるとは思ってなかった。なら、あんな露骨な煽りとか入れずにすぐに戦えば良かった。そうすれば、もっとあんたの実力を測れたのに。」


煽りと言われ、戦う前のことを思い出す。確かに、彼はかなり相手を馬鹿にするような発言が目立っていたように思える。


「煽りって、あの時流石に言い過ぎだろとか思ってたやつ!やっぱりわざとだったんだ!」

「そうそう、怒る程度じゃ別にそこまでこいつらの強さは変わらないけど、耳を傾けることで、数秒でも時間稼ぎが出来るかなって思ってさ。」

「……時間稼ぎ?何のために?」

「……ははっ。でも、それは間違ってたみたいだ。」

「ははっ!じゃなくて!」


両手の手のひらを見せながら、まあまあ。と言わんばかりの仕草をしながら奏多は話を続ける。


「大丈夫、あとで説明するさ。」


すると、いきなり奏多はキリっとした真面目な表情に変わる。


「今からあんたに言うことは2つ。1つ目、余計な口を挟まないこと。2つ目、これからこの星でのお前の身分は星の旅人で銀河戦士団入りたての新人。異世界人であることは今は隠せ。いいな?」

「え?どゆこと?」

「いいから!」

「うぃっす!」


奏多の勢いに押され、思わず舎弟の如く返事をしてしまう。彼にも誰かの上に立つリーダーの素質があるのかもしれないと思えてしまう。けれど、リーダーというよりかは、義賊のボスのような兄貴感があるように思える。


「そして、そこのリーダーさんやい。」

「っ!…俺か…!?」

「そうだ。お前の選択肢は2つ。仲間を置いて逃げるか、一緒に捕まるか。さあ、選べ。」

「んだと!?」

「ちなみに、俺は俺の証明のためにお前たちを盛大に利用する。逃げてもこれから来る連中に、どこに逃げたかの証言はするから、そのつもりで。」

「は!?」

「もし捕まる場合は、この街の守護者が少しでも優しければ…。どんな手段を用いても必ず助けてやる。」

「おい、捕まったら助けるだの、信じられるわけがねぇだろ。」

「それはあんたの好きにしろ。俺にとって、今の最優先は、変革者の安全だ。それ以外は後回しにする。」

「奏多…さっきから何の話をして……ん?」


_チリンチリン。と小さな鈴の音が聞こえた気がした。

3人揃ってシーンと、静かになる。


「鈴の音…?」


耳を澄ませ、音の場所を探ろうとした。その時_。


ゴーーーーン。突如大きな鐘の音が響き渡る。その瞬間足元から一気に建物が崩れ始めた。体勢が保てず、その場にいる全員が落下した。今いる場所はビルのかなり高い階層にいるため、かなりの高さがある。


「なっ、なんだ!?」

「どうなってやがる!?」

「あ〜、これは俺達を生き埋めにする気か?」

「「そんな余裕打ってる場合か〜!」」


2人はお互いに初めて気があったと思った。


「お前ら、しっかり着地しろよ!」

「はいっ!?」


奏多は大鎌を構えて、地面に向かって技を放つ。


「月ノ仮消‐三日月!」


奏多は大鎌を振り下ろすと、三日月型の斬撃を繰り出す。それらがシルヴァやボスに当たることはなく、ただ真っ直ぐに地上を目がけて飛んでいく。その軌道に沿って、地面に積み重なった瓦礫をすべて消し飛ばした。


「すごっ!!」

「なんだこの威力!」

「大したことはないさ。ほら、足元よく見ろ!」


足の踏み場が無かった地面に、綺麗なコンクリートが見えたことで、彼らは無事に着地に成功した。


「よかった…生きてる…!」

「し…死ぬかと思った…。」

「ありがとう、奏多!……奏多?」

「おやおや、まさか無傷で着地なさるとは思いませんでしたよ。皆まとめて倒れてくれれば、仕事が楽だったのに。」


突然自分たち以外の第三者の声が聞こえた。シルヴァとボスは顔を強張らせ、固まってしまうが、奏多だけはへらへらとした様子で、余裕があるように見える。奏多はそのまま、現れた人物に話しかける。


「随分と物騒じゃないか。てっきり街のヒーロー様が華麗に助け出してくれるもんだと思っていたんだが。」

「ふふっ、それはあとで合流予定の他の執行官に頼んでください。私だってこんな男だらけのむさ苦しい炎の空間に来たくなかったですよ。」


まるで親しげな友人同士のような雰囲気に困惑した様子で残った二人は互いに顔を見合わせる。


(おい、どうする?)

(うっ、直接声が脳内に…!)

(ふざけたことぬかすな!ただの小声会話だ馬鹿。)

(ごめんごめん。)

(はあ…。で、どうする?片方はお前の仲間だろ?)

(今日が初対面だけど、まあ仲間だな。)

(本当に初対面だったのかよ!?赤いやつの嘘だと思ったが…。ま、まぁいい。とりあえず、お前の仲間(仮)に知り合いかどうかとか聞いてこい!)

(えぇ?流石にこの空気に入れないよ。)

(つべこべ言わずとっとと行け!)

(人使いが荒い!)


シルヴァは奏多に近づき、相手に聞こえないように、こそっと小さな声で問いかける。


「な、なぁ奏多。」

「ん?どうした?」

「そこの人知り合いか?」

「いや、全く。」

「なんか、知ってる雰囲気だったじゃん!」

「俺もこいつの個人情報は知らねぇよ。けど、身分は分かる。」

「身分?」


するとクスッと笑う声が聞こえてくる。そちらへ視線を向けると目の前の人物はニコニコとした顔をシルヴァのほうへ向けていた。


「そこの赤色の人の言うとおりです。私の服は、身分を証明しています。」

「ひっ!聞こえてた!?」


両耳についているイヤリングを揺らしながら、彼は耳を強調するようにそっと手を添える。


「私、耳がいいんですよ。」

「へぇ!それはすごい!」


彼は背負っていた2つの大きなベルを持ちながらも、礼儀正しく挨拶をする。


「私はアストレア政府特務課の一人。執行官オスカー・ベルと申します。以後お見知りおきを。ところで皆さん。これから何をするかは分かってますか?」

「事情聴取か?」

「いいえ。いや、それも合ってはいます。正確には…皆さん、全員逮捕です。」

「………え!?」

ご読了ありがとうございました。ここからは他のネームドキャラクターが出てきます。

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