VSリベルティラバー②
「おらっ!!」
「ぐっ!」
剣を大ぶりに振り下ろすボスの攻撃をシルヴァは正面から斧で受け止める。が、思いの外相手の力が強く、カウンターを返すどころか、剣を相手に返すことも出来ない。このままでは押し切られてしまう。
(これは、まずい!受け流して回避っ!)
相手の攻撃を横へ流しつつ後ろへ相手との距離を取るが、それはどうやら相手に読まれていたようで、距離を取ったにもかかわらず、すぐに距離を詰められ連撃を入れられる。防ぎ切ることはできず、一定の切り傷は入ってしまう。
「どうした!こんなものか!?俺に聞きたいことがあるとか抜かしていたが、その前に死んじまうかもなぁ!?」
「く…!俺は、他人を平気で傷つけ街を燃やすお前たちに…負けたりはしない!!」
「ふん、口先だけじゃなんとでも言える。だが、力がなければ、何も変えられない。」
「そんなこと、ない!!」
攻撃をする、防ぐ、カウンター。を繰り返しながら、シルヴァは言葉を紡ぐ。
「力で街を覆っても、人々の心の底に残るのは、ただの『恐怖』だ!」
シルヴァの脳内に浮かぶのは、炎の痛みに苦しみ悲鳴を上げる人々。瓦礫に足が挟まり逃げられず、涙を流す女性の姿。
「この街に住む人は皆、苦しんでた!なのに、お前たちは平然な顔をしている!」
持ち手に入れる力が自然と強まり、怒りのままに斧を振るう。あまりの気迫と勢いに押され、攻防は逆転し、シルヴァが相手を攻め続ける。喧騒とは無縁の生活だったが、現在進行形で非日常を経験したシルヴァにとって、あの光景はまさに地獄そのもの。
「人の命を簡単に踏みにじって!どうして平気なんだ!なんで!こんなにも酷いことが出来る!?」
シルヴァの勢いに押され防戦一方だった、ボスが攻撃を受け止めると、フルフルと体を震わせながら、大声を挙げる。
「平気なわけがないだろう!!そこまでの外道にゃ落ちちゃいねぇよ!!」
「なっ…!」
「俺達だって人間だ。心くらいある!けどこれしかないんだよ…!力ずくでなきゃ!俺達は…!自由になれない!!」
あまりにも悲痛な叫び声に、シルヴァは戸惑い攻撃を止める。その様子を見守っていた奏多もまた、無言で二人の様子を静観していた。
「本当に、お前達に何があったんだ…!どうしてこんな…!」
「俺たちは義賊として、仲間を、家族を、あいつらを救う道を選んだだけだ!!それにこの街の奴らは不要ってだけだ!!」
「人に不要も何もないだろう!守るために誰かを傷つけ、奪うやつは義賊ってやつかもしれないが、奪われた人から見れば泥棒で犯罪者。その事実は消えないんだぞ!?」
「善悪という常識ももう散々だ!これしか道がないんだよ!俺たちの狼煙はこうでしか上げられねぇ!」
鋭い刃を持ち手で受け止めながら、シルヴァはずっと話し続ける。例え相手の地雷を踏み抜いたとしても、怒りを覚えさせても、向き合うためには相手を知るのが一番大事だと考えているからだ。
「他にも何かしら方法があったかもしれない。なのに、なんで数ある選択肢から他人を傷つけて悲しませる道を選んだ?」
「お前に何が分かる!」
「分からないに決まってるだろ!俺はお前らどころか、この世界とも今日が初めましてだ。だから、こうして対話をしてるんだ!」
「お前みたいな甘ちゃんが対話したところでなんになる?どうせ同情して哀れな目を向けるだけだ!俺にも勝てないお前じゃ何もできない!」
「何もできないとか、お前には分からないとか、もういい!分からないなら分からないなりに、俺はこの星を、この銀河を知ってやる。そして、運命を変えるために抗ってやる!そのために今、俺はお前たちを止める!!」
「銀河を知る!?お前…、一体何の話をしてやがる!?」
(心は熱く、頭は冷静に…。さっきの感覚を思い出せ。あの時の玉切りの威力は俺自信も異常な火力を感じた。一撃で相手を倒せるように…!)
先程の構成員達を倒したときと同じような感覚で、再び銀河のような煌めきを斧に纏わせる。異常な魔力の流れを視覚で感じ取ったボスも、冷や汗をかきながらも応戦の動きを取る。剣に炎を纏わせながら、不敵に笑う。
「必殺技か!?なら、俺もお前に引導を渡してやるよ!!」
「俺は、こんなところで終われない!死ねない!あいつを…フェイアスを救うために!」
「「喰らえ!!」」
お互いの全力を込めて一気に力を解き放つ。
「貪欲の焔!!」
「運命の一手!!」
技がぶつかり合い、凄まじい嵐のような風を巻き起こす。大きな音と共に煙が2人を包み込み、瓦礫やPCデスク等の残骸が飛び散る。奏多も思わず一歩下がる。
「これは…、想定外だな。」
奏多がじっと観察していると、煙の中に人影が見えた。そこに立っていたのは、リベルティラバーのボスだった。
「俺の…勝ちだ!」
「……。」
シルヴァは地面に倒れ込んおり、微動だにしない。ボスは上から俯瞰していた奏多を見定めると、煽るような表情をする。
「残念ながら、お前の相棒は倒れちまったよ。」
「倒れたって、誰が?」
「誰って、こいつお前の仲間だろ?」
「ああ、変革者のこと?ちなみに彼とは今日が初対面だよ?」
「初対面で仲間ヅラしてやがったのか。」
「そうなるな。」
「そこに信用なんてもの1つもねぇだろ。」
「まぁね。」
「ハン!冷たい男だなぁ、赤いの。」
「冷たい?どこがだよ。」
「初対面の甘いやつを利用して見殺しにした。なにか間違ってるか?」
「…そうだな。お前の言うことは一つは合ってるが、もう一つは間違ってる。」
「ん?」
「俺は確かに変革者を利用している。というか、利用するつもりだ。そこに信用はない。が、俺はあいつを信頼しているんでね。」
「利用してるんじゃねぇか、というか、さっきの利用して見殺しの何が間違って…。」
奏多は相手を見下ろしながら「はははっ!」と愉快に笑う。
「それが間違いだ。逆に問おう。」
奏多は相手に手を差し出し、謎をかけるように目を細めながら、微笑む。
「何で『彼』が死んだと思っている?」
その瞬間、シルヴァはボスの背後に立ち、脳天めがけて斧を振り下ろす。実際に頭を真っ二つに割らないように刃を逆に向けながら、全力を込めて。
「こいつ、生きて!?」
「うおぉぉぉぉぉぉおおおお!!!!」
(変革者だけでなく、あのボスも。互いに信念を持っている。それはどちらも正義で、善悪の判断が難しい。勝負を決めるのは、如何に諦めが悪いかどうか。)
「ふっ…。」
奏多は穏やかな顔つきで結末を見届ける。彼の瞳に写ったのは、たった一つの光景のみ。一人の斧を持った青年が、瓦礫が消え去ったオフィスに立つ。まさに新たな『英雄』誕生のような姿だった。
シルヴァは勝利を手に入れた!




